
家を長く良い状態で保ちたいと考えた時には、住宅内における各所のカビ防止対策が重要になります。家の中でカビが繁殖してしまうと、見栄えが悪くなる…などといった単純なものではなく、空気中にカビの胞子が飛散することになるので、家族の健康に悪影響を及ぼしてしまう恐れまであるのです。
それでは、住宅の中でカビが繁殖しやすい場所となるのは、どこになると思いますか?当然、カビは湿度が高い場所で繁殖するということは皆さんもご存知だと思うので、キッチンやバスルームなど、よく水を利用する場所がカビの繁殖リスクが高くなります。その中でも特に危険だと言えるのがバスルームで、入浴によって高温多湿な環境が作られるお風呂の中は、他の場所と比較すると、圧倒的にカビの繁殖リスクが高くなるのです。
そこでこの記事では、カビの繁殖により家族の健康に悪影響を与えないようにするためにも、お風呂の中になるべくカビが発生しないようにするためにはどうすれば良いのかについて解説します。浴室のカビ問題は、多くの方の頭を悩ませる問題となるので、以下で紹介するお風呂のカビ防止対策をぜひ参考にしてみてください。
カビの繁殖条件や人に与える影響について
カビは、人の目で見た時には動いているように見えません。そのため、生物という印象を持たない方も多いのですが、カビは微生物に分類される生き物です。その中でも、「真核生物」かつ「真菌」に分類されるのがカビなのです。
ちなみに、微生物とは、「微細な生物」を総称する言葉で、その中でもカビが該当する真核生物は、他の微生物と比べて、さまざまな器官や機能を持ち合わせている生き物を指しています。そのため、カビというのは、人の目で細かなところまでは観察できないほど小さいものの、さまざまな器官や機能を保持している賢い「生き物」と解説することができるのです。
そしてこのカビは、特定の条件が満たされたとき、爆発的な勢いで繁殖するという特徴を持っています。ここでは、カビが繁殖する条件や、人の健康にどのような影響を当たるのかについて解説します。
カビが繁殖する条件とは?
それではまず、カビの繁殖に適した条件についてご紹介します。カビは、以下の条件が揃うと、爆発的な勢いで繁殖するとされています。
- 酸素が存在する
- 湿度が高い(70%以上)
- 温度が中程度(20〜30℃)
- 弱酸性(pH4〜6)
- 栄養源がある(ホコリやチリ、皮脂汚れなど)
カビは、上記のような条件を満たしていると、爆発的に繁殖するとされます。ちなみに、カビは中温状態でしか繁殖しないのではなく、5〜45℃の範囲で発育が可能とされているので、冷蔵庫の中に保管している食品などでも、時間がたてばカビが生えてしまうことがあるのです。
また、カビの中には、低酸素環境でも発育可能な真菌が存在する、-5℃の環境下でも繁殖可能、80℃で30分加熱した場合でも死滅しない種類が存在するなど、皆さんが考えている以上に、広範囲の条件で発生します。
ただ、家の中におけるカビの繁殖については、カビの栄養源がある状態で、高温多湿な環境と言えるので、ほぼすべての場所と言っても良いでしょう。家の中で、酸素が存在しないような環境や、埃やちりがまったく無い環境を作り出すのはほぼ不可能ですし、20~30℃という環境は人にとっても快適と感じられる環境なので、どこでもカビが繁殖する可能性があると考えた方が良いです。
カビが人に与える影響とは?
上で紹介しているように、カビは、一般住宅のいたるところで発生する可能性があると言えます。実際に、以下のような場所は、カビの繁殖に注意しなければいけません。
- エアコンの吹き出し口
- 浴室・トイレ・洗面所など水回り
- キッチン
- 寝室
- 押し入れなどの収納
- 玄関や廊下
- 畳、カーペットの下
- ソファーなどの家具
- 床下や天井裏
上記のように、一般住宅のあらゆる場所がカビの発生ポイントとなってしまいます。水回りやキッチンなどは分かりやすいですが、家具やカーペット、畳などはカビとの関連性がイメージできない人も多いです。しかし、人の皮脂などが付着しやすいソファーなどは、カビの繁殖に関しては意外な盲点となるのです。また、床暖房が導入されるケースが多くなっている昨今、カーペットを剥がしてみると、カビだらけになっていた…という失敗も多いです。
それでは、人間の近くでカビが繁殖した場合、どのような問題が発生するのでしょうか?カビの健康被害については、食品に付着した物を口にしなければ、健康被害などないのではないか…と考える人も多いです。しかし、住宅内でカビが発生すると、繁殖のために胞子を空気中に出すという性質があるため、人間がそれに気づかずに吸い込んでしまうという問題が生じるのです。そして、その場合、以下のような健康被害が発生する恐れがあるとされています。
- アレルギー症状
空気中のカビの胞子を吸い込んだ時、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、皮膚のかぶれなどのアレルギー症状が出る場合があります。また、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などの疾患について、悪化の要因になる場合もあります。 - 呼吸器系の疾患
空気中にカビの胞子が大量に飛散すると、喘息・気管支炎やアレルギー性肺炎、肺真菌症など、呼吸器関連の疾患を引き起こすリスクが高くなります。場合によっては、命に係わるような状況になるなど、重篤化する恐れもあります。 - その他の健康被害
カビは、シックハウス症候群の原因となることもあります。倦怠感、目や鼻の刺激、集中力の低下などの症状が出るので、日常生活に支障が出てしまう可能性があります。さらに、一部のカビが生成するマイコトキシンという毒素は、長期間曝露されると発がん性のリスクを高めると言われるなど、非常に深刻な健康被害を引き起こす可能性もあるのです。
住宅内でのカビの繁殖は、上記のような健康被害を引き起こす可能性があります。特に、子供、高齢者、アレルギー体質の方は、カビの胞子による影響を受けやすいとされており、健康被害が深刻化する可能性があるので注意が必要です。
お風呂のカビ防止について
それでは、本題である「お風呂のカビ防止」について解説していきます。上で紹介したカビの繁殖条件のことを思い出していただければ分かると思いますが、お風呂は家の中でも特にカビが繁殖しやすい場所となります。
お風呂は、40℃前後のお湯を使う場所となるので、通常の居室と比較すると、高温多湿な環境になります。また、皮脂などを洗い流すための場所なので、カビのエサとなるものが非常に豊富なのです。これにより、きちんとカビ対策をしておかなければ、いつの間にかカビが大量繁殖し、浴室内の空気中にカビの胞子が飛散してしまう…などといった状況に陥ってしまうのです。
ここでは、日々のお手入れなどで可能なカビ防止対策について解説するので、家族の健康被害を防止するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
対策① 入浴後は、壁や床の汚れを洗い流す
一つ目の対策は、最後にお風呂に入る方が、入浴後、シャワーを使って壁や床に付着した汚れを洗い流しておくというものです。カビは、温度と湿度が最適なうえ「カビのエサが存在する」という条件がそろうことで爆発的な繁殖を始めます。
温度と湿度の条件については、「温度:25~30℃前後」「湿度:70%以上(80%を超えるとより危険)」なのですが、入浴後はこの条件をほぼ確実に満たしていると考えられるでしょう。そして、お風呂の中には、カビの栄養となるものも非常に多いのです。人にとっては汚れに感じる「石鹸かす・皮脂汚れ・垢・ホコリ」などは、カビにとっては栄養源となるので、これを残したままにしておくと、カビの繁殖条件が整ってしまう訳です。
したがって、最後にお風呂に入った方が、バスルームから出る前にこれらの汚れを綺麗に洗い流しておくだけで、カビの繁殖を防止することができるようになるのです。なお、浴室内を洗い流す際は、シャワーを冷水に設定して壁や床を洗うと良いです。冷水を壁や床にかければ、浴室内の温度が下がるため、カビがより発生しにくい環境を作り出すことができます。
対策② 浴室内の水分を拭き取る
二つ目の対策は、浴室から出る前に、浴室内の水分をきちんと拭き取るという対策です。少し面倒に感じますが、これを実行すると、カビの防止の面では非常に効果的に働きます。
先程から紹介しているように、カビの繁殖に適した条件としては、高湿状態というものがあります。つまり、「水分が残っている=湿気が残っている」という状況を放置すると、カビが発生しやすい状況を放置することと同義なのです。
したがって、お風呂のカビ防止を考えた時には、専用のアイテムを用意して、浴室内の水分を限りなく残らないようにしましょう。例えば、水切り用のワイパーがあれば平らな場所の水分を効率的に排水することができます。また、ドアやジョイント部分に残る水分については、吸水クロスなどを用意しておけば、水分を除去できます。最近では、天井や壁など、手が届きにくい場所にも使いやすい、浴室用のワイパー(水切り用、吸水用両方があります)が販売されているので、それらを用意しておくのもおすすめです。
対策③ 浴室内を乾燥させる
これは非常にわかりやすい対策です。カビの繁殖は高湿状態という条件が適しています。つまり、その逆の乾燥した状態を作ってあげることができれば、カビの発生を防止することができるようになるのです。最も簡単な方法で言えば、浴室の温度が下がる前に、浴室からお湯を抜き、換気扇を回して湿気を排出することで乾燥させるという方法になります。
浴室内の湿度に関しては、浴槽にお湯を張ったままの状態にすると、湯気が立ってしまうため、それが浴室内に広がり、高温・高湿状態が保たれてしまうことになります。したがって、何らかの理由で浴槽にお湯を張ったままにする場合は、必ず浴槽に蓋をして、湯気が室内に広がらないようにしましょう。
換気扇で湿気を排出する場合は、最低でも2時間以上は回し続ける必要があります。効率よく湿気を排出するためには、浴室の窓やドアを開放して風が通るようにするという方法があるのですが、ドアを開放すると、湿気が他の部屋に回ってしまう可能性があるので、その点は注意しましょう。最近では、浴室乾燥機能を搭載するご家庭が多いのですが、この機能があれば、積極的に利用することでカビの発生を防止できます。
対策④ 排水口のゴミは小まめに捨てる
浴室の排水溝には、人の髪の毛などのゴミが残りやすいです。ゴミを残したままにしておくと、石鹸かすなどが付着しやすくなる、水分が残ってしまいやすくなるといったことが要因で、浴室内にカビが発生しやすくなるのです。
したがって、お風呂のカビ防止を考えた時には、排水口のゴミは、毎日小まめに捨てるようにしましょう。排水口は、皮脂汚れや石鹸かす、人の髪の毛などが溜まりやすく、どうしても汚れが残りやすい場所となるのです。そして、そうした汚れは、カビにとっては絶好の栄養源となってしまうため、残せば残すだけカビの発生確率が高くなってしまいます。
浴室全体のお掃除に関しては、仕事や家事に追われてしまうことで、毎日丁寧に行うことはなかなか難しいと思います。しかし、排水口に溜まるゴミに関しては、最後にお風呂に入る人が除去するだけなので、小まめに実行するようにしましょう。
対策⑤ 浴室内はなるべく小物を置かない
お風呂のカビ防止を考えた時には、浴室内に置く小物を可能な限り少なくするということが効果的です。
皆さんも経験したことがあると思うのですが、シャンプーボトルなど、浴室内に置きっぱなしにしている物にカビが付着するということは多いです。これは、浴室内に置きっぱなしにしていると、水分が除去しきれないため、その部分にカビが発生しやすくなるからです。特に、シャンプーボトルや石鹸入れなどに関しては、カビの栄養となる石鹸かすが付着している可能性が高いので、周囲にカビが発生しやすいのです。
そのため、浴室内に置く小物類が少なくなれば、その分、水を拭き取ることも容易になり、カビの発生確率を少なくすることができるという訳です。ただ、毎日シャンプーボトルなどを浴室から出すといった対策にすると、手間が増えてしまう、浴室の外が汚れてしまうといった別の問題が発生します。したがって、シャンプーなどについては、壁掛け対応のディスペンサーを用意して、それに移して利用するなどすれば、カビの発生を防止しやすくなります。どうしてもシャンプーボトルなどは置いておきたいという場合は、毎日側面や底面を洗い流すようにしましょう。
対策⑥ 定期的に防カビ処理を実行する
お風呂のカビ防止としては、「防カビくん煙剤」と呼ばれる市販の防カビ剤も効果的です。浴室内で使用すれば、床面や壁だけでなく、掃除の手が届きにくい天井や換気扇の中なども防カビ効果が行き渡るため、定期的に使用すると良いです。
製品や環境によって変わりますが、「防カビくん煙剤」の効果は約2カ月程度持続すると言われているので、定期的に使用すれば、普段のお手入れが格段に楽になると思います。なお、浴室の防カビ剤には、煙タイプ以外にも、スプレータイプのモノ、防カビ効果や除菌効果を持った洗剤なども販売されるようになっています。したがって、普段のお手入れの中で、こういった防カビ剤を使用しておくというのも良いかもしれませんね。
参照:防カビくん煙剤公式サイト
まとめ
今回は、家の中でも特にカビの発生リスクが高くなるお風呂について、可能な限りカビの繁殖を防ぐためにはどうすれば良いのかについて解説しました。
カビは、高温多湿で栄養源があるだけで爆発的に繁殖します。そのため、エアコンで温度調整がされるようになった昨今の住宅は、季節に関係なくカビが発生してもおかしくないという状況になっているのです。特に、温かいお湯を使用する場所で、皮脂汚れや石鹸かすなど、カビの栄養源が豊富にあるお風呂は、皆さんが考えている以上のカビのリスクが高いのです。
カビの繁殖は、単に見栄えが悪くなるだけでなく、家族の健康被害を引き起こす重大なリスクと考えなければいけません。したがって、記事内でご紹介したように、日々の生活の中で小まめにカビ対策を実行していくことが大切になると考えてください。なお、既にカビの発生に頭を悩ませているという方の場合、一度専門業者にハウスクリーニングを依頼して、綺麗になってからカビ防止対策に力を入れると良いのではないでしょうか。
