新築の購入を考え、土地探しを始めてみると、理想的と思える立地なのに高低差のある土地を見つけて「高低差がある場所に家を建てることはできるのだろうか?」と疑問に感じた…という経験がある人も多いのではないでしょうか?実際に、家を建てるための土地は、一般的には高低差などがない場所をイメージするため、高低差がある土地はそこでの住まいのイメージがわきにくく、本当に大丈夫なのかと懸念される方が多いのも事実です。

ちなみに、「高低差がある土地」とは、前面道路や周辺地域の宅地と比較して、高い位置にある土地もしくは低い位置にある土地のことを指しています。具体的には、崖地や傾斜のある土地がこれに該当するのですが、自宅を建てるための土地と考えると、いくら立地が良いとはいえ、高低差があるため設計が難しく、出来れば避けた方が良いのではないかと考えてしまう方がい多いはずです。しかし実は、新築注文住宅を建てるための土地について、高低差がある土地についても、その高低差は設計次第でカバーすることができますし、高低差を上手に活用することができれば、土地形状ならではの特性を生かした家を実現することも可能なのです。

そこでこの記事では、一般的には敬遠されてしまいがちな高低差のある土地について、そこに家を建てる場合のメリット・デメリットや実際に購入を検討した時の注意点について解説します。高低差がある土地は、その特性をおさえておくことで他にはない魅力的な土地に変貌させることも出来るため、是非参考にしてみてください。

高低差がある土地とは?

一般的に、住宅を建てるために販売されている土地は、高低差などなく平らに整形されているものだというイメージが強いのではないでしょうか?しかし、実際に土地探しをしてみればわかりますが、世の中にはさまざまな形状をした土地が販売されていて、中には「ここに家を建てられるのかな?」と不安に感じるような高低差のある土地もあるのです。

ここではまず、高低差のある土地の基礎知識について簡単にご紹介します。

そもそも「高低差がある」土地とはどんな土地?

冒頭でもご紹介した通り、高低差がある土地とは、前面道路や周辺地域の宅地よりも高い位置もしくは低い位置にある土地のことを指しています。これらの土地は、一般的に崖地や傾斜のある土地が該当すると考えてください。

そもそも、皆さんが家を建てるために購入する土地にも種類があり、大きく分けると「整形地」と「不整形地」の2種類に分かれています。このうち、高低差がある土地に関しては「不整形地」に分類されています。不整形地は、その言葉から分かるように、「形が整っていない」土地のことを指していて、形が整っている整形地と比較すると扱いが難しくなるため、地価が低く設定される傾向にあります。

ただ、高低差がある土地については、坂道が多い地域に宅地を作る場合、丘を削って住宅地にするなんて場合では、当たり前のように生じてしまい、このような土地では隣家や接する道路と自宅の敷地の間に高低差が生じるケースは珍しくないのです。つまり、高低差がある土地は、特段意識して探さなくても普通に出会う可能性があると考えておきましょう。

高低差が規制以上の場合は注意が必要

上述したように、高低差がある土地というのは、そこまで珍しい存在ではありません。ただ、高低差がある土地の中でも、その高低差が2mを超える場合は、がけ条例の規制対象となってしまうので注意が必要です。

がけ条例は、がけに関する規制の通称で、自治体によって制定や詳細が異なるので、その辺りは注意しましょう。一般的に、がけ条例の対象となるのは、以下の条件を満たす土地となります。

  • がけの高さ(垂直距離)が2mまたは3mを超える場合
  • 地表面が水平面に対して30度を超える傾斜度をなす土地

がけの高さの規定については自治体によって異なります。例えば、東京都の場合、2mの高さ規制となっているのですが、福岡県などは3mとなっています。家を建てようと考えている土地が、自治体のがけ条例の規制対象に入ってしまう場合は、家を建てるために擁壁工事や補強工事をしなければならないと定められています。

高低差がある土地のメリット

それではここからは、高低差がある土地に家を建てるメリットについて解説していきます。一般的には、整形地と比較すると、設計が難しそうだし高低差がある土地は避けた方が良い…と感じてしまう人が多いはずです。

しかし、高低差がある土地は、意外なメリットが多いのも事実なのです。

メリット1 土地価格が安い

高低差がある土地の最もわかりやすいメリットが、同じような立地条件の土地と比較すると、土地価格が安く設定されている場合が多いため、土地の入手にかかるコスト負担を軽減できる点です。

先程ご紹介したように、高低差がある土地は不整形地という扱いで、整形地よりも扱いが難しくなるため、土地価格が安く設定される傾向があるのです。そのため、土地を安く入手して、建物部分にお金をかけたいと考えている方にとっては理想的な土地になる場合もあるのです。何度も言いますが、高低差がある土地は、家を建てられないわけではなく、しっかりとした業者が設計を行えば、高低差という特性を生かした素敵なデザインの家にすることも可能なのです。

メリット2 水害リスクが低くなる

これは、高低差が「全面道路よりも高い位置にある」場合に限ります。周辺よりも高い位置に存在する土地の場合、万一、近くの河川が氾濫したとしても、浸水などの水害の被害を受けにくくなります。前面道路よりも高い位置にあれば、敷地内に一切水が入って来ないなど、水害に非常に強い家にすることも可能でしょう。

昨今では、夏場の集中豪雨による河川の氾濫など、水害の発生頻度が高くなっていると言われます。したがって、近くに河川があるなんて場合は、わざと高い位置にある土地を選ぶというのも、災害対策の面で有利に働くかもしれません。

メリット3 理想的な立地条件の土地が見つかる

高低差が土地は、その特性が気にならないもしくは、うまく生かせる人にとっては好立地の土地を入手する最適な方法に様変わりする場合があります。

なぜなら、高低差がある土地のような、いわゆる「不整形地」は整形地と比較して買い手がつきにくくなるからです。高低差がある土地以外でも、一般的に敬遠されがちな旗竿地などは、立地条件が非常に良いにもかかわらず売れ残ってしまっている…なんてケースは珍しくありませんよね。

つまり、土地の高低差を気にしない人にとっては、自分たちの生活に最適と思える立地条件を備えた土地と巡り合いやすくなるという点で大きなメリットになるのです。

メリット4 高低差を活用することができる

土地に高低差があるということをうまく利用することができれば、住みやすい家を建てることも可能です。

例えば、前面道路よりも高い位置に家を建てることができるという条件の場合、大きな窓を設置したとしても道路から家の中をのぞくことができないなど、プライバシー性に優れた家を建てることができるようになります。また、周囲に自宅よりも高い建物がなくなれば、採光や通風も確保できるうえ、眺望が良く開放感を高めることも可能です。その逆に。低い土地の場合は、地下室や地下ガレージなどを設けやすくなるなど、土地の特性を生かした家づくりが進めやすくなるのです。

高低差がある土地は、あえてその高低差を活かせると考えると、大きなメリットにもなり得るといえるでしょう。

高低差がある土地のデメリット

高低差がある土地は、上記のようにさまざまなメリットが存在します。ただ、整形地と比較すると不人気なのは間違いありません。高低差がある土地が不人気なのは、以下のような点をデメリットと考える人が多いからでしょう。

ここでは、高低差がある土地のデメリット面もご紹介します。

デメリット1 建築コストがかかる

高低差がある土地の最大のデメリットは、家の建築費用が高くなりやすいという点です。土地そのものは安く購入できたとしても、家の建築段階では費用が高くついてしまう可能性が高いため、その辺りはしっかりと調査しておかなければいけません。

土地に高低差がある場合、そのままの状態で家を建てることが難しく、最初に造成工事を行わなければならないケースが考えられます。造成工事にかかる費用については、土地の状態によって変わるのですが、安くても数十万円単位の費用がかかりますし、場合によっては数百万円単位の費用になってしまうことがあります。当然、造成工事が必要な場合、工事に時間を要することになるため、家が完成するまでにかかる時間も長くなります。

高低差のある土地は、「安く入手できる」点がメリットと紹介したのですが、造成工事に思いのほか費用がかかる…なんて場合、建物にかけようと思っていたお金を使わざるを得なくなる…なんて可能性もあります。

デメリット2 自由に家を建てられない可能性がある

高低差のある土地は、その特性を上手に活用することで、一般にはないデザイン性の高い建物を実現することができる可能性があります。しかし、依頼する建築会社によっては、逆に自由度が下がってしまうことも珍しくないのです。

高低差がある土地を有効活用するには、整形地ではあまり活用されることのない技術や工夫が必要になります。こういった特殊な工事に慣れている建築会社であれば、さまざまな建築プランを提案してもらうことが可能なのですが、建築会社によっては建築可能なプランが限られてしまい、自由度の低さに不満を感じながら家の建築が進む…なんてことになりかねないのです。

高低差のある土地など、特殊な土地に家を建てる場合、特殊な工事の経験値などについて事前にしっかりと確認しておかなければ、いざ設計の段階になってから「こんなはずじゃなかった…」と後悔する結果になる可能性があります。

デメリット3 土地が低い場合、水害リスクが高くなる

高低差がある土地は、前面道路や周辺の建物よりも高い位置にある、もしくは低い位置にある土地とご紹介しましたね。高い土地になる場合は、万一の水害時でも敷地内に水が侵入しにくくなるため、浸水などの被害を受けにくくなるというメリットが得られます。

しかしその反面、周辺よりも低い土地の場合は、水が集まる場所となってしまうため、周辺の住宅よりも水害の被害を受けやすくなってしまいます。災害対策は、家族の安全に直結する問題なので、慎重に判断するようにしましょう。

高低差がある土地で家を建てるために必要な追加工事について

高低差がある土地のデメリット面でご紹介したように、このような場所で家を建てたいと考えた時には、建物の工事の以前に追加工事が必要になる場合があるのです。追加工事の必要性に関しては、土地の状態などによって変わるのですが、主に以下のような工事が必要になる可能性があると考えてください。

なお、追加工事の費用面に関しては、依頼する建築会社によって変わるため、事前に追加工事部分の見積りも出してもらうようにしましょう。以下で紹介する費用は、あくまでも一般的な相場なので、土地の条件などによっては大きく上下する場合があります。

①造成工事

造成工事は、土地の状況に応じて、切土・盛土・埋め立てなどを行うことで、土地の高低差を埋めたり、傾斜をなだらかにする目的で行われます。当然、高低差がなくなる、もしくは傾斜が緩やかになれば、家を建てやすい状況を作り出すことができます。

造成工事にかかる費用は、地域や工事内容、もともとの土地の状況によって変わりますが、1㎡あたり10万円前後が相場となります。

②擁壁工事(土留め)

擁壁工時は、崖の部分に壁を作って基礎が崩れてしまうのを防ぐ工事です。高低差のある土地は、大雨など、自然災害の影響で基礎が崩れてしまうリスクがあります。そのため、そのような災害を防ぐ目的で、鉄筋コンクリートの壁やコンクリートブロックを積み上げることで盛り土が崩れないように補強するのです。なお、一般的に、高低差が2m以上ある場所の場合、工事の前に自治体への申請なども必要になります。

擁壁工時も、土地の状況や高低差などによって費用は変わりますが、1㎡あたり3~10万円程度が相場となります。ちなみに、自治体によっては擁壁工時に補助金が給付される場合があるので、その辺りは事前に確認しておきましょう。

③地盤改良工事

地盤改良は、高低差がある土地だけで行われるものではありません。高低差がある土地の場合、上で紹介したような補強を行ったとしても、地盤が弱いと判断される場合に行われます。なお、地盤改良の方法は、表層改良工法、柱状改良工法、鋼管杭工法など、いくつかの手法があります。

地盤改良工事は、もともとの土地の状況や採用する工事の方法によって費用が変わります。安く済む場合は数十万円程度で対処可能ですが、100万円以上かかる場合もあります。

高低差がある土地を購入する際の注意点

それでは最後に、これから新築一戸建てを建てたいと考えている方が、高低差がある土地の購入を検討した時に注意したいポイントについてもご紹介します。

先程からご紹介しているように、高低差がある土地は、立地条件の割に安く入手できる可能性があるという非常に大きなメリットが存在します。しかし、土地価格の安さだけに注目すると、後々困った状況に陥る可能性もあるので、以下の点は注意しなければいけません。

追加工事を含めてもお得なのか確認する

高低差がある土地は、見かけ上は安く見えても、実際に家を建てようと思った時には、あれこれと追加工事に費用がかかってしまい、結果的に高くついてしまう…なんてことが考えられます。

デメリット面でご紹介したように、高低差がある土地は、家を建てるために造成や補強が必要になり、その部分に多額の費用が発生する可能性があるのです。そのため、土地が多少安かったとしても、追加工事にかかるお金を含めると、整形地を購入したほうが安かったな…なんてことになりかねません。

立地条件が良く気に入った土地が見つかったけど「土地に高低差がある…」なんて場合は、追加工事について事前に確認するようにしましょう。

崖地に該当しないか確認する

高低差がある土地の購入を検討している場合、その土地ががけ条例により規制を受ける崖地に該当しないのかも事前に確認しなければいけません。がけ条例は、各自治体で制定されていて、制限の内容などについては自治体ごとに異なります。

ただ、がけ条例に該当する土地であった場合、何らかの対処が必ず求められてしまうので、余計なコストがかかってしまうのです。例えば、建築許可を得るために崖から崖の高さの2倍以上の距離を開けなければならない、擁壁を設置しなければならないなど、整形地に家を建てる時には不要な対処が求められ、そこに費用がかかってしまいます。

将来、売却が難しいことを認識しておく

高低差がある土地は、旗竿地などと同じく不整形地という扱いを受けると紹介しました。そして、このような土地は、一般には不人気なため土地価格が安く設定されるのです。

土地の購入時点のことを考えると、「土地価格が安い」というのは非常に大きなメリットに感じるはずです。しかし、売却時のことを考えると、「高く売れない」「買い手がつかない」ことを意味するため、先を見据えた場合には大きな懸念材料となってしまうのです。もちろん、家を購入する時に、売却のことまで考える人は少ないですが、少子化が進んで家を引き継ぐ人が少なくなった現在では、売却時のことも頭の片隅には置いておいた方が良いです。

まとめ

今回は、家を建てるための土地を探している方に向け、高低差がある土地に家を建てる場合のメリットや注意点について解説しました。

一般的に、家を建てるための土地は平らに整えられているというイメージが強いですが、坂が多い地域などの場合、土地に高低差がある…なんてことも珍しくないのです。そして、家は高低差がある土地でも建てることは可能で、人によっては整形地を購入するよりもメリットを感じる場合も少なくありません。

なお、高低差がある土地は、整形地と比較すると立地条件が良くても不人気なため、土地価格は安く設定されています。ただし、購入後、実際に家を建てるためには造成や地盤改良、擁壁工事が必要になり、追加工事にかかる費用も含めると高くつくケースもあるので注意しなければいけません。
今年こそ家お建てたいと考えている方で、土地の形状よりも立地条件を重視したいと考えている方がいれば、高低差がある土地も候補に入れてみてはいかがでしょう?なお、高低差がある土地に家を建てる場合、そういった特殊な土地での建築実績を豊富に持つ会社に相談するのがおすすめです。大阪府内など、関西地方で建築会社を探している方の場合は、ぜひお気軽に悠建設にご相談ください。

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