注文住宅の購入を検討している方にとって、無事に家が完成するかどうかは、最大の懸念事項になります。

こう聞くと、きちんと契約してお金を支払うのだから「家は完成するのでは?」と疑問に感じてしまう人が多いかもしれません。確かに、一般的な取り引きの流れのことを考えると、工務店に注文住宅の建築を依頼すれば、時間はかかるものの希望する家はいずれ完成すると考えてしまうことでしょう。しかし、住宅ローンを組んでしっかりと支払いができる状況であっても、思わぬ理由で家が完成しないという事態に陥ってしまう可能性があるのです。

その理由は、家の建築を依頼した工務店の倒産があげられます。当然、家の建築を依頼した工務店が倒産してしまうと、その後の建築工事はストップしてしまうことになり、依頼した内容の家は完成させることができません。さらに、契約時に支払った前金が回収困難に陥ったり、別の会社に依頼しなおすための追加費用の発生、工期の延期など、さまざまな問題に悩まされてしまうことになります。マイホームの計画が崩れてしまうと、その後の生活設計にも大きな悪影響を与えますし、まさに最大の懸念事項と言えるでしょう。

実は、昨今、工務店の倒産件数が増加傾向にあると言われているため、これから家の購入を考えているという方に関しては、こういったリスクがあるということを頭に入れておかなければならないのです。そこでこの記事では、家の建築中に工務店が倒産してしまったらどうなるのか、またそのリスクに備えるにはどうすれば良いのかについて解説します。

工務店の倒産が増加!

家の建築を考えている方のほとんどは、自分が契約した工務店が倒産などするはずがないと考えてしまうものです。しかし実は、昨今の日本ではさまざまな要因から工務店の倒産件数が増加傾向にあると言われているのです。これは、資材・エネルギー価格の高騰や人件費の高騰、人口減少による人手不足や住宅需要の変化など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起きています。

特に、小規模工務店への影響が大きくなっていると言われていて、ここ数年における工務店の倒産件数は以下のような感じで推移しているのです。

  • 2015年:1612件
  • 2016年:1594件
  • 2017年:1571件
  • 2018年:1414件
  • 2019年:1414件
  • 2020年:1266件
  • 2021年:1066件
  • 2022年:1204件
  • 2023年:1671件
  • 2024年:1890件
  • 2025年:2021件

上記の通り、工務店の倒産件数は、2021年までの減少傾向が一転し、2022年以降増加し続けています。2025年においては、2013年(2347件)以来12年ぶりに2000件を突破するなど、過去10年で最多の倒産件数となっているのです。

これは、世界情勢の不安定化を要因とした資材価格の高騰や人口減少による人手不足、国の働き方改革を要因とする人件費の高騰など、複合的な要因によって起きています。特に、従業員10人未満の小規模工務店においては、零細業者の脆弱な体力が重なって、大きな影響を受け、倒産件数の大半を小規模事業者が占めていると言われています。

参照:帝国データバンクより

家の建築中に工務店が倒産するとどうなる?

それでは、注文住宅の建築を依頼した工務店が、家の建築中に倒産してしまった…などというケースでは、その後どのような問題が発生するのかについてもご紹介していきます。

家の建築中に工務店が倒産すると聞くと、「家が完成しない…」という点に注目しがちですが、これ以外にもさまざまな問題が発生してしまうのです。ここでは、工務店の倒産がもたらすさまざまな悪影響についてご紹介します。

①工事中断による住宅未完成のリスクが生じる

家の建築を依頼した工務店が倒産した場合の最もわかりやすい弊害は、工事が中断してしまうことで、住宅が完成せず、引き渡しを受けられなくなるという点です。

工務店が倒産してしまうと、当然、作業を行う職人の手配などが行われなくなるので、建築工事がストップしてしまいます。そのため、予定していた通りに工事が進まなくなり、家が未完成のまま放置されることで、引き渡しができなくなってしまうのです。
また、「どの工程で工事がストップするのか?」も大きな問題になります。基礎工事や上棟など途中段階で工事がストップしてしまうと、木材や金属が剥き出しの状態で放置されてしまうことになり、構造材が雨風にさらされ続けることになり、工事が遅延するという問題だけでなく、品質にも大きな悪影響が出てしまうのです。

②支払った前金が回収困難に陥る

工務店の倒産がどの段階で起こるのかによって変わりますが、契約時の頭金や中間金を支払った後に倒産が起きてしまった場合、既に支払った代金が倒産によって返金されない状況になるという問題も考えられます。工務店が破産手続きに入ると、施主はあくまでも数多くいる債権者の一人という扱いになるため、全額返金してもらうことは困難になるのです。

なお、住宅完成保証制度の利用などができなかった場合、施主側は住宅ローンの支払いだけが残ってしまうという状況に陥ってしまう可能性まであるので、金銭面のリスクは非常に大きいと言わざるを得ません。

③家が完成していないのに住宅ローンの支払いが発生する

住宅ローンについては、工務店の倒産によって工事が中断してしまったとしても、通常通りに返済が開始されます。この場合、完成していない上、いつ完成するかもわからない住宅に対して、住宅ローンの支払いが発生してしまうことになるため、家計への負担だけでなく心理的な負担も非常に大きくなってしまうことでしょう。

場合によっては、中断した工事について、追加資金を用意して、別の工務店と契約しなおして工事を再開しなければならなくなるケースもあります。

④職人や下請け業者への未払いが問題になる

工務店が倒産してしまった場合には、下請け業者や職人、資材業者への支払いも滞っています。これについては、倒産した工務店側の問題であり、家の建築を依頼した施主には関係がないと考えられがちで、本来はその認識で間違いないと言えるでしょう。

しかし、家の完成に向け、新しい工務店に続きの工事を依頼したいと考えて相談した際には、「前の未払い問題を解決していない現場は引き受けられない」と断られてしまうことがあるのです。この問題は、家の建築コストの増加やさらなる工期遅延に繋がるので、非常に頭の痛い問題になるでしょう。

⑤追加費用の発生や工事遅延によって人生計画が崩れる

最初に家の建築を依頼した工務店が倒産してしまうという状況は、その後の追加費用の発生やマイホームの完成が遅れてしまうことで、人生計画そのものに悪影響を与えるという点が最大の問題と言えるでしょう。

まず、追加費用については、家を完成させるためには新たな工務店と契約して工事を引き継いでもらう必要があります。この場合、新たな工務店からでてくる見積り内容は、割高に設定されているのが一般的です。なぜなら、途中まで工事が完了している部分についても、長期間放置されてしまっていたことで、設計変更や補修が必要になると判断されるからです。そのため、施主側にとっては、当初想定していた建築コストから、数百万円単位の追加費用がかかってしまう可能性があるのです。

工期遅延に関しては、新たな業者を探す時間や契約手続きなどに時間を要すため、入居予定時期は大幅に遅れてしまうと考えなければいけません。この場合、マイホームが完成するまでの間、仮住まいのための費用が嵩んでしまうことを考えると、費用負担はさらに大きくなります。

家の建築中に工務店が倒産した時に取るべき行動について

前項でご紹介した通り、注文住宅の建築を依頼した工務店が、建築途中に倒産してしまったという場合、施主側にはさまざまな悪影響が及んでしまいます。単純に、依頼したはずの家が完成しないという問題だけでなく、支払ったはずのお金を回収できなくなったり、家を完成させるために追加費用が発生するなど、その後の人生計画の変更を余儀なくされてしまう可能性が高いのです。

それでは、注文住宅の建築を依頼した工務店が倒産した時には、どのような行動をとれば良いのでしょうか?ここでは、家の建築途中に工務店の倒産が発覚した場合、施主側が取るべき行動について簡単に解説します。工務店が倒産したと聞いたときには、パニックになってしまい適切な行動をとれずに、被害が拡大してしまうことも考えられます。被害を最小限におさえるためには、落ち着いて素早く動く必要があるので、以下で紹介する内容は頭に入れておきましょう。

破産管財人や弁護士に連絡する

工務店が破産手続きを開始した場合、裁判所によって破産管財人が選任されます。先程紹介した通り、施主に関しては、あくまでも債権者の一人という扱いになります。

したがって、自宅の工事の状況や契約状況などに関しては、ほかの債権者と同様に、破産管財人や関与する弁護士に確認するしかないのです。建築途中の家の図面や確認申請書など、重要書類に関しても、工務店側に残されているというケースでは、管財人を通じて引き渡しを受けるほかないため、まずは破産管財人もしくは弁護士に連絡しましょう。

書類などが手元に戻ったら、現状を把握

工務店側から書類を引き渡してもらうことができれば、現状の工事の進捗度や支払金額などについて確認しましょう。

どこまで工事が進んでいたのか、どれぐらいの費用を支払っていたのか、支払いはいくらぐらい残っているのかといった点を整理することができれば、その後の動きを進めるための重要な情報となります。

住宅完成保証制度への加入状況を確認

これは本来、注文住宅の建築を依頼する前に確認すべきポイントです。ただ、この部分については、知らなかった…という方も多いと思うので、工務店の倒産が判明してから確認するのでも遅くはありません。

住宅完成保証制度は、工務店側が加入するもので、これに加入されていたという場合、保証申請を行うことで、保証機関に残工事の引き継ぎや追加費用を補填してもらうことができます。この制度は、万一のことがあった際も、住宅を完成させるための制度なので、これへの加入が判明すれば安心でしょう。

保証制度が利用できない場合、新たな工務店を手配する

保証制度に加入していない、または保証対象外の部分があるという場合には、家を完成させるために、自力で新しい工務店を見つけなければいけません。できるだけ早く工務店を見つけなければ、現場が途中で放置されたことにより、木材や金属が劣化する恐れがあるため、可能な限り速やかに行動するようにしましょう。

なお、工務店の倒産など、明確な理由がある場合でも、家の建築を途中から引き継いでくれる工務店は限られています。また、前の業者がどのような施工をしていたのか分からない部分もあるため、新しい会社の見積りは割高に設定されてしまう可能性が高いです。できるだけ早く引き継いでくれる業者を見つけなければいけませんが、信頼できる業者を選ぶことも大切なので、複数の会社に相談して、工期や費用を比較しながら慎重に検討するようにしましょう。

資金計画の再設計

上述したように、家の建築途中で工務店が倒産してしまうと、想定していた人生計画は大きな変更を余儀なくされてしまうでしょう。

もともと用意していた家の建築費用以上のコストをかけなければならくなりますし、家の完成が遅れてしまうことになるので、お子様の学校などにも影響を与えてしまう可能性があるでしょう。

したがって、もともと依頼していた工務店に支払ったお金で返金されない金額はいくらなのか、また追加的にかかる費用がいくらなのか、新しい工務店に依頼すればいつ家が完成するのかなど、その後の資金や人生計画を組みなおす必要があるでしょう。なお、住宅ローンに関しては、支払開始時期について金融機関に相談する必要があると思うので、早めに足を運ぶのがおすすめです。

倒産リスクに備えるには住宅完成保証制度を確認

それでは最後に、家の建築を依頼した工務店の倒産リスクに備えるための対策についてもご紹介します。これについては、「倒産しない工務店を選ぶ」ということが大切なのは間違いないのですが、一般の方が各企業の担当者と話しをしているだけで、その企業の財務状況などを判断することなどできません。いくら儲かってそうに見える企業でも、「実は自転車操業状態だった…」などといったことも珍しくありませんし、他の部分でリスクを回避できるようにしておくのが望ましいです。

そして、工務店の倒産によって家が完成しないというリスクを防止するための対策としては「住宅完成保証制度に加入しているかどうか?」を確認するという方法が最も簡単です。住宅完成保証制度の詳細は後述しますが、この制度は工務店側が事前に加入していることで、利用できる制度となります。工務店側が、工事内容や金額に応じて保証料を支払うことで、倒産時に保証が受けられる仕組みになっているので、施主側は安心感が得られる仕組みなのです。

家の建築を依頼する工務店探しでは、「価格の安さ」を重視する方がいるのですが、その安さがこういった保証制度への未加入で実現している場合、安心感が薄れてリスクが大きくなってしまうことを意味するのです。家の建築は、非常に大きなお金が動く取り引きとなるため、安さだけに注目するのではなく、金額と安心感のバランスも考慮しておくのがおすすめです。

したがって、家の建築を依頼する工務店選びの際には、「住宅保証制度に加入していますか?」と確認してみましょう。また、どの制度に加入しているのか教えてもらい、加入しているはずの制度のwebサイトなどで事業者の登録状況なども念のため確認しておくと安心できると思います。

住宅完成保証制度の詳細

住宅完成保証制度は、マイホームを完成させるためのセーフティネットとなります。一般の方にとってはあまり聞き馴染みがない制度かもしれませんが、家の建築を検討している方であれば、事前に知っておくことで、将来的なリスクに備えることができるのです。

住宅完成保証制度は、その名称からイメージできるように、家の建築を依頼された工務店や建築会社が、倒産などによって工事を続けられなくなった際、施主側の被害を最小限にとどめるために作られています。具体的には、工務店などが倒産し、工事の継続が困難になった時には、他の工務店に建築工事を引き継がせ、住宅を完成まで導くという内容になっています。

この制度に加入している工務店と契約していれば、万一の際も、「お金を支払ったのに家が完成しない…」と言った最悪の事態を避けることができるのです。ちなみに、住宅完成保証制度の保証内容については、以下のような形となっています。

  • 工事の引継ぎ
    工務店が倒産などで工事が継続できなくなった場合、新しい工務店を選定して現場を引き継ぎ、住宅を完成させる。
  • 前払い金の補填
    倒産した工務店に前金として支払った費用の一部を保証してもらうことができる。
  • 追加費用の軽減
    工事の引継ぎの際、追加費用が発生する場合、施主側が全額負担しなくてもよいよう、保証会社が引継ぎコストの一部負担(上限あり)をする。

上記のように、万一の際があった時には、施主側の負担を大幅に軽減してもらうことができる制度です。全額を保証してもらうことはできませんが、引継ぎ業者の選定や追加費用の一部負担など、非常にありがたい制度になっていることは間違いないでしょう。

まとめ

今回は、注文住宅の建築中に、工事を依頼して工務店が倒産してしまったらどうなるのかについて解説しました。

記事内でご紹介した通り、注文住宅建築中に工事を依頼した工務店が倒産してしまうと、家が完成しないという問題が発生するだけでなく、追加費用の支払いが必要になったり、工期延期によって仮住まいを余儀なくされるなど、その後の人生設計について大きな変更を余儀なくされる大問題に発展するのです。

このような事態を防ぐためには、「倒産しない工務店を選ぶ」ということが最も単純な対策と言えますが、一般の方が企業のHPなどを見ただけで、危ない会社かどうかを判断するようなことはできないと思います。したがって、万一に備えるためには、施主側のリスクを最小限におさえるための対策がきちんととられているのかを確認すると良いです。例えば、上で紹介したような住宅完成保証制度への加入などが最もわかりやすいかもしれません。

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