夏は暑く冬は寒いという、四季のある日本では、家族が快適で過ごしやすいと感じる住居を作るためには、家の断熱性能を左右する断熱材に注目する必要があります。昨今で、一般住宅での省エネ化を推し進める目的で、新築住宅を建てる際には、最低限確保しなければならない断熱性能の基準などが設けられるようになっています。そして、家の断熱性能を確保するための建材が断熱材と呼ばれる製品となるのです。

断熱材は、エアコンなどで調整した室内の暖かさや涼しさ、さらには結露をコントロールするという役割を担っていて、長く快適に住み続けることができるような家を建てるには、非常に重要な素材となります。ただ、住宅に採用される断熱材については、皆さんが考えている以上にさまざまな種類の製品が開発されていて、いざ新築注文住宅を建てる段階になって、どの断熱材を使えば良いのかで迷ってしまうという方が多いのです。採用する断熱材によって得られる機能性や耐久性、また建築コストなどに格差が生じるため、自分たちに最適な機能を持つ家にするには、どの断熱材を選べば良いのかが判断できない人が多いのです。

そこでこの記事では、たくさんの種類がある断熱材について、主要な製品とその特長、また断熱材の施工方法や製品選びのポイントなどについて解説します。

断熱材の種類とそれぞれの特長

それではまず、たくさんの製品が開発されている断熱材について、住宅の断熱材として活用されることが多い主な断熱材とそれぞれの特長をご紹介していきます。

なお、断熱材の種類については、採用されている原材料の種類によって大きく分けられています。ここでは「無機繊維系、発泡プラスチック系、天然素材系」の3つに分けて、それぞれの断熱材の特長が分かりやすくご紹介します。

無機繊維系

まずは、繊維系の断熱材についてご紹介します。繊維系の断熱材は、原料を繊維状に加工した製品全般を指しています。このタイプは、繊維の隙間に空気が閉じ込められていて、空気の振動が抑えられることで熱が漏れにくくなるという仕組みになっています。

なお、繊維系断熱材の中でも「無機繊維系」に該当するのは、原料としてガラスや鉱物が採用されている製品となります。住宅に使用される断熱材としては、現在最も主流となっているのがこのタイプです。

①グラスウール

無機繊維系断熱材の代表となる製品がグラスウールです。これは、ガラスを繊維状に加工した断熱材であり、他の断熱材と比較すると「安価である」という特長から、現在最も普及している断熱材と言われています。

原料がガラスとなるので、劣化が抑えられるうえ、シロアリなどの食害に遭いにくいというメリットが存在します。また、素材的に燃えにくいという特長を持っていて、万一の火災時でも延焼を防止できる、燃えても有害物質を出さないといったメリットも存在しています。他にも、吸音性に優れているため、防音室工事などにも採用されているなど、価格と機能性のバランスが良いです。

注意点としては、湿気に弱い断熱材であるため、丁寧な防湿施工が必要とされます。壁内結露などによって断熱材が水に濡れたり、湿気を含んだりすると断熱性能が低下したり、自重で断熱材がズレて隙間が生じてしまうといった問題に発展します。

②ロックウール

二つ目はロックウールと呼ばれる無機繊維系断熱材です。このタイプは、玄武岩などの岩石を溶かして繊維にした断熱材です。

断熱材としての特長は、グラスウール同様に、害虫被害などにも強いというメリットが得られます。また、耐火性や吸音性能に関しては、グラスウールよりもさらに高いという特長を持っています。ただ、性能が高い分、グラスウールよりも価格が高くなり、一般的にグラスウールの1.2〜1.5倍ほど費用が高くなるとされています。

ロックウールも、水分を吸収した場合、製品の性能が落ちてしまうので注意しましょう。

発泡プラスチック系

次は発泡プラスチック系と分類される断熱材についてです。石油が原料となるプラスチックが使われていることから「石油系」と分類されている場合も多いです。

このタイプの断熱材は、プラスチック内に細かな気泡を作り、その空気が断熱材として働くという仕組みになっています。発泡プラスチック系断熱材全体の特長としては、軽量で施工が容易、さらに断熱性能が高いという点が指摘されています。ただ、上述した無機繊維系の断熱材と比較すると、費用が高くなりやすいというデメリットも存在します。

発泡プラスチック系断熱材は、以下のような製品があります。

①ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)

ポリスチレン樹脂を原材料とし、これに発泡剤や難燃剤を添加して、ビーズ状に加工したものを発泡成形した製品となります。ポリスチレン樹脂を使用した断熱材には、これ以外にも押出発泡ポリスチレンフォームがあるのですが、成形方法が異なります。

ビーズ法ポリスチレンフォームは、耐水性に優れていて、結露防止の面でも役立つ断熱材とされています。また、軽量で加工がしやすく施工が容易、形や厚みなどの自由度が高い、衝撃に強いといった点が製品のメリットとなります。

②押出法ポリスチレンフォーム(XPS)

先程紹介した通り、押出法ポリスチレンフォームは、上記のビーズ法と材料がほぼ一緒です。しかし、成形方法が異なり、こちらは溶かしたポリスチレンに発泡剤を混ぜて、板状に押し出した断熱材となります。成形方法から「押出法」と分類されているのです。分かりやすく言うと、住宅の断熱材としておなじみの「スタイロフォーム」が押出法ポリスチレンフォームに付けられた商標名となります。

吸水・吸湿性が小さく水や湿気に強い断熱材で、軽くて加工が容易という点が特徴となります。断熱材としては、外張り断熱工法や家の基礎部分の断熱材として使用される機会が多いです。弱点としては、熱に弱く、溶けて収縮してしまう点や製品価格が割高な点です。

③硬質ウレタンフォーム

ポリウレタン樹脂が原材料となる断熱材で、これに発泡剤を加えて成形された製品となります。外張り断熱工法で採用されることが多く、定番の断熱材と言えます。

なお、ボード状の断熱材として使用できる他にも、現場で吹き付けるという工法で採用される場合もあります。この場合、現場でガスを使って発砲させ、隙間なく吹き付けていくことで断熱性能を得るという方式になります。マンションの充填断熱では、このウレタンフォームの吹き付けが良く採用されます。

断熱材として見た時には、非常に高い性能を誇り省エネ効果が得られるのですが、耐久性が低い、火災で燃えた時には有毒ガスを発生させるリスクがあるというデメリットがあります。

④フェノールフォーム

フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を混ぜて成形した断熱材です。発砲プラスチック系で最高レベルの断熱性能を誇り、長期的に安定して断熱性能を保つという点が特長となります。また、石油を原料とした断熱材の中では、最も防火性にも優れていて、炎を当てても煙や有毒ガスをほとんど発生しないというメリットも持っています。断熱材として見た場合、ボード状の製品の他、金属板や石膏ボードなどとの複合パネル状の製品もあります。

フェノールフォームは、非常に高い断熱性能を持っているため、薄くても高い効果を発揮するというメリットがある一方、水や害虫に弱い、価格がその他の製品と比較すると高くなるという点がデメリットです。

天然素材系(自然系)

天然素材系や自然系と呼ばれる断熱材は、素材そのものの特性を生かした製品となります。加工が少なく、環境に優しい断熱材になるという点が大きな魅力になるのですが、断熱材として見た時には上述した製品と比較すると価格が高くなりやすい点に注意が必要です。

天然素材系の断熱材には、主に以下のような製品があります。

①セルロースファイバー

セルロースファイバーは、新聞古紙などを再利用した断熱材で、古紙などを粉砕して綿状にした製品となります。線状の断熱材となることから、「繊維系」の断熱材として紹介されることもあります。

セルローズファイバーは、ホウ酸を配合していて、防虫性能と防火性能も高い断熱材となっています。また、主原料がリサイクル素材となるので、人体や環境にも優しい断熱材であると、年々注目度が高くなっています。施工の際は、雪をつもらせるように敷きつめる「吹き込み工法」と壁などに直接固着させる「吹き付け工法」があります。

セルロースファイバーは、「最強の断熱材」と呼ばれるほど断熱性が高く、さらにグラスウールなどと比較しても吸音性能が高いという特長を持っているので、住宅の断熱材としては非常に優れていると言えます。しかし、価格が高い、施工できるハウスメーカーが少ないという弱点があるので注意が必要です。なお、自然系の断熱材の中では一番歴史があり、最も普及している製品とも言われています。

②インシュレーションボード

インシュレーションボードは、木材チップや古紙などの木質繊維を圧縮して成形した断熱材です。廃木材などを木材チップにして、水と混ぜ合わせることで繊維化されています。主原料が木材となるため、環境に優しい断熱材となることが大きなメリットになります。

断熱材としての性能でも、断熱・吸音性が高く、吸湿放湿性も優れています。さらに、 軽量でカッターなどで簡単に切断できるなど、加工や施工性も優れた断熱材となります。ただ、主原料が木材となるため、水や湿気に弱く(過度な水分や湿気にさらされると変形やカビ発生のリスクがある)、シロアリの被害を受けやすいという点が大きなデメリットになります。

③ウールブレス(羊毛)

ウールブレスは、名称から分かるように羊毛が原料となる断熱材です。断熱材としての形状は、マット状やバラした綿のようにした状態の製品があります。

ウールは、繊維表面が吸湿する性質を持っているため、調湿性に優れた断熱材となります。自然系断熱材の中では、比較的安価で、最近よく使われるようになったとされています。ただ、ウールブレスの原料となる羊毛については、ほとんどが輸入に頼らなくてはならないため、別系統の断熱材と比較すると高額になります。

④炭化コルク

炭化コルクは、コルク樫の樹皮などを蒸し焼きにして炭化させ、コルク自体の樹脂で固めた100%天然素材の断熱材となります。ワインのコルクを製造する際に生じる廃材を利用しているので、環境にも非常に優しい断熱材と言えます。

「ワインのコルクに断熱性などあるのか?」と性能を疑う人が多いかもしれませんが、炭化コルクは熱伝導率が約0.037〜0.041W/m・Kと、グラスウール並みの断熱性を持っているとされます。また、調湿・消臭効果や防虫・耐腐食性、吸音・防振効果など、さまざまな優れた性能を持っている断熱材となります。原材料としても、化学物質が使用されていない製品となるので、ノンホルムアルデヒドで環境や人体のことを考えると、非常に安全性が高い断熱材と言えます。

ただ、その他の断熱材と比較すると、コストが高くなるうえ、施工の難易度が高いという点が大きなデメリットになります。

断熱材の施工方法について

それでは次に、断熱材の施工方法についても解説していきます。家の断熱性能は、単に高性能な断熱材を採用すれば良いというわけではありません。断熱材は、居住空間を隙間なく囲むように敷き詰めて、熱の出入りが無くなるように家を覆わなければ、本来の性能を発揮することができないのです。

それでは、家を建築する際の断熱材の施工は、どのような方法があるのでしょうか?断熱材の施工方法も、大きく分けると以下の3つの工法が存在します。

  • 充填断熱
  • 外張り断熱
  • 付加断熱

ここでは、それぞれの工法がどのような物なのか分かりやすくご紹介します。

充填断熱

充填断熱は、柱と柱の間など、躯体内の空間に断熱材を充填するという施工方法となります。木造住宅でよく採用される工法であり、断熱材としてはグラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどが採用されています。

充填断熱は、下で紹介する外張り断熱工法と比較すると、ローコストで施工できることが多いというメリットがあります。また、壁などの内部空間を使って断熱材を充填していくため、厚みの制限なども受けにくく、ほとんどの種類の断熱材を使用することが可能です。

デメリットとしては、柱などの存在によって、断熱材が途切れてしまう部分がどうしても出てきてしまう点です。断熱材が充填されていない部分は、断熱性能が下がる可能性があります。また、柱と梁などのつなぎ目を避けながら、気密・防湿シートを張らなければならないなど、施工が比較的煩雑な点もデメリットとされています。

外張り断熱

外張り断熱工法は、柱を外側から覆うように断熱材を貼り付けていき、住宅全体を断熱材で覆うという工法になります。上で紹介した充填断熱と比較すると、柱部分からの熱の出入りが無くなるため、断熱性の確保のことを考えると、より有利になります。外張り断熱では、発泡プラスチック系の断熱材が採用されるケースが多く、充填断熱と比較しても施工がしやすいと言われています。

デメリットとしては、断熱材が厚すぎる、あるいは地震などの揺れの影響を受けた時には、断熱材が垂れ下がる危険性があるため、その対策が必要になることです。また、壁厚が増えてしまうので、狭小地に建てる住宅の場合は、充填断熱よりも居住スペースが狭くなってしまうという問題があります。

付加断熱

最後は付加断熱です。この断熱工法は、充填断熱と外張り断熱の両方を施工するという方法となります。内側と外側、両面から断熱材で覆うという工法となるため、非常に高い断熱性を実現することができます。

ただ、施工する断熱材の量が増える、施工範囲も多くなるということから、当然、断熱工事にかかるコストが増えてしまいます。また、充填断熱と外張り断熱、それぞれが持つデメリットを併せ持ってしまう工法でもあるため、この工法の採用が正しいのかは慎重に検討する必要があります。

断熱材選びのポイント

それでは最後に、新築注文住宅を建てる際、自宅に最適な断熱材を選ぶためにはどのような点をチェックすれば良いのかについてもご紹介します。

断熱性能について

断熱材は、家の断熱性能を高めるために施工する物なので、製品ごとの断熱性能を見落とすことはできません。断熱材ごとの性能については、熱伝導率の数値を確認することで判断することができます。熱伝導率は、「W/m・K」と言う単位で表される数値で、数字が小さいほど熱を通しにくく高い断熱性能を持っていることを示しています。

一般的に、断熱材の中でも発砲プラスチック系の製品が熱伝導率が低い傾向にあります。

施工場所と工法への適性

断熱材の施工方法は、上述した通り、柱の間に詰める「充填断熱」や外側から覆う「外張り断熱」など、いくつかの方法が存在します。また、断熱材を施工する場所についても、床や壁、天井などによって施工条件が変わります。

そのため、どのタイプの断熱材が適しているのかについては、採用する工法や家の構造、どの部分に施工するのかによって種類を選ぶ必要があります。

防火性と安全性

断熱材の種類を選ぶときには、万一の火災に備えるためにも、素材の防火性や安全性に注目することも大切です。

断熱材は、製品によって燃えにくさと言った耐火性が大きく変わります。ガラスや石が主原料となる無機繊維系断熱材は、火や熱に強いという特長を持っていますが、ウールや木材が主原料となる天然系断熱材は耐火性に問題があります。
この他にも、実際に火災が発生した時、有毒ガスなどを発生させないのかと言う点も確認しましょう。一般的に、断熱性能が高いとされる発泡プラスチック系断熱材ですが、火災時には有毒ガスを発生させる製品も存在します。

中長期的なコスト比較

最後は、コストに関する比較です。断熱材を選ぶ際、初期費用だけに注目すると、グラスウールが安価で最も使いやすいと感じる方が多いと思います。

しかし、家は、建築後何十年にわたって住み続けることを想定しているはずで、建築時のコストのみに注目すると、損をする可能性が高いのです。耐久性が低い断熱材は、初期費用が安くても、経年劣化が早く断熱性能が低下して光熱費が高くなる可能性があります。この場合、元の断熱性を取り戻すには、費用をかけて断熱リフォームをしなくてはならなくなります。

初期費用が多少高くても、耐久性の高い断熱材を採用していれば、断熱リフォームが必要になる頻度が少なくなるうえ、断熱性能の低下が起こりにくく、余計な光熱費がかからなくなることで、中長期的にはお得になる可能性があるのです。

まとめ

今回は、住宅の断熱性能を決める建材となる断熱材の種類や施工方法などについて解説しました。

記事内でご紹介した通り、一口に断熱材と言っても、さまざまな種類があり、どのタイプを採用するのかによって得られる住宅性能が変わってしまうのです。また、断熱材や断熱工事の施工方法によって、新築工事全体のコストが上下することになるため、自分たちに最適な断熱材がどれなのかを選ぶための知識はきちんと持っておくべきです。

もちろん、この記事だけで断熱材の全てが理解できるわけではないと思うので、疑問などがあれば家の建築を依頼した施工業者さんに確認してみましょう。最低限の知識を持っておけば、「何を質問すれば良いのか?」が判断できるようになるはずです。

悠建設広報のM

悠建設のサイトでは当社の有資格者の監修のもと皆様の家創りにとって有益な情報を配信しております。 以下、各種許可、資格となります。

  • 一級建築士 3名
  • 二級建築士 1名
  • 二級福祉住環境コーディネーター 1名
  • 宅地建物取引士 1名
  • 二級建築施工管理技士 1名
  • 建築物石綿含有建材調査者 2名
  • 既存建物耐震診断士 2名