日本は、もともと自然災害による住宅被害が非常に多い国として有名です。地震については、国土面積が世界の僅か0.25%しかないにもかかわらず、マグニチュード6以上の地震の約20%が日本で発生しているなど、地震による被害の多さから「地震大国」などとも呼ばれています。

そして昨今では、夏場の集中豪雨による水害の甚大化が指摘されるようになっていて、梅雨時期から秋にかけては、全国各地で大雨による水害が発生するようになっています。この記事を執筆中の2025年8月10日頃も、九州の熊本県に大雨特別警報が出されていて、建物が浸水被害を始めとしたさまざまな被害が生じているという報道がなされています。昨今の水害は、その被害が非常に大きくなっていて、住宅が浸水して避難生活を強いられてしまう場合や、最悪の場合、人命が失われてしまうような被害が発生してしまうことも珍しくなくなっています。

日本は、もともと自然災害が多く国として有名なので、諸外国と比較すると、人々の災害への備えに関する意識は高いと考えられます。しかし、大雨による水害は、地震や台風による被害と比較すると、その備えが不十分になってしまうケースも多いため、日常生活の中でより意識的な水害対策が必要と言われるようになっています。
そこでこの記事では、大雨によって引き起こされる水害について、どのような問題が考えられるのか、またいざという時のため、自宅や家族を守るために準備しておきたい水害対策をご紹介します。ちなみに、以前、新築購入時に考えたい「水害に強い家のポイント」をご紹介していますので、そちらもぜひご確認ください。

関連:水害に強い家づくりとは?洪水の対策と万一の浸水に備えるための工夫をご紹介します

水害を原因とする日常生活の危険

それではまず、大雨によって発生する水害が、私たちの日常生活にどのような危険を発生させるのかについて解説します。水害は、家の中にいる時にだけ発生するのではありません。特に昨今では、ゲリラ豪雨と呼ばれる「局地的に短時間で激しく降る雨」による水害が街中で発生していて、人命を危険にさらすようなことも増えているのです。

ここでは、身近に潜む水害による危険をご紹介するので、いざという時に正しい行動がとれるよう、頭に入れておきましょう。

アンダーパスの冠水

ゲリラ豪雨による水害が増えている昨今では、テレビのニュース番組などで、アンダーバスが冠水してそこに自動車が取り残されているという映像を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?アンダーパスとは、交差する道路について、スムーズに通行できるよう、道路の片方を掘り下げ、もう一つの道路の下をくぐらせるという立体交差の方式をとった道路のことを指しています。

当然、道路を掘り下げているということは、大雨が降った時、そこに雨水が流れ込むことになるため、水がたまりやすい構造になっているのです。もちろん、通常の雨程度であれば、排水機能によってアンダーパスが冠水するようなことはありません。しかし、短時間かつ局地的な大雨が降るゲリラ豪雨の際などには、排水機能が追いつかず、水が溜まってしまうことになるのです。
この場合、アンダーパスを通過中の車が立ち往生して取り残されてしまう訳です。アンダーパスの冠水に車が巻き込まれたときには、最悪の場合、車の中に人が閉じ込められた状態で浸水する可能性もあります。

こういったことから、ゲリラ豪雨のような突然の大雨にあった際は、車を使用するにしてもアンダーパスなどは使わず、平坦な道を選ぶようにしましょう。

マンホールの蓋が飛散する

画像引用:日テレニュースyoutube

大雨を原因とした街中の危険では、突然、マンホールの蓋が吹き飛ばされ、近くを歩いていた人や走行中の自動車に衝突するかもしれないという現象もあります。上の画像が、まさに大雨によってマンホールの蓋が吹き飛ばされてしまった時のものです。

大雨が降った時には、地面の中にある下水管を流れる雨水が多くなります。そして、もともと下水管内にあった空気が、大量の雨水が流れることによってマンホールの蓋に圧力がかかってしまうのです。その結果、下水管内の空気圧に耐えられなくなった場合、マンホールの蓋がまるで爆発したように吹き飛ばされてしまうのです。この現象は、エアハンマー現象やエアピストン現象などと呼ばれています。

道路を歩いている時、付近にあるマンホールの蓋が吹き飛ばされてしまうと、それが自分に衝突し大怪我をしてしまう危険があります。さらに、下水管を流れている汚水がかかってしまう可能性もあるなど、さまざまな問題が考えられます。

川の増水

大雨による水害では、川が増水して、洪水に発展してしまう…という危険があることは誰もが理解していると思います。

ただ、川の増水については、必ずしも大雨が降っている時だけに起こるとは限らないので注意が必要です。昨今の大雨は、ゲリラ豪雨などと呼ばれる「局地的」な大雨被害が増加しています。つまり、川の下流側は晴れているという状態なのに、上流で大雨が降ることによって、時間差で下流域が増水するということもあるのです。

この場合、晴れているからと川の中州などで川遊びや釣りを楽しんでいると、いきなり川が増水して避難できなくなる…なんてことが考えられます。実際に、川の中州に取り残された若者が公的機関に救助されたというニュースを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか?このような時には、「なぜ雨の日に川の中州で遊ぶの?」と考えてしまう人もいますが、実は川遊びをしていた周辺は一切雨が降っておらず、その危険性に気付くことができない…なんてケースも考えられるのです。

昨今では、キャンプなどアウトドアレジャーを趣味とする方が増えていますが、川周辺に滞在するレジャーを楽しむ場合、上流側の天気状況をきちんと確認するようにしましょう。上流側の悪天候は、数日後に下流側の増水として現れることもあるので、数日前の天気まで確認し、その安全性を慎重に判断しなければいけません。天候が悪いと感じた時には、可能な限り川周辺に近寄らないようにしましょう。

地下街・地下鉄の浸水

都市部などでは、大雨により地下街や地下鉄に雨水が流れ込み、浸水するという被害が増えています。地下街などは、地上よりも低い位置にあるため、当然、雨水などが流れ込んでしまいます。

地下での浸水が恐ろしいのは、浸水が始めると、その状況が一気に進行するという点です。避難経路となる階段などは、滝のように水が流れ落ちてくるので、浸水がはじまってから避難しようと思うと、落ちてくる水によって避難が困難になるのです。さらに、地下に水が溜まるとドアなどが水圧で開かなくなったり、停電で電気がつかなくなり、暗闇で避難できなくなる…などといった事態も考えられます。

地下街にいる時、地下への浸水が考えられるような大雨が降った時には、近くにある避難経路などを利用して、速やかに地上に避難するようにしましょう。なお、施設関係者が避難方法などについてアナウンスしている場合、その指示に従って行動する方が安全なので、誘導に従いましょう。

住宅の浸水

大雨による住宅被害としては、「床下浸水」や「床上浸水」と言った浸水被害があります。台風などと異なり、集中豪雨による水害の場合、強風によって屋根や外壁が破損するといった被害の心配は少ないのですが、家の中にまで水が浸入するという浸水は、家屋に大きな被害を与えます。

なお、床下浸水と床上浸水の違いについては、床下浸水が「浸水の深さが50cm未満の住家の床より下までの浸水のこと」を指しています。そして、これ以上でかつ住宅の床より上までの浸水が床上浸水とされています。浸水被害を受けた家屋は、一般的に相場よりも2~3割程度低くなる傾向があるとされるなど、非常に悩ましい問題となります。浸水被害があったということは、家屋の構造部が水に濡れたということなので、木材の腐食による家の強度の低下や、湿気によるシロアリの繁殖など、住宅にとって致命的な問題に発展すると考えられ、その価値が急落してしまうのです。そのため、家を建てる際には、可能な限り水害に遭わないようにするための対策が求められるようになっているのです。

ちなみに、家屋の浸水が発生するレベルの大雨が降っている場合、可能な限り早く安全な場所に避難しなければいけません。なぜなら、国土交通省が公表している資料によると、「流れが緩やかであっても0.5m以上(膝の高さ)の水深があると大人でも歩行が困難となる」とされているからです。
家屋の浸水が発生するような大雨の場合、自治体などからはやめに避難指示などが発令されますので、万一の際に避難が困難になりやすい高齢者や小さなお子様がいるご家庭の場合、早めに避難するようにしましょう。なお、避難が遅れてしまった時には、なるべく高い場所に逃げるようにした方が良いです。例えば、屋上や屋根の上に登れる場合は、そこに登ってしまう方が良いでしょう。

参照:水害ハザードマップ作成の手引き

家族や自宅を守るための水害対策について

それでは次に、自宅にいる時に水害の危険性が高まったなどというケースで、家族や自宅を守るために自宅で取り組める水害対策をいくつかご紹介します。この場合、「自宅に水が入って来ないようにする」「万一、浸水が発生したとしても、家族の安全を確保する」ということが重要になります。

ここでは、水害による被害が増加している日本で、考えておきたい水害対策をいくつかご紹介します。

土のうの設置によって浸水を防ぐ

住宅内への浸水を防ぐための水害対策としては、土のうの設置が有名です。土のうは、道路を流れてきた雨水が家の中に入らないようにせき止めるためのアイテムで、大雨による浸水発生時には非常に重宝されます。特別な技術や道具なども必要なく、誰でも容易に設置することが可能なので、住宅の浸水防止アイテムとしては非常におすすめです。

なお、昨今では、この土のうもさまざまなタイプが用意されています。一般的な土のうは、袋の中に土を詰めて積み重ねていくというものなのですが、一般住宅の場合、袋に詰めるための土を確保することが難しい場合もあります。そのため、最近では、住宅の浸水防止用の土のうとしては、水を含むことが膨らむ「水嚢」と呼ばれるタイプが重宝されています。水に沈めることで吸水して膨らむタイプで、これを玄関前などに積み上げて浸水を防ぐといった感じになります。この他、家庭用の止水板なども販売されているので、自宅の形状に合わせて最適なアイテムを選ぶと良いです。

レジャーシートやブルーシートで簡易的な浸水対策をする

土のうや水嚢、止水板などは、ホームセンターなどで購入できるので、本来は、水害に備えるためにも、これらの専用アイテムを用意しておくのがおすすめです。ただ、一般住宅にある物で、似たような効果を期待できる浸水対策もあるので、専用アイテムを用意できていなかった…という場合は、以下のような方法で、対策を施しましょう。

一つ目は、どの家にもあるゴミ袋を利用する方法です。ゴミ袋を二重にして、その中に水をいれることで水嚢として使用することができます。玄関など、浸水の可能性がある場所に、ダンボールの中に水をいれたゴミ袋をいれた状態で配置すれば、簡易的な浸水防護柵として働いてくれます。ゴミ袋で作った水嚢が重しになるうえ、ダンボールが吸水することで隙間を埋めることができるのです。
また、ダンボールの下にブルーシートなどを配置しておけば、さらに高い浸水防止機能が期待できるようになります。なお、水嚢は、土のうなどと比較しても重量があるため、設置時にぎっくり腰などにならないよう注意しましょう。

この他、灯油などをいれるポリタンクがあれば、それに水をいれて重しにすることで、ブルーシートによる簡易的な止水板とすることができます。なお、これらの方法は、あくまでも簡易的な方法なので、完全に浸水を防げるとは限らない点に注意しましょう。そもそも、床上浸水が発生するレベルになると、土のうなどによる水害対策もあまり意味を成しません。

雨水桝や家周りの排水口を掃除

住宅の浸水を防ぐための対策としては、自宅の準備だけをしているのでは不十分です。家の周囲にある道路などには、雨水桝や排水溝があるのと思うのですが、この部分の管理をきちんと行っているかどうかが非常に重要なのです。多くの場合、家の前にある雨水桝ですら、ゴミが溜まっていても放置しているというケースが多いです。

しかし、雨水桝や排水溝にゴミなどが溜まっている状態を放置すると、流れてきた水を適切に排水することができず、住居の浸水リスクを高めてしまうのです。したがって、家周りだけでも良いので、雨水桝や排水溝の掃除を定期的に行っていくようにしましょう。一昔前までは、自治会や町内会が形成され、こういった部分の掃除を近隣同士で協力して行っていました。しかし昨今では、町内会などの文化が薄れてきたことで、災害時の被害が拡大している可能性もあるのです。

カーステップやプランターなどを片付ける

カーステップやプランターなどは、浸水被害を引き起こすような大雨の際、勢いよく流れる道路の水に押され、移動してしまうことがあります。そして、最悪の場合、雨水桝を塞いでしまう原因となり、自宅周辺の雨水の排水が遅れてしまい、被害が拡大してしまう恐れがあるのです。

したがって、浸水被害などが考えられるような大雨の予報が出た時には、雨水に流されてしまいそうな屋外に置いてあるものを片付けておくことも大切です。

防災グッズ確保

地震や台風、大雨による水害など、避難生活を強いられるような大規模災害が多い日本では、家族の命を守るという目的で、防災グッズの常備が推奨されていますね。地震や水害など、大規模災害が発生した時には、停電や断水などが考えられるため、命を守るための飲料水や食料が必要不可欠なのです。したがって、常日頃から、いつ災害が発生しても大丈夫なように、家族の人数分の防災グッズを用意しておきましょう。最近では、避難時に必要となるアイテムをまとめてリュックに入れた製品が、ネット通販などで購入できるようになっているので、家族の人数分用意しておくと良いでしょう。

ちなみに、一人当たりの備蓄量目安については、水が1日3リットル(うち飲料用が1L)×3日分、食料が1日3食×3日分、毛布や保温シートを1枚程度などが推奨されています。この他、年齢や性別によって必要なアイテムが変わるため、自分達が備蓄しておくべきものは普段から考え、用意しておくと良いでしょう。なお、備蓄する物や量については、以下の資料なども確認しておきましょう。

> 農林水産省「家庭用食料品備蓄ガイド」

上記のほか、スマホの充電器やラジオ、懐中電灯や高所に避難するためのはしごなども用意しておくと安心かもしれませんね。

避難場所の確認

家族の安全を守るためには、災害が発生した時に「どこに避難するのか?」をあらかじめ決定しておくことも大切です。避難場所を確定させ、そこまでの経路などを共有しておくことができれば、万一の際も速やかに避難することができます。

また、日中は仕事や学校で家を空けることが多く、家族がバラバラに過ごしているというご家庭の場合、「どこに避難するのか?」をご家族間で共有しておきましょう。また、安否確認の方法などを決めておくと、より安心できるかもしれませんん。

災害時の避難場所については、各自治体で決められていると思うので、どこに向かえば良いのかを家族間で共有しておきましょう。

まとめ

今回は、さまざまな自然災害でも、昨今、世界中で急増していると言われている水害に備えるための対策について解説しました。日本における自然災害と聞くと、地震や耐風を頭に思い浮かべる方が多いと思いますが、集中豪雨による水害も頻発するようになっています。地球温暖化などの影響を受け、局地的な大雨被害が発生することが増えていて、今年もお盆前に九州地方で浸水被害が発生するといった被害が生じています。

自然災害による住宅被害については、自陣に耐えられる家にするということを重視する方が多いのですが、現在の日本の気候を考えると、水害対策についても真剣に考えなければならない状況になっていると言えます。これから新築注文住宅の購入を検討しているという方がいれば、「水害に遭いにくい家にする」ということを意識したうえで、日々の生活の中でも水害対策を進めていくことがおすすめです。

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