注文住宅を建てる際には、駐車場としてどれぐらいのスペースを確保すれば良いのかで迷ってしまう方が多いです。

マイホームの駐車場については、単に自動車を停められるだけのスペースを確保すれば良いほど単純な物ではありません。確保する駐車スペースの大きさによっては、居住スペースが狭くなってしまう可能性があるため、余裕のある日常生活を希望するという方の場合、駐車場は最小限のスペースを確保すれば良いと考えている方も多いかもしれません。しかし、所有する自動車の大きさに対して、ギリギリの駐車スペースしか確保できていなかった場合、毎日の乗り降りの際に不便に感じる、車の出し入れが困難になるなど、さまざまな弊害が出てしまう可能性があるのです。また所有する自動車の大きさに関しては、家族構成などによって変わる場合もあり、将来的な車の買い替えなどのことも想定しておかなければ、駐車スペースが原因で購入できる車種に制限ができてしまう…と言った問題に発展する可能性があるのです。

そこでこの記事では、これから注文住宅の建築を考えている方に向け、理想的な駐車スペースの寸法を決めるためのポイントなどについて解説します。

注文住宅の駐車場の基準について

注文住宅を建てる際には、駐車場について悩む方は多いです。自宅に駐車場を設けるとなると、それだけ広い土地が必要になるため、土地の取得費が余計にかかってしまうことになります。ただ、車を所有している方がマイホームを建てる際には、駐車場は欠かせない外構設備となるのです。

そこでまず、注文住宅の新築における駐車場づくりの基本的な考え方について解説します。駐車場づくりは悩むポイントも意外に多いためぜひ参考にしてみてください。

駐車場の大きさに法的な基準はある?

日本で建物を建築する場合には、建築基準法のルールに従わなければいけません。建築基準法では、家づくりを始めとして、さまざまな建築に関する規定が設けられていて、注文住宅を建てる際にもそれにしたがって設計が進められるのです。

それでは、この建築基準法は、マイホームの敷地内に設ける駐車場について、その大きさなどを規定するルールなどを定めているのでしょうか?これについては、「駐車場を作る場合、幅が〇m以内でなければならない」など、具体的な数値を示すような定めは作られていません。つまり、注文住宅を建てる際、駐車場も敷地内に作りたいと考えている場合、基本的に所有する車の大きさを参考に、必要なスペースを確保するといった考えで問題ないと思います。
なお、駐車場に係わる法律について、駐車幅を決める際の法的基準として、国土交通省が定める「駐車場法」が参考にされるケースはあります。ただ、この法律に関しては、共同住宅(マンションやアパートなど)や共同駐車場における駐車場の設計や施工に関するルールを定めたもので、一般の戸建て住宅に設けられる駐車場については、直接的な適用義務がありません。そのため、あくまでも参考にされる程度と考えておけば良いです。

なお、自宅の敷地内に設ける駐車場については、法令などの制約を何も受けないというわけではありません。車の出入りに関係する「接道義務」(建築基準法)を始めとして、家を建てるエリアについて、自治体が独自で定めているルールなどがあるかもしれないため、その辺りは事前に確認する必要があります。

駐車場の大きさ決める時のポイント

上述の通り、注文住宅に設ける駐車場については、建築基準法などによって「確保できる面積は〇㎡」といった定めがあるわけではありません。そのため、基本的には、家を建てる段階で所有している車の大きさや、将来的に購入するかもしれない車の大きさなどを考慮して、スペースを確保すれば良いのです。

ちなみに、駐車場の大きさについては、「幅員(ふくいん)×奥行」で表されるのが一般的です。家を建てる段階で所有している車の「全幅(ぜんぷく)」と、ドアを開けて乗り降りするためのスペースのことを考慮して、どれぐらいのスペースを確保すれば良いのかを決定するのが一般的です。

以下に、駐車場の大きさを決める時のポイントについて簡単にご紹介しておくので、ぜひ参考にしてみましょう。

  • 所有車の大きさ
    駐車場に必要になるスペースについては、「駐車する車の大きさ」が基準になります。もちろん、車種によって大きさがかなり異なるので、その辺りに注意しながら必要なスペースを計算する必要があります。なお、一般財団法人自動車検査登録情報協会の「自動車の種類」によると、車幅1.7m以下の自動車が小型自動車(5ナンバー)に分類されるとあるため、普通乗用車については、最低でも1.7m以上の車幅があると考えられます。また、国土交通省が定めた「駐車場設計・施工指針」によると、普通自動車に必要となる駐車ます(幅員・長さ)は「幅員2.5m×長さ6.0m以上」とされています。なお、これを参考に、駐車場の幅員を2.5mにした場合、車幅が1.7mの普通乗用車を駐車すると、乗り降りの際のドアの開閉幅は0.8m(片側0.4m=40cm)しかない計算になるのでその辺りは注意しましょう。どちらにせよ、車の大きさを基準として駐車場の大きさを決めるのが最初のステップになります。
  • 乗り降りの際のドアの開閉幅
    駐車場の利便性のことを考えた時には、「所有する車が入るだけのスペース」では不十分です。自動車は、乗り降りのためにドアを開閉しなければならないため、その分の幅も考慮しておく必要があります。一般的に、人が一人歩くために必要になる幅は約0.6mとされているため、駐車場内で人が乗り降りできるようにするためには、車の全幅にプラスして、この幅を確保しておく必要があります。なお、両側のドアを開けて乗り降りできるようにしたいと考えているのなら、両側に0.6mを確保する必要があるため、車の全幅にプラスして1.2mは確保しておきたいです。

駐車場に必要なスペースを考える時には、上記のような事を考慮しながら決めていくと良いでしょう。注意点としては、家を建てる時点に所有している車の大きさだけに注目してはいけないということです。例えば、家を新築する時点は、夫婦二人暮らしのため、軽自動車に乗っているという方の場合、その時点での車の大きさで駐車場のスペースを決めると、子供が生まれてから大きな車に乗り換えようと思っても、駐車場に停められない…という問題が発生する可能性があります。したがって、駐車場のスペースを決める際には、将来的に乗り換えたいと考えている車の大きさなども考慮しておきましょう。

この他、駐車場の設置位置やカーポートなどの付属設備をどうするのかなどによっても必要なスペースが変わります。

参照:自動車の大きさについて

車種ごとの駐車場に必要なスペース

上でも紹介したと通り、注文住宅に設ける駐車場のスペースについては、そこに停める車の大きさによって異なります。一口に「自動車」と言っても、車種によって幅や長さが全く異なるため、どのような車を所有しているのか、また将来的にどのような車に乗り換えるのかによって、確保しなければならない駐車場のスペースが変わってしまうのです。さらに、駐車場の位置によっては、敷地内で車の向きを変える必要が生じたり、車路を用意しなければならない場合もあるため、駐車場を計画する際にはさまざまな点について検討しなければならないのです。

ここでは、駐車場に必要なスペースについて、車種別にご紹介していきたいと思います。

軽自動車の駐車場の寸法

まずは軽自動車です。ちなみに、日本国内では当たり前に使われている軽自動車ですが、この規格は日本独自の「ガラパゴス」な制度であり、海外には「軽自動車」のような厳格な規格と税制優遇などは設けられていません。諸外国にも「小型車」という規格はあるものの、軽自動車という規格はないのです。

軽自動車は、その他の自動車と比較すると、そのサイズはコンパクトな設計になっています。一般的な軽自動車のサイズは「幅1.48m以下、長さ3.4m以下、高さ2.0m以下」となっていて、国土が狭く細い道路が多い日本では非常に扱いやすいという点が特徴と言えます。それでは、軽自動車を停められるだけの駐車場を作るには、どの程度のスペースを確保すれば良いのでしょうか?以下に、国土交通省の指針と、一般的な住宅に用意される軽自動車用駐車場のスペースをご紹介しておきます。

  • 国土交通省による指針:長さ3.6m×幅員2.0m
  • 一般的な目安:長さ4.3m×幅員2.4~3.0m

なお、車ますに車両を駐車させるための後退・転回等が行なわれる車路の幅員については、「国土交通省の指針」を確認してみてください。

参照:国土交通省の指針

小型自動車の駐車場の寸法

小型自動車は、いわゆる「コンパクトカー」などと呼ばれるタイプの自動車です。小型で小回りが利きながら、軽自動車よりも余裕を持った車内空間が実現できるため、昨今、非常に高い人気を誇っています。

このタイプの車種のサイズは「幅1.7m以下、長さ4.7m以下、高さ2.0m以下」となっており、駐車場に求められるスペースは以下の通りです。

  • 国土交通省による指針:長さ5.0m×幅員2.3m
  • 一般的な目安:長さ5.0m×幅員2.7~3.3m

車路の幅員については、「国土交通省の指針」を確認してみてください。

普通自動車の駐車場の寸法

次は、「普通自動車」と呼ばれるタイプです。普通自動車は、コンパクトカーよりもやや大きいサイズ(幅1.7m、長さ4.7m、高さ2.0mよりも大きい)の自動車を指しているのですが、形状やサイズの範囲はかなり幅広いので、以下で紹介する駐車場のサイズはあくまでも参考程度と考えてください。

  • 国土交通省による指針:長さ6.0m×幅員2.5m
  • 一般的な目安:長さ5.7m×幅員2.7~3.6m

普通自動車用の駐車場は、上記のようなサイズのスペースが用意されます。ただ、その他の車種と比較すると、形状の範囲が非常に多いのです。一般的に「普通乗用車」と言われた時には、セダンタイプの自動車をイメージする方が多いと思いますが、この他にも、ミニバンやSUVと呼ばれる車種も普通自動車に分類されるのです。

つまり、普通自動車に分類される車を所有している方は、その中でもどのタイプの車なのかによって、必要な駐車場の大きさが変わると考えてください。

上記以外の車種に必要な駐車場の寸法

居住を目的とした一般的な注文住宅を建築する際の駐車場は、上記のように、所有している車の車種によって、必要な駐車場の寸法を決めていけば良いかと思います。しかし、以下のようなケースでは、も少し広い面積が求められることがあります。

  • 農耕作業用の車を駐車する
  • ハイエースなど、大きな車を所有している
  • 駐車場に自動車以外も置きたいものがある(自転車や物置など)

小型貨物車などに分類される自動車の場合、国土交通省の指針でも「長さ7.7m×幅員3.0m」と言った広いスペースの確保が推奨されています。また、駐車場の利用目的によっては、これ以上のスペースの確保が必要になる場合もあるでしょう。

注文住宅に駐車場を作る際の注意点について

ここまでは、注文住宅を建てる際、駐車場として確保すべきスペースの問題について解説してきました。駐車場に必要な面積については、所有している(もしくは将来的に購入予定の)車の大きさや駐車場の利用用途などから最適な寸法を計算すると良いです。

ただ、注文住宅を建てる際の駐車場づくりに関しては、駐車スペースの広さだけでなく、他にもいろいろなことを検討しなければいけません。そこでここでは、駐車場周りの注意点についていくつかご紹介します。

車庫タイプについて

駐車場を作る際には、付属設備を設置するのかという点も問題になります。一口に駐車場と言っても、屋根機能を設置しない野ざらしの駐車場もあれば、屋根機能を付属させためにカーポートを設置する、より高い保護機能を目的にガレージにするなど、いくつかのタイプがあるのです。野ざらしの駐車場の場合、車を停められるだけのスペースの確保を考えておけば良いのですが、カーポートやガレージと言った車庫タイプを選ぶ場合には、そうはいかないのです。

ここでは、カーポートとガレージの特徴を簡単にご紹介するので、必要な設備がどうかをよく考えてみましょう。

  • カーポートについて
    カーポートは、柱と屋根のみで構成された非常に単純な構成となっています。駐車場に壁は設けられないものの、屋根機能を追加することができるため、風雨や飛来物、紫外線などの影響から車を守ることができるようになります。また、悪天候時でも乗り降りの際に濡れなくて済むなど、駐車場の利便性が向上するという点もメリットです。ガレージと比較すると、単純な構造で施工も容易なため、比較的安価に設置することができるので、駐車場にかける費用を抑えたい人にはおすすめです。
  • ガレージについて
    ガレージは、屋根だけでなく、3方向を壁で囲まれた構造をした駐車場です。出入口にシャッターを設置し、それを閉めておけば、車を完全に囲えるため、外的要因の影響を全てカットすることができます。また、外部からの侵入を防ぐことができるようになるため、防犯面でも安心感の高い駐車場になります。ただ、設置にかかるコストが高い、固定資産税がかかる場合が多いなど、コスト面にデメリットがあるので注意が必要です。

上記のように、駐車場にも複数の車庫タイプが存在します。カーポートやガレージを設置する場合には、柱や壁を建てなければならないため、上で紹介した以上のスペースを確保しなければいけません。

カーポートやガレージを設置するなら車高にも注意

カーポートやガレージを設置して、屋根付き駐車場にする場合は、幅員と長さだけでなく、高さにも注意する必要があります。車高は、車種によって大きな違いが存在しているため、セダンタイプや軽自動車などを基準に屋根の高さを設定した場合、将来的な車の乗り換えに困ってしまうケースが考えられます。

ミニバンやSUV、ハイエースなどは、車高がかなり高いため、「子供が生まれたらミニバンのような広い車にしたい」と考えている方は、駐車場の屋根の高さもそれに合わせておく必要があります。車種ごとの車高は、以下の通りなので、設置するカーポートなどの高さに注意しましょう。

  • 軽自動車:1.5m
  • コンパクトカー:1.5m
  • 普通自動車(セダンタイプ):1.5m
  • ミニバンやSUV:2.0m

国土交通省の指針では、軽自動車やコンパクトカーで2.1m、普通自動車で2.2mの天井高を推奨していますが、用途によってはこれ以上の高さが求められるでしょう。

駐車スペースの床材

注文住宅の駐車場づくりでは、広さや高さだけでなく、床材の種類などにも注意する必要があります。分かりやすく言うと、地面の舗装方式も検討しておかなければならないということです。一般住宅の駐車場は、土のまま、砂利敷き、コンクリート舗装、アスファルト舗装など、いくつか種類があるのですが、採用する方式によってメンテナンス性などが大きく変わります。ここでは、床材ごとの特徴を簡単にご紹介しておくので、どれを採用すべきかよく検討しましょう。

  • 土のまま
    地面を押し固めるだけという方法です。その他の舗装方式と比較すると、駐車場が完成するまでの期間が短い、費用がかからない点がメリットです。しかし、車の出入りによって徐々に地面が削れてしまい、雨の日には水たまりなどができることで、車や履物が汚れてしまうといった問題が生じます。また、雑草などが生えてくるため定期的な草引きなど、メンテナンスの手間がかかります。初期コストはおさえられますが、将来的なことを考えると、デメリット面の方が大きいため、基本的には何らかの方法で舗装したほうが良いです。
  • 砂利敷き
    二つ目は、砂利を敷き詰めるという方法です。いわゆる砂利舗装と呼ばれる方法で、工期や舗装のコストが抑えられる点がメリットです。しかし、車の圧によって砂利が割れて細かくなるため、定期的な補充が必要など、メンテナンスの手間が大きくなります。また、石跳ねで車を傷つける恐れがある、出入りの際に大きな音が出るので、騒音問題を抱える可能性があるなど、大きな落とし穴があるので、その辺りも注意しましょう。
  • アスファルト舗装
    道路と同じアスファルトで舗装するという方法です。水はけが非常に良く、走行音なども静かになる点がメリットです。ただし、施工にそれなりのコストがかかる、舗装のやり替えが必要になるなど、メンテナンスのコストが高くなるというデメリットもあります。また、家の外観イメージに大きな影響を与える点も注意が必要です。
  • コンクリート舗装
    最後は、コンクリート舗装です。スタイリッシュな見た目の駐車場になる他、耐久性が非常に高く、メンテナンス性も高いという点が大きな魅力です。コンクリートで地面を舗装すれば、水を流すだけで掃除が済むなど、日々のお手入れ面は非常に楽になります。その一方、施工費用が高くなる点がデメリットです。注文住宅で駐車場を作る際には、コンクリートによる舗装が選ばれるケースが多いです。

上記のほか、その他の外構部分との調和を取るため、インターロッキングによる舗装を選ぶ人もいます。ただ、インターロッキングは、初期コストがコンクリート舗装以上に高くなる、隙間から雑草が生えてくるなど、日々のお手入れに手間がかかるなどの問題が考えられます。

まとめ

今回は、注文住宅を建てる際の、駐車場づくりの注意点について解説しました。車を所有している方がマイホームを建てる際には、駐車場のためのスペースを確保しなければならないのですが、きちんと利便性のことなども考えて、十分なスペースを確保しないと、将来的に後悔してしまう可能性があります。特に、家の建築時点の所有車を基準に駐車場スペースを決めた場合、将来的な車の乗り換えで、車種に制限が生じてしまう可能性があるので、注意しましょう。

なお、新築時の駐車場づくりでは、以下のような事を失敗に感じる方が多いようなので、同じ失敗をしないよう注意しましょう。

  • 駐車スペースが思ったよりも狭い
    駐車場づくりの失敗では、後から「思ったよりも狭い…」と感じるというものが多いです。これは、幅の設計ミスとなるのですが、狭く感じる駐車場は、車の出し入れの際に苦労する可能性が高いので、日常的にストレスを感じてしまう可能性があります。また、将来的に車の乗り換えを考えた時にも、今よりも大きな車は選べないなど、車種に制限がかかる可能性が高いです。
  • 前面道路や建物との配置ミス
    駐車場の配置を間違ってしまうと、車の出し入れが難しくなる可能性があります。例えば、建物が邪魔になって、前面道路の様子が分かりにくい、駐車の際にフェンスに接触しそうになるなどの問題が考えられます。駐車場を作る際には、前面道路の幅、建物や外構、植栽の配置など、周辺環境についてもよく確認しておく必要があります。そうしないと、車の出し入れが難しい駐車場になり、ストレスの要因となります。

駐車場づくりは、スペースだけでなく、車の出し入れのしやすさなども確認しながら設置場所を選定していくようにしましょう。

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