今回は、注文住宅の建築を考え、これから土地探しをしなければならないと考えている方に向け、旗竿地を選ぶ場合のメリットやデメリットについて解説します。

注文住宅を建てるための土地探しでは、さまざまな条件を満たす自分にとって最高と思えるような土地を見つけたいと考えるはずです。しかし、通学や通勤、日常生活上のお買い物の利便性などのこともありますが、なかなか完璧な条件の土地を短期間で見つけることは難しいのが実情です。そして、いろいろと時間をかけて土地探しをした結果、立地関係を重視して旗竿地を購入するというケースも少なくありません。

ただ、旗竿地に関してインターネットで検索してみると「旗竿地 後悔」や「旗竿地 恥ずかしい」「旗竿地 トラブル」と言った関連ワードが表示され「旗竿地は家を建てる土地として適していないのかな…」と不安に感じてしまう方も少なくないようです。

そこでこの記事では、そもそも旗竿地とはどのような形状の土地なのか、また旗竿地の魅力や実際に住んでみて後悔するかもしれない注意点などについて分かりやすく解説します。

旗竿地とはどのような形状の土地?

旗竿地は「はたざおち」と読むのですが、文字通り、敷地が旗竿のような形状をしている土地のことを指します。他の呼び方では「延長敷地」などとも呼ばれています。

上の画像を見ていただければ分かりやすいのですが、旗竿地は、他の土地に囲まれた袋地とそこから公道までの細い敷地で構成されることになります。このような形状の土地は、大きな土地を2筆に分筆する場合に、間口の都合上、どうしてもどちらも整形地にすることが困難な場合に発生します。そのため、1筆は整形地とし、もう1筆を旗竿地として分筆することになるのです。

旗竿地は分筆の都合によってつくられるため、整形地とセットとなることを覚えておきましょう。

旗竿地を選んで後悔する理由とは?

注文住宅を建てるための土地選びは、日常生活の利便性を考慮し、立地条件を重視する方が多いです。そのため、土地形状に関しては妥協して、「旗竿地でも構わないか」と旗竿地のデメリット面を深く考えずに土地の購入を決める人も少なくないとされています。

ただ、旗竿地は、整形地と比較すると土地形状が大きく異なるため、どうしても旗竿地ならではのトラブルが発生する恐れがあるのです。実際に、旗竿地に家を建て、そこに住んでみてから「こんなはずじゃなかった…」と後悔する方も少なくないと言われています。
そこでここでは、旗竿地を購入してから想定される問題やトラブルについて解説します。事前に旗竿地の問題点を知っておけば、不要なリスクを回避することが可能です。

デメリット① 住んでみると日当たりが悪い

上で紹介した画像のように、旗竿地は公道から奥まった位置に家を建てることになるため、周囲を他の建物に囲まれた状態となり、どうして日当たりが悪くなってしまうのです。旗竿地は、整形地とセットになると解説しましたが、旗竿地に家を建てる際には、前面道路との間に整形地の土地が存在することから、季節や時間帯によっては日が差し込みにくくなる位置となるのです。

さらに、周囲を他の建物に囲まれてしまうことで、風通しも悪くなり、湿気がこもりやすいという問題点も存在します。こういったことから、旗竿地を購入しそこに家を建てる場合、整形地に家を建てる時以上に、日当たりの確保や湿気対策を重視しなければならないと考えてください。

デメリット② セキュリティ面に不安が残る

旗竿地に家を建てる場合、空き巣被害に遭う危険性が高くなるなど、セキュリティ面に不安が残る点が大きなデメリットです。実際に、空き巣被害に遭い、旗竿地を選んだことを後悔したという失敗例も少なくないとされています。

旗竿地に家を建てる場合、前面道路から見えない位置に建物が建築されることになります。したがって、自宅の敷地内に空き巣犯などの不審者が侵入していたとしても、前面道路の通行人からは見えないので、異変に気付いてもらえないという非常に大きなデメリットが生じるのです。もちろん、前面道路からの視線を気にしなくても良いため、プライバシー性が高くなることはメリットかもしれませんが、空き巣犯からすると「他人の視線を気にしなくても良い」「多少音が出ても気付かれにくい」など、犯行に適した環境になってしまいます。

こういったことから、旗竿地に家を建てる際は、警備会社との契約や防犯カメラ、防犯ガラスの導入など、セキュリティ対策にコストをかけなくてはならなくなります。

デメリット③ 駐車が大変(難しい)

旗竿地に住んでみて後悔する人の中には、駐車場の使い勝手が悪い点に不満を感じて…というケースが多いです。

整形地に家を建てた場合、家の前面に駐車場を設けることが可能です。この場合、前面道路からの車庫入れも特に難しさを感じませんし、出発の際も特に不便を感じることはないでしょう。また、車を複数台所有している方の場合、2台用や3台用の駐車場を用意して並列に駐車することが可能です。しかし、旗竿地の場合は、前面道路までの通路を駐車場として利用することになるため、車庫入れが苦手な方の場合、圧迫感を感じてしまい駐車が難しく感じるのです。さらに、複数台の車を所有していれば、縦列に駐車することになり、車の出し入れに時間がかかってしまうケースがあります。さらに、通路に車を停めている場合、通路が狭くなってそこを通る際に車を傷つける可能性も高くなるでしょう。

旗竿地の駐車場問題に関しては、基本的に解消することは難しいです。外部に月極駐車場を借りるという方法を選べば、駐車の困難や通路の不便さを感じることはなくなるものの、余計なコストがかかってしまいます。

デメリット④ 工事費が高くなる

旗竿地に家を建てる場合、整形地に家を建てるのと比較すると、想定外の費用が発生するリスクが高くなります。

旗竿地は、狭い通路の奥まった位置に家を建てることになるため、建築資材を運ぶことが難しく、ユニット工法の家を建てるのが難しいとされています。一般的な住宅建築の現場では、重量のある建築資材の搬入時にクレーンなどの大型機器を使用することになります。しかし、旗竿地の場合、クレーンを設置できない可能性があり、その場合は、作業員が手作業で資材を搬入し建築を進めることになるのです。

つまり、機械を利用することができない場面が多くなってしまい、手作業を余儀なくされる部分が増えてしまうことから、通常よりも建築費が高くなってしまうことが多いとされているのです。

デメリット⑤ 売却を考えても買い手がつきづらい

旗竿地は、整形地と比較するとさまざまなデメリットが存在すると有名です。そのため、住宅市場では敬遠されてしまいがちな土地形状と言えるのです。実際に、遠方に引っ越すことになり、旗竿地を売却しようとしたものの、なかなか買い手が見つからず、最終的には、相場よりもかなり安い価格で売却しなければならなくなった…と、旗竿地を購入したことを後悔したという話を耳にする機会は多いです。

もちろん、旗竿地にもいくつかのメリットはあるのですが、建築条件や環境的に不利な面が多いため、買手がつきにくいと言われています。家を購入する際には、基本的には「一生の買い物」と考えている方が多いものの、仕事の関係などで売却する可能性があるという方は、将来のことも考慮しておかないと後悔する結果につながるリスクが残ってしまいます。

デメリット⑥ 地域の気候のせいで後悔する

豪雪地域で家を購入する場合、旗竿地は大きなデメリットになり得ますので注意が必要です。旗竿地は、整形地と比較すると、大雪が降った際に雪かきが大変になるという声が多いです。

上で紹介した画像から分かるように、旗竿地は前面道路からそれなりの長さの通路を経由して家を建てる敷地に達します。つまり、雪かきの際は、家の周りだけでなく、通路の雪も取り除かなければならないため、作業範囲が非常に広くなるのです。また、道路に雪をかき出すには、かなりの距離を運ばなければならないため、作業効率はどうしても悪くなってしまいます。

冬場は、雪かきに多大な時間をとられる、積雪のせいで車を出せなくなる…などと言った問題が発生すれば、旗竿地を購入したことを後悔してしまう可能性が高いでしょう。

旗竿地にはメリットもある

ここまでは、旗竿地を購入した方が後悔する可能性があるポイントについて解説しました。この情報だけを見ると、旗竿地は絶対にダメだな…と感じた方も多いかもしれません。しかし、旗竿地は、一方的にデメリットばかりが目立つのではなく、人によっては大きなメリットに感じるポイントもたくさん存在します。

ここでは、注文住宅の建築を考え、土地探しをしている方が旗竿地を選ぶメリット面について代表的なポイントをご紹介します。

メリット① 土地価格が比較的安い

注文住宅を建てる際、整形地ではなく旗竿地を選ぶ最大のメリットは、土地の取得にかかる費用が整形地よりも安くなる可能性が高い点です。

旗竿地は、前項でご紹介したように、家を建てるための土地と考えるとデメリットが多いのも事実なのです。一般的には、日当たりが良く風通しなども良い土地で、駐車場も広く取れるような土地が人気です。旗竿地は、まさにその逆を行く特徴を持っているため、土地探しをしている方からの人気がどうしても低くなってしまうのです。そのため、旗竿地を売却するには、周辺の土地よりも価格を下げる必要があるわけです。

逆に、注文住宅を建てるための土地を購入する側から見ると、そのエリアの相場よりも安い価格で土地が購入できるというメリットが得られるのです。例えば、通勤や通学などの利便性や治安のことを考え、住みたいエリアが決まっているものの、予算に合う土地がなかなか見つからない…と悩んでいる方の場合、旗竿地を中心に土地探しをすることで、希望のエリア内に予算内で購入できる土地を見つけられるかもしれません。

メリット② プライバシー性の高い空間を実現できる

旗竿地は、公道からある程度距離がある奥まった場所に家を建てることになります。したがって、家のすぐ近くを車や人が通行するようなことがなくなるのです。

旗竿地は、周囲を他の建物に囲まれてしまうため、日当たりが悪くなる可能性が指摘されますが、その反面、家の前を通る人に家の中をのぞかれる心配がなくなるなど、プライバシー性の高い空間を実現できる点を大きなメリットと捉える方もいます。また、前面道路の交通量が多い場所の場合、旗竿地を選んだことで交通騒音に悩まされる心配がなくなり、静かな環境を作ることができるかもしれません。

旗竿地に指摘されるデメリットに関しては、メリットと表裏一体な部分がありますので、失うものと手に入るもののバランスや、自分がどっちを求めているのかを慎重に検討してみると良いでしょう。

メリット③ 小さなお子様がいる場合は、安全に暮らせる

旗竿地は、公道からある程度距離が離れた位置に家が建てられます。実は、公道から家までの距離があることで、小さなお子様がいるご家庭などの場合、交通事故の不安が少なく安全に暮らすことができるとされています。

例えば、整形地の場合、前面道路に面する部分が広くなり、家の建築や駐車がしやすくなるというメリットが得られます。しかしその反面、そこで暮らし始めると、駐車場で遊んでいた子供がいきなり道路に飛び出してしまう…など、交通事故に遭うリスクが高くなると言われているのです。旗竿地の場合、子供が玄関から飛び出していったとしても、道路までは距離があるため、整形地よりも交通事故などの危険性が低く、安全に暮らすことができると言われています。

また、敷地内に小さな庭やテラスを用意しておけば、通行人の視線を気にする必要もなく、子供を安全に遊ばせる場所として活用できます。

メリット④ 路地部分をさまざまな用途に活用できる

旗竿地は、家を建てる敷地と公道と接する路地部分の2つに大きく分けることが可能です。そしてこの路地部分は、さまざまな用途に活用することができるというメリットがあるのです。

例えば、路地を駐車場として活用すれば、奥の敷地に駐車スペースを確保せずに済み、住居スペースを大きくとることができるようになります。また、車を所有していない方の場合は、家族の駐輪場として利用する、子供を遊ばせる場所として利用する、ガーデニングを楽しむなど、さまざまな利用用途があるのです。

旗竿地を購入する時の注意点

ここまでは、旗竿地のメリットとデメリットについて解説してきました。上でご紹介したように、旗竿地は購入した人全てが後悔するわけではなく、メリット面の方が大きいと感じる方も少なくありません。

それでは、予算の関係などから旗竿地を購入して家を建てようと考えた場合、どのような点に注意すべきかをご紹介します。

採光の工夫を行う

旗竿地を選んで失敗した…と後悔する事例では、日当たりの悪さを感じてというケースが多いとご紹介しました。旗竿地は、どうしても周囲を他の建物で囲まれてしまうため、日常生活の中で日当たりの悪さに悩んでしまう場合が多いのです。

こういった失敗をしないためには、家を建てる際、日光をとり入れやすくなるような設備や間取りを導入するという工夫が必要です。例えば、吹き抜けを作り高い位置に窓を設置するなどと言った工夫が有効です。この他には、家を建築する部分に関して、南側に広く空間を取るように建物を建てることで、整形地と同じような日当たりを確保するという方法もあります。

限られた敷地面積の中で、可能な限り日光を取り込むことができるよう、採光方法について工夫をしてもらえるよう、設計会社に相談すると良いでしょう。

複数台の車を持つ方は、駐車場に注目する

旗竿地に家を建てる場合、複数の車を所有している方は縦列に駐車しなくてはならず、車の出し入れに苦労して後悔するケースがあるとご紹介しましたね。

実は、この問題については、土地探しの段階で問題を解消することも可能です。一口に旗竿地といても、その形状はさまざまです。中には、前面道路に接する部分は車を2台駐車できるようなスペースがあり、その後ろの通路部分が狭くなるといった形状の土地も存在します。

したがって、旗竿地を探す場合、「駐車場の利便性は諦めなければならない」という先入観は捨てて、土地探しをしてみても良いと思います。注文住宅の土地探しでは、全ての面で100点満点の土地を見つけるのはなかなか難しく、何らかのポイントについては妥協が必要なケースが多いです。したがって、まずは、土地に求める条件の優先順位を決め、「駐車場の利便性が重要」というのなら、その条件を土地を仲介してくれる会社に伝えると良いです。

セキュリティ対策については慎重に行う

旗竿地は、奥まった場所に家を建てることになるため、空き巣などの侵入犯罪のターゲットになりやすいというリスクがあります。したがって、旗竿地を購入して家を建てる場合は、セキュリティ対策に力を入れなければいけません。

例えば、第一のポイントとして、治安の良いエリアを選ぶことが大切です。もちろん、治安が良い場所であれば、侵入犯罪に遭わないというわけではありませんが、被害に遭う可能性は低くなるでしょう。次に重要なポイントは、家そのものの防犯性能を高めるという対策です。例えば、以下のような対策が考えられます。

  • 警備会社と契約する
  • 防犯カメラシステムを導入する
  • 窓からの侵入を防ぐため、防犯ガラスや窓シャッターを設置する
  • 玄関の防犯性を高めるため、キーレスの扉にする など

家の防犯性を高める方法はさまざまな工夫が存在します。家を建てる際のコストは高くなってしまうものの、空き巣に狙われにくい環境を作るのは非常に重要です。

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間口の広さを確認する

旗竿地は、間口の広さに注目しなければいけません。例えば、建築基準法では、最低接道幅が2mとなっているため、間口の広さが2mしか確保されていない土地も存在します。しかし、間口が法律のギリギリの広さしか確保されていない場合、路地を駐車場として利用することが難しくなるのです。軽自動車であれば、何とか駐車すること自体はできますが、将来的に大きな車に乗り換えしたいと考えた時には、間口の広さが足らなくて、購入できる車に制限ができてしまう…なんてことになりかねません。

旗竿地を購入し、通路を駐車場として利用したいと考えているのであれば、最低でも間口は3m以上ある旗竿地を選ぶのが良いです。3m以上あれば、車を停めても横を人が通れるだけのスペースを十分に確保することが可能です。

まとめ

今回は、注文住宅の購入を考え、土地探しを進めている方に向け、一般的には不人気で安く購入できると言われている「旗竿地」の特徴について解説しました。

記事内でご紹介したように、旗竿地は住宅を建てるための土地と考えた場合、多くのデメリットが存在することから、注文住宅を建てるための土地探しをしている方からは敬遠されてしまいがちです。ただ、「地域の相場よりも安く手に入れられる」「プライバシー性の高い空間を実現できる」など、皆さんが考えている以上に大きなメリットも存在するのです。

家に求める条件は、人それぞれ違ったポイントがあるはずですし、まずは自分の要望について優先順位をつけていくことが重要です。そうすると、「実は旗竿地が自分にとっては最適な土地なんだ!」と判明する人もいるかもしれませんよ。

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