今回は、新築時に意外に見落としてしまう方が多く、住み始めてから後悔してしまいがちな窓選びのポイントについて解説します。
新築時の窓選びと聞くと、窓ガラスに採用する製品の種類について着目する方が多いです。近年では、さまざまな種類の窓ガラスが開発されていて、窓にはめ込むガラスの種類を選ぶことで、防犯性を高めたり、断熱性や防音性能を高めたりすることができるようになっています。特に昨今では、「闇バイト」に関わるニュースが毎日のように報道されていることから、窓部分の防犯性を高めたいと、防犯ガラスの導入を検討する方が急激に増えています。実際に、このサイト内で以前ご紹介した防犯ガラスの性能に関わるコラムについては、非常に多くのアクセスを頂いており、侵入犯罪を防ぐための有効な手段と考えられるようになっているのだと感じます。
ただ、窓選びについては、はめ込むガラスの種類だけでなく、窓の構造についてもきちんと選ばなければならないのです。窓は、採光や換気を目的に設置する設備ではあるのですが、採用する窓の種類によって利便性が変わったり、大きさを間違ってしまうことで家具の配置に困る…なんてことになってしまいがちなのです。
そこでこの記事では、一般住宅に採用される代表的な窓の種類について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説していきます。窓は、生活利便性に大きな影響を与える重要ポイントなので、これから新築住宅の建築を計画している方は、ぜひ参考にしてみてください。なお、窓ガラス選びについても、重要なことは変わらないため以下の記事も併せてご確認ください。
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戸建て住宅の代表的な窓の種類とその特徴について
注文住宅の建築計画を立てる時には、どんな窓を取り付けるのかという点も重要なポイントになります。窓ガラスの種類については、窓の構造を決めた後で決定することになるわけで、まずはどのような構造の窓を採用するのかを決めなければいけません。
そこでここでは、新築戸建て住宅でよく用いられる主な窓の種類について、それぞれの特徴や構造的なメリット・デメリットをご紹介します。
①引き違い窓
まずは、引き違い窓と呼ばれるタイプです。引き違い窓は、2枚の窓ガラスを左右に引いて動かすことで開閉するタイプの窓となります。一般の方が「窓の形」と聞いて、真っ先に思い浮かべるのがこのタイプの窓で、どのような住宅でもさまざまな場所に使われている、最もベーシックな形状の窓といえるでしょう。
引き違い窓は、窓を開ける時の大きさ(幅)を利用者自身が細かく調整することができるため、換気目的に設置する窓としても非常に有効です。構造も非常にシンプルなので、旧来の住宅で最も多く使用されている窓の形といえるでしょう。
引き違い窓のメリット・デメリット
引き違い窓のメリットとデメリットは、以下の様な感じです。
まずメリット面についてです。
- 利用者自身が細かく開口を調整出来る
- 窓ガラスを完全に外すことも可能なので、引っ越しの際などに、ドアから入らない大型家具などの出し入れに使える
上記のようなメリットがある一方で、以下の点に注意が必要です。
- スライド式の窓なので、構造上、どうしても気密性の高さに限界がある(気密性が高くない)
- デザイン性が低い
②滑り出し窓
滑り出し窓は、取っ手やハンドルが取り付けられていて、その部分を掴んで窓を外に押し出す、または手前に引くことで開閉するタイプの窓です。なお、縦横どちらに開くのかによって「縦滑り出し窓」「横滑り出し窓」と区分され、さらに開く方向によって外開き、内開きという区分がなされています。
滑り出し窓は、引き違い窓とは異なり、窓ガラス一枚だけで設置できるので、省スペースだという点がメリットです。賃貸住宅などでは、部屋の高い位置に、小さな窓として採用されているケースが多いのですが、近年では大開口の横滑り出し窓も登場していて、新築業界で最も多く使われている窓タイプと言われるようになっています。なお、滑り出し窓は、窓を開放する側にスペースを確保しなければいけません。
滑り出し窓のメリット・デメリット
滑り出し窓のメリット・デメリットは以下の様な感じです。
まず、メリット面としては、以下の様なポイントが指摘されます。
- パッキンなどを設置すれば、閉めた時に押しつぶせる構造になるので、気密性が高い
- 引き違い窓よりも省スペースで設置可能
一方、以下の様な点がデメリットとされています。
- 窓を開ける時は、開放側にスペースが必要
- 内開きタイプは、カーテンが設置しづらい
③上げ下げ窓
上げ下げ窓は、2枚の窓ガラスを上下にずらすことで開閉するタイプです。分かりやすく言うと、引き違い窓を縦に設置した形をイメージしていただければ良いかと思います。この窓タイプは、洋風建築に採用されるケースが多いです。
なお、上げ下げ窓でも、設置された窓ガラスが2枚とも動くものと、1枚のみ動かせるもの、タイプの違いがあります。開閉の方法は、引き違い窓に良く似ているのですが、上げ下げ窓の方がサッシ枠との密着性が高くなるため、窓部分の気密性や防音性が高くなるとされています。ただ、大きいサイズの窓になると、重量が重くなってしまうため、開閉が困難になります。つまり、大開口部の窓にはあまり適していません。
上げ下げ窓のメリット・デメリット
上げ下げ窓のメリットは、以下の様な点です。
- 引き違い窓よりも密着性が高く、気密性・防音性が高い窓になる
- 窓ガラスを上下にスライドすることで開閉するため、間口がそこまで大きくならず、侵入されにくい(防犯性の面で有利)
一方、以下の様なデメリットが存在します。
- 大開口の窓には適していない
- 1枚のみ動くタイプは動かない方の窓が掃除しづらい
- コストが高い
④はめ殺し窓(FIX窓)
はめ殺しやFIX窓と呼ばれるタイプは、開閉することができない物を指しています。通風や換気の機能はなく、採光、眺望、デザインなどを目的に採用される場合が多いです。FIX窓は、高い位置から採光する目的で吹き抜け部分に取り付けられたり、高度な気密性が望まれる防音室の窓として採用されるケースが多いです。
FIX窓は、開閉できない窓となるため、気密性が高く、ガラスの種類によっては非常に高い防犯性を誇ります。また、構造がシンプルになる分、コストも安くなります。ただ、窓の掃除は手間がかかる点に注意が必要です。
はめ殺し窓(FIX窓)のメリット・デメリット
FIX窓のメリット面は、以下の様な点があげられます。
- 気密性・防音性・防犯性が高い
- 窓に対し、窓ガラスを大きく確保できる
- 構造がシンプルなので、開閉できる窓よりもコストが安い
一方、以下の様な点がデメリットです。
- 換気、通風の機能がない
- 内側から窓の外側を掃除できない
⑤掃き出し窓
掃き出し窓は、床から天井近くまで届く、大きな窓のことを指しています。庭やベランダに面したリビングに設置されることが多く、人の出入りも可能な窓として利用できます。
なお、開閉方式に関しては、引き違いや、一部分だけを滑り出しにして残りをFIX窓にするなど、さまざまな種類があります。掃き出し窓は、大きなサイズの窓となるため、開放感のある空間を創出し、部屋を大きく見せることができるようになります。開閉方式を引き違いにすれば、窓を全て取り外すこともでき、大きな家具の搬入・搬出口として利用することも可能です。
ただ、窓が大きくなる分、窓を作るためのコストが高くなります。さらに、防犯対策やプライバシーの確保を目的としたカーテンやブラインドに関しても、窓に合わせて大きなものを設置しなければならないので、一般的なものよりも高いです。
掃き出し窓のメリット・デメリット
掃き出し窓のメリット面は、以下の様な点があげられます。
- 窓が大きいと、開放感があり、部屋を広く見せることができる
- 採光性、通気性が高い
一方、デメリットは以下の点です。
- 窓が大きいため、プライバシー対策が必須(道路に面したリビングなどになると、視線が気になる)
- 窓そのものや、カーテン・ブラインドなど、大きなものが必要になるので、その分コストがかかる
⑥腰高窓
人の腰から上の高さに設置される窓で、場所を問わずに設置される応用性の高い窓です。開閉方式も、滑り出し窓、引き違い窓、上げ下げ窓など、さまざまなタイプから選ぶことが可能です。
腰高窓は、窓部分の下側は壁となるため、そのスペースに家具を配置することができるようになるなど、部屋のスペースを有効活用できる点が大きなメリットです。主に、採光や通風を目的に設置される窓なのですが、掃き出し窓と比較すると、小さめの窓になるため、採光性はやや落ちます。
腰高窓のメリット・デメリット
腰高窓のメリット面は、以下の様な点があげられます。
- 窓の下に家具を配置できるなど、部屋のスペースを活用しやすい
- 開閉形状の選択肢が多い
一方、デメリットは以下の点です。
- 掃き出し窓に比べると採光性がやや落ち、開放感も少ない
⑦スリット窓
スリット窓は、採光を得ることを目的に設置されるもので、通常の窓と比較すると、縦長もしくは横長に細長い形状をしています。FIX窓として開閉を前提としないケースも多いですが、開閉できるものの場合、滑り出し窓が採用されることが多いです。
窓が細長い形状となるので、部屋のデザイン性が良くなり、おしゃれに見えるようになります。そのため、飲食店などの空間づくりでも採用されることが多いです。窓が細長いという点は、外部からの視線を遮りやすくなるので、プライバシーを確保しやすくなります。一般住宅の場合、玄関ホールや階段、廊下などに設置されることが多いですね。
なお、窓を設置する方角や天候によって思うように採光がとれないこともあるので、その点は注意しましょう。
スリット窓のメリット・デメリット
スリット窓のメリット面は、以下の様な点があげられます。
- 天井を高く見せるなど、空間デザイン面で便利
- 設置位置を工夫することで、採光性・換気口率を高められる
- プライバシーを確保しやすい
デメリット面については以下の様な感じです。
- 方角や天候によって、十分な光を取り込めない
⑧天窓(トップライト)
最後は、通常の窓とは全く異なる位置に設置するタイプの「天窓(トップライト)」です。一般的に、窓は採光や通風を目的に壁に取り付けられるものというイメージですが、天窓は屋根をくりぬいて、天井の取り付ける物を指しています。吹き抜けのリビングなどに設置されることが多いです。
天窓は、高い位置に窓があることから、自然光を取り込みやすくなるという点が最大の魅力です。ただ、非常に高い位置に窓があることから、掃除がしづらい窓になります。また、屋根に穴をあけて設置するということから、どうしても雨漏りリスクが高くなる点は注意が必要です。
天窓は、採光が主目的になっているケースが多いため、FIX窓を採用するケースが多いです。しかし、換気機能も期待する場合は、開閉できるようにすることも可能です。
天窓のメリット・デメリット
天窓のメリット面は、以下の様な点があげられます。
- 壁に設置する窓よりも採光性が高い
- プライバシー性が高い窓になる
デメリットについては以下の様な感じです。
- 掃除やメンテナンスが難しい
- 雨漏りリスクが高くなる
- 南側に設置した場合、日当たりが良すぎて、空調効率を悪化させる恐れがある
窓選びで後悔しないためのポイント
ここまでは、新築計画を進める際、意外に多くの方が見落としてしまっている窓の種類について、代表的な窓の特徴などについて解説しました。これを見ると、想像以上に多くの窓タイプがありびっくりした…という方も多いのではないでしょうか?
それでは、実際に新築住宅の建築計画を立てる際、窓選びに失敗しないためには、何に注意すべきかもご紹介します。窓の種類を選ぶ際には、どの部屋の窓なのかが重要なポイントになるため、各部屋ごとに窓選びのポイントをご紹介します。
リビングやダイニングについて
住宅の中でも、人が最も長い時間を過ごすことになるのが、リビングやダイニングです。リビング・ダイニングは、家族で食事をしたりゆったりとくつろいだりするための場所となります。
昼間も人が滞在する可能性が高い場所となるため、リビングやダイニングに設置する窓は、自然光をたっぷりと取り入れることができるように…ということを意識すると良いでしょう。家の方角によっては、一般的な窓では自然光が取り込みにくい…などといった場合、天窓や高い位置にスリット窓を設置するなど、採光性が高い窓を検討するのがおすすめです。
ただ、リビングが人通りが多い道路に面しているという場合には、採光性以外にもプライバシーの保護について検討しなければいけません。リビングやダイニングの窓は、庭が見えるようにすると部屋が広く見えるため、大きな窓を設置したいと考える方が多いのですが、前面道路から丸見えになってしまうようなら、視線が気になって昼間でもカーテンを閉め切らなければならなくなる…なんてことになりやすいです。この場合、せっかく採光性を高くしたのに、全く意味がなくなってしまうため、窓の種類に後悔を感じやすいです。
キッチンについて
キッチンは、家の中でも日中に使用することが多いスペースと言えます。そのため、自然光をしっかりと取り込めるようにしておくことで、光熱費の削減や開放感のある空間の実現が期待出来ます。こういったことから、窓は、高窓や天窓など、採光性の高さに注目するのがおすすめです。
注意点としては、キッチンが西向きになっている場合、その方角に窓を設置すると西日の差し込みに苦労する可能性が高くなります。西日が差し込むと、眩しくて作業しづらくなりますし、特に夏場などはキッチン内の室温が高くなってしまいます。したがって、日差しを人為的にコントロールできるよう、ブラインドや可動式ルーバー面格子の設置がおすすめです。
浴室について
浴室の窓は、外からの視線を防げることと、侵入を防止できるような防犯対策が重要です。窓自体を無くせば、このような心配をする必要がないのですが、湿気が非常にこもりやすい場所となるので、換気機能を高めるためにも窓はあった方が良いです。
視線を遮る効果は、すりガラスなど、外から中を見通すことができないタイプのガラスを採用すると良いでしょう。また、外側に、ルーバー面格子などを設置すると防犯性を高めることも可能です。なお、換気目的を重視する場合、浴室の高い位置に横長のスリット窓を設置するのもおすすめです。
その他、窓を選ぶときのポイント
窓は、部屋によって適した窓の形が変わります。一般的には、採光性や気密性などが重視されるのですが、この他にも、以下の様なポイントに着目して窓を選ぶと良いです。
- 掃除のしやすさ
- プライバシーの確保
- デザイン性
掃除のしやすさについては、実際に生活してみて気付く方が多いです。例えば、採光を目的にFIX窓を設置した時、内側はいつでも掃除可能なのに、外側に関しては、わざわざ家の外に出なければ、掃除することができないのです。当然、長期間掃除を怠れば、窓の目的であった採光性も低下してしまうことになります。そのため、良かれと思って設置した窓のせいで、掃除の手間が増えてしまった…と後悔する方が一定数います。
窓選びでありがちな失敗例について
それでは最後に、窓選びに関わる失敗例についても解説します。窓選びの際には、「自然光をたっぷり取り入れるため、大きな窓が欲しい!」「吹き抜けの天窓に憧れている!」などといった話を聞くことが多いのですが、家の立地なども含めて総合的に検討しないと、住んでみて痛い目を見る可能性があります。
実際に、新築での窓選びでは、以下の様な失敗をするケースが少なくないとされています。
家具の設置スペースが少なくなった
採光や換気の面を考えると、窓は多ければ多い方が良いと考えてしまいがちです。実際に、明るい部屋にしたいと考え、大きな窓をたくさん設置したいと希望する方は多いです。
しかし、窓の数が多すぎると、その分、家具を置くためのスペースが少なくなってしまうことに注意しなければいけません。窓を中心に計画した時には、思うように家具をレイアウトできなくなってしまい、後悔する結果を招くことがあります。
また、窓は、壁と比較すると、非常に薄い素材であるため、外気の影響を受けやすい点も注意しましょう。窓ガラスやサッシの断熱性能によっては、窓の数が多いことで、冬は寒く、夏は暑い…という最悪な住環境が出来上がってしまう可能性もあります。
窓は、多ければ多いほど良いというものではありませんし、採光や通風に必要な数、場所を適切に選びながら設置するようにしましょう。
採光性が高すぎて眩しく感じる
自然光をたくさん取り入れて、明るいリビングにしたいと考える方は多いはずです。採光性の高い窓を実現したい場合には、高い位置にスリット窓を設置したり、吹き抜けに天窓を設置するという方法がおすすめなのですが、実際に住んでみると、日光が入りすぎて眩しい…、室内にいると暑くてかなわない…なんて声を聞く機会も少なくありません。
新築の注文住宅では、リビングを吹き抜けにして天窓を設置したいという要望を持っている方が多いです。しかし、天窓は、確かに採光性が高い点がメリットではあるものの、夏場などは採光性が高すぎて眩しく感じる、室温を上昇させる要因となるなど、その性能がデメリットになり得るのです。さらに、強い日差しを取り込むということは、家具やクロスの日焼けの原因となってしまう場合もあります。
したがって、明るすぎる部屋に後悔しないようにするためには、日光がどのような角度で入っているのかを事前に計算し、日焼けなどの被害を受けずに済む場所に家具を設置できるようにレイアウトを作るなどといった対策も必要です。さらに、人が眩しいと感じるような光を避けることができるように、天窓にブラインドを設置するといった対策も施しておくと良いです。
外からの視線が気になる
窓に関する失敗では、この問題を抱える人が多いので注意しましょう。設置する窓の場所や大きさなどによっては、家と接している道路の通行人や車、隣家の窓から家の中が見通せる状態になってしまうことがあります。開放感のある空間を求めて設計した家にありがちなのですが、オープン外構を採用したうえ、リビングの壁いっぱいを窓にするなんてことをすれば、家の中が丸見えになってしまいます。
この場合、せっかく大きな窓を設置していたとしても、外部からの視線が気になってしまい、日中も常にカーテンを閉めて過ごす…なんてことになるなど、本末転倒な結果になってしまうのです。開放感のある大きな窓を設置したいという場合、外構部分で外部からの視線を遮ることができるようにするといった総合的な対策を検討すると良いです。
まとめ
今回は、新築住宅の建設計画を立てる際、意外な盲点となってしまいがちな窓の選び方について解説しました。記事内でご紹介したように、住宅の窓は、ガラスだけでなく開閉方式の異なるさまざまな窓タイプが存在します。当然、大きさや開閉の方法が異なるわけですので、設置する窓のタイプによって、採光性や通風性だけでなく、使い勝手にも影響が生じると考えなければいけません。
窓は、自然光が取り込めて、開けることで通風ができれば何でも良いと考えられがちですが、実際に住んでみると、後悔する場所になりやすいので、それぞれの特徴をきちんと理解して、自分が求める住宅に最適な形がどれかを慎重に選ぶようにしましょう。