
これから本格的に気温が下がっていきますが、この時期になると気になるのが「窓周辺の結露」なのではないでしょうか?
エアコンなど、暖房器具が進化している昨今では、寒さが厳しくなる真冬の時期でも、家の中にいればぽかぽかと暖かい快適な環境を作ることができるようになっています。しかし、暖房器具による温度調節が当たり前になった現在では、屋外との気温差が大きくなることで窓にびっしりと水滴が付着するという「結露」の問題が発生しやすくなるのです。結露については、日常生活に直接的な影響を与えることは少ないため、見て見ぬふりをする…という方も多いかもしれませんが、実は適切な結露対策を実行しないと、家の早期劣化を招いてしまう恐れもあるのです。
ちなみに、結露の発生については、一般的に気温が下がる冬場に発生すると考えられがちですが、梅雨時期や真夏など、クーラーを利用している部屋でも発生するので、その辺りも注意しておきましょう。
この記事では、窓周辺に結露が発生するメカニズムや、家を長持ちさせるための結露対策などについて解説していきたいと思います。
窓に結露が発生する原因とメカニズム
それではまず、家の窓周辺に結露が発生する原因やメカニズムについて解説していきます。窓周辺に結露が発生するのは、主に「湿度の高さ」と「屋外との気温差」が原因となっています。
ここでは、冬場などに自宅の窓に結露が発生して困っているという方のため、なぜ結露が発生するのかについて簡単にご紹介します。
結露のメカニズムについて
空調機器を積極的に利用する時期になると、部屋の窓にいつの間にか水滴がびっしりと付着している…という事態になるケースは珍しくありません。これがいわゆる「結露」と呼ばれる現象なのですが、結露が発生するメカニズムは「空気の温度と水蒸気の量のバランス」が関係しています。
皆さんも子供のころに習ったことがあると思うのですが、空気は温度によって抱えられる水蒸気の量が異なります。1㎤の空間に存在できる水分量を表したものが飽和水蒸気量と言われるのですが、温度が低くなるにつれて飽和水蒸気量が低くなるという性質があります。もう少しわかりやすく言うと、高い温度の方がたくさんの水蒸気を抱えられるということです。
この性質が理解できれば、窓に水が付着する理由が良く分かると思います。室内の空気は、エアコンによって暖められるため、多くの水蒸気を抱えられるようになっています。しかし、窓ガラスは、外気に直接触れているため、非常に冷たい状態になっているのです。そこに暖かい空気がぶつかり、冷やされることによって抱えていられる水分量が少なくなり、抱えきれなかった分の水蒸気が「結露」として現れるわけです。
これが、一般住宅の窓周辺で起こる結露のメカニズムとなります。
結露の原因
それでは、結露がなぜ発生するのかという、その原因についてもご紹介していきます。「結露は冬場に起きやすい」というイメージがあると思いますが、冬場は空気が乾燥するとされているため、空気中の水分量が少なくなって、結露は発生しにくいのではないか…と考える方も多いと思います。しかし、以下のような事が原因となり、家の中の湿度が高くなっているケースがあるのです。
- 洗濯物の部屋干し
冬場は、気温が低いため、洗濯物を外に干しても乾きにくいです。そのため、エアコンが効いている室内で洗濯物を干す方が多くなるのですが、部屋の中に濡れた衣類を干すと、その水分が室内に拡散することになり、湿度が高くなるので、その結果、窓周辺で水滴に変わるという結露問題に発展するわけです。 - ストーブ・ファンヒーターの利用
暖房器具の中でも、灯油やガスを使用するストーブやファンヒーターは燃料を燃やす際に大量の水蒸気を発生させます。そのため、これらを使用し続けている場合、部屋の湿度が高くなるため、結露の発生に繋がるのです。 - 加湿器の利用
加湿器は、その名称通り、室内の湿度を高くするための器具です。冬場は空気が乾燥しやすいため、就寝時に加湿器を利用する方も多いのですが、これのせいで結露に発展することもあります。
上記のような事が原因となり、室内の湿度が高くなると、外気で冷やされた窓に空気が触れた時、水分が結露として現れることになります。ちなみに、結露は窓周辺で起こるものというイメージが強いですが、それ以外の場所でも発生する可能性があります。以下に、家の中で結露の発生確率が高くなる場所をご紹介するので、小まめに換気をするなどの結露対策を実行しましょう。
- 窓のサッシ部分
窓はガラスだけでなく、サッシ部分も外気の影響で冷やされるため、結露が発生しやすいです。 - 玄関
玄関部分も、外気の影響を非常に受けやすいので、結露が発生しやすいです。 - 北側の部屋
家の中でも、北側にある部屋は太陽光が当たりづらくなるため、外との気温差が大きくなりやすく、特に結露が発生しやすくなります。 - 家具の裏など通気性が悪い場所
家具を設置する際、壁側ギリギリに寄せて設置すると、通気性が悪くなり湿気が溜まりやすくなります。そのため、結露も発生しやすいです。 - 押し入れ
押し入れは、空気が循環しにくい場所なので湿気が溜まりやすいです。特に布団をしまう押し入れの場合、人の汗を含んでいるため、湿気がかなり高くなることがあります。
家の中でも、上記のような場所は、特に結露の発生確率が高くなるので、小まめにチェックする、下で紹介する対策を施すなど、日常生活の中で注意しておきましょう。
結露による被害について
それでは、家の中で発生する結露について、これを放置した場合、どのような問題があるのでしょうか?
結露については、窓周辺に水滴が付着するといった問題なのですが、雨漏りなどとは異なり、人の行動範囲にはあまり関係がないため「そのうち乾くのだし放置していれば良い」と考える人も多いです。しかし、家の中で発生する結露は、さらなる問題に発展する可能性があるので、きちんと対処しなければならないのです。
ここでは、結露によって考えられる、さらなる問題について解説します。
カビやダニの発生を招き、家族の健康被害に繋がる
結露の放置は、湿気によりカビの繁殖を招いてしまう上、さらにカビを餌とするダニなどの害虫を引き寄せてしまうという問題があります。
家の中でカビが繁殖してしまうと、美観が壊れてしまう…というデメリットがまず考えられますが、実はこれ以上の大きな問題もあるのです。家の中でカビが繁殖すると、空気中に胞子が浮遊することになり、それを吸い込んだ人間の健康被害に繋がる恐れがあるのです。特に、小さなお子様の場合、アレルギー反応を起こすなど、重篤化するリスクもあるのです。
家そのものの耐久性を低下させる
ひどい結露が発生すると、建物そのものの劣化に繋がる恐れまであります。日本の戸建て住宅は、そのほとんどが木造となっているため、結露で発生する水分は正に天敵と言えるものなのです。
結露が発生し、それが建物の構造部分にまで染み込むと、木材の腐食を引き起こしてしまう恐れがあります。また、金物などもサビつかせてしまい、耐久性が落ちる可能性もあるでしょう。その結果、家の耐久性の低下や耐震性の低下などに繋がり、そこに住む人の安全性が損なわれてしまうのです。
また、水分を含んだ木材は、シロアリの絶好のエサとなるため、結露の放置はシロアリを誘引する可能性もあると考えなければいけません。
窓の結露対策は何をすれば良い?
それではここから、住宅の窓に発生する結露について、家の劣化などに問題が拡大しないようにするための対策について解説していきます。
ここでは、結露が発生しにくくなる対策と、発生した時の対策両方をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
小まめに結露を拭き取る
根本的な結露対策とはなりませんが、カビの発生を防ぐ、建物の劣化を防止する目的の場合、結露が発生した時、すぐに拭き取るという対策は有効です。
カビの発生や建物の劣化は、水分が長く残り続けることが要因となるため、結露が発生しやすい場所を小まめに確認し、水滴を見つけたらすぐに除去するようにするという対策は非常に有効なのです。
ちなみに、結露を何度拭いてもすぐに水滴が生じる…というよう状況は、下で紹介するような、結露が発生しにくい環境を作るという対策がおすすめです。
小まめに換気をする
二つ目の対策は、小まめに換気をすることで、室内の湿気を外に逃がすという方法です。換気をすれば、外の乾いた空気を取り込むことができるので、結露の原因となる湿気が少なくなります。
上でも紹介していますが、結露の大きな原因は、室内の空気中に水分が多くあるためです。その空気が窓に触れて冷やされた際、結露として現れているわけです。したがって、この湿気を外に逃がして、室内の空気が乾燥すれば、結露が発生しにくくなるのです。
例えば、調理中や室内干しをしている時、お風呂に入った後などは、どうしても湿度が高くなりがちなので、換気扇などを回して湿気を外に逃がすと良いでしょう。
除湿を行う
結露は、外気との気温差がある、室内の湿気が高いという条件が整った時に発生します。つまり、どちらかの条件を取り除くことで結露の発生を防ぐことができるのです。
上で紹介したように、換気を行うことで湿気を外に逃がすことができますが、冬場の寒い時期になると、窓を開けることで室内が寒くなってしまいます。当然、換気により室温が上下する環境になると、空調効率が悪くなってしまうので、光熱費が高くなってしまう恐れがあります。
したがって、室内の湿気を少なくするにしても、換気ではなく他の方法で行うのが望ましいと考える人もいるのです。そしてその場合に役立つのが除湿器や除湿剤です。これらのアイテムは、結露の元となる湿気を吸収してくれるので、洗濯物を室内干しする際には非常に役立ちます。なお、湿気は空間の中でも下の方に溜まりやすいので、台の上など高い位置に除湿アイテムを置くのではなく、床に直置きしておくのがおすすめです。
外との気温差を小さくする
結露の発生について、露点温度表よって算出した場合、湿度50%の時、気温差10℃で結露するという計算になります。一般的に、人が快適に過ごせる環境については、湿度が50%前後の環境とされているため、室外との気温差が10℃以上になる時には結露が発生する可能性があると考えなければいけません。
気温差については、冬場だけでなくて、夏場でも結露の発生原因となるので注意しましょう。なお、真冬は、外気温が0℃を下回ることも珍しくないのですが、この状態で気温差10℃以内となると、室温は10℃前後に設定するということになり、人間にとっては寒すぎる環境になります。したがって、家族の健康のことを考えると、室温はもっと高く設定し、除湿機を使って湿度を下げるなど、他の方法で結露を防ぐ方が良いです。
使用する暖房器具を選ぶ
先程紹介したように、ストーブやファンヒーターなどのガスや石油を使う暖房機器は、燃料を燃やす際に大量の水蒸気を発生させ、室内の湿度を高めてしまいます。例えば、石油ストーブの場合、石油を1ℓを燃焼させるのに1ℓの水分を放出するとされているため、結露対策のことを考えると、非常に悩ましい器具となってしまうのです。
そこで、家の中を暖める暖房器具については、「非開放型」と呼ばれる排気を外に逃がすタイプのモノや、ハロゲンヒーター、エアコンなど、電気を燃料とした暖房器具を選ぶのがおすすめです。そうすることで、部屋を暖める際に水分を排出することがなくなるため、湿気の増加を防ぎ結露が発生しにくい環境を作り出すことができます。
結露防止グッズを利用する
最近では、結露の発生を防止するような便利なグッズが市販されるようになっています。ドラッグストアやホームセンター、ネット通販で購入することができるので、これらのアイテムを使用して、窓の結露を防止するのも良いでしょう。
例えば、以下のようなグッズが販売されています。
- 結露防止スプレー
窓にスプレーを吹きかけることで薄い膜ができ、水分を弾いたり吸収してくれるという機能が付加されます。これによりガラス面に結露が付着するのを防止できます。注意点としては、スプレーの成分として界面活性剤が含まれているので、ペットや小さなお子様が誤って舐めてしまうと健康被害が出る可能性があります。したがって、そういったお宅は使用する場所に注意が必要です。 - 結露防止シート
窓の表面にシートを貼ることで室内外の温度差を少なくして結露の発生を防止します。ただ、凹凸のある窓には貼れないものがある、網入りガラスの場合、割れてしまう恐れがあるなどの注意点があります。
上記は、結露の発生を防止するためのアイテムです。これ以外にも、発生した結露を自動で吸収し、建物の木材部分の劣化を防止するタイプのアイテムも販売されています。これは、吸水機能を持つテープを窓の下部に貼るという方法で、結露が発生しても窓枠や床まで達しないようにするのです。ただ、テープそのものが湿潤を繰り返すことで、カビが繁殖することがあります。したがって、テープタイプの結露対策は、定期的な交換が必要になります。
窓のリフォーム
窓部分の結露は、窓ガラスが外気によって冷やされ、そこに室内の暖められた空気が触れることで発生します。つまり、窓ガラスが結露するほど冷たくならないようにするという方向の対策もあるのです。
例えば、窓の内側にもう一枚窓を設置して二重窓にするという方法や、窓ガラスそのものを二重にする複層ガラスに交換するなどといった方法があります。これであれば、外気に触れているのは外側のガラスのみとなり、室内側のガラスは極端に低温になることがないため、結露が発生しにくくなるのです。
この方法は、窓部分の断熱性向上も期待でき、空調効率を高めることで電気代の削減も期待できます。環境にも優しい対策になるので、国の補助金が活用できる点も嬉しいポイントになるでしょう。
新築時に検討したい結露対策について
それでは最後に、家を建てる段階で考えておきたい結露対策について解説します。結露は、発生のメカニズムが分かっているわけなので、結露が起こらないような構造の家を作ることも可能です。
ここでは、代表的な方法をいくつかご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
二重窓や複層ガラスを採用する
二重窓や複層ガラスの導入は、リフォームなどで後から追加するのではなく、新築時に実行しておくことも出来ます。
結露は、外気で冷やされた窓ガラスに室内の暖かい空気が触れることで発生するので、室内側の窓ガラスが異常に冷たいという状況にならないようにすれば良いのです。二重窓や複層ガラスは、窓ガラスと窓ガラスの間に空気層ができることで、室内側のガラスが冷やされることを防いでくれます。
なお、二重窓や複層ガラスにしたからと言って、絶対に結露が発生しなくなるわけではない点に注意が必要です。
高気密高断熱の家にする
高気密高断熱住宅は、その断熱性能によって、壁や窓の表面を冷やさないようにでき、気温差が小さくなって結露が起きにくくなります。また、気密性を高くすることで、隙間から外気が侵入することを防ぎ、室温を一定に保ちやすくなることも、結露を防ぎやすくできるとされているのです。
ただ、高気密・高断熱住宅は、空気の出入りが少なくなる分、空気が滞留して入れ替わりにくくなる点は注意が必要です。換気とのバランスも考慮しないと、室内に湿気がこもりやすくなるので、24時間換気システムによる換気が上手に行われるようにしなければいけません。
通気断熱WB工法を採用する
WB工法は、壁内に通気層が設けられていて、さらに透湿性の高い壁材を採用することで、室内の湿気を効率的に屋外に排出してくれます。この機能により、結露(内部結露や表面結露)の発生を抑制することができ、水分によるカビ・ダニの発生や建物の早期劣化を防止してくれるのです。
WB工法の家は、土壁の原理を応用して、家そのものが呼吸することで、湿気をコントロールしてくれます。そのため、高気密住宅のデメリットとされる結露問題を解決することができるとされているのです。WB工法による結露抑制の仕組みは以下のような感じです。
- 通気層の設置
壁内に空気層(通気層)を設けることで、効率よく湿気を外に逃がす。 - 透湿性のある壁材
湿気を通す特殊な壁材(透湿材)が採用され、室内の余分な湿気を壁を通して通気層に誘導する。 - 自然換気
壁内の湿気や化学物質、臭いを屋外へ排出し、常に新鮮な空気を保つ。 - 逆転結露対策
高気密・高断熱化住宅で起こりやすい「逆転結露(夏型結露)」も、通気層で湿気を排出することで防ぐことができる。
WB工法の家は、上記のような特徴を持つことから、結露の発生を防止することができます。なお、WB工法の詳細については、以前別の記事で解説しているので、以下の記事も併せて確認してみましょう。
関連:通気断熱WB工法とは?WB工法のメリットはよく耳にするけど、実際のところデメリットはないの?
まとめ
今回は、これから気温が下がる冬場に起こりがちな、窓部分の結露について、なぜ結露が発生するのか、また結露を防止するにはどうすれば良いのかについて解説しました。
記事内でご紹介しているように、住宅で発生する結露は、室内の湿気がそれなりに高い状態で、外気との気温差が大きくなるという2つの条件を満たすことで発生しやすくなります。冬場は、空気が乾燥する時期ではあるのですが、風邪予防のことなどを考えると、家の中はそれなりの湿度環境を保っていたいと考える人が多いです。そのため、加湿器などを用いて、室内の湿度を50%以上に保っている場合が多いのですが、このような状態は外との気温差により窓部分でk津呂が発生しやすくなるのです。
なお、結露の発生に関しては、家を建てる際の工夫で防ぐことも可能な時代になっています。二重窓の採用やWB工法の採用など、結露に悩まされない家を作りたいと考えている方は、ぜひ導入してみてはいかがでしょう。
