今回は、いつどこで起こるか分からない地震について、普段から備えておきたい家具の固定方法についてご紹介します。

住宅の地震対策については、建物の耐震性能を高くするということが重要視されていて、日本では、建築基準法によって最低限確保しなければならない耐震性能の基準が設けられています。しかし、どれほど耐震性が高い家を建てたとしても、地震時には揺れの影響を完全に無くすことはできません。実際に、大きな地震が発生した時には、家の中に配置している家具が移動して避難経路を塞いだり、人に向かって転倒したりすることががあります。

大きな地震が発生した時には、一切の被害が出ないようにするということは難しいのも事実ですが、家族の安全を守るためには日頃の備えが非常に重要です。その中でも誰でも容易にできる対策が、家具の転倒・移動防止を目的とした固定なのです。そこでこの記事では、地震対策として家具の固定がなぜ重要なのか、また、実際にどのようにして固定すれば良いのかについて解説します。

地震対策として家具の固定が重要な理由

大きな地震が発生した際には、家の中に設置している家具の移動や転倒と言った被害が生じる可能性が高いです。また、タンスや食器棚などに関しては、地震の揺れによって扉が開放されてしまい、中に収められている食器などが飛び出し、床に散乱することで住人の避難を困難にする事例も多く報告されています。

そして、東京消防庁が公表しているデータによると、近年発生した地震でけがをした原因については、なんと家具類の転倒・落下・移動によるものが30~50%に達しているというデータがあるのです。


引用:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」より

2026年7月にも、熊本県にて震度7に達する地震が発生しましたが、この際にも、家の中の家具などが転倒し、室内がぐちゃぐちゃになっている映像がTVなどでも放送されていたので、皆さんも地震対策として家具の固定が非常に重要なのだということを再認識したのではないでしょうか?家具の移動や転倒が発生すると、そこに住む人の避難を困難にする、またけがをするといったリスクが生じるほか、地震後の復旧に関しても難易度が高くなってしまいます。

なお、上で紹介した家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブックによると、家具の転倒を防止するための固定などを行っていなかった場合、住人さんがけがをしてしまうリスクが高くなる以外にも、以下のようなリスクが高くなるとしています。

  • 火災
    転倒・落下した家具などが電気ストーブなどの電源スイッチを押し、付近の燃えやすいものに着火するなどして火災が発生することがあります。
  • 避難障害
    避難通路、出入口周辺に転倒、移動しやすい家具類を置くと、避難経路を塞いだり、引き出しが飛び出すことで、つまずいてケガをしたり、避難の妨げになることがあります。

地震による家具の転倒・移動は、火災や避難障害など、人命にかかわる非常に重大な危険に発展する可能性があります。したがって、家族をこれらの危険から守るためにも、しっかりと家具を固定するなど、転倒・落下・移動防止対策が非常に大切になるとされているのです。市販されている家具の転倒防止アイテムは、誰でも簡単に設置できるような手軽なものが多いため、すぐに始めるのがおすすめです。

具体的な家具の転倒・移動防止対策について

それでは、地震に備えるため、家具の転倒、移動防止対策を検討した時、どのような視点で実施していけば良いのかについて解説していきます。

住宅内における地震対策については、家具を固定するという事ばかりをイメージする方が多いのですが、これ以外にも注意すべきポイントがいくつか存在します。ここでは、そもそも「地震に備えるための室内作り」と家具設置後の固定に分けてご紹介していきます。

地震の揺れを考慮した室内の備えについて

地震時の家具の移動や転倒による被害を防止するということを考えた時には、固定以外にも検討しなければならないことがあります。例えは、部屋のレイアウトや設置する家具の量など、部屋作りの視点で地震対策を進めることもできるのです。

ここではまず、家具の固定以前に実施できる転倒・移動・落下防止対策をご紹介します。

なるべく部屋に物を置かない

一つ目の対策は、移動や転倒、落下するような家具や荷物を人が長時間を過ごす場所に置かないようにするというものです。物がなければ、固定する必要は当然なくなります。

たとえば、納戸やクローゼット、据え付け収納家具などに物を収納するようにすれば、家族の生活空間に存在する物の量が少なくなります。そうすると、それらの物を片付けるための家具を配置する必要がなくなるという訳です。

特に、寝室や子供部屋などに関しては、就寝中に大きな地震が発生し、家具が倒れてくる、扉を塞ぐといった危険があるため、人が寝ている場所はなるべく大きな家具を配置しないようにする方が安全です。収納スペースの関係で、どうしても家具を置かざるを得ないという場合でも、人が寝ている場所からは離す、避難経路に影響を与えないような場所に配置するなど、工夫をしましょう。

家の中に家具などが配置されていない、安全な場所を作っておけば、緊急地震速報が出た時に避難する場所にも使えます。

避難経路確保を考慮したレイアウトにする

二つ目のポイントは、家具を配置していく際には、「万一転倒したとしても避難経路を塞がない!」ということを意識しながらレイアウトを決めるということです。

地震の力はすさまじく、数百kgを優に超えるような大型家具でも、移動・転倒させてしまうことがあります。そして、何も考えずに家具を配置してしまうと、それらの大型家具が、移動・転倒してしまい、ドアを塞いでしまうことがあるのです。人の力では大型家具を動かすのは困難になるため、安全な場所に速やかに避難することができなくなります。

したがって、部屋のレイアウトを決めていく際には、「移動・転倒があってもドアがふさがれない」ということを意識しながら、可能であれば出入り口や廊下には家具類を配置しないようにすると良いです。これから家を建てることを検討している場合、備え付けの収納を増やすということも地震対策として有効に働きます。

※地震時には引き出しが飛び出てくることがあるので、置く方向も考慮しましょう。

重たいものは低い位置に置く

大型家具の上部は、普段使用しない重たいものを片付けておく場所として利用しているご家庭が多いです。しかし、地震時には、この物の置き方が原因で、被害が拡大してしまう可能性があるのです。

重量のある荷物に関しては、可能な限り低い場所に収納していくようにするのがおすすめです。そうすれば、家具の重心を下げることができるので、転倒しにくくなるという効果が得られます。また、高所から重量物が落下し、それが人に衝突して大怪我をする…といった事態を防止することにもつながります。高所は、揺れの影響が大きくなるので、家具の転倒が無かったとしても、落下によって人的被害が生じることがあるのです。

特に、食器類などのガラス、陶器製品に関しては、高所から落下すると割れて散乱して避難を困難にする原因になります。そのため、割れ物に関しても、あまり高い位置に置かないようにすると良いです。

可能な限り背の低い家具を選ぶ

地震の揺れに対する強さついて、背の高い家具と背の低い家具を比較した時には、後者の方が安定感が増します。

背の低い家具は、転倒の可能性が低くなる、高い位置に荷物が配置されていないので落下の影響が少なくなるといった効果が期待できます。ただし、比較的軽量な家具となり、移動はしやすくなるので、その部分の対策は必要です。

家具固定のポイント

家具の移動・転倒・落下防止対策を検討した時には、固定の前に上記のようなポイントについて検討しなくてはいけません。上述したように、設置する家具の量が少なくなれば、その分、移動や転倒によるリスクは少なくなるのです。

ただ、家の中に、一切の家具を配置しないといった対応は難しいので、家具の固定方法についても検討しておく必要があります。家具の固定については、家具の特性に合わせた方法を採用する必要があるため、ここで家具固定のポイントをいくつかご紹介します。

  • 家具の転倒・移動対策は「ネジ止め」が基本
    家具類の固定については、さまざまなアイテムが開発されています。その中でも、最も確実な固定方法で言えば、L型金具などを使って壁にネジ止めするという方法になります。固定力が非常に高くなるので、転倒や移動をしっかりと防いでくれます。ただ、「新築したばかりで壁に穴は…」などと、ネジ止めに抵抗感を持つ人も多いです。この場合、突っ張り棒やストッパー、粘着マットなどを組み合わせることで高い固定力を実現しましょう。
  • キャスター付き家具のロックについて
    キャスター付き家具は「移動が楽になる」ということがメリットではあるものの、地震の際に勝手に移動されては困ります。したがって、室内に設置する場合、定位置を決めたら壁や床に着脱式ベルトなどで固定するようにしましょう。この他、キャスター部分に下皿を配置する、ポール式器具などを設置するといった方法で固定しましょう。
  • テーブル・イスに滑り止めを設置
    テーブルやイスも、移動や転倒によって住人を危険にさらさないようにするため、移動防止対策が必須です。ただ、ネジ止めなどによって完全に固定するのは望ましくない家具なので、脚部に粘着マットや滑り防止マットなどを設置して、移動しにくくすると良いです。ゴムやシリコン製のの移動防止アイテムを取り付ければ、フローリングが傷つくのも防止できるので一石二鳥です。

家具類の固定による移動・落下・転倒防止対策は、家具の種類に合わせて適切な方法で実行しなくてはいけません。最近では、さまざまな固定具が登場しているので、適切な物を利用して対策を施していきましょう。

地震に備えて家具の転倒・移動防止に使えるアイテムとは?

それでは最後に、地震に備えるため、家具の転倒や移動、落下などによる被害を防止するために使える代表的なアイテムをご紹介していきます。

以下で紹介するアイテムは、ホームセンターやネット通販、物によっては100円均一などで販売されているので、自宅の地震対策を検討した時にはぜひ利用してみましょう。

L型金具

L型金具は、家具を壁などと固着させるための器具となります。スライド式、上向き、下向き取り付け式があり、下向き取り付けが最も強度が高くなります。

タンスのような大型家具でも、木ネジやボルトを使ってしっかりと壁に固定することができます。そのため、地震による大きな揺れが発生した際でも、転倒や移動を効率的に防止することができます。

デメリットとしては、ネジで壁などに固定するという方式となるため、壁に穴をあけざるを得ないという点です。持ち家の場合、安全性のことを考えると、このアイテムが最も推奨できるのですが、賃貸住宅の場合は退去費が高くなってしまうため、不向きです。また、高い固定力を得るためには、強度が高い壁下地の柱や桟にネジを打ち込む必要があり、一般の方の場合、最適な場所を見つける難易度が高いです。

ポール式器具(突っ張り棒)

家具や天井の隙間などに新たな柱を付け加えて固定力をあげるアイテムです。ネジ止めなどが必要ないため、建物を傷つけることなく固定力が得られます。

特に、食器棚や本棚、タンスや冷蔵庫など、背の高い家具を固定するためのアイテムとして活躍します。建物を傷つけないので、賃貸物件でも設置が可能で、粘着マットやストッパーなど、その他のアイテムと併用することでより高い効果を発揮させることができます。

デメリット面としては、家具の上部に複数の突っ張り棒を追加していくという形になるため、荷物を置く場所として使いにくくなる点です。また、設置してみるとよくわかるのですが、意外に存在感があるアイテムとなるため、室内の景観が壊れてしまうという点を嫌う人が多いです。ただ、強度が高いタイプが多いので、しっかりと家具を固定することができます。

粘着マット

粘着性のゲル状で、家具の底面と床面を接着させるという効果が期待できます。地震の揺れがあった際には、その振動を吸収することで、家具の揺れを抑えることができます。

また、滑り止めの効果も期待することができるので、家具の下に設置したり、背面に設置して壁と固着させたりすると、揺れによる家具の移動を抑える効果が期待できます。

ただ、大型家具などについては、これ単体による対策では、固定力が不十分と言えます。先程紹介した、突っ張り棒などと併用すれば、高い効果が見込めるのですが、単体利用では転倒防止効果がどうしても低くなります。また、経年劣化により、粘着力の低下や振動を吸収する能力が低下するため、定期的な交換が必要です。

転倒防止ベルト

転倒防止ベルトは、家具と壁をベルトでつなぐことで固定するというアイテムです。なお、転倒防止ベルトには、以下のようにいくつかの種類があるので、住まいの種類や固定する家具に合わせて選択しましょう。

  • ビス止め式
    家具と壁にビスを打ち込むことでベルトで家具を固定するアイテムとなります。固定力は高くなりますが、壁に穴をあける方式のため、賃貸住宅には不向きです。
  • 粘着パット式
    壁との固定は粘着テープによって行うタイプです。壁を傷つけることが無くなるため、賃貸住宅でも使用可能です。しかし、粘着力が徐々に低下していくため、定期的な交換が必要です。
  • 冷蔵庫用固定ベルト
    壁側はビスによって固定力を得ます。冷蔵庫は穴をあけることができないため、背面の取っ手などにベルトを繋ぎ、固定力を得ます。壁に穴をあけるタイプとなるので、賃貸では不向きです。

転倒防止ベルトは、上記のようにいくつかの種類が存在します。持ち家であり、固定する対象の家具が本棚や食器棚、大型のタンスなどであれば、ビス止め式が安心でしょう。しかし、家電製品など、穴をあけられない製品の転倒防止は、粘着パット式がおすすめです。

ストッパーやキャスター下皿

家具類の移動防止をメインとしたアイテムでは、家具の下部に取り付けるストッパーやキャスターの下皿があります。

キャスター付きの家具は、地震の揺れがあった際には、大きく移動してしまうことがあります。特に、キャスターにストッパー機能がない製品の場合、滑り出しを防ぐことができず、出入口を塞がれてしまう可能性があるのです。この場合、下皿を設置し、その上にキャスター部分が来るように家具を設置すれば、揺れで家具が転がっていくということを防止することができます。

また、タンスなどの移動に関しては、家具の前下部にくさびを挟み込み、家具を壁際に傾斜させるストッパー式と呼ばれるアイテムが有効です。最適な大きさにハサミなどで切断して、家具の前下部に配置するというアイテムなので、目立ちにくく部屋の景観を壊さないという点も大きなメリットになるでしょう。

ガラス飛散防止フィルム

ガラス飛散防止フィルムは、家具の転倒や落下、移動を防ぐためのアイテムではないのですが、地震時の避難を困難にする問題を防止するためのアイテムとしては非常に有効です。

このアイテムは、室内側の窓ガラスに貼り付けておくことで、ガラスが割れたとしても広範囲に破片などが飛散するのを防止することができます。そのため、「足元に割れたガラスが散乱して避難できない…」などの二次被害を防止することができるようになるのです。透明なフィルムを貼るだけなので、窓からの視界を妨げることはなく、日常生活で悪影響を受けずに、住人が安全に避難できるようにすることができます。

なお、ガラス飛散防止フィルムは、台風による窓ガラスの飛散も防止できるアイテムとなるので、災害対策の面では非常に有効です。

まとめ

今回は、万一の地震に備えるため、家の中に設置している家具の転倒や移動、落下を防止するための対策について解説しました。

記事内でご紹介した通り、近年発生した地震でけがをした原因については、家具類の転倒・落下・移動によるものが30~50%もあるなど、家族の安全を守るには家具の固定が非常に重要と言えるデータが揃っているのです。実際に、大きな地震が発生した時の報道などを確認してみても、床に物が散乱していて、住人の避難や片付けを難しくしているということがよくわかります。逆に言うと、大きな地震が発生したとしても、家の中の家具類がいつも通りに安定的な状態を保てていれば、それだけ家族の安全性が高くなると言えるのです。

記事内では、家具類を固定するための方法や具体的なアイテムについてご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。家具の固定については、固定を考えている家具の種類に合わせて最適なアイテムを用意しなくてはならないので、耐震性能と耐圧性能を確認しながら最適な物を選ぶようにしましょう。例えば、タンスや食器棚などの大型家具に関しては、耐圧150~200kg程度ないと耐えられないとされています。

マイホームの地震対策は、建物の耐震性能に着目することも大切ですが、「家具をしっかりと固定する」など、細かな対策も欠かすことができません。

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