昨今、物価高の影響などを背景として、住宅ローンの返済に困る方が急増していると言われています。住宅ローンは、その他のローンと比較すると、返済が長期間にわたることが前提となっているため、完済までの道のりで何らかの困難に直面するケースというのは珍しくありません。

住宅ローンを組む際には「問題なく完済できる!」と思っていたとしても、その後なんらかの理由で収入が変化したり、病気やケガなどにより収入が途絶える、変動金利が引き上げられるなど、さまざまな理由で住宅ローンを払えなくなってしまう人がいるのです。

それでは、実際に住宅ローンの返済が滞り始めた時にはどのような問題に発展するのでしょうか?この記事では、本来は無理のない範囲で組むはずの住宅ローンについて、この支払いが困難になる背景や、住宅ローンを滞納した時に起こる事、また支払いを困難に感じ始めた時の適切な対処法について解説します。

住宅ローンを払えない人が急増?その背景とは?

それではまず、昨今、住宅ローンを払えない人が急増していると言われる背景について解説していきたいと思います。

冒頭でもご紹介したように、住宅ローンの返済期間は、30年など、非常に長期にわたることになるため、完済までの道のりで支払いを困難に感じてしまうケースは珍しくありません。特に、住宅購入時に無理な返済計画を立てている、頭金なしで購入しているなどという場合、破綻に繋がるリスクが高くなるとされています。

それでは、住宅ローンの完済までの道のりで、その支払いが困難になってしまう主な理由は、どのようなことが考えられるのでしょうか?ここでは、「住宅ローンが払えない…」となってしまう主な要因について解説します。

①収入の減少

住宅ローンの返済が困難になる最も一般的な要因が「収入の減少」です。現在の日本社会は、終身雇用ではなく、転職する人の数が増えています。そのため、転職の際などに収入の減少を経験したという方も多いと思います。ちなみに、収入減少の背景には、他にも以下のような要因があります。

  • 景気の悪化による給与のカット
  • 雇用形態の変更(正社員⇒非正規雇用)
  • 働き方改革の影響(残業規制による収入減)
  • 病気やケガで働けなくなった

住宅ローンの返済期間は非常に長いため、完済までの道のりで収入が減少してしまうケースは珍しくありません。実際に、全国不動産売却安心取引協会が実施した調査によると、住宅ローンの支払いが延滞した主な原因として「収入減」と回答した人の割合が36%と最も多く、その他にも「リストラ・倒産」が10.1%と、半数近くの方が収入源による住宅ローンの滞納となっているのです。

データ参照:「住宅ローンの支払い」について調査

②予期せぬ支出の増加

返済期間が長期にわたる住宅ローンは、完済するまでに予期していなかった突然の支出増加があり、返済が困難になるというケースも考えられます。例えば、以下のような事が考えられるでしょう。

  • 家族の病気やケガで医療費が増加した
  • 子供の進学など、教育費が上昇した
  • 離婚などによる養育費負担
  • 物価の上昇

先程紹介した調査によると、「病気・事故(7.2%)」や「離婚・別居(8.6%)」も住宅ローンの支払いが困難になる理由として上位に位置しています。さらに、コロナ禍以降は、さまざまなモノの価格が上昇していることも、住宅ローンの支払いに困る大きな要因となっています。例えば、電気やガス、ガソリンなどのエネルギー価格は、信じられないほどの勢いで高騰していますね。さらに、日常生活に欠かすことができない食品に関しても、物価高騰が続いています。2024年秋ごろからは、コメ価格の高騰が大きな問題となりましたね。

これら、さまざまな面で支出が増加したことで、住宅ローンの支払いに回せるお金がない…となってしまう人が増えているのです。

③金利環境の変化

近年では、経済状況の変化を原因として、変動金利の上昇が懸念されています。実際に、ここ数年の変動金利は上昇傾向を続けており、今後も住宅ローン金利は変動・固定ともに上昇の可能性があるとされています。

住宅ローンの金利が上昇すれば、毎月の返済額が増加することになるわけなので、当然、返済が困難になる人が増えてしまう恐れがあるでしょう。特に、住宅購入時に無理な返済計画を立てていたという方は、金利上昇の影響を受けやすいため、返済が滞る可能性が高くなります。

④住宅価格が高騰している

住宅ローンの返済が困難になる方が増えている要因の一つに、そもそも住宅価格が高騰しているということをあげる人が多いです。住宅価格が高騰しているということは、住宅ローンの借入額が増加し、返済負担が重くなるということを意味します。現在は、日常生活にかかる光熱費などの部分も負担が増加し続けているため、ここに住宅ローンの支払いが上乗せされることで、破綻してしまうというケースが多くなっているのです。

住宅価格の上昇は、ウッドショックやコロナ問題、世界情勢の不安定化による原材料価格の高騰、建設業界の人手不足などが複雑に絡み合っているため、今後さらに高くなる可能性もあると言われています。

住宅ローンが払えない時に起こることとは?

近年では、上で紹介した理由を抱え、住宅ローンを払えなくなってしまうという人が急増していると言われています。それでは、住宅ローンの支払いが滞った時には、どのようなことが起こるのでしょうか?実は、住宅ローンを滞納すると、時間経過とともに金融機関からの対応が段階的に厳しくなっていきます。そして、最終的にマイホームが競売に掛けられることになり、住む家を失ってしまうのです。

もちろん、1カ月だけ支払いが遅れただけで、いきなりマイホームを取り上げられることはありません。ここでは、住宅ローンを滞納した時の金融機関の対応について解説します。

STEP1 督促(滞納から1カ月以内)

住宅ローンの滞納がはじまった場合、まず第一段階としては『督促』から始まります。おおむね、滞納がはじまって1カ月以内に金融機関が行動を起こすことになります。督促は、登録されている電話に連絡が入るほか、文書が郵送されてくるといった方法となります。なお、場合によっては、金融機関の人間が自宅に訪問して督促されることもあります。

この段階の流れをもう少し詳しく解説します。

  • ①主に電話により1回目の督促が行われます(滞納翌日から)
    1回目の督促については、あくまでもお知らせと言ったニュアンスとなります。返済日の翌日(銀行によっては早く伝えるという意味で当日の場合もある)に電話またはメールなどを使って「返済をお忘れではありませんか?」と言った感じのアナウンスがなされます。これは、本当に返済を忘れていた…という方もいるため、1回目はあくまでもアナウンスと言ったニュアンスで、督促ほどの強いイメージはありません。とはいえ、住宅ローンの滞納がスタートしていることには間違いないので、単に忘れていただけという方も速やかに対応しましょう。
  • ②電話や文書により2回目の督促が行われます(滞納から1週間以上経過)
    2回目からは本格的な督促と言ったイメージです。滞納したその週末までに返済が確認されたかった場合、翌週に2回目の連絡が入るケースが多いです。1回目の連絡で「滞納状態になっている」ということは伝わっていて、それでも返済していないという状況なので、金融機関の対応レベルは上がっています。なお、電話による督促を無視した(着信しても電話に出ない、留守電に入れたのに折り返しがない)としても、金融機関側は「延滞の事実を伝えた」という解釈となっているので注意が必要です。金融機関からの督促は、お客様側の滞納が原因なので、返信や入金がないということは「無視された」と同義に捉えられ、余計に印象が悪くなります。
  • ③電話、文書、訪問などによる3回目の督促(滞納した月の月末)
    3回目の電話に関しては、「再度の督促・文書送付の予告」を意味します。滞納がはじまって数週間以上経過すると、3回目の連絡が来ます。また、滞納したその月末までに入金がなく、月を超えてしまうと、延滞のレベルもより重度になってしまいます。そのため、3回目の連絡は、最終的な準備に移りますよという予告でもあるのです。ちなみに、金融機関によっては、電話ではなく、督促状と呼ばれる文書の送付や職員の訪問などが行われる場合もあります。

滞納して1カ月前後の段階は、上記のような督促と呼ばれる対応が実施されます。ちなみに、基本的には電話や文書による連絡となり、訪問による督促は個人情報保護やプライバシーの面から、無用なトラブルを起こさないため、特別な理由でもない限りは行われないでしょう。ただ、金融機関側が「本人に会って督促する必要がある」と判断する場合は、訪問がなされることもあります。訪問するかどうかの基準は、金融機関側の判断となり、細かい基準は非公開となっているため分かりません。

STEP2 通知・催告(滞納から5カ月以内)

滞納がはじまって、返済もなく翌月まで長期化した場合などは、文書による督促に移行します。ここまで滞納が長期化している場合、督促するとともに「最終手段に移る」という予告である最終通告になってきます。

郵送されてくる書類は「催告書」と言った物となります。催告とは、相手に対して何らかの要求をするという意味で、住宅ローンの滞納では、「滞納しているローンの返済」を要求するわけです。つまり、催告状は、「このまま滞納を続ける場合、最終手段に移るので、滞納している金額を期限までに払うことを催告する」といった内容になっています。

STEP3 保証付きローンの場合は代位弁済(滞納して8カ月以内)

住宅ローンの滞納が長期間続いている場合、最終的な対応として「代位弁済」という手続きが進められる場合があります。

代位弁済は、その文字からイメージできるように、債務者が支払えなくなった住宅ローンを、保証会社が代わりに銀行に一括支払いすることを意味します。この手続きは「債務者の代わりに(代位)」「住宅ローンを返済する(弁済)」するという行為なので「代位弁済」と呼ばれています。

代位弁済が実行されると、住宅ローンの債権者は銀行などの金融機関から保証会社に変わります。「債権者が変わるだけなんだ…」と安心するかもしれませんが、保証会社は、銀行などの金融機関と異なり、分割払いを認めないのが通常なので、保証会社からの請求は「ローン残高の一括返済」となってしまうのです。
当然、住宅ローンを一括返済できるだけの資金力があれば、滞納などをしていないわけなので、保証会社から一括返済を迫られた場合には、家を売却することで返済するという方法を選ばざるを得なくなるのです。

ちなみに、保証会社がついていない住宅ローン、いわゆるプロパーローンの場合、この代位弁済というステップはありません。そのため、家を売却しなければならない…という状況がより早く来てしまう可能性があります。

STEP4 任意売却、競売(滞納して12カ月以内)

これが最終段階です。支払うことができない住宅ローンは、最終的な解決策として、住宅を売却してお金に換え、そのお金を住宅ローンの返済に充てるという方法が採用されるのです。なお、住宅の売却方法については、任意売却と競売という2つの方法があります。

  • 任意売却
    債務者が不動産会社などと協力して買い手を探す方法です。一般的な不動産売却と同じように家を売る方法で、債務者の意思で売却するという行為なので『任意』売却と呼ばれます。
  • 競売
    競売は、裁判所が関与して強制的に売却が行われるという方法です。裁判所が仲介役となり、入札という形で買い手が決められます。

住宅ローンの返済のため住宅を売らなければならないというケースは、上記のどちらかの方法で家をお金に変えます。ただ、多くの場合、競売にかけられることになります。これは、任意売却の場合、買い手が見つかるまでに時間がかかってしまうため、お金の回収が遅くなってしまう可能性があるからです。競売は、裁判所などが関わるものの、手続き自体にかかる時間は短縮することができます。

どちらにしても、最終的に自宅を手放さなければならないという結果は同じです。したがって、このような事態に陥ることを避けるためには、出来るだけ早く対策を検討する必要があります。

住宅ローンの支払いが難しいと感じた時の対策

ここまでの解説で住宅ローンが支払えなくなった時に起こることが分かっていただけたと思います。住宅ローンの支払いが滞ってしまった時には、最終的にマイホームを手放さなくてはならなくなります。

また、住宅ローンの滞納は、時間が経過するにつれて状況が悪化してしまいます。「そうは言っても、払えないのだから仕方ないのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし、初期段階で適切な対応を行うことで、最悪の事態を回避することができるかもしれません。銀行などから督促の連絡がきたときには、「電話に出たくない…」と思うものですが、問題を早期に解決するには、迅速な対処が不可欠です。

ここでは、住宅ローンの支払いが難しいと感じた時の対応についてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

金融機関に相談する

住宅ローンの滞納に関しては、ある日突然支払えなくなるのではなく、徐々に住宅ローンの支払いを負担に感じ始めるはずです。したがって、滞納がはじまってからどうするかを考えるのではなく、「住宅ローンの返済がきつくなってきたな…」と感じ始めた段階で金融機関に相談することが大切です。

何の連絡もなく滞納を始めるのではなく、返済に困っていることを金融機関に相談することで、金融機関側は債務者が状況を真剣に受け止めていて、返済する意思があると判断してくれます。金融機関には、返済意思がある顧客を支援する法的・社会的義務があるため、「返済意思を示す」ことは非常に重要なポイントになるのです。

そして、滞納がはじまる前に金融機関に相談することで、いくつかの支援策を提示してもらうことができます。例えば、以下のような返済計画の見直しを提案してもらうことが可能かもしれません。

  • 一時的に月々の返済額を減額してもらう
  • 一定期間は、利息だけの支払いにしてもらう
  • 返済期間を延長することで、月々の負担を軽減する

上記のように、一時的な困難を乗り切るための「緊急措置」を提案してもらうことが可能なのです。ただ、これらの方法については、返済期間が伸びることで、支払う利息の総額が増えるといったデメリットもあるため、その辺りは注意しましょう。

借り換えで返済額を減らす

二つ目の方法は、他の銀行の住宅ローンに借り換えることで、月々の返済負担を軽減するという対策です。借り換えによって返済負担を軽減する場合、主に以下の二つの方法があります。

  • 金利タイプの変更
    固定金利で住宅ローンを組んでいる場合、変動金利に切り替えることで、借入金利が大幅に引き下げられる可能性があります。金利が下がれば、毎月の返済額も減少します。
  • 返済期間の延長
    返済期間を延長すれば、月々の返済額を少なくすることができます。ただ、返済総額は増えます。

上記のように、住宅ローンの借り換えを行うことで、月々の返済負担を軽減することも可能です。ただ、借り換えを検討したとしても、既に返済の滞納が起きている場合、個人信用情報に登録されていることから、審査に通らない可能性が高くなります。借り換え先の審査に通らなければ、返済負担を軽減することができませ。

これが、先ほど紹介した、住宅ローンの滞納がはじまる前に動かなければならない理由です。

不動産を売却し住み替えする

住宅ローンの返済を困難に感じ始めた時には、その家を売却して住み替えることも選択肢の一つになります。なお、家の売却に関しては、滞納がはじまる前の段階で行動しなければいけません。

住宅ローンの滞納がはじまっていない状況なら、競売など、不利な売却方法ではなく、一般的な不動産売却の手続きが進められ、住み替え資金を得ることができるかもしれません。なお、住宅ローンが残っている状態で家を売る場合、金融機関との話し合いが必要になるので、以下の手順で売却を進めましょう。

  • STEP1 住宅ローンを組んでいる金融機関に売却の意向を相談する
  • STEP2 不動産の売却について、金融機関の同意を得る
  • STEP3 不動産会社などに相談し、出来るだけ高く家を売却する

住宅ローンを滞納していない状況なら、通常の不動産売却手法が採用できるため、良い条件で家を売ることも可能です。これにより、現在の住宅ローンを完済し、より支払い負担が少ない住居へ住み替えすることができるでしょう。

なお、家の売却額でローン残高を返しきれない場合でも、滞納していない状況であれば、残りの金額の返済方法についてきちんと相談に乗ってくれます。滞納がはじまってから任意売却するというケースでは、残りのローン残高について一括返済などを求められるケースもあるのですが、通常の不動産売却であれば、いろいろと相談に乗ってもらうことができるのです。

一度手に入れたマイホームについては、絶対に手放したくない…と考えるものですが、経済状況を正しく評価して「返済が難しくなるかも」と感じた場合、滞納がはじまる前に行動することが大切です。そうすると、より良い条件で家を売却することができ、その後のリカバリーも行いやすくなります。

まとめ

今回は、住宅ローンの返済が滞った時に起こる事や、滞納する前に実施したい対策について解説しました。住宅ローンは、30年や35年など、非常に長期にわたる返済期間が設定されるため、完済までの道のりで返済が困難になるケースが珍しくありません。昨今では、物価高の影響を受け、日々の生活だけでいっぱいいっぱいになり、住宅ローンの返済にお金を回すことができず、滞納状態になってしまうという方が多くなっているのです。

ただ、住宅ローンを滞納した場合には、最終的にマイホームが取り上げられてしまうという最悪な事態に発展してしまう恐れがあります。そして、滞納がはじまってから対策を考えたのでは、実行できる手段の幅が狭まってしまうため、状況を改善できない可能性が高くなってしまいのです。

したがって、住宅ローンの支払いについては、支払いが難しいな…と困難に感じ始めた段階で金融機関に相談することが大切と考えてください。

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