皆さんは、「犬走り」という建築用語について、その意味を正確に理解しているでしょうか?マイホームの新築を検討した時には、建築を依頼する業者さんとのやり取りを進めていくときに出てくる可能性がある建築用語なのですが、その意味を正確に理解ておかないと、疑問を抱えたまま話を進めることになってしまいます。

犬走りは、住宅だけでなく、日本の建築では幅広い建物で施工されてきているのですが、昨今の新築業界では見かけることが少なくなっているため、何のためにあるのかがいまいち分からない、犬走りを設けることでどんなメリットが得られるのだろうか…と言った疑問を抱える人も多いはずです。

そこでこの記事では、「そもそも犬走りとは何か?」「犬走があることでどんなメリットがあるのか?」など、その基礎知識について解説していきます。なお、犬走りは、構成する材料によって得られる機能性などが変わるため、その辺りについても簡単にご紹介します。

犬走りとは?土間コンクリートの違いも紹介

それではまず、犬走りについて、住宅のどのような部分のことを指しているのかについて解説します。冒頭でもご紹介したように、昨今の家づくりでは、犬走りを設けない家が増えているため、「どの部分のことなのだろう?」など、基本的な部分に疑問を持つ方も多いようです。

ここでは、犬走り基礎知識として、名前の由来や住宅の中のどの部分を指しているのかなど、その基礎知識を解説します。

犬走りの名前の由来

まずは、「犬走り」について、なぜこのような名前が付けられたのかについて解説します。建築関連の知識をあまり持っていない人であれば「犬走り」と聞いても、これが建築用語のことを指しているとは思わない人が多いと思います。

まず、犬走りについて、家のどの部分なのかについてですが、これは建物の周囲で、外壁に沿って設けられる幅が1m前後の細長い通路上のスペースのことを指しています。もともとは、日本のお城の敷地内で、塀の外側にある垣までの狭いスペースのことを指していたとされ、犬が走れる程度の狭い幅にされていたことからこの名前で呼ばれるようになったとされています。

なお、犬走りの構造自体は、鎌倉時代から存在しているとされ、石垣の地盤補強や見回りに使う通路などとして活用されていたそうです。現在の住宅では、コンクリートや砂利、タイルなどによって舗装され、土の地面と建物を分けるための緩衝地帯としての役割があるとされています。

犬走りに求められる役割

上述の通り、犬走りは、建物の周囲に設けられる、1m程度の幅を持つ細い通路のことを指しています。ちなみに、犬走りについて、建築基準法などで素材やサイズが明確に決められているようなこともありません。

こう聞くと、「それなら、なぜ犬走りを設けるのだろう?」と考えてしまう人が多いと思います。正直な話、「犬しか通れない細い通路」など、自宅に用意する必要なんてないのではないかと感じてしまいますよね。

ただ、この犬走りは無意味に施工されているわけではなく、「家を保護する」というしっかりとした役割があるのです。というのも、元々の日本家屋は、現在のような雨樋が設けられていませんでした。そのため、雨が降った日には、屋根に落ちた雨水が、そのまま軒先に垂れ流しになってしまうため、地面で水が跳ねて外壁を汚したり、地面を掘って転倒の危険性が生じるといった問題があったわけです。犬走りは、屋根から落ちてくる雨水を受け、外壁などが水跳ねで汚れないようにするという保護機能が期待されていたわけです。

特に、昔の日本家屋は、外壁に土壁やしっくい壁などが採用されていたため、雨水が跳ねると外壁に泥汚れが付着し汚く見えてしまうという問題があったのです。現在のような、工業製品を採用した外壁材であれば、外壁が汚れれば水洗いして綺麗に汚れを落とすことができます。しかし、昔の住宅はこのような対応が難しかったこともあり、犬走りを設けることで「汚れにくい状況を作る」ということに重点が置かれたのです。この他、昔の家屋は、土台が剥き出しになっている場合も多かったため、跳ねた水が基礎部分に付着しないようにするということも考慮されていたようです。

このように、犬走りは、家を汚れから守る、基礎の腐食から守るなど、家を保護するという役割を担っていたのです。

犬走りは土間コンクリートとは異なる

昨今の住宅業界では、犬走りを施工するケースが少なくなっていると紹介しました。しかし、「家を保護する」という効果が期待できる点から、現在でも犬走りを設ける住宅もあるのです。そして、建材の機能性が向上している昨今では、犬走りに施工される材料として、コンクリートが選ばれるケースが多くなっています。

そのため、犬走りについては、土間コンクリートと同じものだという認識が広がっているようです。ただ、犬走りと土間コンクリートについては、施工の目的や設置場所が異なるなど、明確な違いがあるので注意しましょう。
土間コンクリートは、多くの住宅で採用されているのですが、施工場所としては駐車場やテラスなど、人や車が日常的に利用するような場所に施工されます。犬走りとは異なり、比較的広いスペースに施工されることが多く、人の行き来や車などの重量物が停められるといった特性上、厚みも10~15cmと、しっかりとした厚みを持ち荷重に耐えられる構造になっています。

犬走りについては、先ほど紹介した通り、建物の外周に沿って設けられ、幅が1m程度と細長いのが特徴です。役割としては、外壁の汚れ防止や基礎周りの防湿となるため、耐荷重のことはそこまで考えられておらず、厚みは5~10cm程度におさえられていることも特徴です。犬走りは、施工面積が小さく、コンクリートの厚みもあまりないため、広いスペースに施工されることが前提となる土間コンクリートよりも施工費が抑えられます。

犬走りを作ることで得られるメリットは?

それでは、新築時に犬走りを設けておくことで得られるメリットについて解説していきます。

上述しているように、昔の日本家屋に犬走りが設けられていたのは、雨樋が無かったことから、屋根から落ちる雨水により家が損傷することを防ぐという役割が期待されたためです。ただ、現在の住宅事情を考えてみると、ほとんどすべての家に雨樋が設置されるようになっていることから、適切に雨水が処理されているのなら、必ずしも犬走りは必要とされないという状況になっています。犬走りを設けなければ、庭の面積を少し広く確保できる、犬走りの施工にかかるコストを削減できるなどのメリットが得られます。

こういったことから、昨今の新築業界では犬走りの姿を見かけなくなっているのですが、現在でも犬走りを作ることで得られるメリットもあるのです。ここでは、犬走りを設けることで得られるメリットについて簡単にご紹介します。

メリット1 住宅の保護機能

昨今の住宅で、犬走りが設けられないのは、ほとんどの住宅に雨樋が設置されるようになり、屋根に落ちた雨水が直接地面に落ちることが少なくなったためです。屋根に落ちた雨は、雨樋を通り、排水管によって適切に排水されるため、屋根から落ちた水で建物そのものが汚れるといった心配が少なくなっているのです。

ただ、雨樋が設置されているからと言って、地面からの泥跳ねが一切なくなるのか…というとそうではありません。土のままの地面をそのままにしていると、地面に直接的に降った雨や人の歩行などによって泥跳ねが起きる可能性もあるのです。つまり、現在の住宅においても、犬走りを設けておけば、雨や泥などによる汚れから家を保護できるという機能は得られるのです。

特に、木造住宅が多い日本の住宅事情を考えてみると、家を長持ちさせる視点では犬走りは非常に役立ちます。家を長持ちさせるには、床下の湿気対策がしっかり実施されている、屋根や外壁の雨仕舞ができている、耐震性能が十分であるということなどが重要になります。木で構成される日本の住宅は、長時間湿気にさらされてしまうと、構造部分の腐食やシロアリの繁殖などにより早期の劣化が考えられるのです。家の周囲に犬走りが無く、土の地面のままだった場合、家の周りの地面はしばらくの間、多くの水を保有し続けてしまうことでしょう。そして、その湿気が床下に入り込むことで、家を劣化させる恐れがあるのです。

逆に、犬走りを用意しておけば、建物の近くの水は素早く乾燥させることができるようになるため、家を守ることに繋がるわけです。

メリット2 悪天候時でも歩きやすい

二つ目のメリットは、通路として利用することができるという点です。犬走りは、建物の外壁から幅1m程度にコンクリートなどを施工して、通路のような物を作る方法です。この犬走りがあれば、悪天候時でも、その部分を通ることで履物などを汚すことなく行き来できるようになるのです。

人の日常生活のことを考えると、雨の日だから一歩も外に出ないといった生活はできません。仕事や学校に行く、買い物やゴミ捨てに出るなど、雨の日でも外を出歩く機会は非常に多いのです。この際、地面が土のままの状態だと、ぬかるんだ地面の上を歩くことになり、履物が汚れます。さらに、汚れた履物で玄関などに入ることになるため、玄関なども汚れてしまうことでしょう。

犬走りがあれば、雨の日でも歩きやすいうえ、履物が汚れないので、玄関部分の汚れなども防げるようになり、掃除の手間なども少なくなります。

メリット3 雑草問題の解消

犬走りは、何らかの建材を利用して地面を覆うことになります。コンクリートが多いのですが、この他にも砂利やブロックなどを使用して地面を覆います。

そのため、犬走りが施工されている部分に関しては、地面に直接日光が当たらなくなるため、雑草が生えにくくなるのです。犬走りを設けず、土のままの地面にした場合、その部分に雑草が生えてしまうため、定期的に雑草取りが必要になります。また、家の周りに雑草が繁殖すると、小動物や昆虫の住処になるため、家の中に害虫などが侵入するリスクが高くなります。

犬走りを設けると、絶対に雑草が生えないというわけではないのですが、土の地面と比較すると、繁殖具合は確実に軽くなるため、管理が楽になります。その結果、家の周りで害虫などが繁殖する可能性も少なくなるので、家への侵入も防止しやすくなるでしょう。

メリット4 砂利を使用することで防犯効果が得られる

これは、犬走りを砂利で施工する場合に得られるメリットです。犬走りは、土の地面が露出しないようにするという対策なので、コンクリートを打設するという方法以外でも本来の効果を得られるのです。

そして、コンクリートなどではなく、砂利敷きを採用すれば、その上を人が歩行する際には、ガリガリと言った異音が生じるようになるので、敷地内への不審者の侵入に気付けるなど、防犯効果が期待できるようになるのです。もちろん、家族が普段使用する通路となると、砂利が擦れる音がご近所迷惑になる可能性があるので、基本的には、人が歩行しないような死角部分に施工するようにしましょう。

犬走を砂利で施工しているという状況は、空き巣犯から見ると「防犯意識が高い」という印象を与えられるようになるため、狙われにくくなるという効果も期待できます。

メリット5 外構部分のデザイン性向上

犬走りは、使用する建材によって、建物周りのデザイン性を向上させることができるというメリットもあります。

一般的には、コンクリートや砂利で作られることが多いのですが、タイルやレンガ、インターロッキングなどを採用すれば、エクステリア部分のデザイン性が大きく向上します。建物と一体感のある犬走りにすることができれば、建物の全体的な外観イメージを大きく向上させることができるでしょう。

コンクリートを採用する場合でも、ビー玉や綺麗な石をはめ込んでみたり、注文住宅を新築する場合は、記念として家族の手形をスタンプとして残すといった工夫をする方も多いです。

犬走りの素材とそれぞれを採用するメリット・デメリット

犬走りは、コンクリートや砂利、タイル素材など、さまざまな建材が採用されることがあります。そして、採用する素材によって、得られるメリットとデメリットが変わるので注意する必要があります。また、採用する素材によって、施工にかかる費用なども違ってくるので、ここでは、犬走りに採用されることがある建材と、それぞれを利用して出来上がる犬走りの特徴などについて解説します。

コンクリート

一つ目の素材はコンクリートです。住宅の地面を舗装するための素材として、現在最も一般的なのがコンクリートだと思います。

コンクリートは、非常に頑丈で平らな表面を実現できる材料なので、犬走りに採用すると、歩きやすいスペースになるというメリットが得られます。また、コンクリートの場合、表面に汚れなどが付着しても、水洗いで綺麗にすることができるなど、維持管理の手間が少なくなる点もメリットと言えるでしょう。

一方、コンクリートは、打設から時間が経過していくと、ひび割れなどが生じてしまい、その部分から雑草などが生えてくることがあるので注意しましょう。その他の材料と比較すると、メンテナンススパンは長くなるのですが、それでも定期的なメンテナンスを実施する必要があります。

コンクリートの打設については、DIYで出来ないこともないのですが、表面を綺麗にならすのはなかなか難しいですし、しっかりと頑丈な犬走りにするには、以下のような工程で作業を進めなければならないため、一般の方にとっては難易度が高いと言えます。

  • STEP1 犬走りにする部分を掘る
  • STEP2 掘った部分に砂利を薄く敷き押し固める
  • STEP3 鉄筋で編まれたメッシュをいれる
  • STEP4 型枠を差し込む
  • STEP5 コンクリートを流し込む
  • STEP6 表面を均して固まるのを待つ

コンクリートによる犬走りは、上記のような流れで作ります。想像以上に作業工程が多く、DIYでは難しいそうと感じた方が多いかもしれません。そのため、コンクリートを使用した犬走りの場合は、専門業者に施工を依頼するケースがほとんどです。この場合、1㎡当たり1.2万円程度が目安となりますが、コンクリートの厚みなどによって費用が変わります。

砂利

次は、砂利を利用した犬走りです。砂利は、一般の方でも扱いやすく、DIYでも施工しやすい、またその他の建材と比較すると、施工にかかる費用を削減できるといった点がメリットになります。外構用の砂利は、ホームセンターなどでも販売されていますし、それを購入して地面に敷設すれば犬走りとして利用することができるようになります。

ただ、きちんと犬走りを作る場合には、まず砂利を敷く分の土を掘り、そこに除草シートを敷いてから、砂利を撒いていくという工程が必要になります。地面を掘る高さは3~5cmと、非常に浅いのですが、家の外周全体を掘るとなると、かなりの重労働となります。その上、重量のある砂利をそれなりの厚みになるように敷いていかなければいけません。つまり、DIYでも扱いやすいとはいえ、一般の方が簡単に施工できるというわけではないので、その点は注意しましょう。

砂利による犬走りをプロに依頼して作る場合の費用は、1㎡あたり約3,000円〜6,000円程度を想定しておけば良いでしょう。ただ、防犯砂利などの高価な砂利を採用する場合、もう少し費用がかかるかもしれません。DIYで施工する場合は、材料費のみとなるので、安いものであれば1㎡当たり1000円ぐらいから施工可能です。

砂利敷きの注意点は、人がその部分を歩行する際に音が生じるため、騒音トラブルが発生する恐れがある点や、コンクリートよりも雑草が生えやすいため、維持管理の手間がかかりやすい点です。

タイル

外構部分のデザイン性向上を目的とした場合、タイルを使って犬走りを作るケースがあります。

ただ、タイルを使った犬走りは、コンクリートを施工して、その上にタイルを貼り付けていくという流れになるため、施工に時間と手間がかかり、費用も高くなります。一般的には、コンクリートで犬走りを作る場合と比較して、1㎡当たり1万円程度のプラスの費用が掛かる感じです。

タイルを採用した犬走りは、特徴的なデザインを実現することができるので、家の全体的な見栄えが良くなるというメリットが得られます。また、コンクリーだけの犬走りと比較すると、より水跳ねを抑えられるという点もメリットでしょう。

インターロッキング

犬走りについて、通路としてのデザイン性を重視したいという方の場合、インターロッキングを使って舗装する場合もあります。

インターロッキングは、コンクリートブロックを敷き詰めていくという方法で、耐久性が高く、透水性によって水たまりなどもできにくくなるというメリットが得られます。一般道の歩道などにもよく採用されていますが、快適な歩行空間が実現できるうえ、特徴的なデザインになるため、個性的な外観を実現できる点がメリットです。最近では、舗装に使えるコンクリートブロックについても、カラーやデザイン性の選択肢が豊富になっているので、おしゃれな外構を実現できると思います。また、インターロッキングの場合は、部分的な補修が可能だという点も魅力です。

ただ、熟練の技術が必要な舗装方法なので、DIYでの実施は難しいと考えましょう。また、施工費に関しても、コンクリートの打設よりも高くなり、1㎡あたり15,000円程度かかることもあります。安い建材などを採用すれば、費用を抑えることもできますが、デザインを重視する方の場合は、それなりのコストを想定しておいた方が良いでしょう。

まとめ

今回は、家の保護機能を高められる犬走りについて解説しました。記事内でご紹介した通り、犬走りは、建物の外壁から1m程度の幅を持った通路のことを指しています。家づくりの際に、必ず必要になるという場所ではないですし、建築基準法など、法律によって設置を義務付けられているわけではないので、新築費用を削減するために犬走りを梨にしたいと考える人も多いと思います。

しかし、日本の住宅には、昔から多くのケースで犬走りが採用されているように、四季のある日本では、あるだけでメリットがたくさん得られるのも事実なのです。特に、悪天候時には、家を守るだけでなく、玄関部分などの汚れも防止してくれるようになるため、可能であれば導入するのがおすすめです。

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