近年では、住宅領域での脱炭素化が注目されていることから、新築時に省エネ性の高い住宅を建てる場合、手厚い補助金を受け取ることができるようになっています。省エネ住宅と言えば、ZEH住宅や低炭素住宅、長期優良住宅が思い浮かびますが、2025年になった今年からは「GX志向型住宅」と呼ばれる住宅の形が注目されるようになっています。
ZEHや長期優良住宅と比較すると、まだまだ聞き馴染みがない言葉ではありますが、今年中に新築住宅を購入したいと考えている方は、GX志向型住宅がどういった住宅なのかを知っておいた方が良いです。と言うのも、2025年度の省エネ性が高い新築住宅への補助金については、ZEHや長期優良住宅よりもGX志向型住宅の方が手厚いものとなっているのです。2025年度の新築への補助金は、子育てエコホーム支援事業が子育てグリーン住宅支援事業に名前を変え運営されることとなっていますが、GX志向型住宅がメインとも言える補助金の作りとなっているのです。なお、子育てグリーン住宅支援事業の詳細は、以前別記事で解説しているので、そちらを確認してください。
この記事では、GX志向型住宅の概要や基準、今まで最も省エネ性が高いとみなされていたZEHと何が違うのかなどについて解説していきます。
関連:子育てグリーン住宅支援事業とは?2025年度新築住宅に使用できる補助金の速報
GX志向型住宅の概要と基準
GX志向型住宅は、国が新たに設けた新しい基準の住宅のことで、簡単に言うと建物の省エネ性能を従来の省エネ住宅よりもさらに向上させることを目的とした住宅です。日本は、2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されており、これを達成するためには住宅領域での脱炭素化が急務とされています。今までも、省エネ性の高いZEHなどの普及を強く推進していたのですが、これ以上の省エネ性を目指すための住宅の形として「GX志向型住宅」が設けられたのです。ちなみに、GX志向型住宅は、脱炭素を実現するという目的からか、脱炭素思考型住宅とも呼ばれています。
GX志向型住宅の「GX(グリーントランスフォーメーション)」は、温室効果ガスの排出量削減と経済成長の両立を目指す社会変革の取り組みのことを指しています。脱炭素社会の実現が目指されている中、GX志向型住宅は、一次エネルギー消費量ゼロを実現する次世代型の省エネ住宅とされ、ZEHよりもさらに高い基準が設けられています。
GX志向型住宅の基準
GX志向型住宅は、上記の通り、ZEHを上回る非常に高い省エネ基準が設けられています。具体的には、以下の二つの基準を満たす必要があります。
- 断熱等性能等級「6以上」であること
- 既定の一次エネルギー消費量の削減率を実現していること
一次エネルギー消費量の削減率については、再生可能エネルギーを除くという条件下で「35%以上(一般・寒冷地等・都市部狭小地等)」となっていて、再生可能エネルギーを含む場合は、一般地域で「100%以上」寒冷地等は「75%以上」と言う基準が設けられています。
断熱等性能等級は、2025年現在「7」が最高等級となっています。GX志向型住宅については、その断熱等性能等級が6以上と上から2番目の等級が求められるなど非常に高い断熱性が求められます。
なお、一次エネルギー消費量の基準も設けられていて、太陽光発電などの再生可能エネルギーを除いて35%以上の削減が求められます。さらに、再生可能エネルギー設備を含めた場合は、一般地域で100%以上と言う非常に高い性能が求められます。寒冷地域の場合でも、75%以上の一次エネルギー消費量削減を満たした住宅がGX志向型住宅として認められます。
参照:国土交通省サイトより
ZEHや長期優良住宅など、他の省エネ住宅との違い
一般住宅よりも省エネ性の向上を求められる住宅は、ZEHが有名です。他にも、低炭素住宅や長期優良住宅などもありますが、これらの省エネ住宅とGX志向型住宅は、何が異なるのか気になってしまうという方も多いですね。ここでは、ZEHや長期優良住宅など、その他の省エネ住宅とGX志向型住宅の違いを簡単に解説します。
ZEHとGX志向型住宅の違い
まずZEHとの違いについてです。ZEHは、「住宅で使う年間の一次エネルギー消費量が実質ゼロ以下になる」住宅のことを指しています。当然、ZEHに認められるには、いくつかの条件を満たしている必要があるので以下で紹介します。
- 断熱等性能等級「5以上」(ZEH強化外皮基準を満たす)
- 一次エネルギー消費量の削減率:20%以上(再エネ除く)
ZEHは、上記の基準を満たした住宅のことで、従来の省エネ住宅の中では最も厳しい基準が設けられていました、
しかし、GX志向型住宅については、先ほど紹介したように、断熱等性能等級が6以上、再エネを除く一次エネルギー消費量の削減率が35%以上を求められるなど、さらに高い省エネ性能が基準となっているのです。
長期優良住宅とGX志向型住宅の違い
長期優良住宅は、ZEHなどの単純な省エネ住宅とは異なり「長期にわたり良好な状態で使用するための措置講じられた優良な住宅」のことを指しています。長期優良住宅については、同じ建築物を長期にわたって使用するという面から、解体までの建築物の生涯CO2排出量を削減できるという面から脱炭素に繋がると考えられた住宅の形です。長期優良住宅に認定される条件は、以下の通りです。
- 耐震性:耐震等級3とするなど
- 省エネルギー性:断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6
- 維持管理・更新の容易性:耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
- 劣化対策:数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること
- 住戸面積:良好な居住水準を確保するために必要な規模を有する
- 居住環境:所管行政庁毎に基準が異なる
- 維持保全管理:建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されている
上記以外にも、バリアフリー性や可変性、住宅履歴情報の整備などと言った基準が設けられています。
上記の基準から分かるように、長期優良住宅は、その他の省エネ住宅とはかなりの違いが存在します。断熱等性能等級5以上が条件など、高い省エネ性が求められるという部分は同じなのですが、ZEHやGX志向型住宅には求められない条件も多いです。
昨今、建築技術や建材の性能向上もあり、ハウスメーカーによっては、ベーシックな建築プランで長期優良住宅の条件を満たしている場合も増えていると言われます。また、太陽光発電などの再エネ設備の設置が必須ではないため、その他の省エネ住宅と比較すると、建築コストを抑えられるとも言われています。
これからも分かるように、長期優良住宅とGX志向型住宅は、大きく異なる住宅の形と言えるでしょう。
GX志向型住宅は最大160万円の補助金が給付される
冒頭でもご紹介したように、2025年度の新築住宅への補助金は、子育てエコホーム支援事業から子育てグリーン住宅支援事業に名称が変更となり運営されることが決定しています。そして、GX志向型住宅については、ZEHなど他の省エネ住宅よりも重視されていて、最大160万円と言う非常に手厚い補助金が用意されています。
子育てグリーン住宅支援事業の詳細は以前紹介していますが、ここでも簡潔に補助金の概要などを紹介します。
子育てグリーン住宅支援事業の補助金額について
子育てグリーン住宅支援事業は、環境省・経済産業省・国土交通省の3省が連携して運営する住宅省エネキャンペーンの中の一つの補助金です。住宅省エネキャンペーンでは、高効率な給湯器への入れ替えや窓の断熱化などに対して補助金が給付されるというイメージが強いですが、新築住宅の建築・購入にも補助金が給付されるのです。
日本では、2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されていて、そのためには住宅領域での脱炭素化が急務とみなされ、それに寄与する高性能な住宅の普及を政府が強く後押ししているのです。そのため、子育てグリーン住宅支援事業と言う補助金により、以下の対象住宅について補助金を給付することとなっています。
- GX志向型住宅・・・補助金額:160万円、対象:全世帯
- ZEH水準住宅・・・補助金額:40万円(解体を含む場合60万円)、対象:子育て世帯等
- 長期優良住宅・・・補助金額:80万円(解体を含む場合100万円)、対象:子育て世帯等
このように、GX志向型住宅は、3つの高性能住宅の中で最も補助額が高く設定されています。また、ZEHや長期優良住宅は、その対象が「子育て世帯」や「若者夫婦世帯」に限られているものの、GX志向型住宅についてはそういった制限なく、全世帯が対象となっているのが大きな特徴です。ZEHや長期優良住宅への補助金額が、昨年よりも削減されたことを考えても、政府がGX志向型住宅の普及を後押ししていることがよくわかります。
※蓄電池を導入する場合、上記の補助額にプラスして導入費用の1/3が補助されます
子育てグリーン住宅支援事業の詳細については、別記事で解説しているので、以下の記事も確認してみてください。
関連:子育てグリーン住宅支援事業とは?2025年度新築住宅に使用できる補助金の速報
GX志向型住宅に関する疑問について
それでは最後に、GX志向型住宅に対する疑問についてお答えしていきます。GX志向型住宅は、カーボンニュートラルの実現に向け、政府が新たに作った省エネ住宅の基準です。先ほど紹介したように、GX志向型住宅は、従来の省エネ住宅の中で最も省エネ性能が高いとされていたZEHよりも高い性能が求められます。
こう聞くと、「GX志向型住宅は補助金があっても建築費が高すぎるのでは…」「太陽光発電は必須なのかな?」と言った疑問が頭をよぎる方が多いと思います。そこでここでは、まだまだその詳細が知れ渡っているわけではないGX志向型住宅について、よくある疑問とその答えをご紹介します。
GX志向型住宅は建築費が高くなるのか?
GX志向型住宅は、非常に高い省エネ性能を持っていることから、日々の生活にかかる光熱費の削減が期待出来ます。しかし、ランニングコストを抑えられるとしても、初期費用となる建築費用が高くなるのではないか…という点が気になってしまう人が多いはずです。
結論から言ってしまいますが、GX志向型住宅の建築費は、通常の戸建て住宅の建築費と比較すれば、高くなる可能性が高いと言えます。省エネ性の高い住宅については、ZEHや低炭素住宅でも、通常よりも建築コストが高くなるとされています。これは、太陽光発電などの再エネ設備の導入が必須だからです。太陽光発電設備は、数ある住宅設備の中でも、導入にかかるコストが高い部類に入るため、どうしても住宅の建築コストが割高になってしまうのです。GX志向型住宅についても、一次エネルギー消費量の削減が条件となっていることから、再エネ設備の設置が求められるため、その部分にコストがかかります。
さらにGX志向型住宅は、ZEHなどよりも高い断熱性能が求められます。先ほどご紹介したように、GX志向型住宅は、断熱等性能等級が6以上が基準となっていて、ZEHなどよりも高い性能が求められるのです。昨今では、通常の住宅でも断熱等性能等級5程度を確保している場合が多くなっていて、長期優良住宅やZEHであれば断熱対策のコストはそこまで変わらなくなっています。しかし、GX志向型住宅の場合、さらに高い性能が求められるため、断熱対策の面でもコストが上がってしまう訳です。
なお、住宅会社の標準的な建築仕様が、会社によって異なります。中には、かなり高性能な住宅が標準仕様となっているケースもあり、そういった会社にGX志向型住宅の建築を依頼する場合、アップする費用はおさえられるでしょう。ただ、どちらにせよ、通常の戸建て住宅の建築にかかる費用よりは確実に高くなると想定しておきましょう。
太陽光発電の設置は必要?
GX志向型住宅を採用する場合、太陽光発電システムを導入するのが一般的です。これは、GX志向型住宅と認められるには、一般地域で「再生可能エネルギーを含めて一次エネルギー消費量の削減率が100%以上」と言う条件が設けられているからです。
一次エネルギー消費量の削減率100%以上を実現するためには、家で使用するエネルギーを超える量を自宅で発電しなければならないということです。そのため、現在の再エネ技術のことを考えると、大容量の太陽光発電システムの導入が必須と言っても良いのではないでしょうか?
太陽光発電システムについて、屋根だけでは必要な発電量が確保できない…なんて場合、ソーラーカーポートを導入するなどの工夫も必要かもしれません。もちろん、住宅の省エネ性能によって、必要になる発電量は変わるため、どのレベルの再エネ設備が必要になるのかはご家庭によって変わります。
太陽光以外にどんな設備が必要なの?
GX志向型住宅は、非常に高い省エネ性能が求められます。そのため、太陽光発電など、単純な創エネ設備だけでなく、エコキュートや蓄電池など、省エネをより促進させる設備の導入も求められます。
もちろん、蓄電池などについては、GX志向型住宅の認定条件になっていないため、導入していなくても認定を受けることは可能です。しかし、政府は、蓄電池の導入も推奨しているというのも事実なので、導入によるメリット・デメリットから蓄電池についてもよく検討しましょう。
太陽光発電と蓄電池を連携させておけば、昼間に発電した電力のうち、余剰電力を蓄電池に蓄えておき、それを夜間の生活に使用することができるようになります。そのため、家の省エネ性のことを考えると、非常に高い効果が見込めるのです。さらに、蓄電池は万一の災害で停電が発生した場合でも、生活に必要な電力を供給することができるようになるため、災害対策の面でも国が推奨しているのです。
蓄電池の導入に関しては、子育てグリーン住宅支援事業にプラスして、蓄電池の導入費用の一部を補助してもらうことも出来るので、新築時に検討する価値はあると思います。
まとめ
今回は、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、政府が新たに作った省エネ住宅の基準であるGX志向型住宅について解説しました。記事内で紹介したように、GX志向型住宅は、今まで最も省エネ性が高いとされていたZEHを上回る省エネ性能を持っていて、この基準を満たした住宅を建てればエコで快適な暮らしを実現することが可能です。
2025年度は、政府がGX志向型住宅の普及推進に力を入れているため、最大で160万円と言う非常に高額な補助金が給付されることとなっています。もちろん、GX志向型住宅は、太陽光発電や高効率給湯器、蓄電池など、さまざまな省エネ設備の設置が求められるため、建築にかかるコストはどうしても高くなります。しかし、建築後にそこで暮らすことを考えた時には、日々の生活にかかる光熱費を大幅に削減することができるため、中長期的な視点で考えると住宅にかけるトータルコストを抑えることも不可能ではないはずです。
なお、GX志向型住宅は、非常に高い断熱性・省エネ性が求められるため、建築に対応できる会社は限られてしまいます。住宅の断熱性を高めるには、単に高性能な断熱材やサッシを採用すれば良いだけでなく、設計や施工の技術が非常に重要になるからです。そのため、高性能住宅の建築実績が少ない会社に依頼すると、設計の不備や施工品質の低さなどにより、基準を満たした家づくりができないリスクが想定できるのです。
悠建設は、さまざまな工法に対応しており、GX志向型住宅などの高性能住宅の建築も対応しています。大阪府内など、関西地方で補助金を活用した省エネ住宅の建築をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。弊社は、各種補助金の申請代行も可能です。