
エコキュートは、さまざまな種類がある給湯器の中でも「災害に強い」という点がメリットと紹介されている機会が多いです。テレビのCMなどでも、給湯光熱費を削減できるというメリットと一緒に、災害への備えとして非常に優れたポイントがあるとアピールされています。
ただ、今までエコキュートを使ったことがない人であれば、「なぜエコキュートが災害に強いと言われるのか?」「給湯器をエコキュートにするだけで、なぜ災害の備えになるのか?」という点に疑問を感じてしまう方も多いかもしれません。エコキュートは、電気でお湯を沸かす仕組みで、給湯時の消費エネルギーを削減することができるため、日々の給湯にかかる光熱費の削減や、CO2排出量削減など、環境配慮の面でも優れているとされます。そのため、国の省エネ関連の補助金でも、エコキュートの導入に関してはかなり手厚い補助金が給付される仕組みになっているのです。
そして、エコキュートは、単に省エネ性能が高いだけでなく、万一の災害時でも、そこに住む人の生活を守るための備えになるという点が大きな魅力になるのです。日本は、地震や台風など、自然災害の発生件数が非常に多い国ですし、自宅に設置する住宅設備は「災害対策」のことも考えておいてほしいものだと思うはずです。そこでこの記事では、エコキュートがなぜ「災害に強い」と言われているのか、その理由と実際に災害時にエコキュートを利用する時の使い方について解説します。
エコキュートが災害に強いと言われる理由
それではまず、ガス給湯器など、その他の給湯システムと比較した時、エコキュートが「災害に強い!」と言われる理由について解説していきます。
エコキュートは、給湯コストを削減できる省エネ性が高い給湯器として有名ですが、実は災害への備えとして考えた場合、非常に優れたポイントがいくつも存在するのです。ここでは、その他の給湯器と比較して、エコキュートが災害時に優れているとみなされる代表的な理由をご紹介します。
ポイント① 電気の復旧が早い
エコキュートは、「電気でお湯を沸かす給湯器」と紹介されているように、主な動力源は「電気」です。日本国内で最も普及率が高い給湯器は、ガス給湯器となるのですが、こちらは名称から分かるように「ガス」が動力源となっています。
実は、この動力源の違いによりエコキュートの方が災害時のことを考えると優れていると言えるのです。なぜなら、電気やガス、水道などのライフラインが一斉にストップするほどの大規模災害が発生した時には、「電気の復旧が最も早くなる」からなのです。実際に、1995年の阪神・淡路大震災や2011年に発生した東日本大震災でも、電気、ガス、水道と言ったライフラインの中で、電気の復旧が最も早く実現しています。倒壊家屋を除いた場合、東日本大震災におけるライフラインの復旧状況は、以下のようだったとされています。
- 電気・・・およそ2日~10日で復旧
- 水道・・・およそ1ヶ月で復旧
- 都市ガス・・・およそ1ヶ月で復旧
- LPガス・・・およそ40日で復旧
上記のように、ライフラインの中でも電気の復旧は圧倒的に早いというメリットがあるのです。エコキュートやIHコンロを設置するオール電化住宅は、「停電が発生すると何もできなくなる」という点が大きなデメリットと言われています。しかし、大規模災害からの復旧速度のことを考えると、むしろガス併用のお宅よりも通常の生活を取り戻すまでの期間が短くなるのです。
さらに、昨今では、太陽光発電などの自家発電設備や電気を蓄えることができる家庭用蓄電池の普及が拡大しています。これらの設備を導入し、エコキュートなどと連携させるという体制を作っておけば、災害によって電気の供給がストップしたとしても、いつも通りの生活を維持することができるようになるのです。
動力源が電気となるエコキュートは、災害からの復旧が早い、その他の住宅設備で動力源を確保することができるという点から、ガス給湯器などと比較しても、災害に強いとみなされるのです。ちなみに、ガスを動力源とするガスコンロやガス給湯器については、点火や制御に電気を使用するので、停電が発生するとこちらも同様に使えなくなります。
データ参照:内閣府資料より
ポイント② 停電時にもお湯が出せ
二つ目のポイントは、家庭で使用する給湯器としてエコキュートを選択しておけば、万一停電が発生した時でも、貯湯タンクに貯めている分のお湯は使うことができるという点です。ガス給湯器の場合、点火に電気を使用するため、ライフラインがストップすると、お湯を利用することができません。しかし、エコキュートは、一日に使用するお湯をまとめて沸かして、タンクに貯めておくという仕組み上、一定量のお湯を確保しておくことができるのです。
したがって、地震など、正確な予測できない自然災害が発生し停電に陥ったとしても、貯湯タンク(貯湯ユニット)の中にお湯が残っているのであれば、シャワーや蛇口からお湯を使うことができるのです。ちなみに、追い炊きや新たなお湯の沸き上げは電気で制御するため、自家発電設備などが無ければできません。
エコキュートは、突然の停電が発生したとしても、タンク内には一定以上のお湯が貯め置きされているので、災害時も安心できるという点から「災害に強い」と言われているわけです。ちなみに、最近のエコキュートには、水道直圧式を実現している製品があるのですが、このタイプを設置している場合、停電すると水は出ますがお湯は出なくなります。
※エコキュートの制御機能は停電で停止するので、蛇口などから出るお湯は設定どおりにならない可能性があります。熱湯が出て火傷の危険があるので、その点は注意しましょう。
ポイント③ 貯湯タンクに非常用水を確保して置ける
先程紹介した通り、エコキュートは、貯湯タンクにお湯を貯め置きするという仕組みになっています。そしてこの貯湯タンクの中は、水とお湯が混在しているという状況になるのです。沸かしたお湯を使っていけば、減ったお湯の分水がタンク内に流入してきます。
つまり、万一停電や断水が発生した時には、このタンク内の湯水を非常用水として使用することができるようになります。ガス給湯器などは、水道水を瞬間的に沸かして蛇口から供給する仕組みで、タンクなどの設備は用意されていません。そのため、災害によって断水状態になると水も使えなくなるのです。
エコキュートのタンクは、小さいものを選んでいても300L以上の水を貯め置き出来ますし、大きなタイプであれば600L程度の湯水を常に確保した状態で生活を進めることができるのです。災害は、いつ発生するのか予測することができませんし、常に非常用水を確保した状態で生活ができるという点は大きな魅力になるはずです。
災害時に非常用水を使用する方法について
前項でご紹介した通り、貯湯式の給湯器であるエコキュートは、常に一定量の湯水をタンクに貯め置きしているという仕組みになっていることから、突然の災害が発生し、ライフラインがストップしたとしても、家族の生活を守るための湯水を確保できるのです。タンク内にお湯が残っている状態なら、お湯を利用することも可能になりますし、小さなお子様がいるご家庭の場合は、非常に安心感のある設備になると言えるでしょう。ガス給湯器の場合、水道水を瞬間的に沸かしてお湯を供給する仕組みなので、断水が発生した時にはお湯も水も一切使うことができません。ちなみに、「停電だけならガス給湯器の方が安心」と考える人もいますが、点火や制御に電気が使われている機種が多いため、多くのガス給湯器は停電のみでガスの供給が生きていてもお湯が使えなくなるのです。一部、リンナイの停電モード搭載機種であれば別売りのポータブル電源を用意することでガスの供給が生きていれば使用することができる機種もあるのですが、基本はエコキュートと同じく、新たなお湯は作れないのです。
それでは、エコキュートを導入しているお宅について、実際に災害が発生した時、非常用水をどのようにして利用すれば良いのかについてもご紹介しておきます。基本的には、エコキュート購入時に付属されている取扱説明書を確認していただくのが良いのですが、多くの機種で、以下の流れでタンクから水を取り出すことができます。
- STEP1 脚部カバーの前面を外す
脚部カバーが付いている製品は、最初にこの脚部カバーを外してください。ネジなどで固定されているものはドライバーなどを使用して外しましょう。 - STEP2 電源レバーを下げる
漏電遮断機の電源レバーを下げて、「切」にする。これにより電気の供給を停止します。 - STEP3 給湯機専用止水栓を閉める
タンクへの給水を止めるため、給湯機専用止水栓を閉めます。 - STEP4 逃し弁レバーを手前に起こす
逃し弁操作窓を開け、逃し弁レバーを手前に起こします。これにより空気の出入り口を作ります。 - STEP5 ホースを取出口に取り付ける
非常用取水栓に非常用取水ホースを取り付けてください。 - STEP6 水(お湯)を出す
非常用取水栓(差し込み部)を左に回すと水(お湯)が出るので必要分を取り出す。なおこの際、タンク内がお湯で満たされている場合、熱湯が出る可能性があるので火傷に注意しましょう。 - STEP7 水(お湯)を止める
必要分の水を取り出したら、差し込み部を元に戻して水を止めます。 - STEP8 逃し弁レバーを下げる
取水が完了したら、逃し弁レバーを元の位置に戻してください。
貯湯タンクから直接水を取り出す場合、上記の流れに沿って取水しましょう。なお、断水が復旧した後は、タンクを満水にしてからエコキュートの電源を入れてください。
ちなみに、緊急時にエコキュートから手動で水を取り出す手順については、メーカーや機種によって微妙に異なります。エコキュート購入時に付属されている取扱説明書にきちんと手順が記載されているので、基本的にはそれを見ながら取水すると良いでしょう。また、各メーカーは、公式サイト上で緊急時の取水の手順を紹介しているので、以下のリンクから確認しておくと良いです。
エコキュートの非常用取水栓から取り出した水は、「生活用水(トイレや手洗いなど)」としての使用を目的としています。原則として、そのまま飲むことは避けるよう、メーカー側も注意喚起しています。やむを得ず飲料水として利用する場合は、必ず10分以上煮沸してから使用しましょう
災害復旧後のエコキュートの対応について
ここまでは、地震や台風などの自然災害への備えとして、なぜエコキュートが推奨されているのかについて解説してきました。上述したように、エコキュートは、災害による停電や断水が発生した時でも、貯湯タンクの中に一定以上の湯水が蓄えられているため、常に非常用水を確保しているのと同じ扱いになるのです。
自然災害の発生件数が多い日本では、万一に備えて飲料水だと1人1日3L、最低3日分の備蓄が望ましいとされています。また生活用水としては、1人1日10~20Lが必要とされているのです。これだけの量の水をペットボトルなどで備蓄しようと思うと、かなりのスペースをとられてしまうことになります。しかし、エコキュートであれば、小さなタンクでも370L(2Lペットボトル185本分)の湯水を常に確保して置けるのです。
こう聞くと、エコキュートがなぜ災害に強いと言われているのかが良く分かるはずです。なお、実際に災害が発生し、停電や断水の被害が生じた時に、ライフラインが復旧する時に少し注意する必要があります。ここでは、災害復旧後のエコキュートの取り扱いについても簡単にご紹介します。
停電から復旧させる場合
停電が短時間で収まった場合は、特別な操作や対処の必要はありません。停電の復旧に合わせて、エコキュートも通常の動作を取り戻すので、そのまま使用すれば良いです。
しかし、場合によっては、リモコンの時計表示などにズレが生じてしまう場合があるので、この場合は、停電復旧後に改めて調整する必要があります。この他、台所リモコンなどに、何らかのエラーコードが表示されている場合、その内容に適した対処をする必要があります。エラーコードは、不具合箇所を知らせるために表示されるもので、取扱説明書を確認すれば、どんな対処が必要なのかが分かります。したがって、この場合は、取扱説明書の指示に従って、エコキュートを復旧させると良いでしょう。
ただし、停電の原因が洪水などの水害であった場合、停電が復旧しても、そのままエコキュートを使用し続けるのは危険です。この場合、屋外に設置されているヒートポンプユニットが浸水被害に遭っていて、通電させることで大きな故障に発展する恐れがあります。また、浸水のせいで漏電などが生じると、住宅火災に発展する危険もあるのです。
したがって、エコキュートが水害の被害に遭った場合は、メーカーもしくは販売店に連絡して、使用する前に点検してもらうようにしましょう。必要であれば、修理や交換などの対応が必要です。
断水から復旧させる場合
次は、断水から復旧させる場合です。この場合も、断水が復旧した後、すぐにエコキュートを使用するのは控えましょう。長期間の断水被害が発生していた時には、タンク内や配管内の水が流動していなかったことで、内部にゴミや汚れ、サビなどが生じている場合があるのです。
そのまま使用すると、汚れたお湯が供給されてしまうことになるので、まずは、洗面所やキッチンの蛇口を開けて、綺麗な水がきちんと流れるのか確認しましょう。濁った水が出てきた場合、しばらく通水して、綺麗な水になるまで蛇口を開けっぱなしにしておきましょう。
断水後のエコキュートの起動に関しては、この洗管作業が大切で、これを怠ってしまうと、機器内部にゴミやサビが入り込み、故障を引き起こす恐れがあります。
※蛇口から赤い濁り水が出てきた場合、配管内がサビている可能性があります。これを放置すると、配管が破損して水漏れなどを引き起こす可能性があります。したがって、可能であれば、水道局か水道修理業者に連絡して点検してもらいましょう。なお、必要であれば配管の交換などを実施しなければいけません。
まとめ
今回は、さまざまある給湯器の中でも「災害に強い」と紹介されることが多いエコキュートについて解説しました。
記事内でご紹介した通り、エコキュートは、電気を動力源としているため、災害でライフラインが全てストップした時でも、復旧が最も早くなります。また自家発電設備があれば、停電時でも通常利用が可能となるため、住人側で災害対策のことを考えた設備選びができるようになるのです。さらに、貯湯式の給湯システムであることから、常に数百リットル単位の大量の湯水を非常用水として確保して置けるという点が、災害対策のことを考えると非常に心強いです。
給湯器は、「省エネ性能」を重視して選びたいと考える人が多いのですが、地震や台風などの自然災害の発生件数が多い日本ですから、「災害への備え」のことも考慮しながら設備選びを進めるのもおすすめです。
