
マイホームの維持管理を考えた時には「シーリング(コーキング)」の補修が必要という話を耳にすると思います。シーリングやコーキングとは、外壁材の目地を埋める材料のことを指していて、主に防水性や気密性を高める役割で施工されています。また、地震などの揺れによる衝撃を吸収し、外壁材が損傷してしまうのを防ぐための緩衝材としても役立っています。
住宅の外壁にも、さまざまな材料が採用されているのですが、サイディングやALCといった外壁材を使用する場合、外壁材同士のつなぎ目にどうしても隙間が生じてしまいます。この隙間を放置してしまうと、そこから雨水の侵入を許してしまうことになり、大切な家が早期劣化してしまうという大問題に発展するのです。シーリングは、そうのような問題を防ぐため、接着剤のような材料を充填することで、隙間を埋め、防水性を持たせるという非常に大切な材料となります。
ただ、このシーリングは、新築時に施工すれば一生涯防水性を保ってくれるわけではありません。外壁は常に紫外線や風雨の影響を受け続けるなど、住宅の中でも最も過酷といえる場所となるため、そこに施工されるシーリングも定期的なメンテナンスが必要です。一般的に、築7~10年程度でひび割れや縮みといった劣化症状が目に見えてくるので、外壁内部に水の侵入を許さないためにも、早めに補修などのリフォームをしてあげる必要があります。
そこでこの記事では、大切なマイホームを長持ちさせるために重要なリフォーム工事となる「シーリング(コーキング)補修」について、その基礎知識をご紹介します。
外壁のシーリング(コーキング)について
それではまず、外壁のシーリングがどういったものなのかについて簡単にご紹介します。昨今の新築業界では、外壁にサイディングや、ALCパネル・タイルといった外壁材が採用されることが多いです。この外壁材は、耐久性や施工性が高いというメリットがあるのですが、外壁材を貼る際には、材料と材料の間に隙間が生じます。シーリングもしくはコーキングと呼ばれる材料は、その隙間を埋めるため、目地に充填されるものを指しています。
なお、住宅関連における「シーリング(コーキング)」は、外壁材そのものにひび割れなどが生じた際、それを補修するための作業も「シーリング工事(コーキング工事)」と言われています。
シーリングとコーキングの違い
住宅の目地に施工する防水処理については「シーリング」と呼ばれるケースと「コーキング」と呼ばれるケースがあります。そのため、一般の方からすると、シーリングとコーキングの意味合いが曖昧で、「何か違いがあるのだろうか?」と疑問に感じてしまうこともあるはずです。
シーリングとコーキングの違いについては、基本的に業者によって呼び方が異なるだけと考えても良いです。言葉の意味だけで判断すると、以下のような違いは存在ます。
- シーリング(Sealing)・・・「密封する」「封印する」
- コーキング(Caulking)・・・隙間を埋めるための目地材を充填する
上記のように、言葉の意味だけで考えると、少し違いがあるように思えます。そのため、業者の中には、単純に目地に詰め物をすることを「コーキング」、防水などを目的に詰め物をする作業を「シーリング」と捉えている場合もあるようです。
ただ、外壁の防水リフォームを検討して業者に相談する際は、シーリングとコーキングどちらの言葉でも伝わるので、特に言葉の意味や違いなどを気にしなくても良いです。
外壁のシーリング補修の詳細について
シーリングやコーキングの意味が理解できたところで、実際にマイホームの外壁でシーリングの劣化が見られた時の補修工事について解説していきます。先ほど紹介したように、外壁のシーリングは、外壁材と外壁材の間に生じる隙間を埋め、雨水などが入って来ないようにするために施工されています。逆に言うと、経年劣化などでシーリングが破損している場合、外壁部分から雨水が侵入するという雨漏りに発展してしまうのです。外壁部分での雨漏りは、内部の木材の腐食などを引き起こし、家そのものの寿命を縮めてしまうリスクがあるため、定期的にシーリングの補修工事を行わなければならないのです。
なお、一口にシーリング補修といっても、その方法は以下の二つの手法があります。
- 打ち替え(打ち直し)・・・既存のシーリングを撤去して、新たにシーリングを打つ
- 増し打ち(打ち増し)・・・既存のシーリングの上から新たなシーリングを重ねて打つ
シーリングは、紫外線などの影響により、徐々に痩せていきます。そのため、新築時には外壁面と同レベルの位置にあったシーリングの表面が、徐々に奥に凹んでしまうという劣化症状が出る場合があるのです。このような時には、既存シーリングは残したまま、上からシーリングを打っていくという増し打ちという補修方法が採用されるケースもあります。ただ、シーリングの補修に関しては、原則として「打ち替え」が推奨されるという点は頭に入れておきましょう。
施工にかかる費用相場は、以下で詳しく解説しますが、既存シーリングの撤去がない分、増し打ちの方が安くおさまるのですが、増し打ちによる補修はいくつかのデメリットが存在するのです。
「打ち替え(打ち直し)」によるシーリング補修の費用相場
シーリング工事は、一般的に「m単位」で計算されることが多く、施工する合計数が長いほど費用が高くなります。打ち替えによるシーリング補修にかかる費用は、以下のような感じになります。
- 既存コーキング撤去費:約1〜3万円
- シーリング工事:900〜1,200円/m
- 足場の設置:15〜20万円
打ち替えによるシーリング補修は、既存のシーリングを撤去するところから工事が始まります。なお、高所での作業が必要になる場合は、足場を組み立てなければならないため、別途足場代がかかります。住宅リフォームにおいて、足場が必要になる工事は、他にも外壁塗装や屋根塗装があるのですが、これらの工事をまとめて行えば、足場費用を節約することができるため、塗装リフォームとシーリングの補修をまとめて行うお宅が多いです。
シーリング工事にかかる費用をもう少しわかりやすくするため、具体例を出して計算してみます。例えば、一般的な2階建ての住宅にて、打ち替えによるシーリング補修をするケースをご紹介します。この場合、シーリングを施工する長さは180m程度になると思います。したがって、この時にかかる工事費用は以下の通りとなります。
シーリングうち替え工事費用:(900円×180m=) 16万2千円 〜 (1,200円×180m=) 21万6千円
上記の費用に、既存シーリングの撤去費用として1~3万円、足場の組立て費用15~20万円がプラスされるため、合計で40万円前後を想定しておけば良いでしょう。
「増し打ち(打ち増し)」によるシーリング補修の費用相場
次は増し打ちによるシーリング補修工事の費用についてです。増し打ちの場合の費用相場は以下の通りです。
- シーリング工事:500〜900円/m
- 足場の設置:15〜20万円
増し打ちの場合、既存のシーリング材が残っている状態で、不足分を充填していくという形になります。そのため、必要になるシーリング材の量が少なくなる分、価格が安く抑えられるわけです。増し打ちの場合、一般的な2階建て住宅でいくらぐらいになるのか計算してみましょう。
シーリング増し打ち工事費用:(500円×180m=) 9万円 〜 (900円×180m=) 16万2千円
ここに足場の組立て費用が加算されるので、増し打ちの場合は、30万円前後でシーリング補修工事ができます。
「打ち替え(打ち直し)」と「増し打ち(打ち増し)」の違い
シーリングの補修を考えた時には、上記の二つの手法が考えられます。工事にかかる費用だけで考えると、増し打ちを選びたいと考える方が多いかもしれませんね。しかし、マイホームを長持ちさせたいと考えるのであれば、多少費用がかかったとしても、打ち替えによるシーリング補修を選ぶのがおすすめです。
シーリング補修における打ち替えと増し打ちは、以下のような違いが存在します。
- 打ち替え工事
打ち替えによるシーリング補修は、古くなったコーキング材をすべて撤去し、目地を完全に新しくすることができます。先ほど紹介したように、費用は掛かってしまうのですが、外壁の目地の隙間を完全に埋めることができるため、シーリングによる防水性や柔軟性が完全に復活するのです。したがって、うち替えを選んだ場合、その後の耐用年数が7~10年程度と新築時の状態にまで戻すことが可能です。 - 増し打ち工事
増し打ちは、先ほど紹介したように、既存のシーリング材はそのままに、上から新しい物を継ぎ足しする形になります。表面上は綺麗に仕上がりますが、既存のシーリング材については、強度などが修復されるわけではないのです。増し打ちの場合、目に見えない部分で古いシーリング材がさらに劣化し、新たなシーリング材を引っ張って隙間が生じてしまうことも考えられます。また、新しいシーリング材と古いシーリング材が馴染むわけではないので、増し打ちしたとしても、徐々に剥がれて行ってしまうという問題があります。そのため、増し打ちによるコーキング補修は、耐用年数が2~5年程度とかなり短くなってしまうのです。1度の施工費は安くなるものの、すぐに劣化が生じ、打ち直しが必要になる…など、中長期的な視点で考えた場合は、余計にコストがかかってしまうと考えられるでしょう。
増し打ちによるシーリング補修は、根本的な補修工事にはなり得ないため、建物の耐久性を高めることはほぼできません。一見、安価にシーリング補修ができるように見えますが、家のメンテナンススパンが早くなってしまうため、塗装工事などのタイミングとズレてしまい、余計な足場代などがかかることになり、家の維持コスト全体で考えると、逆に高くなる…なんてことも考えられます。
したがって、シーリングの補修に関しては、特別な理由でもない限りは打ち替えがおすすめです。
シーリング補修はどんな時に必要?
それでは次に、シーリング補修はどのような時に必要になるのかについてもご紹介していきます。冒頭でご紹介したように、外壁に施されるシーリングは、外壁材の目地に生じる隙間を埋め、雨水などが侵入しないようにするという防水処理という面が大きいです。ただ、シーリングの役割はそれだけでなく、外壁材のズレを吸収して外壁材が破損するのを防ぐという役割も担っているのです。
住宅に採用される外壁材は、日射や風雨、地震などによって、微妙に収縮したり、ズレたりすることがあります。シーリングは、このズレを吸収するため、伸縮性のある素材となっていて、常に家を守るための緩衝材として働いてくれているのです。施工したてのシーリング材に触ったことがある人は分かると思うのですが、シーリングは指で押すとしっかりと弾力を感じるゴムのような素材となっています。しかし、紫外線などの影響により、徐々に硬化していき、ひび割れや痩せ、脱落といった劣化症状が出始めるのです。
マイホームに以下のような症状出ている場合は、シーリングの補修工事が必要と考えましょう。
ひび割れや破断が確認できる
シーリングにひび割れが生じている場合、紫外線などの影響により、素材そのものの柔軟性が失われ始めた証拠です。即座に雨漏りなどの問題に発展するわけではないのですが、数年以内にシーリングが寿命を迎え、ひび割れ以上の症状が出てしまうと考えた方が良いです。
なお、シーリングのひび割れを放置していると、シーリング材がさらに硬化していき、大きな亀裂に発展します。そしてさらに、シーリング材が真ん中から切れてしまう「破断」と呼ばれる状態になってしまいます。シーリングに大きな亀裂(破断)がある状況なら、既に内部にまで水が侵入している可能性があります。したがって、ここまで劣化が進んでいる場合は、早急に補修しなければならないと考えましょう。可能であれば、ひび割れの段階で補修に入るのがおすすめです。
肉やせ、剝れ
シーリング材は、経年劣化が進むと、硬化して細くなるという「肉やせ」という現象が起きます。そして、肉やせが進行すると、外壁材から剥がれてしまい、目地部分に隙間が生じてしまうのです。
最終的には、コーキング材が目地から抜けて脱落してしまう…といった状況にまでなり、このような状況に陥ると、防水効果は完全に失われてしまうので、外壁からの雨漏りを防ぐことができなくなります。基本的には、剥離が起きないうちに補修工事を行いましょう。
10年周期でのシーリングうち替えがおすすめ
シーリングの補修工事については、「劣化症状を見つけてから工事する」という対処ではなく、劣化状況に関係なく決まった周期で補修工事を行うという体制を作るのがおすすめです。
ひび割れを見つけたら補修するというタイミングに決めると、3~5年程度で補修しなければならない…なんてことになるケースもあります。というのも、シーリングの劣化スピードは、「家のどの部分なのか?」によっても変わってしまうからです。例えば、日当たりが良い南側の外壁に関しては、紫外線の影響を受けやすいため、5年前後でひび割れなどの症状が出てしまうことがあります。このタイミングで工事を行うと、北側の外壁は何の劣化症状もないのに、シーリングの補修工事を行う…なんて状況になってしまいます。
シーリングは、一般的に7~10年程度が耐用年数と言われています。もちろん、家の立地条件などによって多少前後しますが、10年程度経過すれば、防水効果はかなり薄れてしまっていると考えられるのです。木造がほとんどの日本の住宅は、水の侵入はできるだけ避けたい現象であることから、安全を考えると10年程度に1度の頻度で補修工事を入れるのが良いでしょう。
シーリング補修のポイント
それでは最後に、シーリング補修工事に関わるポイントをいくつかご紹介していきたいと思います。日本の住宅は、窯業サイディングやALCパネルと呼ばれる外壁材が主流となっているのですが、自宅の外壁材がこれらの場合は、いずれシーリングの補修工事が必要になると考えなければいけません。ちなみに、塗り壁の場合でも、窓枠やドア枠にシーリングが施されているはずなので、どのような住宅でも定期的なシーリング補修が必要といえるでしょう。
ただ、シーリング補修を行う際には、いくつか注意しておきたいポイントがあるので、ここで代表的なものをご紹介します。
塗装工事と併せて行うのがおすすめ
上でも少し触れていますが、住宅のメンテナンス工事の中でも、足場の組立てが必要になる工事がいくつかあります。シーリング工事以外で言えば、屋根塗装や屋根の葺き替え工事、カバー工事、外壁の塗装工事などを行う場合、足場が必要になります。
例えば、シーリングの補修工事と屋根塗装、外壁塗装工事を別々に行うと考えてみましょう。この場合、工事を行う度に足場を組み立ててもらわなければならないため、最大で60万円程度も足場代として費用が発生します。しかし、シーリング工事と塗装工事を併せて行うようにすれば、足場の組立ては1度で済むようになるので、2回分の足場代が節約できるわけです。
もちろん、複数のリフォーム工事を同時に行う場合には、費用負担がどうしても大きくなってしまいます。しかし、中長期的な計画を立て、家のメンテナンスのための費用をあらかじめ積み立てておけば、かなりの費用を節約することができるようになるので、新築時点で将来的なメンテナンスのことを考えておくのがおすすめです。例えば、家を建てる際、各種リフォーム工事のタイミングを併せられるよう、採用する塗料やシーリング材の種類を工夫してもらうなど、工務店側にも協力してもらい、完成後30年先までのメンテナンス工程を先にたてておくといった対策がおすすめです。
DIYによるシーリング補修はおすすめできない
昨今では、シーリング工事に用いるシーリング材をホームセンターなどで手に入れることができます。ホームセンターには、シーリング材だけでなく、専用のシーリングガンも販売されているので、手先が器用な方の場合、自分で外壁のシーリング補修をすれば安くつくのではないかと考えるようです。
DIYによるシーリング補修に関しては、不可能とは言いませんが、基本的にはおすすめできないというのがプロの意見です。
なぜなら、シーリング補修は、足場が必要になるほど高所での作業も多い工事です。DIYによる作業の場合、はしごなどを使って高所のシーリング充填を行うことになるのですが、誤って転落し大怪我をした…なんて事例も少なくないのです。また、素人工事の場合、最後に剥がすはずのテープが剥がれない…なんて失敗れもあり、良かれと思って行った補修工事が家の外観を壊してしまう…なんてことになるケースもあるのです。
また、シーリング工事は、外壁からの雨漏りを防ぐための防水工事です。つまり、詳しい知識や技術を持たない方が施工を行い、施工不良の状態に陥ってしまうと、防水性が不十分で雨漏りに発展する…なんて最悪の事態も考えられるのです。雨漏りは、家そのものの価値や寿命を大幅に縮めてしまうものなので、大切な家を守ることを考えると、高い技術力を持つ専門家に施工を依頼したほうが安心です。
雨天でもシーリング補修工事はできるの?
シーリング補修工事については、工事中や工事直後に雨が降っても大丈夫なのかな…と不安に感じる方が多いようです。この点については、工事がすべて完了し、充填したシーリング材が乾燥した後であれば、水をはじくので何の問題もありません。
しかしその一方、雨が降る中でシーリング工事を行うことはできません。専門業者に依頼して工事を行う場合、施工途中で雨が降る確率が高い、もしくは施工する前から雨が降っているなんてケースでは、その日の作業は中止になり、その分工期が伸びることになります。つまり、雨の降る中での施工は行わないようになっているのです。DIYで作業を行う場合、多少の雨であれば大丈夫か…なんて判断をしそうですが、仕上がりに問題が生じるので絶対にやめましょう。
なお、シーリングの乾燥時間については、最低でも2、3日はかかると考えましょう。施工範囲や気温、湿度なども乾燥時間に関係するため、寒い時期などになると5日〜1週間ほど乾燥させた方が良いケースもあります。例えば、塗装工事とシーリング補修を同時に行う場合、シーリングをしっかりと乾燥させてから塗装の工程に入らないと、劣化しやすくなるので注意が必要です。万一、リフォーム業者がシーリングの乾燥時間を極端に短縮していると感じた時には、本当にそれで大丈夫なのか確認したほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、どのような住宅でもいずれ必要になるシーリング補修工事について解説しました。サイディングやALCパネルを外壁材として採用している場合、材料と材料の間に生じる隙間を埋めるため、シーリングが施工されています。これは、外壁材同士がぶつかることで破損することを防ぐという役割もあるのですが、主に外壁からの雨水の侵入を防止するという防水対策として施工されています。したがって、防水処理として施工されているシーリングが経年劣化すると、雨水の侵入を防止することができなくなり、外壁からの雨漏りに発展してしまうのです。
ちなみに、サイディングやALCを採用していない場合でも、窓枠やドア枠、屋根など、さまざまな場所にシーリングによる防水処理が施されています。つまり、どのような住宅でもいずれシーリング補修が必要になるので、この記事の内容は頭に入れておきましょう。