これから注文住宅の建築を検討している方の中には、洗練されたスタイリッシュな雰囲気を実現することができるコンクリート打ちっぱなしの家に憧れているという方もいるのではないでしょうか?

コンクリート打ちっぱなしの家は、デザイナーズマンションなどで採用されることが多く、無機質ながらも洗練されたデザインの住空間を実現できることから、注文住宅でも人気のある建築スタイルとなっています。ただ、コンクリート打ちっぱなしの家については、「見た目のデザイン性が高くなるのは認めるけど、実際には暮らしにくいのでは?」「後々のメンテナンスが大変そう…」など、ネガティブな意見を耳にする機会も少なくありません。

そこでこの記事では、コンクリート打ちっぱなしの家に憧れているという方に向け、事前におさえておきたいメリット・デメリットや、将来的に後悔しないために知っておきたいポイントをご紹介します。

そもそもコンクリート打ちっぱなしの家とは?

それではまず、コンクリート打ちっぱなしの家がどのようなものなのかについて解説します。これは、文字通り、コンクリート打ちっぱなしは躯体を活かした仕上げの方法を指しているのですが、これだけでは具体的な家のイメージが湧かないという方も多いと思うので、以下でもう少しわかりやすくご紹介します。

RC造やSRC造の仕上げ方法で構造体そのものが外観になる

コンクリート打ちっぱなしは、建物の構造がRC(鉄筋コンクリート造)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)により建てられている家で選択できる仕上げ方法となります。

RC造の家は、建物を支える骨組みになる躯体は、鉄筋を組んで型枠にコンクリートを流し込むことで作られています。SRC造については、鉄骨の周りに鉄筋を組んでいるという違いがあるのですが、最終的に型枠にコンクリートを流し込んで作るという点は同じです。

そして、このコンクリートの躯体そのものが家の外観となるものが「コンクリート打ちっぱなしの家」と呼ばれています。一般的な建物の場合、外壁であれば塗装やタイル、内壁は壁紙や塗装などで仕上げられているのですが、そうした仕上げ作業をせずに、コンクリートの外観をそのまま見せるという仕上げ方法と考えてください。

コンクリート打ちっぱなしという仕上げ方法は、シンプルでスタイリッシュな外観を実現できることもあり、デザイナーズマンションなどで採用されるケースが多かったのですが、新築業界でも、注文住宅を建てる際に希望する方が一定数います。ちなみに、コンクリート打ちっぱなしは、全て同じ外観になると考えられがちですが、型枠の木目やコンクリートを流し込んだ時の跡がそのまま残るため、一つとして同じものがない独特の風合いを生み出すことができます。

コンクリート打ちっぱなしを選択できる場所

RCやSRCの建物にて、コンクリート打ちっぱなしを採用できるのは、躯体の壁や柱、梁、天井スラブなどとなります。マンションなどの場合で考えると、壁の全てが躯体ではありません。SRCのマンションはラーメン構造が一般的なのですが、RCの場合は、ラーメン構造のケースと壁式構造のケースがあるのです。ラーメン構造は、柱と梁で支える構造で、外部に面する壁や隣戸との境界壁は躯体となるものの、間仕切り壁については、間柱にプラスターボードを取り付けることで作られています。壁式構造の場合は、間仕切り壁の一部も躯体となるのですが、どちらにせよ、一般的なマンションでは、室内側でコンクリート打ちっぱなしにできるのは一部の壁だけとなります。

戸建てでコンクリート打ちっぱなしを選択する場合、外壁と内壁の両方を打ちっぱなしにするというケースと、外壁と内壁のいずれかを打ちっぱなしにするということを選ぶことができます。これについては、デザイン面を重視して採用する場所を決める部分もあるのですが、外部に面した壁の断熱の問題により、どちらかが選ばれることになります。
建物の断熱性のことを考えると、外断熱もしくは内断熱による対策は必要と考えた方が良いです。コンクリートの躯体の外側に断熱材を施工する方法が外断熱で、内側に施工する方法が内断熱と呼ばれるのですが、どちらかを実行しなければ、外気の影響を受けやすくなってしまいます。

コンクリート打ちっぱなしにするメリットとは?

それではここからは、コンクリート打ちっぱなしの家にすることで得られるメリットについて解説していきます。コンクリート打ちっぱなしの家は、スタイリッシュで洗練された住空間を作れるなど、デザイン面が指摘されることが多いのですが、他にもいろいろなメリットがあります。ここでは、コンクリート打ちっぱなしの家にある代表的なメリットをご紹介します。

メリット1 開放的で大きな空間を実現できる

コンクリート打ちっぱなしの家は、RCあるいはSRCの構造の建物でできる仕上げ方法と解説しました。この構造は、木造と比較すると、柱と柱の間の間隔を広くすることができるため、開放感のある大空間を作りやすくなる点が大きなメリットになります。

間仕切り壁などをあまり設けないようにすれば、各部屋が緩やかにつながる住まいにすることができるため、家族同士のコミュニケーションがより円滑になるといったメリットも得られるかもしれません。

メリット2 耐震性・耐火性・防音性など、住宅の性能が高い

先程からご紹介しているように、コンクリート打ちっぱなしの家とは、RC造やSRC造の建物における仕上げの方法です。つまり、このタイプの家は、木造よりも耐久性が高いとされる、RC造が採用されているのです。RC造の家は、圧縮に強いコンクリートと、引っ張る力に強い鉄筋を組み合わせることで、地震の揺れに強くなるという耐震性の高さが得られます。さらに、コンクリートは、木造と比較すると、当然、耐火性が高くなるため、住宅火災の不安も少なくなると考えられるでしょう。

この他にも、素材の密度が高く質量が重いコンクリートは、高い防音性も確保できるというメリットが得られます。つまり、コンクリート打ちっぱなしの家は、建物そのものの性能が高くなるという点が大きな魅力になるのです。

メリット3 おしゃれで洗練された空間デザイン

コンクリート打ちっぱなしの家に憧れている方の多くは、住宅の性能面よりも、デザイン性の高さにメリットを感じているというケースが多いです。コンクリート打ちっぱなしの仕上げは、その他の仕上げでは実現することが難しい、無機質な質感を生かした都会的でクールな住空間を作り出すことができます。さらに、コンクリート打ちっぱなしの空間は、さまざまな素材との相性が良いとされているため、好みに合わせておしゃれと思える空間を実現できるという特徴があります。例えば、一般的にはイメージがないと思いますが、コンクリート打ちっぱなしは和の空間にも合う仕上げ方法とされています。和室にコンクリート打ちっぱなしを取り入れると、コンクリート特有の質感が凛とした佇まいを醸し出し、スタイリッシュな和モダンな空間を実現できるとされています。

この他、コンクリートは、形状の自由度が高いため、曲線の壁を設ける、ガラスブロックと組み合わせた壁にするなど、細部までこだわったおしゃれな住宅を実現することができるという点がメリットです。

メリット4 木造よりも火災保険が安くなる

コンクリートは、木材と比較すると燃えにくいという特徴を持っています。そのため、木造と比較した場合、RC造であるコンクリート打ちっぱなしの家は、火災のリスクが低いと判断されるのです。

そのため、住宅の構造区分が優遇されることになり、火災保険の保険料が安くなる場合があります。また、建ぺい率なども優遇されているため、都市部の住宅密集地に家を建てる場合、敷地を最大限有効活用することができるという点もメリットの一つです。

コンクリート打ちっぱなしにするデメリットとは?

次はコンクリート打ちっぱなしの家を選択する場合に、注意しておきたいデメリット面についてです。以下のようなデメリットが指摘されるので、本当にコンクリート打ちっぱなしが良いのかは慎重に検討しましょう。

デメリット1 外気の影響を受けやすく夏は暑く、冬は寒い

コンクリートは、熱伝導率が高いため、外気の影響を受けやすいという弱点を持っています。そのため、適切な断熱材が施工されていない場合、「夏は暑く、冬は寒い」といった環境になりやすく、空調にかかる光熱費が高くなりがちです。これは大きなデメリットと言えるでしょう。

対策としては、外気の影響を可能な限り少なくするため、適切な断熱対策を実施すると良いです。空調コストのことだけを考えると、機能性の高い冷暖房機器の導入という方法もあるのですが、より高い効果を得るためには、外断熱工法を取り入れるなどの断熱対策の実施が望ましいです。外断熱工法は、外壁を断熱材で覆うことで、室温を一定に保つという方法になります。コンクリート打ちっぱなしに存在するデメリットを解消するための方法としては非常におすすめです。特に内壁を打ちっぱなしにして室内空間をスタイリッシュにしたいという場合に効果的です。

デメリット2 結露やカビが発生しやすい

コンクリートは、高気密かつ湿気を吸収しやすいという特徴を持っているため、結露が発生しやすいです。結露が発生すると、カビの繁殖も招きやすくなるので、大きなデメリットと言えます。家の中でカビが発生した場合、見栄えが悪くなるといった単純な問題だけでなく、カビの胞子が空気中を舞うことで、アレルギーや呼吸器疾患など、家族の健康に悪影響を及ぼします。

対策としては、小まめな換気や除湿機の活用などが良いでしょう。天気の良い日などは、窓を開放したり、換気扇を常に回す習慣をつけることで、湿気を逃がすことができます。また、窓に採用するサッシの断熱性を高めることで窓周辺に結露が発生しにくくすることができます。なお、結露の発生を見つけた場合は、小まめに水気を拭き取るという方法も、カビの発生を防止するために効果的です。

デメリット3 コストがかかる

コンクリート打ちっぱなしの家は、建築費用、メンテナンス費用共に、木造よりも高くなってしまうという点が大きなデメリットになります。RC造のコンクリート打ちっぱなしの家と一般的な木造住宅を比較した場合、それぞれの建築費がRC造の方は、1.5~2倍程度高くなると言われています。また、将来的にかかるメンテナンス費用についても、コンクリート打ちっぱなしの家の方が高くなると想定されます。

費用面のデメリットに関しては、何らかの対策を施すことで安くするということはできません。そのため、コンクリート打ちっぱなしの家を建てたいと考えている方は、完成後のメンテナンス費用まで視野に入れ、総額で資金計画を立てておくことが大切です。もちろん、施工会社や建物の規模などによって、かかるコストに金額幅が出ますが、どちらにせよ同じ規模の木造住宅よりは高くなる傾向があるので、早めに資金計画を立てて、安心して家づくりを進めることが大切です。

デメリット4 建てられる土地が限定される

コンクリートは、木材と比較すると非常に重量のある素材となるため、家を建てる際にはコンクリートの重量に耐えられるだけの強固な地盤が必要になります。地盤が弱い土地の場合、地盤沈下や建物に傾きが発生する恐れがあるため、建てられる土地が限定される可能性があると考えてください。

したがって、コンクリート打ちっぱなしの家を建てたいと考えている方は、土地の契約前に地盤に問題がないかしっかりと確認しておきましょう。立地を優先したい場合、地盤改良工事なども検討する必要があります。

デメリット5 ひび割れや汚れが目立つ

コンクリートは、乾燥収縮や温度変化などを原因に、小さなひび割れが生じてしまうことがあります。当然、壁にひび割れが生じてしまうと、小さくても不安に感じてしまう方がいるかと思います。さらに、コンクリート打ちっぱなしの壁などは、無機質な素材であることから、汚れがどうしても目立ちやすくなってしまいます。屋外側の壁に採用する場合、雨だれや排ガスなどが壁に付着し、汚れが目立つことでおしゃれさが薄れてしまうなどの問題に発展する可能性があります。

対策としては、小まめな清掃や定期的なメンテナンスを心がけるという方法がおすすめです。例えば、ひび割れの防止や防水性の維持に関しては、定期的に再塗装をいれることが重要です。ひび割れを放置すると、その部分から雨水が侵入し、家そのものの劣化に繋がる恐れがあります。したがって、定期的に塗装をやり替えることで、水の侵入を防ぐ必要があるのです。なお、ひび割れに関しては、ごく小さなヘアークラックの場合、そこまで不安になる必要はありませんが、それが拡大していくと水の侵入を許してしまいます。したがって、クラックを見つけた時には、専門業者に確認してもらい、必要であれば補修を実施しましょう。外壁の汚れについては、高圧洗浄機などを用いて、小まめに掃除すると良いです。

コンクリート打ちっぱなしの家は、定期的な外壁メンテナンスが必要

コンクリート打ちっぱなしの美しい外壁を維持するためには、定期的な塗装メンテナンスが必要になります。また、美観だけでなく、外壁の耐久性を維持するためにも、定期的なメンテナンスが必要です。

コンクリート打ちっぱなしの外壁については、10〜15年に1回の頻度でメンテナンスを実施するのが一般的です。これは、表面に施工される塗膜の耐用年数によって変わるのですが、塗装の効果が切れてくると、表面のひび割れや汚れの付着、カビの発生などを招いてしまうことになるため、美観の悪化や耐久力の低下につながってしまいます。したがって、コンクリート打ちっぱなしの外壁は、以下のいずれかの方法によるメンテナンスが必要と考えておきましょう。

  • 撥水剤を使用する
    撥水剤とは、コンクリートに防水性を持たせるために塗布する無色透明の塗料です。このタイプであれば、コンクリート本来の質感を損ねることがないという点がメリットになります。ただ、耐用年数に関しては、2~7年程度と短く。メンテナンスの頻度が高くなる点に注意が必要です。撥水剤を利用したメンテナンスの費用は、1,000〜2,000円/㎡程度が相場です。
  • 弾性塗料を使用する
    弾性塗料は、伸縮性に優れているという特性を持っていて、コンクリートのひび割れを防ぐ効果が期待できます。また、既にひび割れが生じている場合にも、その補修として利用することができます。ただ、このタイプの材料は、コンクリートの表面を塗りつぶしてしまうことになるため「コンクリート打ちっぱなし」の質感が失われてしまいます。弾性塗料を利用したメンテナンスの費用相場は、2,500円〜3,000円/㎡程度です。
  • カラークリヤー工法を採用する
    透明な塗料に着色剤を混ぜた色つきのクリヤー塗料を塗布するという方法です。コンクリートの質感を残しながら、シミや補修跡をカバーすることで、美しく仕上げることができます。防水性も高く、コンクリートの中性化や劣化防止なども期待できます。メンテナンスにかかる費用は2,000〜4,000円/㎡程度が相場です。

上記のように、コンクリート打ちっぱなしの家は、定期的なメンテナンスが欠かせないという点は頭に入れておきましょう。なお、外壁のメンテナンスに関しては、一般的な木造住宅の場合でも、10年に1度程度の頻度でメンテナンスが必要になるので、そこまで大きな負担とは考えなくても良いと思います。

まとめ

今回は、無機質ながらも洗練されたデザインの住空間を実現することができると人気のコンクリート打ちっぱなしの家について解説しました。この記事を読んでいる方の中にも、木造住宅にはない独特な雰囲気を実現できることから、コンクリート打ちっぱなしの家に憧れているという方は少なくないのではないでしょうか?しかし、記事内でご紹介したように、コンクリート打ちっぱなしの家は、優れたメリット面がるとはいえ、決して見落とすことができないデメリット面があるという点は注意しなければいけません。憧れだけで、コンクリート打ちっぱなしの家を選んでしまうと、メンテナンス費用や外気温の影響を受けてしまうことによる住環境の悪化などに悩み、選択を後悔してしまう可能性もあるのです。日本の戸建て住宅は、8割以上で木造が選ばれていて、さらに新築着工だけに絞ると、一戸建て住宅の木造率は9割を超えると言われています。

これは、コスト的に木造の方が有利であるということも大きな要因になりますが、コンクリート打ちっぱなしに存在するデメリットが意外に大きいと考えられていることも要因の一つになっているでしょう。したがって、コンクリート打ちっぱなしの家に憧れているという方は、事前にしっかりと情報を集め、自分の希望をかなえるためには本当にコンクリート打ちっぱなしが正解なのか、慎重に検討するのがおすすめです。家の建築は、その後何十年にも関係する問題な訳ですし、現実的な計画を立てることで、理想と現実とのギャップを埋めることも大切なはずです。

ちなみに、コンクリート打ちっぱなしの家がどうしても良いという方は、以下の点については頭に入れておきましょう。

  • 断熱対策について
    熱伝導率が高いコンクリートは、断熱対策を欠かすことはできません。家の快適性を大きく左右する重要なポイントになるため、断熱対策の予算もきちんと計画に含めておきましょう。快適な住環境を求めるなら、外断熱工法がおすすめですが、どうしても費用が高くなりがちです。ただ、将来的に居住性の悪さに悩まないようにするには、必要な断熱性能を得られるためにも、きちんと予算を確保しておくべきです。
  • 業者選び
    コンクリート打ちっぱなしの家を建てる場合、業者選びが非常に重要になります。綺麗な仕上がりを実現するには、高い技術とノウハウが必要になり、施工会社のスキルによって仕上がりが左右されてしまうのです。さらに、経験が不足している施工業者の場合、将来的にひび割れや雨漏り、結露問題と言ったトラブルに悩まされてしまう可能性も高くなるでしょう。したがって、後悔しない家づくりのためには、コンクリート施行の実績が豊富なのかを事前に確認するなど、信頼できる業者を選ぶようにしましょう。
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