近年の家づくりでは、洗練されたおしゃれな雰囲気を演出できる内装技法のひとつである「折り下げ天井(下がり天井)」が人気になっています。折り下げ天井は、天井の一部を意図的に下げるという内装技法なのですが、これを取り入れると、空間にメリハリがつくことで、おしゃれで魅力的な雰囲気を作り出すことができるとされています。

ただ、この折り下げ天井については、「天井が低くなる」という点から、窮屈に感じたり、圧迫感が出てしまうのではないかと懸念される方も少なくありません。また、一般的な水平な天井と比較すると、特殊な工事を行わなければならない点から、折り下げ天井の導入にはそれなりのコストがかかってしまうという点も気になるはずです。

そこでこの記事では、これから新築注文住宅の購入を検討している方に向け、折り下げ天井とはどのようなもので、取り入れることでどんなメリットがあるのかについて解説します。なお、記事内では、折り下げ天井のデメリットと自宅に取り入れる際の注意点についても解説します。

折り下げ天井とは?

それではまず、「そもそも折り下げ天井とは?」という基本的な疑問について解説していきます。

冒頭でご紹介したように、折り下げ天井は、天井の一部を意図的に下げる内装技法のことを指しています。この手法を取り入れることで、空間に変化が生まれることになり、視覚的な広がりを演出できるようになるとされます。近年では、一般住宅でも採用されるようになっていますが、おしゃれな空間を求める飲食店などでは、当たり前に採用される手法となっています。

住宅においては、LDKのキッチンエリアに取り入れられることが多いのですが、この他にも、リビングに隣接する和室や洋室に取り入れることもおすすめできます。

折り下げ天井の基礎知識

折り下げ天井は、「コンテンポラリー(現代的・今日的)」な空間演出技法として、住宅業界でも近年人気の天井スタイルとなっています。この内装技法は、単なる空間デザインの面にメリットがあるだけでなく、機能面でも優れたポイントがあることから、さまざまな目的をもって採用されています。

折り下げ天井は、一般的な下げ幅が10~20cm程度となるのですが、空間演出のために間接照明をいれる場合、照明の高さを考慮してさらに下げ幅が大きくなることもあります。空間デザインや機能面を重視する場合、もとの天井よりも30cm程度も下げるケースもあるとされます。

ただ、注意点としては、建築基準法上、居室の天井は「2.1m以上の高さを確保する必要がある」とされているため、この基準を無視した状態で下げ幅を確保することは難しいです。

折り下げ天井を導入する目的

折り下げ天井は、家づくりの際に必ず採用しなければならないというものではありません。中には、通常の天井と比較すると、特殊な内装技法を採用するわけなので、コストがかかるのになぜ折り下げ天井を導入するのか疑問に感じるという方もいるかもしれませんね。

実は、天井に高低差を設ける折り下げ天井は、以下のような機能があるため、住宅業界でも人気の内装技法になっているのです。

  • 空間に広がりを感じさせることができる
  • 天井のアクセントになり、空間にメリハリができる
  • ひと続きの空間をゆるやかに区切れる
  • 梁(はり)や配管を隠し、スッキリした空間にみせる

折り下げ天井は、単調になりがちな天井部分に、立体感を与えることができるため、視覚的な広がりやメリハリを生み出してくれます。特に、LDK(リビング・ダイニング・キッチン)などの広い空間に採用した場合、キッチン部分を緩やかに区切ることができるようになるので、空間デザインの面では非常に有効な技法となるのです。

また、折り下げ天井部分について、他の天井部分と異なる仕上げ材を採用すれば、空間にアクセントを加えることができ、洗練されたおしゃれな雰囲気を演出できます。この他にも、梁(はり)や配管など、部屋の雰囲気を壊してしまう目立つ部分を隠すことを目的として折り下げ天井を採用するケースも多いようです。飲食店などで折り下げ天井が良く採用されているのは、ダクト配管を隠したうえで、間接照明を使っておしゃれな空間を演出することができるからです。

住宅業界においては、特にLDKのキッチン部分に採用されることが多いです。これは、リビング・ダイニングとの空間を分ける、ダクト配管を隠すことが大きな目的になります。

折り下げ天井のメリットについて

それでは、折り下げ天井を導入することで得られるメリットについて、もう少し詳しく解説していきます。

メリット1 空間にメリハリがつき、広がりを演出できる

折り下げ天井は、コンテンポラリー(現代的・今日的)」な空間演出技法として人気になっていると紹介したように、これを取り入れることで空間にメリハリがつき、広がりを感じさせることができるという効果が得られます。折り下げ天井は、単調な空間にアクセントを加える効果があるため、特に大きなワンルーム空間においては、視覚的な区切りが生まれ、空間に表情とメリハリがつくという効果が得られるわけです。

例えば、折り下げ天井が良く採用されるLDKについては、リビングダイニングの奥にキッチンがある場合、折り下げ天井によって遠近感が強調され、より奥行がある空間のように感じられます。特に、折り下げ天井となる部分に異なる仕上げ材を使用する、折り下げ天井に間接照明(コーブ照明)を取り入れるという手法を採用すれば、空間の広がりをさらに強調することができます。

折り下げ天井部分の仕上げ材を、他の天井とは異なるものにすれば、空間にアクセントが加えられることになり、天井特有の単調な印象が薄れ、より広がりを感じられるようになるとされています。また、折り下げ天井には、間接照明が仕込まれることが多いのですが、これは、照明により空間に陰影がつくことで立体感が出るからです。さらに、天井面が明るくなるという効果もあり、視覚的な広がりがより強調されます。

折り下げ天井は、空間にメリハリがつくことで広く感じられるようになるものの、吹き抜けのように空調効率が下がるといったことがない点も嬉しいポイントになるでしょう。

メリット2 おしゃれな空間を作り出せる

折り下げ天井は、雰囲気の良い飲食店などに採用されていることからも分かるように、おしゃれな空間づくりに非常に効果的な内装技法となります。天井に高低差がつく、仕上げ材を変えることでアクセントになる、間接照明との相性が良いという点から、単調になりやすい天井部分に動きが生まれ、視覚的な面白みが増すという効果が得られるのです。

木造住宅の多い日本では、折り下げ天井の仕上げ材として木目調のクロスなどが採用されることが多いです。折り下げ天井は、単なる天井の一部なのではなく、インテリアの一部として役割を果たすこともでき、木目調の仕上げ材を採用すれば、その他の木材部分との統一感が出るため、部屋全体がおしゃれな空間になります。

さらに、折り下げ天井は、間接照明との相性が非常に良いため、天井の段差部分にコープ照明を設置するだけで、のびやかな光が天井を照らし、空間にムードを追加してくれます。段差部分に間接照明を設置すると、深みと温かみを感じられるおしゃれな空間を演出できますし、さらに手元を明るく照らしてくれるスポットライトを組み合わせれば、空間の利便性そのものが高くなるでしょう。

メリット3 目隠し機能がある

主にマンションなどの集合住宅で折り下げ天井を採用した時のメリットとなる部分が目隠し機能です。マンションなどの集合住宅は、天井裏の空間が狭くなりがちで、太い配管や構造の梁が室内側に露出してしまう場合があるのです。配管などが露出された武骨な空間を好む人もいますが、多くの方は雑然とした印象など、あまり好ましい空間デザインではないと感じるはずです。

例えば、キッチンなどについては、換気扇の種類や配置によって、排気のためのダクト配管を外壁まで通さなければいけません。当然、太いダクト配管が露出されてしまうと、空間のデザインを壊してしまう可能性が高いですよね。これが、折り下げ天井を採用すれば、そのような配管を隠すことができるようになり、洗練されたお洒落な空間デザインが維持できるようになるのです。

折り下げ天井のデメリットについて

次は、折り下げ天井のデメリット部分についてです。折り下げ天井は、以下のようなデメリットがあるので、注意が必要です。

デメリット1 天井高によっては圧迫感が生じる

折り下げ天井を取り入れると、その部分は通常の天井よりも低くなります。そのため、特定の条件下では、圧迫感を感じてしまう恐れがあるのです。

例えば、もともと天井が低い部屋や小さな空間に折り下げ天井を取り入れる場合や、背の高い家族がいるという場合、圧迫感を感じやすくなります。最近では、日本人の背が高くなっていますが、折り下げ天井を採用した場合、180cm以上の身長の方は天井が近く感じられるため、窮屈さを感じてしまう可能性があります。他にも、天井に対しており下げ天井の割合が大きい場合、視覚的な圧迫感が増すとされていますし、折り下げ天井部分のカラーを濃いものにすると、色彩心理により閉塞感を感じてしまう人がいるとされています。

したがって、折り下げ天井を採用する際は、家族全員でモデルハウスなどに足を運び、折り下げ天井のある空間を一度体験してみると良いです。圧迫感や閉塞感は、人によって感じ方が異なるので、家族全員の意見を聞きながら採用するかどうかを決めないと、住んでから後悔する結果になるかもしれません。どうして折り下げ天井を取り入れたい場合は、照明を使って明るい印象にすることで、圧迫感を軽減するといった対策を施すと良いです。

※キッチンに折り下げ天井を採用する場合、コンロとレンジフードの離隔距離に注意してください。コンロとレンジフード(下端)の離隔距離は、消防法で「80cm以上」と定められているうえ、換気不良を防止する観点から、建築基準法で「100cm以下」という定めもあります。つまり、80~100cmに収める必要があるので、折り下げ天井の下げ幅は、圧迫感などの問題以前に法令に従う必要もあるのです。

デメリット2 掃除の手間が増える

二つ目のデメリットは、折り下げ天井は、一般的な水平の天井と比較すると、掃除の手間が増えるという点です。

例えば、キッチン部分に折り下げ天井を取り入れた場合、上部の段差は油汚れが付着しやすくなるため、小まめな掃除が必要になるうえ、油煙が原因となり汚れやシミなどが付着しやすくなるのです。また、折り下げ天井の段差部分は、くぼんでいる部分にホコリが溜まりやすくなり、掃除を怠ると間接照明を点けたときにホコリが丸見えになってしまい、部屋の景観を逆に悪くする要因になるのです。

折り下げ天井は、通常の天井部分よりも一段低くなるものの、高所に位置するのは変わりありません。そのため、掃除の難易度は、他の場所よりも高くなり、小まめな掃除が必要と理解していても怠ってしまいがちになるのです。小まめな掃除をしておけば、汚れが蓄積するのを防げるので、掃除の際の手間は少なくなります。しかし、日常的な掃除の手間が増えてしまうことは間違いないので、明確なデメリットになると言えるでしょう。

なお、折り下げ天井の掃除に関しては、少し工夫が必要です。高所となるので、雑巾を使って拭く、掃除機で埃を吸うといったことは難しくなります。したがって、伸縮タイプのハンディモップを使用することになるのですが、掃除の際に調理場所にホコリが落ちてしまうので注意が必要です。キッチンなどに折り下げ天井を採用する場合、汚れが目立ちにくい、もしくは拭き掃除がしやすい仕上げ材を採用するなど、折り下げ天井側に工夫を施すことも大切です。

デメリット3 コストがかかる

折り下げ天井の最もわかりやすいデメリットは、導入するためにはコストがかかるという点です。一般的な水平の天井を一段下げる必要があるので、追加工事扱いとなり、通常の天井よりも工事費用が高くなります。これは、通常の天井にプラスして材料や工数が必要になるからですね。間接照明を取り付ける場合は、さらにコストアップすると考えておきましょう。

折り下げ天井は、空間デザインの面では非常に優れた内装技法であることは間違いありません。しかし、実生活で何かを便利にしてくれるというメリットはないので、メリットとコストのバランスをよく考えて導入するかどうかを決めるようにしましょう。家を建てる際には、予算の問題が立ちはだかるので、取り入れたい工夫については、きちんと優先順位を付けたうえで、低い希望は見送るという勇気も必要になります。

折り下げ天井導入時の注意点について

それでは最後に、これから注文住宅の購入を検討している方に向け、折り下げ天井を導入する際に注意しておきたいポイントをご紹介します。ここまでの解説で分かるように、折り下げ天井は、メリットが得られる一方、デメリットに感じられるポイントも存在します。

したがって、折り下げ天井の導入に後悔しないようにするためにも、以下の点は押さえておきましょう。

適切な天井高を確保する

先程紹介したように、折り下げ天井は、特定の条件下において圧迫感を感じてしまうことがあります。圧迫感を避けるためには、適切な天井高を確保しておくことが大切です。

具体的には、天井を下げる部分についても、最低でも2.1m以上の天井高を確保しておくのが望ましいです。例えば、もともとの天井高が2.4mの場合、下げ幅については最高でも30cm以下に抑えるようにしましょう。

天井高については、ハウスメーカーや工務店によって標準となる数値が異なるので、事前に確認してどの程度なら下げられるのかを明確にしておくと安心です。

空間に適した照明を選択する

折り下げ天井の空間デザイン力を最大限引き出すには、照明選びも非常に重要です。

先程紹介したように、段差部分に間接照明を設置すれば、おしゃれな空間を演出することができます。しかし、折り下げ天井の設置場所によっては、実用面のことも考慮すべきと言えます。

折り下げ天井は、LDKのキッチン部分に取り入れられることが多いのですが、この場合、スポットライトやペンダントライトを設置することで、おしゃれな雰囲気を演出できるだけでなく、調理中も手元の明るさを十分に確保できるという実用面のメリットが得られるのです。どのような照明を設置すれば良いのかは、建築会社と相談しながら決めていくと良いでしょう。

デザインにも注目

折り下げ天井は、それ自体がインテリアの一部になるということがメリットと紹介しました。ただ、折り下げ天井部分だけを切り取ったデザインに注目するのでは、空間全体として見た時に違和感を感じてしまう可能性があるのです。

したがって、折り下げ天井の仕上げ材については、取り入れる場所全体の空間デザインを考慮しながら決めると良いでしょう。例えば、床材などと合わせて木目調の仕上げ材にすれば、統一感のある空間と温かみの感じる空間が実現します。もちろん、白やグレーのようなニュートラルカラーを基調とした仕上げ材を選べば、空間にアクセントを加えることができ、メリハリが感じられるようになるでしょう。

掃除について

先程紹介したように、折り下げ天井を導入する場合、掃除の手間が増えてしまいやすいです。照明を設置することでくぼみが生じる場合には、その部分に多くのホコリが蓄積してしまうことになり、掃除を怠ると空間デザインに逆効果を与えてしまう場合もあるのです。

したがって、折り下げ天井を採用する場合、掃除のしやすさや汚れにくさにも注目して設計してもらうのがおすすめです。例えば、仕上げ材については、汚れなどが付着しにくいものや汚れが目立ちにくいものを採用するといった工夫が考えられます。掃除については、高所の掃除もしやすくなるようなアイテムを用意すると良いです。

まとめ

今回は、洗練されたおしゃれな雰囲気を演出できる内装技法のひとつ折り下げ天井について解説しました。

記事内でご紹介したように、折り下げ天井は、空間にメリハリや個性、広がりをもたらせてくれる魅力的な空間デザイン技法と言えます。適切な場所、デザインの折り下げ天井を設けることで、部屋の印象を大きく変えることができ、洗練されたお洒落な空間を実現することができるのです。

ただ、折り下げ天井は、通常の水平な天井と比較すると、特殊な工事が必要になる、使用する建材が増えてしまうなどといったことが要因となり、家の建築コストは高くなってしまいます。また、実生活のことを考えても、掃除の手間が増えてしまう、デザインや下げ幅によっては圧迫感を感じる空間になるかもしれないなど、いくつか注意しなければならないポイントもあります。

折り下げ天井は、近年の新築業界では、非常に人気の高い技法となっていますが、導入を公開しないためには、コストやメンテナンス性のことも考慮したうえで、本当に必要かどうか慎重に判断しましょう。

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