今回は、憧れの新築戸建て住宅を建てる際、多くの方を悩ませる問題となる住宅工法について解説したいと思います。

皆さんは「通気断熱WB工法」という住宅工法はご存知でしょうか?一般の新築住宅については「木造建築である」程度の認識しか持っていない方が多く、建築工法についてまで確認するケースは少ないかもしれません。しかし実は、家を建てる際の建築工法は、採用する工法によって耐震性や居住性、建築コストが変わるため、しっかりと確認しておきたいポイントになります。住宅の建築工法では、「ツーバイフォー(2×4)工法(木造枠組壁式工法)」が有名ですが、在宅時間が長くなり住宅の快適性を求める方が増えてくるにつれ、先ほどご紹介した「通気断熱WB工法」が注目されるようになっています。

現在の新築業界では、高気密・高断熱がキーワードのようになっていて、これを実現することで日々の生活にかかる光熱費を削減することができるとされています。それでは、「通気断熱WB工法」が、その他の建築工法と比較して、年々その注目度が高くなっているのはなぜなのでしょうか?当コラムでは、これから新築戸建て住宅の購入を検討している方に向け、「通気断熱WB工法」がどういったもので、どんなメリットがあるのか、また注意すべきデメリット面など、まとめて解説します。

通気断熱WB工法とは?

それではまず、通気断熱WB工法とは、どのような工法なのか、また通気断熱WB工法を採用することで、どのような住宅が完成するのかについて簡単に解説します。

通気断熱WB工法の「WB」は、「W BREATH(ダブルブレス)」の頭文字を取った造語で、二つの呼吸を意味しています。通気断熱WB工法で建てられた家は、「家の呼吸」と「壁面の呼吸」が実現することからWB工法と名付けられてそうです。実際に、メーカーサイトでは以下のように解説されています。

ひとつめの呼吸は、「家の呼吸」です。気温の変化で反応する形状記憶合金を使った仕組みで、壁の中の空気をコントロール。夏は、壁の中の空気を流して室内の空気を快適に保ち、冬は、外の空気を遮断し、気密性と断熱性を上げることで、室内の熱を逃がしにくくします。
もうひとつの呼吸は、「壁面の呼吸」です。伝統的な土壁が持つ湿気を通す作用を応用し、季節に応じて、家そのものが呼吸する仕組みを開発。室内の化学物資や臭いを、屋外に排出するしくみです。湿度があがりにくいので、カビの抑制にも効果を発揮します。
引用:WB HOUSE公式サイトより

通気断熱WB工法を採用した住宅は、上記の機能性を保持していますので、高気密・高断熱住宅でありながらも、換気性能が高く不要な空気や湿気を室外に逃がすことができます。高気密・高断熱住宅は、快適な室温を維持しやすいというメリットがある反面、密閉された空間になることから、有害物質の蓄積によるシックハウス症候群の危険性増大、結露などによるカビの発生などの問題が指摘されています。
WB工法は、人が呼吸するように、家そのものが呼吸することで、こういった問題を解決しています。

それでは、通気断熱WB工法は、どのようにしてその機能性を家に持たせるのでしょうか?以下に、WB工法で建てた家が持つ代表的な特徴をご紹介します。

①壁の中に通気層が設置されている

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

通気断熱WB工法の大きな特徴は、壁の中に通気層が設置されるという点です。

壁の中に、自然な空気が循環する通気層があることで、無駄な湿気や夏の熱気が家の中に閉じ込められず、外に逃がすことができるようになります。木造住宅にとって湿気は天敵ですので、これを逃がすことができるWB工法は、家そのものを長持ちさせることができます。

上図のように、通気口から入った空気は、床下のひんやりした空気と混ざり、通気層を上昇していくことになります。そのため、壁が焼け込みの熱を緩和することで、蒸し暑さを軽減することができ、真夏でもエアコンをそれほど使わずに快適で涼しい環境を維持することができるようになります。

②通気口に気温に反応する形状記憶合金を採用

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

人は、暑く感じたら服を脱ぎ、寒ければ服を着こむことで季節に対応しますよね。WB工法の家も、人と同じように季節によって衣替えする機能が搭載されています。

それが通気口に設置された、気温によって変化する形状記憶合金です。形状記憶合金は、気温が高くなると縮み、低くなると伸びるという性質を持っています。通気口にこの形状記憶合金を採用することで、通気口は外気温に応じて自動で開閉する機能が実現しているわけです。

WB工法の家では、気温の高い夏場は、形状記憶合金が縮んで通気口が開き、気温が下がる冬場は形状記憶合金が伸びて通気口が閉まるという仕組みになっています。したがって、夏場は通気口が開くことで湿気や熱気を逃がし、その逆に冬場は湿度と暖かい空気を逃がさないことで暖かさを保つわけです。
これによりWB工法の家は、そこで暮らす人が、一年中快適に過ごすことができる気温を保つことができるようになっています。

③高気密・高断熱を実現

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

WB工法の家は、非常に高い気密性と断熱性を実現しており、日々の生活にかかる光熱費を大幅に削減できる点も特徴の一つです。

先ほどご紹介したように、WB工法の家は、壁の中に空気層が設けられているうえ、通気口には形状記憶合金が採用されています。そのため、通気口があったとしても、気温の低い冬場は、通気口が閉じることで冷気を遮断することができ、暖められた室内の温度や湿度を逃がさないようにできます。
さらに、壁の中の空気層が断熱層として働くことで、室内の空気が外気の影響を受けにくくなるなど、通常の家と比較すると、非常に高い気密性・断熱性を実現しているのです。

WB工法の家は、夏場は通気口を開いて無駄な熱気や湿気を外に排出する、冬場は壁の中の通気層により高気密・高断熱を実現し、最小限のエアコン利用で快適な室温を維持することができるようになります。
このような住宅そのものの機能性から、快適に過ごせる空間を実現するだけでなく、非常に高い省エネ性を兼ね備えることができる点が特徴です。

④壁を使って除湿することができる

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

WB工法の家は、壁から湿気を逃がして除湿することができる点も特徴の一つです。公式サイトで公表されている情報によると、WB工法では、土壁の原理を応用しており、臭いも化学物質も湿気と一緒に壁を通過するようになっています。そして、この機能により、換気システムに頼らなくても、住んでいる人が深呼吸したくなるような、結露しないクリーンな環境の家を実現するとしています。

WB工法を採用した家は、シックハウス症候群の原因となる有害物質や、嫌な生活臭などを湿気と共に屋外に逃がすことができるため、常に快適でクリーンな空間を維持することが可能です。ペットを室内で飼育しているご家庭や、小さなお子様がいるご家庭には非常におすすめの住宅工法と言えるでしょう。

参照:WB HOUSE公式サイトより

通気断熱WB工法を採用するメリット

ここまでの解説で、通気断熱WB工法の特徴的な機能を理解していただけたと思います。それでは、その他の住宅工法ではなく、通気断熱WB工法を採用して家を建てた場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

ここでは、家を建てる際に通気断熱WB工法を選んだ方が期待できるメリットを解説します。

メリット1 一年中快適な空間で生活できる

WB工法で建てた家は、夏場は不要な熱気や湿気を逃がす、冬場は冷たい外気の影響を受けにくくするなど、家そのものの機能により一年中快適な室温を保ってくれる点がメリットです。

WB工法を採用した家は、優れた気密性・断熱性を保持しており、外気温の影響を受けにくく、快適な住環境を保ってくれるようになります。現在では、どのような住宅でもエアコンが使用されていますが、気密性・断熱性が悪い住宅の場合、エアコンの効きが悪くなるのです。WB工法の家は、空調効率を高めて、エアコンなどをあまり使用しなくても、年中快適な室内空間を保つことができるようになります。
また、WB工法の家は、壁から不要な湿気を逃がす仕組みもありますので、梅雨時期や夏場のムシムシした嫌な湿気を軽減することができます。なお、冬場は、湿度を外に逃がさなくなりますので、室内が乾燥しすぎることも防いでくれます。WB工法は、温度調整だけでなく、人が快適と感じる湿度環境の調整まで行ってくれる点が大きなメリットです。この機能があることから、通気断熱WB工法を採用した家は、「衣替えする家」とも称されています。

メリット2 高い省エネ性を実現し、光熱費削減が実現

WB工法の家は、気密性と断熱性に優れていると紹介しましたが、このメリットにより住宅の省エネ性が向上し、日々の生活にかかる光熱費節約につながるというメリットも得られます。

上述しているように、WB工法の家は、壁の中に通気層があり、通気口に形状記憶合金が採用されていることで、非常に高い気密性と断熱性を実現しています。高気密・高断熱の家は、外気温の影響を受けにくくなりますので、エアコンなどの空調効率を高めてくれ、空調にかかる光熱費を削減することができるのです。

また、夏場の不要な湿気を逃がすという機能は、湿気が天敵である木造住宅にとっては、非常に大きなメリットになります。湿気は木材の腐食やシロアリの繁殖原因となりますので、不用な湿気を逃がすWB工法の家は、こういった問題から住宅を守ってくれ、メンテナンスにかかる費用も削減してくれると期待できます。

メリット3 家族の健康を守ってくれる

WB工法の家は、そこに住む人の健康的な暮らしをサポートしてくれる機能がある点も大きなメリットです。

先ほどご紹介したように、WB工法の家は、壁を使って除湿することができます。これは、WB工法では、通気性・透過性が高い壁を採用しているからなのですが、湿気を外に逃がすときには、シックハウス症候群の原因となる、ホルムアルデヒドなどの有害物質も一緒に排出する仕組みになっているのです。

そもそも、通気断熱WB工法は、シックハウス症候群の対策のために開発されたという背景がありますので、人が一日の中で多くの時間を過ごすこととなる『家』について、そこに住む人の健康を守るための機能が搭載されているわけです。
WB工法の家は、湿気や有害物質を壁から排出することができるようになるため、カビやダニの発生まで抑えることができ、より健康的な暮らしを目指すことができます。

メリット4 嫌なニオイも排出してくれる

最後は、料理やペットのニオイなど、日常生活を進めるうえで、どうしても生じてしまう嫌な生活臭がこもりにくくなるというメリットです。

WB工法を採用した家は、壁の中に設置された通気層から熱気や湿気だけでなく、ニオイも排出される仕組みになっています。WB工法は、「家の呼吸」と「壁面の呼吸」が実現することからその名前が付けられているように、家が呼吸することで、家の中の湿気や嫌なニオイを留めることなく、綺麗な空気と循環させることができるのです。

したがって、室内で猫や犬などのペットを飼育しているというご家庭にとっては、嫌なニオイが家の中にこもることなく、快適な環境を実現できる点が大きなメリットになるでしょう。

このように、通気断熱WB工法には、さまざまなメリットが存在します。ちなみに、こういったメリット面については「メーカー側が誇大に解説しているだけでは…」と考えられがちです。この点についても、WB工法は、さまざまな実験を行い、その効果を数値として確認することができる点も大きなメリットと言えるのではないでしょうか?通気断熱WB工法に関する各種実験データについては、公式サイト内にまとめられていますので、是非以下のページもご確認ください。

> 通気断熱WB工法の実験データについて

通気断熱WB工法のデメリット

通気断熱WB工法にはさまざまなメリットがあり、それを裏付ける実験データもきちんと存在することが理解できたと思います。ただ、実際にWB工法を採用するか迷っている方が知りたいのは、「メリットがある反面、デメリットもあるんでしょ?」ということなのではないでしょうか?どのような工法でも、メリットがある一方で、デメリットが指摘されるように、WB工法にも注意しなければならないデメリットがあります。

通気断熱WB工法は、機能性の高い魅力的な住宅が実現できる反面、従来の住宅工法と比較すると、住宅を建てる時にかかる初期費用が高くなる点が大きなデメリットになります。

WB工法の初期費用が高くなる理由は、上で紹介したようなさまざまな機能性を実現するため、特許を取得した指定の部材を使用しなければならず、どうしても家を建てるための建材費用が高くなってしまうからです。

戸建て住宅を建てる際には、まずある程度の予算を決めてから家の計画に入ると思います。家を建てる場合、住宅ローンの限度額などが関係してくることから、当初予定していた予算を大幅に超えるような住宅は、建てたくても建てられない…という現実問題が立ちはだかります。したがって、これから憧れのマイホームの新築を検討している方でWB工法の採用を考えている場合、その他の住宅工法よりも建築費用が高くなることを踏まえたうえで、建設会社などと相談するようにしましょう。大阪府内など、関西圏内で通気断熱WB工法の家を建てたいとお考えなら、悠建設にご相談ください。弊社では、お客様のご予算をお伺いし、最適なプランのご提案から行っています。

「WB工法は寒い!」ってホント?

通気断熱WB工法について、インターネットで検索してみると「WB工法 寒い」という検索キーワードが関連ワードなどとして表示されることが多いです。そのため、このキーワードを見た人は、WB工法で家を建てた人が「住んでみると寒い…」ということで後悔しているのだ…と考えてしまいがちです。

結論から言いますが、通気断熱WB工法で建てた家は、寒くありません。それどころか、エアコンなどに頼らなくても、一年中快適な室温を保ちやすい機能を保持した優れた住宅になります。

それではなぜ、WB工法で建てた家が寒いと考えられているのでしょうか?これについては、正確な原因は分かりませんが、恐らく「壁の中に通気層がある」ことから、冬場などにその通気層から隙間風が入ってくるのではないか…と考えられているのだと思います。ただ、当然そのようなことはなく、WB工法の家は、通常の住宅工法を採用した家と比較すると、優れた気密性を持っていますので、通気層からの隙間風は心配する必要がありません。

さらに、通気層に設置されている通気口は、形状記憶合金が採用されていて、気温が低い冬場は通気口が閉じ、通気層は断熱層としてその機能を発揮するようになります。そのため、WB工法の家は、高気密・高断熱を実現し、冬でも快適で温かい空間を実現してくれます。

まとめ

今回は、家族が健康で快適に生活できる家を建てるための工法、通気断熱WB工法について解説しました。

記事内でご紹介したように、通気断熱WB工法は、高気密・高断熱を実現し、快適な住環境をもたらせてくれるだけでなく、日々の生活にかかる光熱費の削減を実現する非常に優れた住宅工法として注目されています。

さらに、快適な居住性を実現するだけでなく、シックハウス症候群の原因となる有害物質を排出する機能があり、ご家族の健康な生活まで維持してくれるのです。この他にも、湿気の排出は、家の劣化を遅らせる効果もあるなど、さまざまなメリットがある工法として、年々その注目度が高まっています。

なお、通気断熱WB工法の家は、メーカーに認められた一部の取扱店しか建てることができません。関西圏内で、通気断熱WB工法の採用をお考えの方は、是非お気軽に悠建設までお問い合わせください。

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