今回は、住宅の防犯性を高める対策として、非常に有効な設備になると言われている「防犯ガラス」の詳細について解説したいと思います。

憧れのマイホーム建築を検討した時には、家族が快適に生活できる空間を作るため、間取りや住宅設備にこだわる方が多いと思います。ただ、家族が安全に暮らしていくことを考えると、家の防犯性能は決して無視することはできません。そして、家の防犯対策として新築時に行っておくことができる方法が、窓に設置する「窓ガラスを選ぶ」という方法なのです。
どのような住宅でも窓には窓ガラスがはめ込まれていますが、実はこの窓ガラスにはいろいろな種類が存在します。一般的には、一枚物のガラスが採用された単板ガラス(フロートガラス)と呼ばれるタイプが有名ですが、これ以外にも、窓の断熱性を高める物、防音性能を高める物、そして空き巣被害などを防いでくれる防犯性を高める物など、さまざまな種類が存在するのです。そこでこの記事では、一般的な窓と比較して、窓ガラスが割れにくくなるような加工が施された防犯ガラスについて、新築時にこれを選ぶことでどのような効果が得られると期待できるのかを解説していきます。

注文住宅を建てる時には、誰でも家族が安全に生活できるよう、家の防犯性は可能な限り高めたいと考えるものでしょう。そこで、これから新築の購入を検討している方がおさえておきたい防犯ガラスの基礎知識を解説します。

防犯ガラスとは?その効果を解説

それではまず、さまざまな種類がある窓ガラスの中でも、防犯ガラスと呼ばれるタイプがどのような効果を持つものなのかについて簡単に解説します。防犯ガラスは、その名称から分かるように「犯罪を防止する」「犯罪を防ぐ」という意味を持っています。窓に採用するガラスを防犯ガラスにするだけなので、手軽に住宅の防犯性を高めることができる製品として注目されています。

ただ、インターネットで防犯ガラスについて検索してみると「防犯ガラスは意味がない」などと言った情報を見かけることも少なくありません。実際に、良く検索されているキーワードを表示する機能を確認してみると「防犯ガラス 意味ない」と言ったキーワードで検索している人が少なくないようです。それでは、ネット上にある「防犯ガラスは意味がない」という情報は本当なのでしょうか?結論から言ってしまいますが、防犯ガラスは、空き巣などの侵入犯罪を防止するための対策としては、絶大な効果を発揮します。もちろん、防犯ガラスにも、いくつかグレードが存在しており、ガラス部分の強度は製品によって異なります。

ただし、一般住宅の防犯性を考えた場合、通常の単板ガラスを設置するのと比較すると、空き巣などの侵入犯罪を防止する効果は確実に見込むことができます。実際に、日本国内における侵入犯罪の手口や、その対策として有効とされている手法から考えると、防犯ガラスの効果のほどがよくわかると思いますので、以下でご紹介します。

防犯ガラスが家の安全性を高める理由について

それでは、住宅の窓に防犯ガラスを採用することがなぜ家の安全性を高める結果に繋がるのかについて、その根拠となるデータをいくつかご紹介します。皆さんは、住宅への侵入犯罪である空き巣は、どこから家の中に侵入してくることが多いと思いますか?こう聞かれると、「玄関や勝手口じゃないの?」と考える方が多いかもしれませんが、実は空き巣などと呼ばれる侵入犯罪については、その多くが「窓から侵入する」というのが手口となっているのです。以下は、警察庁が公表した令和4年度に起きた侵入犯罪の侵入場所をグラフ化したものです。

引用:住まいる防犯110番より

上のグラフから分かるように、戸建て住宅での侵入犯罪は、窓から侵入されたという被害が最も多く、過半数を占める結果となっています。

引用:住まいる防犯110番より

ちなみに、侵入犯罪の手口については、「無締り」が多いように思えますが、これは玄関や勝手口からの侵入手口も含まれているからです。窓についても当然「無締り」による侵入を受けているでしょうし、窓破りに関しても3000件以上の被害が確認されていますので、「割れにくい窓」にするだけで侵入犯罪の多くを防ぐことができると考えられます。実際に、警察庁が侵入犯罪を防止するための対策として推奨する方法として以下のような対策を紹介しています。

  • 不在にする際には、雨戸等を閉める。
  • 補助錠を取り付ける。
  • 防犯フィルムを貼り付ける。
  • 防犯ガラスや面格子、窓シャッターを取り付ける。

雨戸や窓シャッターがある住宅の場合、外出時は閉めておくのが良いとされます。ただ、これらの設備がない家も多いですし、その場合は防犯ガラスの設置など、窓そのものの強度を高める方法が推奨されています。これらのデータから分かるように、窓ガラスに防犯ガラスを採用するという手段は、空き巣などの侵入犯罪を未然に防ぐことができ、家族の安全を守る結果に繋がると考えられます。

防犯ガラスは「窓破り」に時間がかかる

そもそも防犯ガラスというものは、その他の窓ガラスと比較した時、耐衝撃性を高めて割れにくくしたものを指しています。実際の窓ガラスの強度については、大手警備会社さんが実験した動画があったので、以下の動画を確認してみてください。

上の動画から分かるように、防犯ガラスは力の強い大人の男性が、バールやハンマーでたたいたとしてもそう簡単に割れないような強度を誇っています。そしてこの防犯ガラスの強度は、空き巣などの侵入犯罪を防止するのに非常に役立つとされています。これは、空き巣などの侵入犯罪は、「人に犯行を見つけられないよう、出来るだけ早く、静かに家の中に侵入する」必要があります。つまり、防犯ガラスのような割れにくいガラスは、単純に侵入するための時間がかかりすぎてしまうことになりますし、破壊のために何度もたたく必要があるため、大きな音が生じやすいという問題があるわけです。したがって、通常の窓を設置している住宅と比較すると、防犯ガラスを採用している家の方が、侵入犯罪のターゲットになりにくいという利点があると考えられます。

なお、この考察については、過去に(財)都市防犯研究センターが行った調査でも明らかになっています。実は、過去に空き巣などで逮捕された元泥棒に対して、「空き巣などの犯行を諦める時間」に関して調査したところ、以下のような結果になったそうです。

(財団法人)都市防犯研究センターの資料によると、侵入に手間取り、侵入をあきらめる時間について「2分を超えて5分以内」と答えた元泥棒は約51%となっています。
つまり、泥棒の攻撃に対し建物部品が「5分」耐えることができれば、約7割の泥棒が侵入をあきらめるということなのです。官民合同会議では、この「5分」耐えうることなどを当面の防犯性能の基準としました。
引用:千葉県警公式サイトより

空き巣などの侵入犯罪については、侵入を諦める時間について「2分」と答えた元窃盗犯が約17%で「2分を超えて5分以内」と答えた元窃盗犯が約51%だったそうです。つまり、侵入犯の窓破りなどの攻撃に対して、5分以上持ちこたえられる強度を持っていれば、約7割の侵入窃盗を防ぐことができるということのです。

このデータからも分かるように、通常の窓ガラスと比較して、割れにくくなるような加工がなされ、侵入に時間がかかる、大きな音を伴う防犯ガラスは、家の防犯対策として非常に優秀な設備になると言えます。

防犯ガラスの構造と種類について

それでは、防犯ガラスが通常の単板ガラスと比較して、非常に高い強度を誇るのはなぜなのでしょうか?防犯ガラスは、なんの衝撃も与えずに見た目だけで判断すると、通常の窓ガラスと何が違うのか目視で判断することはできないと思います。しかし実は、防犯ガラスというのは、一般の単板ガラスとは全く異なる構造になっています。

住宅の窓ガラスは、単板ガラスなどと呼ばれるものが最も主流です。このガラスは、一枚のガラス板で出来ていて、強い衝撃を与えると、意外と簡単に割れてしまいます。防犯ガラスは、このガラス板を二枚用意して、ガラスとガラスの中間に合成樹脂の膜(中間膜)を挟み込み、両側から圧着することで1枚の合わせガラスにしたものを指しています。ガラスとガラスの間に中間膜を挟み込むことで、空き巣犯などが外側から強い衝撃を与えて割ろうとしても、ガラスが中間膜に密着して脱落するのを防ぐことができます。さらに、防犯ガラスの中間膜には、高い「耐貫通性」を持った素材が採用されているため、ちょっとやそっとの衝撃では穴をあけることが難しい強度を誇っているのです。防犯ガラスは、こういった構造になっていることで、侵入犯罪者が窓を割って住宅の中に入るのを防いでくれます。

なお、一口に防犯ガラスと言っても、いくつかの種類が存在しています。防犯ガラスは、中間膜に採用する素材や厚みが異なることで、窓ガラスとしての強度が大きく変わります。以下で、防犯ガラスの種類についても簡単に解説します。

防犯ガラスの種類による強度

防犯ガラスは、通常の窓ガラスと比較すると、非常に高い強度を誇っています。ただ、「絶対に割れない」ガラスではなく、あくまでも「割れにくい強度を持つガラス」と言った製品ですので、設置した防犯ガラスの耐衝撃性を超える攻撃を受けた場合、普通に貫通するようなダメージを受けてしまいます。したがって、自宅の防犯性を高めるため防犯ガラスの設置を検討している場合、「どこまでの攻撃に備えるのか?」をよく考え、必要な強度を持つガラスを選ばなければいけないです。

なお、防犯ガラスの強度については、ガラスとガラスの間に挟まれる中間膜の素材や厚みによって変わります。当然、中間膜の厚みを増すことで、窓ガラスとしての強度が高くなります。また、耐衝撃性が高い素材の中間膜を利用しているほど、攻撃に耐えられるようになります。以下に、住宅用の防犯ガラスとして販売されている製品について、中間膜の厚みに対する強度をまとめてみたいと思います。

  • 中間膜の厚さが「30mil(0.76mm)」:そこまで高い強度はない
    住宅用防犯ガラスとしては最も強度が低いです。ドライバーなどを使用したこじ破り対策には有効ですが、バールやハンマーなどを利用した打ち破りにはあまり効果がないとされます
  • 中間膜の厚さが「60mil(1.52mm)」:十分な強度を持っている
    住宅用防犯ガラスとして十分な強度を持つグレードで、新築業界などでも主流のグレードとなります。こじ破り対策はもちろん、打ち破りにもある程度耐えることができます
  • 中間膜の厚さが「90mil(2.28mm)」:非常に高い強度を持っている
    非常に高い強度を誇り、打ち破り対策にも効果的です。ただ、窓ガラスとしては、少し厚みがありすぎるため、一般住宅の既存サッシには入らないこともあり、設置されることは少ないです

このように、防犯ガラスは中間膜の厚さによって「どのような侵入手口に対応できるのか?」が変わります。現在の住宅業界では、打ち破りにも一定の効果を持つ「60mil(1.52mm)」の中間膜を採用した防犯ガラスが主流となっています。ちなみに、一般的な防犯ガラスは、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が中間膜として使用されています。ただ、PVBよりも高い耐貫通性を持つポリカーボネート(PC)樹脂を採用した防犯ガラスも登場しており、こちらであれば中間膜が薄くなっても高い強度を保つことが可能です。もちろん、PC樹脂を使用した防犯ガラスの方が製品価格が高くなりますので、「どこまでの防犯性能を求めているのか?」をよく考えて決めましょう。

参照:日本板硝子株式会社資料を参照

防犯ガラスと間違われやすい製品について

冒頭でも少し触れていますが、住宅の窓に採用される窓ガラスには、さまざまな種類のものが開発されるようになっています。この記事でご紹介した防犯ガラスは、空き巣などの侵入犯罪を未然に防ぐため、窓部分の強度を高める目的で開発されています。

ただ、快適な住空間を作るためには、このほかにもさまざまな機能性が求められ、窓にはさまざまな機能性を持つ製品が開発されるようになっているのです。例えば、住宅内への音の侵入は、窓が大きな要因となると言われることから、その弱点を解消するための防音ガラスがあったり、窓の断熱性を高めるための断熱ガラスなどが有名です。

家の建築を考えている人からすると、窓ガラスをきちんと選ぶことでほしい機能性を実現できるのは非常にありがたいものだと思います。しかし実は、窓ガラスの選択肢が増えすぎたのか、それぞれの製品が持つ機能性について、勘違いしてしまっているケースも多く見受けられるようになっているのです。そこでここでは、防犯ガラスと間違えられやすい機能性窓ガラスについて、それぞれの特徴と防犯ガラスとの違いを解説します。

合わせガラス

一つ目は「合わせガラス」と呼ばれるタイプの窓ガラスです。上述したように、防犯ガラスは、2枚の単板ガラスを用意して、その中間に耐貫通性を持つ樹脂素材を挟み込むことで、こじ破りや打ち破りに耐えられるような強度のガラスを作っています。つまり、防犯ガラスは、この合わせガラスの一種となります。
しかし勘違いしてはいけないのは、「合わせガラス」と呼ばれる場合、それが防犯ガラスと断定することはできない点です。どういうことかというと、2枚のガラスを用意して、それを合わせて一枚のガラスにするものは総じて合わせガラスな訳ですので、中間に耐貫通性があるものが挟まれていないケースもあるのです。例えば、遮光性を高める素材が挟まれているガラスは、防犯ガラスほどの高い強度は持っていません。

防犯ガラスも、合わせガラスの一種ではありますが、家の防犯性を高めるために窓ガラスを交換したいと考えているのなら、きちんと防犯ガラスと呼ばれている物から選びましょう。

※合わせガラスには、「合わせ複層ガラス」と呼ばれるものもあります。これは、複層ガラスを片側1枚、もしくは2枚とも利用した合わせガラスのことで、中間に強度の高い素材が採用されていれば、防犯ガラスとなります。

強化ガラス

防犯ガラスと同じような強度を持っていると考えられがちなのが「強化ガラス」です。名称だけを聞くと、非常に高い強度を誇っており、窓部分の防犯性を高めてくれると想像しますよね。しかし、このタイプは高い防犯性を持っていそうな名称なのに、防犯効果は低いです。というのも、強化ガラスは、「防犯」を目的として開発された製品ではなく、火災などの災害時の安全性を高めるのが目的です。

強化ガラスは、一般的な単板ガラスを加熱処理して強化したものを指しています。そしてこのタイプは、割れた際に粉々になるという特性があり、災害で窓が割れても、住人が割れたガラスで怪我をしにくくなるのがメリットなのです。ガラスの強度としては、一般的な単板ガラスよりも高いとされていますが、打ち破りやこじ破りに耐えられるほどの強度は持っていませんし、防犯目的ならオススメできません。

網入りガラス

網入りガラスもよく見かける窓ガラスのタイプで、通常よりも高い強度を持っていそうに思えます。しかし、このガラスも防犯目的で開発されたのではなく、防火目的の窓ガラスとなります。つまり、網入りガラスは、高い防犯効果は持っていません。

網入りガラスは、住宅火災などが発生した際、ガラス内にワイヤーが仕込まれていることで、熱などによって割れるのを防ぐのが目的です。一般的な単板ガラスよりは強度が高いかもしれませんが、防犯ガラスの強度と比較すると、その強度はあってないようなものです。

ペアガラス(複層ガラス)

最後はペアガラスや複層ガラスと呼ばれるタイプです。このタイプの窓ガラスは、防犯ガラスと同じく、2枚のガラスで構成されることになるため、高い防犯性を期待する方がいます。しかし、ペアガラスは、防犯効果など持っていません。

というのも、ペアガラスは、2枚のガラスの間に空気があるだけ、衝撃に耐えられるような強い素材が挟み込まれているわけではないのです。このタイプのガラスは、2枚のガラスの間に空気層を作ることで、断熱性や防音性を期待するなど、住宅の快適性を高めるのが目的となります。したがって、侵入犯がバールなどで窓ガラスを攻撃したとすれば、意外に簡単に割れてしまうことでしょう。

このように、住宅の窓ガラスにはさまざまな種類があり、何を採用するのかによって得られる効果がかなり変わります。もしあなたが、一緒に住む家族の安全を守るため、窓の防犯性を高めたいと考えているなら、きちんと「防犯ガラスを設置したい」とガラスの種類を指定しなければいけませんよ。

防犯ガラスを選ぶときの確認ポイント

それでは最後に、自宅の窓に防犯ガラスを設置しようと考えている方に向け、実際に製品を選ぶときに確認しておきたいポイントについて解説します。上述しているように、一口に防犯ガラスと言っても、購入する製品によって強度や価格が異なります。そして、家の窓についても、防犯性を高めなければならない場所とそうでない場所というものがありますので、「どこを防犯ガラスにするのか?」なども検討しないといけないのです。

もちろん、家の防犯性のことだけを考えれば、全ての窓を防犯ガラスにするのが良いのでしょうが、そこまでするとコストがかかりすぎてしまう可能性が高いです。ここでは、防犯ガラスを導入する際に確認したいポイントをいくつかご紹介しますので参考にしてください。

防犯対策が必要な場所を選ぶ

当然のことですが、防犯ガラスは一般的な単板ガラスよりも高額です。つまり、全ての窓を防犯ガラスにするとなると、多額のコストがかかってしまうことになるのです。

この部分の対策としては、「防犯性を高めなければならない場所はどこか?」をきちんと検討し、必要に応じて防犯対策を施すようにすれば良いです。例えば、空き巣などの侵入犯罪は、家に接する道路などから目につきにくい窓が狙われやすいです。窓破りを行っている姿を通行人に見られると、すぐに通報されてしまいますので、身を隠しながら犯行を行えるような窓がターゲットとなるのです。

こういったことから、家の窓について侵入されやすい場所、危険だと考えられる場所を特定したうえで、その部分の窓を防犯ガラスに交換するとすれば、防犯対策にかかるコストを削減することができます。危険度がそこまで高くないと考えられる場所は、ホームセンターなどで購入できる防犯フィルムで対策するといった対処も可能です。

防犯ガラスの強度について

次は、防犯ガラスの強度をしっかりと確認するというポイントです。防犯ガラスは、窓破りなどの手口による侵入犯罪を防ぐのが目的となるはずです。したがって、防犯ガラスを設置するからには、そういった攻撃を防げなければ意味がないのです。

防犯ガラスの強度は、中間膜の厚みや素材によって変わると解説しましたね。そして、防犯ガラスの強度が高くなるに比例して、窓ガラスの価格は高くなっていきます。したがって、防犯ガラスを設置する場所に加えて、どの程度の攻撃に耐えられる強度を選ぶのかも確認しなければならないのです。一般的に、「60mil(1.52mm)」の中間膜を挟んだ防犯ガラスが選ばれるケースが多いのですが、これはこのタイプであれば小型のバールやハンマーの攻撃に耐えられるとされるからです。これ以下になると、こじ破り対策にはなるものの、打ち破りには耐えられないため、住宅の防犯対策として不十分になってしまうのです。

上述したように、侵入犯罪は2~5分間、窓が破られなければ多くの侵入を防ぐことができると言われているのすが、逆に考えると、ある程度の時間は打ち破りに耐えられるだけの強度が求められます。このことから、最低でも「60mil(1.52mm)」の中間膜を挟んだレベルの強度は必要となるでしょう。

「防犯」以外の機能性にも注目する

防犯ガラスは、「防犯性を高める」という一点に特化した窓ガラスが多いのも事実です。しかし、住宅の窓については、その他の機能性も高めたい部分が多いと思います。例えば、外部騒音の侵入は窓の防音性の低さが要因となる場合が多いと言われているため、窓の防音対策も検討しているという方は多いと思います。それでは、防犯ガラスは、その他の機能性を同時に叶えることは可能なのでしょうか?実は、購入する製品の種類をきちんと考えることで、防犯以外の機能性を付加することが可能です。

  • UVカット機能を持つ防犯ガラスがある
    防犯ガラスの中間膜は、ポリカーボネート(PC)樹脂が採用されているものが多いです。ただ、中にはポリビニルブチラール(PVB)樹脂が中間膜として採用されている防犯ガラスがあり、このタイプだと、UVカット率99.9%と防犯効果以外にもUVカット機能まで窓に付加することができるようになるのです。
  • 窓の防音性を高めたい場合
    防犯ガラスは、ガラスが2枚使われているうえ、ガラスとは素材が異なる中間膜が挟み込まれていることから、一般的な単板ガラスよりも防音性は高いと言われています。ただ、本格的な防音対策を施した窓よりも高い防音性を期待することは難しいです。なお、防犯ガラスの種類や設置方法を工夫することで、防犯と防音両方を実現することは可能です。例えば、防犯ガラスの中でも合わせ複層ガラスを採用すれば、ガラスの中に空気層ができるので防音性や断熱性を一緒に高めることが可能です。さらに、より高い効果を期待する場合、二重窓にして、どちらか一方を防犯ガラスにするという方法もあります。

このように、防犯ガラスは、防犯以外の効果を同時に実現することも可能です。

『CPマーク』について

防犯ガラス選びを進める際には、『CPマーク』の有無を確認しましょう。『CPマーク』とは、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」で認められた商品に与えられるものです。

つまり、『CPマーク』認定商品については、厳しい基準をクリアした製品であるという判断ができるため、防犯性能については信頼できる製品な訳です。防犯ガラスは、侵入犯の攻撃に耐えられるだけの耐久性を保持していなければ何の意味もありません。したがって、自宅の防犯性を高める目的で防犯ガラスを探す時には、価格が多少割高であっても、『CPマーク』があるものから探すのがおすすめです。

ちなみに、板硝子協会では、侵入犯罪の手口である「こじ破り」「打ち破り」に対する強度を表すランクを独自で制定しています。こじ破りについては「P1K〜P3K」、打ち破りが「P1A〜P5A」というランク表記になっていて、数字が大きくなるほど強度が高くなっていきます。なお、板硝子協会が防犯ガラスと認めるのは、「P2K」「P2A」以上の性能が必要としています。

> ガラスの防犯性能に関する板硝子協会基準

まとめ

今回は、住宅の防犯性を高めてくれる防犯ガラスの基礎知識について解説しました。防犯ガラスは、簡単に言うと、強い衝撃を与えても割れないような強度を誇るガラスのことを指しています。一般的なガラスは、窓部分からの採光を目的に取り付けられるのですが、強い衝撃を与えられると簡単に割れてしまうことから、空き巣など侵入犯罪に利用されることが多いです。実際に、令和4年に確認された戸建住宅での侵入窃盗は、窓から家の中に侵入されたという被害が6400件以上と過半数を占めています。

このようなデータを鑑みると、窓部分の防犯性を高めてあげることができれば、空き巣などの侵入犯罪の被害に遭う確率を大幅に低くすることが可能です。防犯ガラスは、力の強い大人の男性がバールなどを使って思い切り叩いたとしても割れないような強度を誇ります。侵入犯の多くは、侵入に5分以上の時間がかかると、その家は諦めるというデータもありますので、窓の防犯性を高めることは非常に有効に働くはずです。

家の防犯対策では、防犯カメラの設置が注目されていますが、実際の侵入経路に防犯対策を施せば、より安全な生活環境を作れるのではないでしょうか!

関連:一戸建てに防犯カメラが必要な理由。家族の安全を守るため、防犯カメラを設置すべき場所もご紹介します

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