近年の新築業界では、女性や高齢者が一人暮らし用に平屋を建てるケースが非常に多くなっています。大阪市内など、都市部の場合は敷地面積の関係でなかなか平屋を選択するのは難しいという事情もありますが、テレワークなどが一般化した現在では、郊外に比較的広い土地を入手し、そこに平屋を建てるという選択がしやすくなっているのです。平屋は、一般的な2階建てや3階建てと比較すると、建築コストを抑えられるうえ、生活空間がコンパクトに収まるため、暮らしやすいというメリットがあるのです。

ただその一方で、「平屋を建てたいと思っているけど、防犯面からやめたほうがいいという話も耳にする…」など、いくつか不安になってしまうような情報も存在します。そこでこの記事では、最近人気となっている平屋戸建てについて、防犯面が弱点になりやすいと言われる理由や、平屋を建てる際に重視したい防犯対策について解説します。

平屋が防犯面から「やめたほうがいい」と言われる理由

冒頭でご紹介したように、平屋は建築コストを抑えられる、コンパクトな生活を実現することができるといったメリットがあり、近年では単身の方以外にもファミリーで住む想定で平屋戸建てを選ぶという人も増えています。

しかし、ネットで平屋について検索してみると、「平屋は防犯が難しい」ことから「やめたほうがいい」という意見を見かける機会が多いです。それでは、なぜ平屋は防犯が難しいとされるのでしょうか?

1階に窓やドアなどの入り口が多いから

平屋の防犯は難しいとされる要因は単純で、空き巣などの侵入犯が利用する出入口が多くなるからです。これは、同じ広さの家を建てる場合、平屋は2階建て住宅と比較すると、侵入しやすい1階部分の床面積が広くなるためです。

空き巣などの侵入犯罪について、どこから家の中に侵入するのかと言う侵入口については、窓が圧倒的に多いとされます。以下のグラフは、警察庁が公表している空き巣などが一戸建て住宅に侵入する際、どこを侵入口にしているのかの割合を示したものです。

画像引用:警察庁住まいる防犯110番より

上のグラフの通り、令和5年に発生した一戸建て住宅を対象とした侵入犯罪では、「窓」を侵入口とした犯行が過半数を超える55.2%だったのです。第2位が「表出入口(玄関)」となっていますが、その割合は約20%と、窓よりもその件数はかなり少なくなります。

平屋戸建ての場合、採光や換気のことを考えると、侵入犯が利用しやすい場所にたくさんの窓が存在することになります。そのため、2階建てや3階建てと比較すると、どうしても侵入犯罪に対する防犯対策が難しいとされているのです。

参照:警察庁住まいる防犯110番より

空き巣などに目を付けられやすい

平屋は、広く開けた場所に建てられることが多いです。同じ延べ床面積の家を建てる場合、2階建てや3階建てと比較すると、平屋の方が広い土地を用意しなければいけません。そして、広い土地を用意して家を建てることになるため、広く開けた見晴らしが良い場所に家を建てることになるケースが多いのです。

そこに住むことだけを考えると、日当たりや通風を確保できるため、とても過ごしやすい住環境を構築できるでしょう。しかし、防犯面から考えると、家族構成やライフスタイルなどを把握されやすいという問題が生じ、空き巣などの侵入犯のターゲットになりやすいと言われているのです。

平屋に必要な防犯対策とは?

それではここからは、平屋を建てて後悔しないため、皆さんがおさえておきたい防犯対策について解説します。先ほどご紹介したように、戸建て住宅を対象とした侵入犯罪は、窓やドアを侵入口としている場合が多いです。逆に考えると、この部分からの侵入を防げるようにすれば、空き巣などの被害に遭う可能性を低くすることができるわけです。

ここでは、平屋を建てる際、重点的に対策を施しておきたい部分について、具体的な防犯対策の種類をご紹介します。

窓の防犯対策

戸建て住宅の防犯対策を考える時には、やはり窓部分の対策を重点的に行っておくべきです。警察庁が公表しているデータでも、戸建てを対象とした侵入犯罪について、その過半数が窓から侵入を許しているのです。

ここでは、窓の防犯対策として効果的な手法をいくつかご紹介します。

窓の数を少なくする、小さくする

先程ご紹介したように、空き巣などの侵入犯罪は、窓を侵入口としているケースが過半数を占めています。つまり、住宅に設ける窓の数が少なくなれば、その分、安全性が高まると言えるのです。

ただ、窓は採光や通風と言った重要な役割も担っている設備なので、一切の窓を無くすという対策は現実的ではありません。したがって、道路から死角になっている位置の窓に関しては、人が通り抜けられないサイズにする、採光を目的とするならハイサイド窓にするといった工夫を取り入れるのがおすすめです。

可能な限り侵入しにくい位置に窓を設置する

平屋は、窓から侵入を試みる際、地に足を着けて作業がしやすく、さらに逃げるときにもさっと逃げられる位置に窓があることも狙われやすい理由と言われています。したがって、窓の防犯対策を検討した時には「侵入しにくい窓にする」と言う対策が効果的なのです。

例えば、高い位置に窓を設置すれば、侵入しようとしたときに周囲から目立ってしまうことになるため、ターゲットになりにくくなります。もちろん、すべての窓を高い位置に設置するわけにはいきませんが、道路などから死角になっている位置の対策としては有効でしょう。

防犯ガラスを採用する

戸建てを対象とする侵入犯罪の手口では、無締り、ガラス破りと言う手法が大半を占めています。無締りに関しては、鍵の閉め忘れのことなので、普段から鍵を閉めるということを習慣づける必要があります。そして、窓破りに関しては、窓ガラスを割って家の中に侵入するという手口となります。

つまり、防犯ガラスを採用し、窓が簡単に割れないようにするという対策は、防犯対策として非常に有効と言えるのです。なお、防犯ガラスにもいくつかの種類があり、製品によって強度がかなり異なります。以前、防犯ガラスの詳細について解説していますので、窓ガラスの対策を検討している方は、以下の記事も参考にしてください。

関連:「防犯ガラスは意味ない?」という情報はホント?窓ガラスを防犯ガラスにするメリットと後悔しない製品選び

窓シャッターを設置する

窓シャッターの設置も平屋の防犯対策として有効です。窓シャッターは、台風など、強風を伴う悪天候時に、飛来物などから窓を守ることができるのがメリットとなります。

ただ、飛来物などを防げるということは、空き巣など、人為的な破壊行為にも耐えられるだけの強度を持つのです。窓から侵入する際、シャッターを壊さなければならない場合、大きな音が生じてしまうことになりますし、犯行の時間が長くなってしまいます。そのため、空き巣犯などは、発見されるリスクを嫌い、こういった住宅をターゲットとしないとされているのです。

なお、窓シャッターの設置は、導入コストやランニングコストがかかるなど、費用負担は大きくなってしまいます。また、開閉の手間や騒音問題のリスクなどにも注意が必要です。

面格子やルーバー窓を採用する

面格子やルーバー窓は、侵入経路を物理的に塞ぐことができるため、高い防犯効果を期待できます。面格子は、窓の外側に格子を設置することで人が通れなくするというものです。ルーバー窓とは、複数の細長いガラス板やアクリル板を並べた窓のことで、人が通れるような隙間が生じないので、高い防犯性を期待できるのです。

道路などから死角になるような位置に人が通れる大きさの窓を設置する場合、物理的に侵入経路を潰すという方法が有効です。ただ、デザイン性が悪くなる、通常の窓よりもコストがかかる点に注意しましょう。

ドア部分の防犯対策

それでは次にドア部分の防犯対策についてもご紹介します。先ほどご紹介したように、一戸建てを対象とした侵入犯罪では「表出入口(玄関)」が侵入口になっていた事例も20%以上あるとされます。したがって、平屋の防犯面を考慮する場合、ドア部分の対策も必要不可欠です。

オートロックを設置する

ドアからの侵入では、窓と異なり扉そのものを破壊して侵入されているというケースは少ないです。表出入口や勝手口などを利用した侵入犯罪は、住人さんの油断などで「無締り」になっていたことが要因で侵入されていた…なんてケースが多いようです。例えば、近くのコンビニに行くだけ、ゴミ出しをするだけなので、鍵を閉めずに外出した…なんて理由があるようです。このほかには、単純に玄関のカギを閉め忘れて出勤してしまった…なんて場合もあるでしょう。

玄関部分を侵入口とする空き巣などを防ぐためには、カードキーや指紋認証などを用いたオートロックシステムを玄関に導入するという方法が有効です。オートロックを導入していれば、鍵の閉め忘れがなくなりますし、鍵穴がないためピッキング被害なども防ぐことができるようになります。
もちろん、玄関にオートロックを設置する場合、通常のドアよりもコストがかかってしまうので、その点は注意しましょう。

ホームセキュリティを導入する

店舗などであれば、警備会社などによるセキュリティシステムを導入する場合が多いです。ただ、セキュリティシステムに関しては、一般住宅を対象とした契約もあり、ホームセキュリティとして普及しています。

ホームセキュリティに加入していれば、外出中に不審者に侵入された…など、何らかの問題が発生した場合、それを検知して素早く警備員が駆け付けてくれるというシステムになっています。侵入犯からすると、自分の犯行がすぐに発覚し、捕まってしまうリスクが高くなるわけですので、こういったお宅はターゲットとしなくなるでしょう。そのため、ホームセキュリティに関しては、玄関などにステッカーを張るだけでも効果が期待できると言われています。

その他、外周部分の防犯対策

平屋に限らず、一戸建て住宅の防犯対策では、外周部分の対策も行っておくのがおすすめです。特に、平屋に関しては侵入しやすい場所に窓があるという特性上、外周部分の対策が重要になります。

防犯カメラの設置

住宅の防犯対策の中でも、特に高い効果が期待できる設備が防犯カメラです。防犯カメラは、「常に監視している」と言う威圧感を不審者に与えることができますし、「犯行が記録として残る」ことから、空き巣犯などからすると捕まるリスクが高くなる設備なのです。

そのため、侵入犯罪に関しては、防犯カメラが設置されているお宅はターゲットになりにくい傾向にあるとされます。防犯カメラシステムは、ダミーカメラなども組み合わせ、監視していることをアピールするように設置すると良いでしょう。なお、センサーライトなども併用することで、防犯効果をより高めることが可能です。

防犯砂利の設置

防犯砂利は、人が歩行する際に大きな音が生じるため、不審者が敷地内に侵入していることを知らせてくれるアイテムとして人気です。砂利の設置後は特にメンテナンスなども必要ありませんし、高い防犯効果が得られるため、コストパフォーマンスが非常に良いアイテムとしておすすめです。

特に、道路などから死角になる部分などに砂利を設置しておけば、夜間の不審者の侵入などに住人さん自身が気付くことができるようになります。また、侵入する際に大きな音が生じてしまうため、犯行そのものを諦めさせるという効果も期待できます。

なお、砂利敷きの地面は、音が生じる、歩きにくくなるといった特性上、住人さんが普段通路として使用する部分への設置はあまりおすすめではありません。

近隣住人とコミュニケーションをとる

住宅の防犯対策については、自分たちだけで行うのではどうしても限界が生じます。上で紹介したような防犯対策をしっかりと行っていたとしても、外出中は侵入に気付くことができないケースが多いですよね。例えば、地面に防犯砂利を敷き、歩行時に大きな音が生じていたとしても、家の中に誰もいない場合、その異変に気付くことはできないのです。

したがって、防犯対策と言うのは、地域コミュニティで協力して行うのが良いとされています。例えば、隣人と密にコミュニケーションをとっている場合、自分が外出している時に、敷地内に不審者が侵入した際には、お隣さんがその異変に気付いてくれる可能性が高くなります。あなたが外出していることを知っていれば「お隣さんの敷地から砂利が擦れる音が聞こえる!」と言った異変に気付いてくれる可能性がありますよね。また、見知らぬ人が敷地内にいれば、声をかけてくれることで未然に犯行を防いでくれる可能性があります。

実は、侵入犯罪については、地域のコミュニケーションがしっかりと行われている場合、その地域全体がターゲットになりにくいという情報を警察庁も発表しています。現在では、隣人同士の関係が気薄になっていると言われますが、万が一の時に助け合うことができるよう、良好な関係作りをしておくことも大切です。

室内に設置できる防犯対策

戸建て住宅の防犯対策としては、主に屋外に設置するアイテムが有名です。ただ、最近では屋内で使用するアイテムにより、人が在宅しているように見せるといった対策グッズも登場しています。

タイマー機能付きの照明

家の中で出来る防犯対策として有名なのが、タイマーで自動的にオン・オフを切り替えることができるようにする照明の設置です。家の中に明かりがついていれば、「誰かが家の中にいる」と認識させることができるので、空き巣対策として効果を発揮してくれます。

なお、照明を点灯するということは余計な電気代が発生してしまいます。そのため、無駄な電気代を削減するため、外から見える窓際や、玄関に近いリビングの照明などをタイマーで点灯するようにすれば良いでしょう。そうすれば、帰宅が遅くなった日でも、照明が自動で点灯してくれるので安全性を高めることができます。

なお、毎日全く同じ時間に点灯・消灯していると、逆に不在が察知されやすいです。したがって、ランダム機能付きのタイマーを設置し、点灯する時間がバラバラになるようにすると良いでしょう。

スマホ連動機能付きのセンサーを設置

最近では、不審な動きや音を感知した際、スマホなどにお知らせしてくれる防犯アイテムが登場しています。遠隔監視が可能な防犯カメラを設置していれば、外出先からも家の中の状況を確認することができるようになるため、万一の時でも警察などに通報することができるようになります。

センサーについては、玄関や窓、勝手口など、侵入口として利用されやすい場所に設置し、そのセンサーとスマホを連携させておけば良いです。注意が必要なのは、通知が多すぎると逆に支障が出てしまうため、通知範囲に関してはしっかりと調整して、必要な情報だけを受け取れるようにしましょう。

まとめ

今回は、平屋の防犯対策について、なぜ平屋の防犯対策が重要とされるのか、また具体的にどのような対策を施せば良いのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、昨今の新築業界では、建築コストを抑えられる、コンパクトで生活しやすい空間になるといったメリットが認められ、平屋を建てたいと相談してくる方が多くなっています。しかし、平屋は、誰でも手が届く位置に多くの窓が設置されることになるため、防犯面は2階建て、3階建てよりも悪くなるとされているのです。実際に、防犯対策のことを無視して平屋を建てた場合、空き巣被害に遭うリスクは高くなってしまうのは事実だと思います。

記事内では、平屋を建てる際に取り入れたい防犯対策をいくつかご紹介しているので、これから新築住宅の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。なお、2階建て住宅や3階建て住宅については、防犯対策が不要と言うわけではないので、どのような住宅でも適切な対策を施すようにしましょう。

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