今回は、日常生活の中で今一度皆さんに確認しておいてほしい地震に備えてできることについて解説します。
令和6年8月8日に発生した宮崎県の地震は、震源地が日向灘周辺とされており、この地震により南海トラフ地震臨時情報と言うものが発令されています。専門家によると、8月8日に発生した地震により、南海トラフ地震などの巨大地震の兆候が強まっているわけではないとされているものの、非常に近い位置で大きな地震が発生したことから、普段よりも巨大地震発生の確率が高まっているのではないかと言われています。
そのため、スーパーやホームセンターなどでは、ペットボトル水や長期保存可能な保存食を買い求める方が殺到し、一部の災害対策アイテムが多くの店舗で売り切れ状態になるという事態に発展しています。特に、今回の南海トラフ地震の発生注意報については、ちょうどお盆の長期休暇直前に発令されたこともあり、帰省や旅行の予定が崩れてしまった…という方も多いようです。
なお、最初に言っておきますが、宮崎県で起きた地震によりパニック的に災害対策アイテムの購入に走る方が多くなっていると言われていますが、南海トラフ地震の発生確率が極端に高くなったわけではないとされています。あくまでも、普段よりも注意しなければならない程度で、確実に巨大地震が発生するわけではないため、落ち着いた行動を心がけるようにしましょう。ただ、日本は、諸外国と比較しても巨大地震の発生件数が多いことは間違いないため、普段から地震への備えを行っておくことは大切です。そこでこの記事は、国や自治体が公開している「普段からできる災害対策」について今一度まとめてみたいと思います。
地震の備えとしてやっておきたいこと
それでは、日常生活の中で皆さんが行っておきたい地震の備えについて解説します。地震は、現在の技術をもってしても「いつ・どこで」発生するのかを完全に予測することはできないとされています。台風や豪雨による水害の場合、天気予報などであらかじめ進路予測が可能なため、直前に水を貯めておく、窓ガラスを補強するといった対策が可能です。
しかし地震の場合は、いつ自分が住むエリアで発生するのかが全く分からないため、普段から地震への備えを万全にしておくことが大切なのです。ここでは、国や自治体が公表している災害対策についてまとめてみます。
家具類の転倒・落下・移動防止対策を行う
大きな地震による被害では、住宅が倒壊してそれに巻き込まれて死傷者が出る…というイメージが強いかもしれません。しかし、日本の住宅は、建築基準法により最低限確保しなければならない耐震強度が定められていて、震度7程度の地震でも全壊しないことを想定に作られているのです。したがって、新耐震基準を基に建てられた住宅の場合、一度の地震で家が全壊し、それに巻き込まれてしまう…という危険性はそこまで高くありません。
それでは、地震による死傷者は、どのようなことを原因に発生するのでしょうか?実は、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震など、過去に起きた巨大地震では、倒れてきた家具の下敷きになり、大怪我をおったり、亡くなってしまうといった被害が多かったとされています。大型家具の転倒や移動は、ドアなどを塞ぎ、避難や救助を困難にする点も注意が必要です。
今後発生が予想される南海トラフ地震や首都直下地震のような巨大地震が発生した場合、「家具は必ず倒れる物」という意識の元、転倒・落下・移動防止対策を講じておかなければならないとされています。家具の移動防止に関しては、消防庁が動画を作って解説していますので、それらを確認しながら自宅の対策を行っていきましょう。
具体的な家具の転倒・落下・移動防止対策のポイントは以下のような感じです。
家具の転倒・落下・移動防止のポイント
どのような住宅でも、大型家具が設置されていると思います。日常生活には必須のアイテムですが、地震などの災害時には自分たちに危険をもたらす凶器になる可能性があると考え、以下のような対策を行いましょう。
- 転倒防止金具などを使って、家具を固定し、転倒・移動を防ぐ
- ガラスが使われている家具は、地震時に飛散しないようにする
- 本棚、茶箪笥など、背の高い家具は重い物を下に収納し、重心を低くする
- タンスや棚など、背の高い家具の上に重い物や割れ物など、危険なものを置かない
- 食器棚は滑り止めを施し、中のガラス製品が地震で滑り出さないようにする
- 寝室や子供部屋には、出来るだけ家具を置かない
- 家具が倒れたとしても避難経路を塞がない位置に配置する
家の中にはさまざまな大型家具が設置されているはずです。普段は便利なアイテムとして活用できますが、地震などの災害時には、出入口を塞ぐ、人に向けて倒れてくるなど、非常に危険な凶器にもなり得るのです。したがって、万一のことを考え、出来るだけ危険性が低くくなる家具選びや向き、配置になるように工夫しましょう。
具体的な固定方法について
大型家具の固定については、そこまで難しくありません。地震の発生が多い日本では、地震の際に家具による危険度を下げるためのアイテムがたくさん開発されていて、ホームセンターや100円均一のような身近なお店で販売されています。
したがって、そういったお店で転倒防止アイテムを購入し、以下のような方法で家具の固定を行っておきましょう。
- 二段重ねの家具類は、平型金具などを用いて固定する
- L型金具やモクネジを用いて柱、壁体に家具の上部を固定する
- ガラスには、ガラス飛散防止フィルムを貼る
- 吊り戸棚などの開き扉は、掛金などにより扉が開かないようにする
- 食器棚は、ガラス製品が飛び出さないように、滑り止めシートや飛び出し防止枠を設置する
- 寝室や子供部屋には、出来るだけ家具を置かない
- 家具が倒れたとしても避難経路を塞がない位置に配置する
この他にも、振動を吸収してくれるシートなどが販売されていますので、家具の下にそういったアイテムを設置するなどの対策がおすすめです。
食料や飲料の備蓄について
今後予想される巨大地震では、災害発生直後は、電気やガス、水道などのライフラインは高確率でストップしてしまうと考えておかなければいけません。したがって、万一の地震に備えるためには、普段から飲料水や保存のきく食料を備蓄しておく必要があるとされています。
ただ、防災目的のために特別なものを用意するのではなく。普段の生活の中で利用できる食品などを中心に備えておくのが良いとされています。ペットボトル水や長期保存可能な食品類でも、消費期限というものがありますので、買い替えを全くしないものを備蓄していると、いざ必要になった時に「消費期限が切れていて使えない…」なんてことになりかねません。日常生活の中で利用可能な食品であれば、定期的に買い替えができますので、万一の際に食べられなくなっている…という心配がありません。
なお、地震に備えるためには、それなりの量の飲料水や食品、生活必需品が必要ですので、以下の量を目安に普段から備蓄しておきましょう。
食料・飲料水・生活必需品の備蓄量の一例
地震や台風などの自然災害では、電気やガス、水道と言ったライフラインが長期的にストップしてしまうことも珍しくありません。このような場合、自治体が避難所を用意してくれるのですが、道路なども破損する可能性が高く、政府による支援物資がなかなか届かない…ということも珍しくありません。そのため、地震などの備えとしては、飲料水や非常食、生活必需品を最低でも3日分備蓄しておくことが望ましいとされています。なお、水や食料などの備蓄に関しては、家族の人数分を用意しなければいけません。
以下に、地震の備えとして用意すべきアイテムの一例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 飲料水:3日分(1人1日3リットルが目安)
- 非常食:3日分の食料として、ご飯(アルファ米など)、ビスケット、板チョコ、乾パンなど
- 生活必需品トイレットペーパー、ティッシュペーパー・マッチ、ろうそく・カセットコンロ など
生活必需品については、各ご家庭ごとに必要になるものが変わります。したがって、災害の備えとしてどのような物が必要になるのかを、ご家族と話し合い、必要と考えられるものを用意しておきましょう。また、ペットを飼育しているご家庭の場合、ペット用の飲料水や食品も必要です。生活用水に関しては、ポリタンクを用意しておき、普段からタンクに備蓄しておくという対策がおすすめです。エコキュートなど、貯湯式の給湯器を設置しているご家庭の場合、大量の湯水を常に備蓄することができるため、災害に強い給湯器として人気になっています。
※大規模災害発生時には、「1週間分」の備蓄が望ましいとされています。
非常用持ち出しバッグを用意する
南海トラフ地震のような巨大地震では、自宅に大きな被害が出てしまい、安全な場所に避難して避難生活を余儀なくされる可能性もあります。このような時、避難場所に持っていくものをあらかじめ一つのバッグにまとめておくと便利です。最近では、最低限のアイテムを詰め込んだ非常用持ち出しバッグが通販サイトなどで販売されていますので、そういったものを家族分購入し、自宅に用意しておくのも良いでしょう。
災害発生後は、家の中がぐちゃぐちゃになっている可能性が高く、被災してからバッグの中に荷物をつめるのは難しいです。したがって、以下のようなアイテムをあらかじめリュックサックに詰めておき、いつでも持ち出せるようにしておくと良いとされます。
- 飲料水
- 食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)
- 貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)
- 救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
- ヘルメット、防災ずきん
- マスク
- 軍手
- 懐中電灯
- 衣類
- 下着
- 毛布、タオル
- 携帯ラジオ、予備電池
- 使い捨てカイロ
- ウェットティッシュ
- 洗面用具
- 乳児のいる家庭はミルクや紙おむつ、ほ乳びんなども用意
- マスク
- 手指消毒用アルコール
- せっけん、ハンドソープ
- ウェットティッシュ
- 体温計
飲料水や食料品に関しては、時々バックを開け、賞味期限を確認しておきましょう。賞味期限が近くなっているものがあれば、新しいものと交換し、古いものは使い切るようにしましょう。なお、国が災害時の『備え』として用意しておくべきアイテムのチェックリストを用意しているので、それを見ながら非常用持ち出しバッグを作るのもおすすめです。
家族の安否確認方法を決めておく
先ほどご紹介したように、地震はいつ・どこで発生するのか誰にもわかりません。そのため、家族全員が自宅に集まっている時に被災するのではなく、別々の場所にいる時に災害が発生してお互いの安否確認が難しくなるケースも普通に考えられます。大規模地震などが発生した場合には、携帯電話の回線が非常につながりにくくなり、安否確認がしたくても連絡がつかなくなることが考えられます。
したがって、万一の際に、ご家族同士がお互いの安否を素早く確認できるようにするため、安否確認の方法や被災時の集合場所などを話し合っておくのがおすすめです。なお、携帯電話の回線がつながらない場合でも、以下のような方法で安否確認が可能です。
- 災害用伝言ダイヤルを利用する
災害伝言ダイヤルは、局番なしの「171」に電話をかけることで、伝言を録音できるサービスです。そして、伝言を残した方の電話番号を知っているご家族などが、伝言を再生することが可能です。災害伝言ダイヤルは、一般加入電話や公衆電話、一部のIP電話はもちろん、携帯電話からでも利用可能です。 - 災害用伝言板を利用する
災害用伝言版は、インターネットサービスを使用して文字情報を登録できるサービスです。携帯電話などからアクセスして伝言を残せば、電話番号を知っているご家族などがアクセスし、情報を閲覧することができるようになります。 - SNSを利用する
X(旧Twitter)などに安否情報を投稿するという方法も有効です。家族が安否情報を書き込むアカウントなどをあらかじめ用意しておけば、そこに自分の居場所などを書き込むことができ、家族に安否を知らせることができるようになります。
災害時の安否確認は、家族と離れて暮らしている方の場合も有効です。大規模な災害が発生した時には、通常の連絡手段が通じず、安否の確認ができなくなってしまいます。そういった時、いち早く家族それぞれの安否を確認できるようにするため、普段から「どうやって連絡を取り合うのか?」「どの手段で安否確認をするのか?」「集合場所はどこにするのか?」を決めておくと良いでしょう。
お住いのエリアの避難場所と避難経路を確認しておこう!
どのような自治体でも、地震や台風、豪雨による水害など、災害が起きた時に安全に過ごすことができる避難場所を指定しています。基本的には、地域の学校や公民館などが避難場所に指定されていると思います。
したがって、万一の際に「どこに避難すれば良いのか分からない…」なんてことにならないよう、ご自身が住んでいるエリアの避難場所を事前に確認し家族と共有しておきましょう。また、大規模災害が発生した後に避難する場合、町の様相が普段とは大きく異なる可能性もあります。そのような場合でも、安全に避難場所まで移動できるよう、避難経路について確認しておく必要があるでしょう。
なお、避難場所と避難経路は、旅行に行った際などには、一番最初に確認しておくことも大切です。旅行先で大規模災害に被災する可能性は誰にでもありますので、安全に避難できるようにしておくことも大切です。特に、土地勘がない場所で被災した時には、「どこに避難すれば良いのだ?」と行動が遅れてしまいがちです。したがって、万一の際に焦らなくても良いよう、旅先の避難場所も確認する癖をつけておくのがおすすめです。
なお、各自治体の避難場所については、自治体のホームページや国土交通省ハザードマップポータルサイトで確認することが可能です。
まとめ
今回は、万一の地震に備えるため、普段の生活の中で行っておきたい地震への備えについて解説しました。
冒頭でご紹介したように、8月8日に発生した宮崎県の地震以降、南海トラフ地震が発生するのではないかという噂がまことしやかに囁かれるようになり、スーパーなどでペットボトル水やインスタントラーメンが一気に売り切れになってしまう…という事態に発展しています。なお、気象庁が公表した情報によると、今回発生した日向灘の地震と南海トラフ地震は直接的な関係はなく、南海トラフ付近は普段と大きく異なるような事象は見られないとされています。多くの専門家は、すぐに巨大地震が発生するのではなく、あくまでも普段よりも注意が必要なだけで、パニック的な行動は控えるようにという情報が出ています。
ただ、日本は、諸外国と比較して、巨大地震の発生件数が多いというのは確かです。したがって、南海トラフ地震がすぐに発生するかどうかを無視したとしても、普段から地震に備えるための対策は心がけておくべきでしょう。なお、地震以外にも、台風や大雨による水害など、さまざまな災害の影響を受けやすいのが日本です。したがって、家を建てる際には、「災害に強い家にするには?」という視点を持って計画することも大切です。