一戸建て住宅に住んでいる方の場合、生活を進めていくうちに徐々に荷物が増えてきたことから、倉庫利用を前提として庭に物置を設置したいと考えるケースが少なくないと思います。

ただ、自宅の空きスペースに物置を設置するという行為については「物置の設置には固定資産税がかかると聞いた…」「物置を設置する際には建築確認申請が必要なのかな?」など、法律上の取り扱いについて疑問に感じてしまうポイントも少なくありません。特に、固定資産税に関しては、継続的に課せられる税金となってしまうため、倉庫スペースが拡大できるとは言え、「コスト負担が大きくなるのは嫌だな…」と考えてしまう方も少なくないはずです。

そこでこの記事では、自宅の空きスペースに物置の設置を検討した時、固定資産税や建築確認申請など、法律との関係性について解説していきたいと思います。実は、物置の設置に関しては、全てのケースにおいて固定資産税が課せられるわけではなく、少しの工夫で課税対象外にできる可能性もあるのです。記事内では、物置が課税対象外になる条件などを解説するので、税金がかからないように設置したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

物置に固定資産税がかかる条件について

それではまず、自宅の空きスペースに物置を設置したいと考えた時、固定資産税が課せられるかどうかを判断するための条件について解説します。

固定資産税が課せられるかどうかは、きちんとその要件が定められています。基本的に、以下の要件を満たしている場合に固定資産税が課せられることになります。

固定資産税の課税条件

物置の設置に固定資産税がかかるかどうかは、以下の3つの条件を満たしているのかどうかで変わります。以下の3条件をすべて満たす物置の場合、法的には「家屋」とみなされてしまうことになるため、課税対象となるのです。

それぞれの条件について、以下で詳しくご紹介します。

①外気分断性

一つ目の条件は「外気分断性」です。外気分断性は、設置する構造物が屋根と三方向以上の壁(またはそれに類するもの)を有していて、外気を遮断して雨風をしのげる状態になっていることを指しています。この条件は、設置する物置が独立した空間として機能するかどうかを判断するための条件となり、設置する構造物が固定資産税の課税対象となる「家屋」と認められるための重要な要件の一つになります。

一般的なスチール製の物置については、中に収める物品を雨風や紫外線の影響から守るため、四方を壁で囲まれて屋根も備わっているのが一般的です。つまり、通常の物置に関しては、この外気分断性については満たしているものが多いです。シャッター付きガレージなどを倉庫利用する場合でも、開口部にシャッターを設置して開け閉めできるような構造でも、3方向に壁が設置されているという構造になっているため、外気分断性があると判断されます。

一方、屋根と柱のみで構成されるカーポートに関しては、壁がないため雨風が容易に吹き込むと考えられ、家屋として利用することはできません。つまり、外気から十分に分断されているとは判断されないため、固定資産税の対象外となるのです。

物置に対する「外気分断性」の判断については、独立した空間として内部を雨風からしっかりと守れる構造になっているかどうかが基準になると考えてください。ちなみに、ほとんどの物置はこのポイントは満たしてしまうと思います。

②土地の定着性

土地の定着性は、設置される物置について、単に置かれているだけでなく、基礎工事などによって地面へ物理的に固定されている状態を指しています。分かりやすく言うと、物置を簡単に移動させることができず、恒久的な建造物となるかどうかを判断するための基準となっています。

物置を設置する際には、地面にコンクリート基礎を作り、その上にアンカーボルトなどでしっかりと固定するという方法が選ばれることがあります。これは、地震や台風などの影響があっても、物置が容易に転倒や移動しないようにするという安全確保が目的なのですが、この施工方法の場合は「定着性がある」と判断されるのです。
しかし、簡易的な物置の設置方法としては、地面にコンクリートブロックを置き、その上に既製品の物置を配置するという方法もあります。そして、この方法の場合、地面に固定しているわけはないため、「定着性はない」とみなされるのです。

ちなみに、物置の転倒防止対策(強風対策など)として、一時的にワイヤーなどを用いて固定するといった簡易的な方法に関しても、「恒久的な」固定ではないため、土地の定着性があるとは判断されず、課税対象にはなりません。

③用途性

用途性については、「建造物が家屋本来の目的(居住・作業・貯蔵など)を有し、その目的とする用途に供し得る一定の利用空間が形成されていること」を指しています。物置については、設置した物置が、その目的通りにいつでも使える状態にあるということを指しています。

例えば、荷物を保管する目的で設置した物置に関して、実際には物を何も置いていないという状況となっていたとしても、「中に荷物を保管できる状態」になっているのであれば、用途性があると判断されるといった感じです。ちなみに、物置だけでなく、居住や作業、娯楽といった目的で利用可能な状態の小屋に関しても、同様に用途性があると判断されます。

用途性に関しては、「使用しているかどうか」は関係なく、物置の場合であれば「貯蔵などの目的を果たせる状態なのか?」が、用途性の有無を分けるポイントになるわけなので、設置すれば基本的に用途性があると判断されると考えましょう。

固定資産税がかからない物置とは?

固定資産税の課税条件が理解できれば、どのような物置なら固定資産税の課税対象から外れるのかは自ずと分かっていただけると思います。分かりやすく言うと、上で紹介した固定資産税の3要件である「外気分断性」「土地への定着性」「用途性」について、いずれかの要件を満たしていない場合は、固定資産税が課せられないという状況になるのです。

ただ、先ほど紹介した通り、物置に関しては、その構造や利用目的のことを考えると、外気分断性や用途性に関しては、設置した時点で基本的に満たしていると考えられます。物置は、保管する荷物を雨風や紫外線から守らなければならないため、四方を壁で囲われ屋根があるという姿が基本です。また、何も保管していない状態でも、「何かを保管できる状態」に常になっているため、用途性も認められるのです。

ただその一方、土地の定着性については、施工方法によって変わります。分かりやすく言うと、地面に恒久的に固定されない物置に関しては、「定着性がない」とみなされ、固定資産税の課税対象外と判断される傾向にあるのです。

例えば、先ほど紹介したように、地面にコンクリートブロックを置き、その上に物置をただ単に置いただけという構造の場合、地面に固着しているわけではないので、「定着性はない」と判断されるのです。また、ブロックなど関係なく、土や砂利の地面に置いただけの物置に関しても、同様に固着されているとは言えません。

つまり、自宅の空きスペースに物置を置くというケースで「固定資産税を支払いたくない」と考えている方の場合、基礎工事などは行わずに簡易的に設置する(置くだけ)という方法を選べば、屋根や壁があったとしても固定資産税の対象外となる可能性が高いはずです。

物置と固定資産税の関係性をもう少し詳しく解説します

自宅に物置を設置した場合、固定資産税の課税対象になるのかどうかについては、前項で紹介した通り、課税条件となる3つの要件を満たすかどうかが重要となります。

ただ、物置と固定資産税の関係については、各自治体によって物置の定義や解説の仕方が微妙に異なるという点に注意が必要です。そこでこの記事では、自宅への物置の設置について、いくつかの自治体が公表している固定資産税との関係性についてまとめてみます。

物置の基礎について

先程紹介したように、土地の定着性については、コンクリート基礎を作り、アンカーボルトなどを用いてしっかりと地面に固定した時に該当すると紹介しました。そして、物置の設置で固定資産税の課税を逃れるには、簡易的な基礎による設置が良いといろいろなwebサイトで紹介されています。

実際に、茨城県水戸市公表している判断では、「簡易な物置を庭に建てたときの固定資産税の課税」に関する回答として、以下のように記載しています。

課税対象となる例
基礎工事がされている場合や、土地などと定着していると認めた場合は家屋として認定し、固定資産税の課税対象となります。また、建物の面積に関係なく、要件を満たせば課税対象となります。
引用:水戸市webサイトより

一方、固定資産税の課税対象とならない物置については、以下のように説明されています。

課税対象とならない例
地面やコンクリートの上に単に置いた状態や、転倒防止のために簡易的に地面に固定した場合等、土地への定着性が認められない場合は家屋と認定されません。また、周壁のないカーポートも家屋と認定されません。
引用:水戸市webサイトより

水戸市が公開しているwebサイトには、固定資産税の対象となる物置と、そうでない物置の事例が画像で紹介されているので、そちらも確認してみましょう。

なお、大阪府箕面市のwebサイトでは、基礎の内容にまで言及されているので、そちらも引用しておきます。

家屋として一定の要件を満たした場合は、課税の対象になります。
■固定資産税・都市計画税の家屋とは
土地に定着して建造され、屋根や壁により風雨をしのぐことができ、居住・作業・貯蔵などに用途に使える状態にあるものです。

地面やコンクリートの上に単に置いた状態では家屋と認定されません。
しかし、布コンクリート基礎、束石などで土地に固定的に付着して容易に移動できない状態である場合は家屋として認定し、課税対象となります。

【課税対象となる例】
・プレハブ構造の小型ハウスやパネルガレージ(車庫)であってもブロック基礎を施工したもの
【課税対象とならない例】
・パネル物置は、ブロックを寝かせてその上に単に置いた場合は課税対象になりませんが、ブロック基礎を施した場合は課税対象となります
・カーポート車庫(三方を壁で覆われていないもの)は家屋として課税対象になりません

また、家屋として認定されない物置などでも、事業用として使用している場合は償却資産に該当し、申告が必要になる場合もあります。
引用:箕面市webサイトより

物置と倉庫の違いについて

物置と固定資産税の関係において、注意しておきたいポイントは、倉庫との違いについてです。ここまでの解説で分かるように、自宅に設置する物置に関しては、たとえ大型の物置だったとしても、土地への定着性がないなど、いくつかの条件を満たしていれば課税対象外となります。しかし、倉庫については固定資産税の対象となるのです。

これについては、物置と倉庫は、そもそも法的な取り扱いが異なるということが大きな要因です。そもそも「物置」というものは、日常生活に使う雑貨等を収納・保管するスペース、部屋または建物のことを指しています。つまり、居住のために従属的に使用する部屋や建物であって、主目的が「物品の収納や保管」となる倉庫とは根本的に異なるのです。

実際に、不動産登記事務取扱手続準則では、建物として設置する「物置」の登記上の扱いは、不動産登記規則で定められた建物の種類としての「倉庫」には該当せず、同規則による区分に該当しない建物として、「物置」で登記されるのです。

固定資産税がかからないように物置を設置する際の注意点

ここまでの解説で、自宅の空きスペースに物置を設置したいと考えた時、どのような物置であれば固定資産税がかかってしまうのかが分かっていただけたと思います。上記で紹介したポイントを押さえておけば、物置を設置した後に、固定資産税が課せられることを知って後悔する…といった事態を防ぐことができるはずです。

これから、自宅に物置の設置を検討しているという方がいれば、以下の2つのポイントを押さえておくと良いです。

  • 簡易的な方法で固定する
    物置は、土地の定着性以外の条件については、自動的に満たしていると考えた方が良いです。そのため、固定資産税の対象外となるには、土地の定着性を満たさないような設置方法が求められるのです。上でも解説していますが、コンクリート基礎を作り、そこにアンカーボルトなどでしっかりと固定するという方法は、安全性が高くなるものの、定着性があるとみなされてしまいます。しかし、地面にそのまま設置する、コンクリートブロックを置いてその上に物置を載せるといった方法を選べば、定着性の条件を満たさなくなるのです。これは、簡易的な設置の場合、いつでも移動できるという判断になり、家屋ではなく動産として扱われるようになるためです。物置を設置する際には、基礎を伴わない簡易的な設置を心がけることで、課税の要件は満たさなくなります。
  • サイズに注意
    上で少し触れていますが、物置が固定資産税の対象になるかどうかは、面積の大きさなど、物置のサイズは関係ありません。しかし、大きな物置の場合は、安全な設置のためには基礎工事が求められる場合が多いため、業者の指示通りに設置を進めた場合、気付いたときには課税対象の形になっていたというケースがあるのです。したがって、安全性のことなども考え、設置する物置に関しては、必要な収納量を確保できるだけのコンパクトなサイズを選ぶのがおすすめです。どうしても大型で収納力が高い物置を設置したいという場合は、業者に相談しながら設置方法を検討しましょう。

自宅に物置を設置する際は、上記のような点に注意しておけば、固定資産税の課税対象に入らなくて済むようになります。

物置の設置は建築確認申請が必要?

自宅への物置の設置に関しては、固定資産税以外にも、建築確認申請が必要なのかどうかが気になるという方も多いです。

これについては、物置のサイズが「10㎡以上か?以下か?」で確認申請の必要性が変わると考えておきましょう。なお、10㎡以上の物置となると「2m×5m」の大きさとなるため、物置として考えると、かなりの大型と言えます。戸建て住宅に設置される一般的な物置については、10㎡以下のタイプが一般的だと思うので、基本的には建築確認申請も必要ないと考えておけば良いかと思います。

ちなみに、建築確認申請については、建築基準法で定められていて、建築基準法上の“建築物”に該当しないものは、確認申請の対象外となっています。建築基準法上の建築物とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根および柱または壁を有するもの」と定義されています。つまり、固定資産税の対象を外れる目的などで、土地に定着しない設置方法を選んだ物置に関しては、建築物だと判断されない可能性が高く、確認申請も不要と判断できます。

ちなみに、国土交通省が示している、確認申請が不要となる条件に付いては、以下の通りです。

  • 床面積10㎡以下
  • 防火地域または準防火地域外
  • 外部から物を出し入れでき、内部に人が立ち入らない

ただし、長期間設置されているものや移動に手間がかかる規模のものに関しては、建築物と判断される可能性もあり、この場合は申請が必要とされる可能性があります。また「土地への定着」に関しても、固定資産税の課税対象を決める際とは少し異なる部分があるので、その辺りも注意しましょう。

質問 「土地に定着するの…」の定着とはなんですか。
回答 定着とは必ずしも物理的に強固に土地に結合された状態のみではなく、随時かつ任意に移動できない状態のものをいいます。
このため、基礎がなくても、容易に動かすことができないものは、土地に定着していると判断されます。
引用:千葉市「建築物の扱いについて」

このように、この場合の「土地に定着する」とは、物置など、重量のある構造物に関しては、地面に置くだけでも成立する可能性があるのです。法的な取り扱いについては、自治体ごとによって変わる場合もあるので、設置前に自分で自治体に確認するか、設置業者に確認をとってもらうようにしましょう。

まとめ

今回は、一戸建て住宅に物置の設置を検討した時、多くの方が疑問に感じる固定資産税や建築確認との関係性について解説しました。

家を建てる際には、多くの方は十分な収納スペースを確保できるような計画を立てるはずです。しかし、生活を進めていくうちに、どんどん荷物が増えていき、もともとあった収納スペースだけではどうしても足らなくなってしまう…というケースは珍しくないのです。こういった時には、ホームセンターなどで販売されている物置を購入し、自宅の空きスペースに設置するという方が多いです。

ただ、物置の設置に関しては、その設置方法によって固定資産税が課せられる可能性が出てくるということに注意しなければいけません。固定資産税は、毎年課せられる税金となるため、継続的なコスト負担となってしまいます。記事内では、固定資産税が課せられないようにするための設置のコツをご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

なお、住宅に関連するルールについては、自治体ごとに細かな部分が異なるケースも多いので、その点は注意しましょう。物置の設置を考えた時には、地域密着で地元の建築ルールに詳しい建設会社などに相談し、最適な方法を提案してもらうと良いです。

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