
注文住宅を建てる際には、対面キッチンの導入に憧れているという方が多いです。対面キッチンは、おしゃれで開放的な空間を作りだせることが大きなメリットとみなされていて、家を建てるなら「対面キチンは外せない!」と考えている方は多いはずです。
ただ、対面キッチンについてインターネットで調べてみると、リビング側からキッチンの内部が丸見えになってしまう、調理中の水跳ねや油跳ねでリビング側が汚れてしまうなど、ネガティブな意見を見かけることもあり、本当に対面キッチンを導入しても良いのかで迷ってしまうという方も少なくないのです。実は、対面キッチンにありがちなこのような悩みを解消するための方法として「腰壁の設置」があります。腰壁を設置すれば、キッチンの機能性はそのままに、調理中の手元を隠せる、水跳ねの影響を抑えるなど、さまざまな効果が期待できるとされているのです。
そこでこの記事では、キッチンの腰壁とはどのような工夫なのかや実際に設置することで得られるメリットやその逆のデメリットについて解説します。また、腰壁の設置については、生活し始めてからミスマッチを感じて後悔する方もいるとされているので、腰壁に後悔を感じてしまいやすいポイントとその対策もご紹介します。
そもそもキッチンの腰壁とは?
それではまず、そもそも「キッチンの腰壁って何?」という疑問にお答えします。
キッチンの腰壁は、床から腰の高さ程度まである壁のことを指しています。これを設置することで、対面キッチンの良さは残しつつ、リビング側から作業中の手元を隠したり、調理中に生じる水跳ねや油跳ねがリビング側に飛んでいかないようにするという機能を備えることができるようになるのです。ちなみに、腰壁があるキッチンについては、立ち上がりキッチンなどと呼ばれるケースもあります。
キッチンの腰壁が設置される位置については、対面キッチンを採用する際に、キッチン部分とリビング・ダイニングとの間、空間を区切るように設置するのが一般的です。対面キッチン特有のおしゃれさにアクセントを加えることも出来ますし、さらに先程紹介したような機能性も加えられることから、非常に有用なアイテムと言えるでしょう。
ちなみに、キッチンとリビング・ダイニングの間に腰壁を設置せず、空間が繋がっているタイプのキッチンは、「フルフラットキッチン」と呼ばれます。
キッチンの腰壁を設置するメリット
キッチンの腰壁は、上で紹介しているように、キッチンとリビング・ダイニングを仕切る目的で設置されます。基本的に、アイランドキッチンやペニンシュラキッチンなど、対面キッチンを採用する場合に設けられるのですが、これは以下のようなメリットが得られるからです。
メリット1 キッチンの内部や作業中の手元を隠せる
腰壁を設置する一つの目的は、調理中の手元がダイニング側から見えなくなる、またダイニング側からキッチン内部が見えにくくなるので、食材や調味料、調理器具などの散らかりを隠すということです。
調理スペースは、作業を進める際にどうしても散らかってしまいやすいため、人に見られたくないという意識が働きます。しかし、昨今の住宅のように、キッチンとリビング・ダイニングが同じ空間内にあるという間取りの場合、見ようとしていなくてもキッチン内部が目に入ってしまうのです。
そのため、急な来客があった際などには、散らかったキッチン内部がみられてしまい、恥ずかしい思いをしてしまうこともあるわけです。このような時、腰壁を設けておけば、目隠しとして働いてくれるようになる、ダイニング側からの視線を遮ってくれるというメリットが得られるのです。
メリット2 作業による水、油跳ねの影響を低減できる
二つ目のメリットは、調理や皿洗いの際に生じる油跳ねや水跳ねの影響が、リビング・ダイニング側に出にくくなるという点です。
キッチンとリビング・ダイニングの空間が繋がっているフルフラットキッチンの場合、キッチンでの作業中に生じる水跳ねや油跳ねがダイニング側に達してしまう場合があります。もちろん、腰壁があれば完全に防げるようになるというわけではないのですが、大部分の水や油を受け止めてくれるようになるので、ダイニング側が汚れにくくなります。
腰壁がない場合、小まめに掃除しているつもりでも、キッチン周辺の床が汚れやすくなるので、この点は大きなメリットになるのではないでしょうか。
メリット3 カウンターを設置できる
腰壁を設置すれば、上部にカウンターを作ることができます。カウンターがあれば、食事の前後に食器を置く場所として活用することができ、キッチンの利便性が大幅に高まります。対面キッチンの場合、作った料理を置いておくスペースがない…というケースも少なくありません。このような時、腰壁の上にカウンターがあれば、食器や料理を置けるスペースとなり、キッチン周りが散らかるのを防ぐ効果も期待できます。
さらに、大きなカウンターを設置すれば、その部分をダイニングテーブルとして使用したり、子供に勉強させる場所として活用することができます。カウンターをダイニングテーブル代わりに使用することができるようになれば、本来はテーブルを置くはずだったスペースを他のことに使えるようになるなど、効率的な空間利用の面でもメリットが得られます。
メリット4 収納のためのスペースを確保できる
キッチンは、調理に使用する道具のほか、食料品や調味料、食器など、たくさんの物が必要になるので、どうしても収納スペースが不足しがちです。実際に、キッチンの棚や引き出しの中がパンパンになっていて、必要な物を取り出すだけで一苦労に感じているという方は多いのではないでしょうか?
実は、腰壁を設置すると、キッチン側に棚として使えるスペースを設けたり、リビング・ダイニング側に収納スペースを設けたりすることができるようになるのです。また、カウンター部分に調味料を置くためのスぺースを確保することも可能など、キッチンの収納周りの悩みを解消できる可能性があります。
メリット5 アクセントとなりおしゃれな空間を演出できる
キッチンの腰壁は、上で紹介しているような実用面でのメリット以外にも、インテリアとして空間にアクセントを加えてくれるというメリットもあるのです。例えば、腰壁のダイニング・リビング側から見える部分にタイルなど、他とは異なる素材を使用することで、空間のデザイン性を高めておしゃれな空間づくりのための工夫を施すことも可能になります。
もちろん、部屋全体を統一感のあるスッキリとした雰囲気に仕上げることも出来ますし、腰壁をインテリアの一部として活用することができるわけです。最近では、キッチン部分をお洒落なカフェのようなデザインにするなど、空間に彩を加える方が増えています。
キッチンの腰壁を設置するデメリット
次は、腰壁を設置する際に注意したいデメリット面についてです。以下のような点がデメリットとされているので、実際に腰壁を導入する際には注意しましょう。
デメリット1 油や水はねは完全に防止できない可能性が高い
上で解説したように、腰壁には、調理の際に生じる水跳ねや油跳ねを防いでくれるというメリットがあります。しかし、腰壁があれば、リビング側の汚れが完全に防げるというわけではないという点に注意が必要です。腰壁の高さによっては、調理中の油跳ねを完全に防ぐことができず、リビング側に影響を及ぼしてしまうことも普通にあるのです。
したがって、腰壁の「水跳ね・油跳ね防止機能」を過度に期待していた方の中には、設置した意味がなかったじゃないか…とデメリットに感じてしまう場合もあるのです。油跳ね防止などを目的に腰壁を設置する場合、現在のキッチンで、どの程度の高さまで水や油が飛んでいるのかを確認し、それを参考に高さを決めるとより効果的な腰壁になると思います。ただ、それでも完全に防げるわけではないので、リビング・ダイニング側の掃除を小まめにしなければならないということは頭に入れておきましょう。また、腰壁で油や水を受け止めるということは、その部分が汚れてしまうということを意味します。そのため、キッチン側の腰壁については、汚れを拭き取りやすい素材を採用するのがおすすめです。
デメリット2 圧迫感や閉塞感を感じる場合がある
腰壁の設置は、対面キッチンのメリットである開放感を打ち消してしまう可能性がある点がデメリットです。腰までの高さであっても、壁を作ることに違いはないので、フルフラットなキッチンと比較すると、開放感はどうしても低下してしまいます。特に、収納スペースの拡大を目的に、幅が広く背の高い腰壁を設置した場合、見通しが悪くなることで、窮屈な印象になってしまう場合があります。
また、腰壁は、上部にカウンターを設置して、小物や調味料を配置できるスペースとして利用する場合が多いのですが、配置する物が多くなると圧迫感が強くなります。開放感を優先する場合は、なるべく置くものを少なくするという工夫が必要になるのですが、この場合、腰壁の機能性が少し失われたように感じてしまいます。対面キッチンは、開放感のある空間を実現する目的で導入を考える人が多いのですが、キッチンの機能性のことを考えると、腰壁も導入したいものです。ただ、開放感のある空間に閉塞感(圧迫感)を加えてしまうという、空間デザイン的には相反するアイテムであるという点はデメリットになります。どの程度の高さ、広さの腰壁なら違和感を感じないのかは、実物を見てみないと判断しにくいので、ショールームなどに足を運んで、見え方を確認してみるのがおすすめです。
デメリット3 掃除の手間がかかる
導入する腰壁の構造や素材によっても異なりますが、フラットなキッチンと比較すると、構造物が増える、凹凸が増えるという点から、掃除の手間はどうしても増えてしまいます。例えば、腰壁を設置すると、フラットなキッチンよりも凹凸が増えてしまうので、その部分にほこりや汚れが蓄積しやすくなります。また、水を使う場所となるので、カビが繁殖する恐れもあるでしょう。
キッチン周りの汚れは蓄積すればするほど、綺麗にするのが難しくなるので、小まめな掃除が求められます。日常的に、キッチン周りの掃除をしなくてはならなくなり、さらに汚れがたまりやすい場所が増えてしまうという点は明確なデメリットと言えるでしょう。腰壁を採用する場合、なるべく汚れが付着しにくい、掃除がしやすい素材を使用するのがおすすめです。
デメリット4 腰壁の上が散らかりやすい
腰壁を設置すると、上部にさまざまな物を置ける場所として活用できる点が大きなメリットになります。しかし、「物が置ける」スペースになるという点が、意外な落とし穴になってしまうのです。
先程紹介したように、キッチン周りは物がたくさん必要になる場所です。そのため、ちょっとした物を置けるスペースとなる腰壁の上は、つい物を置きたくなってしまう場所となるのです。また、リビング側からも物を置くことができるため、腰壁の上はどんどん物が増えて行ってしまうケースが非常に多いです。
当然、人の目に入る腰壁の上にさまざまな物が置かれていれば、雑多な印象を与えることになります。腰壁は、物を置けるスペースではあるものの、スッキリと整地整頓された部屋にするためには、物を置きすぎないという点に注意しなければいけません。
キッチンの腰壁に後悔しがちな失敗と後悔を防止する対策
ここまでの解説で分かるように、キッチンの腰壁は、メリットとデメリット両面があります。そのため、良かれと思ってキッチンに腰壁を設置したものの、それに後悔を感じてしまうという方も一定数存在するのです。そこでここでは、キッチンに腰壁を設置したことを後悔しがちなポイントと、それを防ぐためにおさえておきたいポイントをご紹介します。
キッチンの腰壁に後悔しがちなポイント
まずは、腰壁の設置に後悔する可能性があるポイントからご紹介します。
腰壁の高さが低すぎたor高すぎた
腰壁に後悔しがちなポイントとして「高さ」があります。キッチンの腰壁は、低すぎても高すぎても、以下のようなミスマッチを感じて後悔する可能性があるのです。
- 腰壁が低すぎると、手元が隠れなくなるため生活感が出てしまう
- 高すぎる腰壁は、LDKが狭く感じられる
- 腰壁を高くし過ぎて、リビング側の家族とコミュニケーションが取りにくい
キッチンの腰壁を設置する際、その目的やライフスタイルを踏まえずに高さを決めてしまうと、上記のようなミスマッチが発生しやすくなります。腰壁の高さは、後から失敗に感じても、そう簡単に変えられないので、慎重に検討するようにしましょう。自分に合った高さがイメージできない場合、ショールームなどに足を運んで実物を確認するのも一つの手です。
水・油跳ねの影響が想像以上に大きかった
先程紹介したように、キッチンの腰壁は、水・油跳ねを防止できるという機能性が大きな魅力の一つです。ただ、腰壁があれば、完全に水跳ねや油跳ねの影響を防げるのかというとそうではないのです。
そのため、腰壁を設置した方の中には、「水・油跳ねがもっと防げると思っていた…」などと、後悔を感じてしまう可能性があるいのです。ちなみに、腰壁は、水・油跳ねを完全にガードできるものではないので、ある程度は、掃除の手間が増えると最初から認識しておけば、後悔を感じる可能性は少なくなると思います。
ただ、部屋の開放感を意識して、腰壁を低くした場合、水・油跳ねの影響がリビング・ダイニング側に出やすくなるので、その点は注意しましょう。完全にガードはできないものの、可能な限り影響を少なくできるような高さを意識しておくと良いです。なお、腰壁に使用する素材については、お手入れをしやすい素材を選ぶのがおすすめです。
コンセントがない、足りない
この問題も失敗に感じる方が多いので注意しましょう。キッチンの腰壁の上部は、物を置けるスペースになると紹介しました。腰壁の幅によっては、トースターなどの調理家電を配置する場所として利用できるのですが、この場合は、腰壁にコンセントを配置しておかなければいけません。
腰壁にコンセントを設置しなかった場合、単に調理家電が置けるだけで、使用する際には別の場所に移動させなくてはならなくなり、「使い勝手が悪い…」と後悔する可能性があるのです。キッチンに腰壁を設置する場合、そこに何を置く想定なのか、どんな使い方ができると便利だと感じるのかをよく考え、コンセントの必要性を慎重に判断しましょう。
腰壁で後悔しないためのポイント
それでは最後に、腰壁の設置に後悔しないため、おさえておきたいポイントをいくつかご紹介します。
高さの決め方について
キッチンの腰壁を設置する際には、機能性も大切ですが、LDK全体の雰囲気を損なわないようにしなければいけません。対面キッチンを選んだ方の多くは、開放感が得られるというポイントを利点に感じていると思いますが、何も考えずに腰壁を設置すると、その開放感が失われてしまう可能性があるのです。
一般的にですが、キッチンに設置する腰壁の高さについては、95~115cm程度に収められています。なお、キッチン側の立ち上がりについては、15~25cm程度確保するというパターンが一般的なのですが、立ち上がりの高さについては、腰壁を設置する目的によって求められる高さが変わります。例えば、以下のような感じです。
- なるべくフラットで開放感を維持したい・・・10~15cm
- 水・油跳ねを防ぎながら開放感も維持したい・・・20cm程度
- 調理家電や手元などキッチン内が見えないようにしたい・・・25~30cm
腰壁の高さは、設置する目的と、空間デザイン両面を重視しながら最適な高さを選ぶようにしましょう。なお、高さのイメージがなかなかできないという場合、ショールームなどに足を運んで実物を確認すると良いです。
コンセントの必要性について
腰壁は、コンセントを設置しておけば、何かと使い勝手の良いキッチンになります。コンセントがあれば、腰壁の上に調理家電を配置して、そのまま使用することができるようになるため、キッチン内部の作業スペースが散らかりにくくなります。
ただ、コンセントの必要性については、キッチン全体の使い方を良く考慮して選ぶようにしましょう。例えば、セパレートキッチンを採用して、壁側に調理家電を配置するという使い方を想定する場合、腰壁は配膳や食器の片づけに利用することが想定されるため、コンセントは特に必要ないと言えます。「I型」など、背面側に調理家電を配置するスペースを確保できない場合、腰壁の上を活用する可能性があるので、コンセントは用意しておいた方が良いでしょう。
お手入れのしやすさについて
キッチンの腰壁は、水跳ねや油跳ねを受け止める目的で設置する方が多いです。つまり、キッチン側の腰壁は、水垢や油汚れが付着しやすくなるのです。
したがって、日常的なお手入れのことを考えると、凹凸が少ない構造にする、汚れを拭き取りやすい素材を採用するなど、お手入れのしやすさを重視しておくことが後悔を防ぐポイントになります。また、汚れなどが目立ちにくい色を選択すると、キッチン内部が清潔に見えるようになります。
なお、腰壁を導入する際には、リビング・ダイニング側の壁も、掃除のしやすさを考慮しておくのがおすすめです。
腰壁の幅について
腰壁は、上部をカウンターとして利用できる点もメリットの一つです。先程紹介したように、幅を広く取っておけば、配膳のために使用できるだけでなく、ダイニングカウンターとして使用することができるようになります。しかし、腰壁の用途が、キッチン内部が見えないようにしたい、手元が隠れれば良いという場合、そこまで幅を広くする必要はありません。
つまり、腰壁を設置する際には、どのような用途で使いたいのかを明確にして、どの程度の幅が必要になるのかを設計の段階で決めておかなければならないのです。配膳に使えれば良いという場合なら、20cm程度の幅があれば良いのですが、ダイニングカウンターや子供が勉強できる場所として使用したいという場合、50cm前後の幅を確保したいものです。
カウンターの幅に関しても、後から変更することは難しいでの、腰壁の使い方を明確にしておきましょう。不必要な幅をとってしまうと、室内の通路が狭くなってしまいますし、その逆に狭い場合は置くものが限られてしまうので、使い勝手の悪さを感じる可能性があります。この辺りも、ショールームで実物を確認しながら決めていくと良いでしょう。
まとめ
今回は、対面キッチンを導入する際に設置されることが多い腰壁について、これがどのような役割を担っていて、設置することでどんなメリットが得られるのかについて解説しました。
記事内でご紹介したように、腰壁とは、文字通りキッチンとリビングの間に設置する腰の高さ程度の壁のことを指しています。これを設置することで、キッチンの利便性が高くなる、目隠し機能が得られるなど、さまざまなメリットが得られるとされています。
しかし、腰壁を設置する場合、ある程度の圧迫感や閉塞感が出てしまう可能性があり、対面キッチン特有の開放感が失われるかもしれないという点は注意が必要です。また、腰壁に求められる機能性は、高さや幅が適切でないと、思ったような効果が得られないため、腰壁の設置に後悔しないためには、何の目的で設置するのかをよく考えながら、高さ・幅を決めていきましょう。
