日本は、2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されており、脱炭素に寄与する対策に対しては、手厚い補助金が給付されるようになっています。特に昨今では、住宅領域での省エネ、脱炭素化が非常に重要視されていて、省エネ性の高い高性能な設備の導入を国が後押しするようになっているのです。実際に、住宅周りの脱炭素化に関しては、2022年11月より、環境省・経済産業省・国土交通省の3省が連携して「住宅省エネキャンペーン」という高性能な住宅・設備の普及のための取り組みを開始しています。住宅省エネキャンペーンは、一般住宅における省エネや脱炭素に寄与する設備などの導入を後押しする取り組みで、2025年度は以下の4つの制度で構成される予定となっています。

  • 子育てグリーン住宅支援事業
  • 先進的窓リノベ2025事業
  • 給湯省エネ2025事業
  • 賃貸集合給湯省エネ2025事業

子育てグリーン住宅支援事業に関しては、以前別の記事で解説していますので、今回は、給湯省エネ2025事業についてその概要などを解説します。給湯省エネ2025事業は、その名称から分かるように、一般住宅に設置される給湯器について、より省エネ性の高い高効率な給湯器の普及を後押しするための補助金となります。
この記事では、2025年版の給湯省エネ事業の詳細や昨年度との違いなどについて解説します。

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給湯省エネ2025事業の概要について

給湯省エネ2025事業は、その名称から分かるように、高性能な給湯器の導入を後押しすることで、住宅領域における給湯部分の省エネ・脱炭素化を目指す取り組みです。この補助金は、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、ハイブリット給湯機、家庭用燃料電池(エネファーム)を導入する際、その導入費用の一部を補助してくれるというものとなっています。

なお、給湯省エネ事業については、2024年も同様の補助金が実施されていて、名称もそのままに2025年度も引き続き実施されることが決定した形です。給湯器は、一般的に10年前後が寿命とされていて、定期的に交換が必要になる設備となります。そのため、現在、給湯器の不調を感じている、交換の必要性を感じているという方にとっては、非常にありがたい制度になるはずです。

なお、給湯省エネ2025事業を利用するには、いくつかの条件を満たしていなければいけません。どのような補助金でも同じですが、制度ごとに定められている条件を満たしていなければ、補助金の対象となりません。給湯省エネ2025事業の利用は、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 登録事業者と契約しており、エコキュート・ハイブリット給湯器・エネファームのいずれかを導入する工事
  • 給湯器の交換工事を行う住宅に住んでいる方が対象
  • 中古住宅の購入の際は、既設給湯器から補助対象となる給湯器への交換が補助対象となる場合がある(中古住宅の購入費用は補助対象とならない)

給湯省エネ2025事業の利用を考えている場合、細かな要件を満たしていなければいけません。詳細な補助要件については、公式サイトが公開されたら確認しましょう。

給湯省エネ2025事業の補助金額について

2025年度のエコキュートの補助金制度「給湯省エネ2025事業」は、エコキュートなど、省エネ性が高いと認められているいわゆる高効率給湯器の導入が補助金の対象となります。ただ、受け取れる補助金の金額については、導入する給湯器の性能や定められている追加要件を満たしているかどうかで上下します。

そこでここでは、給湯省エネ2025事業の対象となっている給湯器について、それぞれの補助金額をご紹介します。

ヒートポンプ給湯機(エコキュート)

まずはエコキュートに対する補助金の金額からです。エコキュートは、エアコンに採用されているヒートポンプを使ってお湯を作るシステムで、電気と大気中の熱を利用してお湯を作ることができるため、給湯時にCO2を排出させないということから、環境に優しい給湯器とみなされ、国も設備の普及を後押ししています。なお、利用者側にとっても、安い深夜帯の電力でまとめてお湯を沸かせる、太陽光発電など自家発電した電力でお湯を作れる設備であるため、給湯部分の光熱費を大幅に削減できるというメリットが得られます。

エコキュートの導入に対する補助金の金額は、以下の通りです。

  • 基本額:6万円/台
    省エネ基準適合機種
  • A要件:10万円/台
    インターネットに接続可能な機種で、翌日の天気予報や日射量予報に連動することで、昼間の時間帯に沸き上げをシフトする機能を有するものであること。
  • B要件:12万円/台
    補助要件下限の機種と比べて、5%以上CO2排出量が少ないものとして、a又はbに該当するものであること。(a.2025年度の目標基準値(JIS C 9220 年間給湯保温効率又は年間給湯効率(寒冷地含む))+0.2以上の性能値を有するもの、又は、b.おひさまエコキュート)
  • A要件及びB要件を満たすもの:13万円/台

なお、補助上限台数は、「戸建住宅:いずれか2台まで、共同住宅等:いずれか1台まで」と定められています。なお、給湯省エネ2025事業では、以下の要件を満たす場合、上記の補助金に規定の金額が加算されます。

  • 蓄熱暖房機の撤去:8万円/台(上限2台まで)
  • 電気温水器の撤去:4万円/台(高効率給湯器導入により補助を受ける台数まで)

例えば、もともと電気温水器を設置していたお宅が、A要件及びB要件を満たすエコキュートへの交換を行う場合、「エコキュートの補助金として13万円」「電気温水器の撤去費用として4万円」合計17万円の補助金を受け取ることが可能です。

ハイブリット給湯機

ハイブリット給湯器は、ヒートポンプ給湯機とガス温水機器を組み合わせたものを指していて、ふたつの熱源を効率的に用いることで、⾼効率な給湯が可能とされています。ハイブリット給湯器を導入する際の補助金額は以下の通りです。

  • 基本額:8万円/台
  • A要件:13万円/台
    インターネットに接続可能な機種で、昼間の再エネ電気を積極的に自家消費する機能を有するものであること。
  • B要件:13万円/台
    補助要件下限の機種と比べて、5%以上CO2排出量が少ないものとして、以下の要件に該当するものであること。(一般社団法人日本ガス石油機器工業会の規格(JGKAS A705)に基づく年間給湯効率が116.2%以上のものであること。)
  • A要件及びB要件を満たすもの:15万円/台

なお、電気温水器からの交換や蓄熱暖房機を撤去するというケースでは、エコキュートと同じく補助金が加算されます。

家庭用燃料電池(エネファーム)

エネファームは、エコキュートやハイブリット給湯器とは根本的に異なる設備です。と言うのも、エネファームは給湯機能がメインなのではなく、発電機能を有していて、給湯の機能はおまけのような設備となっているのです。ただ、一般的なガス給湯器と比較すると、省エネ性やCO2排出量削減機能が非常に高く、給湯省エネ事業の対象となっています。

エネファームに対する補助金の金額は以下の通りです。

  • 基本額:16万円/台
  • C要件:20万円/台
    ネットワークに接続可能な機種で、気象情報と連動することで、停電が予想される場合に、稼働を停止しない機能を有するものであること。

エネファームの補助額を見ると、基本額がエコキュートなどと比較して、非常に高く設定されています。そのため、国がエネファームを推奨しているように感じる方もいますが、そうではありません。エネファームの補助金額が高く設定されているのは、他の給湯システムと比較すると、導入コストが圧倒的に高く設定されているのが要因です。エコキュートは、補助対象になるレベルの製品でも、40万円前後で設置することが可能なのですが、エネファームの導入は、100万円を優に超えるコストがかかります。つまり、エネファームの補助額が高いのは、導入費が高いためです。

参照:経済産業省webサイトより

給湯省エネ2025事業申請の流れや必要書類について

給湯省エネ2025事業の申請期間については、まだ正式な日程が発表されていません。ただ、昨年度の給湯省エネ事業は、春ごろ(3月末)に申請受付がスタートしていたので、本年度もおそらく同じような時期に申請の受付がスタートされると予想されています。

ちなみに、昨年度は12月31日までが最終の申請受付期間だったものの、この補助金は予算消化が非常に早く、申請期限よりも前に受付が終了することが多いです。本年度も最終申請期限は12月31日になると予想されますが、それよりも早く予算が消化される可能性が高いため、補助金の利用を検討している方はお早めに給湯器の交換に動くのがおすすめです。

ここでは、給湯省エネ2025事業を利用して給湯器の交換を行う場合の申請の流れと必要書類をご紹介します。

給湯省エネ2025事業申請の流れ

補助金と聞くと、申請に手間がかかりそう…と考えてしまう人が多いと思います。ただ、給湯省エネ事業に関しては、お客様自身が申請を行うのではなく、工事を依頼した施工業者など、補助事業者が代行して行うため、そこまで難しく考えなくても良いです。

なお、給湯省エネ事業は、例年事後申請方式が採用されていて、工事完了後に申請を行い、補助金が交付される形となります。2025年度の申請の流れについては、正式な発表がまだありませんが、昨年度と大きく変わることはないと予想されているため、ここでは2024年度の給湯省エネ事業の申請手順を参考にして、交付までの流れをご紹介します。

  • STEP1 給湯省エネ事業者と工事請負契約などをする
  • STEP2 給湯器の交換工事を行う(この際、任意で交付申請予約も可)
  • STEP3 給湯器の交換が完了。引き渡しと清算を行う
  • STEP4 補助金(給湯省エネ2025事業)の交付申請を行う
  • STEP5 補助金の交付が決定される
  • STEP6 補助金が交付される

給湯省エネ事業を利用して給湯器の交換を行う場合、上記の流れで申請作業が進みます。給湯省エネ2025事業の利用を検討している方の場合、給湯器リフォームの問い合わせをした段階で、最初に補助金を利用したいと伝えましょう。

給湯省エネ2025事業の申請に必要な物

給湯省エネ2025事業の申請時にはさまざまな書類を用意する必要があります。ここでは、現在分かっている必要書類について、経済産業省が公表している資料を参考に紹介します。

  • 本補助金の利用について発注者が同意する共同事業実施規約(指定の書式)
  • 工事請負契約書の写し
  • 発注者の本人確認書類(住民票の写し、運転免許証の写し等)
  • 工事前写真、工事後写真
  • 保証書や銘板写真(2024キャンペーンで必要とされているものと同様のもの)

上記の書類は、どのような要件に申請する場合でも必要とされています。これに加えて、ヒートポンプ給湯機やハイブリッド給湯機において、A要件への適合を示すためにリモコンの写真が必要になったり、電気温水器の撤去に関する加算要件の申し込みを行う際、工事写真などが求められます。

どちらにせよ、補助金の申請自体は販売施工業者側がおこなうので、お客様側は本人確認書類の用意だけで済むはずです。

※上記の必要書類は「予定」となっているので、変更される場合もあります。

参照:経済産業省資料より

給湯省エネ2025事業は2024年度と何が違う?

給湯省エネ事業は、環境省・経済産業省・国土交通省の3省が連携して運営する「住宅省エネキャンペーン」の一環で、2024年度の補助金内容を基本的に継承した形になっています。ただ、いくつかの違いが存在するので注意が必要です。まず、給湯省エネ2024事業は、以下の補助額で運営されていました。

  • エコキュート:基本額:8万円/台、加算額:2~5万円/台
  • ハイブリット給湯機:基本額:10万円/台、加算額:3~5万円/台
  • エネファーム:基本額:18万円/台、加算額:2万円/台
  • 撤去工事:5~10万円/台

これからも分かるように、2025年度の給湯省エネ事業は、どのタイプの給湯器を選択したとしても、基本額は減額されているのです。ただ、性能加算要件を満たした製品を導入する場合には、昨年度の給湯省エネ事業と同等レベルの補助額となっています。

つまり、国は、同じ高効率給湯器だとしても、より省エネ性の高い機種の普及を目指していると判断できるでしょう。

まとめ

今回は、住宅省エネキャンペーンの中の一つ、給湯省エネ2025事業の概要について解説しました。記事内でご紹介したように、給湯省エネ2025事業とは、省エネで環境に優しい住宅を実現するため、一般住宅への高効率給湯器の普及を後押しする補助金となっています。電気温水器の撤去など、すべての加算要件を満たしているお宅の場合、エコキュートの導入時にかかる費用のうち、最大で17万円もの補助金が給付されるという非常にありがたい制度です。

なお、給湯省エネ事業については、「高効率な給湯器に交換するリフォーム工事に使える」など、新築は関係ないと考えている人も多いです。しかし、この補助金の対象となる住宅は以下の通りです。

  • (1)新築住宅(1年以内に建築された住宅で、かつ居住実績がない住宅のこと)である
    ※本事業において「建築日」は、原則、検査済証の発出日とします。
  • (2)既存住宅(建築から1年が経過した住宅、または過去に人が居住した住宅のこと)である
    ※未使用の対象機器が設置されていても、既存住宅の購入は補助対象になりません。

このように、新築住宅への高効率給湯器の導入にも問題なく使用できる補助金となっています。給湯省エネ2025事業の対象となる機器は、非常に省エネ性が高く、導入後のランニングコストを抑えるというメリットも得られます。購入にかかる初期費用の高さを補助金で軽減することができるので、給湯器は高性能な機種を選ぶのがおすすめです。

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