
自己破産は、自分の収入や財産で借金などを支払うことができなくなった場合に、裁判所を通じて借金の支払い義務を無くしてもらう手続きとなります。自己破産は、現在抱えている借金をほぼ帳消しにできるという非常に大きなメリットが存在するため、インターネット上では「自己破産はしたもん勝ち!」と言った言説がなされている場合も多いです。しかし、この方法は、財産のほとんどを手放さなければならなくなるというデメリットも存在するので、本当にこの手段を採用して良いものなのかどうかは、慎重に判断しなくてはならないのです。
特に住宅ローンの支払いがまだ残っている持ち家に住んでいる方の場合、自己破産をすることによって「住宅ローンはどうなるのか?」「現在の住まいに住み続けることができるのか?」と言った点に不安を感じる方が多いはずです。日本では、2024年3月から日本銀行が段階的に政策金利を引上げており、住宅ローンの金利が上昇傾向を続けています。今後も金利の上昇傾向は続くと予想されていて、長らく続いたゼロ金利やマイナス金利の政策が解除され、「金利のある世界」へと本格的に転換したと言われているのです。
このような状況の中、住宅ローンの支払いを負担に感じ、持ち家を手放さなければならないという方が増加していると言われているのです。そこでこの記事では、自己破産となった場合、現在抱えている住宅ローンがどうなるのか、また持ち家に住み続ける方法はないのか、さらに将来的に再度ローンを組むことができるようになるのかなどについて解説します。
自己破産をすると住宅ローンや持ち家はどうなる?
まずは、自己破産を決断した場合の、住宅ローンや持ち家の取り扱いについて解説していきます。
結論からご紹介しますが、自己破産をする場合、原則として住宅ローン返済中の持ち家は「手放す」ことになります。自己破産の場合、持ち家は原則として競売によって処分され、それによる財産が債権者(お金を貸した側)に配当されるという仕組みになっているからです。
住宅ローンの支払いが残っている住宅の場合、土地と建物に対して、お金を貸している金融機関のために「抵当権」というものが設定されています。自己破産をすると、債権者である金融機関は、この抵当権を実行して、家を競売にかける申し立てができるようになるのです。ちなみに、持ち家が担保についていない場合は、裁判所が選任する破産管財人が売却処分を進めることになります。
競売にかけられ、持ち家が落札された場合は、その後、落札者が代金を支払うことで、持ち家の所有権が破産者から落札者に移転することになります。その結果、破産者は持ち家から出ていかざるを得なくなるわけです。ちなみに、自己破産したからと言って、翌日など、即座に家から退去しなくてはならないというわけではありません。自己破産による持ち家の売却手続きは、一定のステップを踏む必要があるため、それなりの時間がかかります。ただし、数カ月から半年程度で売却手続きは完了するため、いずれ退去しなくてはならなくなるのが通常です。
自己破産後の住宅ローンの取り扱いについては、残債の状況やローンの組み方、保証人の有無などによって違いがあるので、以下で大まかなパターンについて解説します。
パターン① オーバーローンの場合
オーバーローンとは、競売によって売れた家の代金よりも住宅ローンの残高が大きい状態のことを指しています。当然、この状態になると、持ち家を競売にかけたとしても、住宅ローンを完済することができないため、「ローンの支払いだけ残るのか?」という点に不安を感じてしまいます。
ただ、自己破産の場合は、売却後のローン残債は免責(支払い義務の免除)されることになります。持ち家を競売にかけても返しきれなかった住宅ローンは、その他の借金と平等に取り扱われることになるため、返しきれなかったとしても残債の支払いは免除されるのです。
パターン② アンダーローンの場合
アンダーローンは、競売の落札者が支払った代金が住宅ローンの残高を上回っている状態のことを指します。要は、住宅ローンを完済しても、ある程度の金額のお金が残るという状態で、この場合「自分たちの生活を再建するためのお金に使える?」と期待してしまうでしょう。
しかし、競売代金が住宅ローンの残高を上回った場合、住宅ローンは完済され、残った競売代金については、破産手続きの中で他の債権者に配当されるという形になります。つまり、アンダーローンの場合でも、破産者が競売代金の残額を貰えるわけではありません。
パターン③ ペアローン・連帯保証人がいる場合
住宅ローンを組む際、夫婦でペアローンを組んでいた、連帯保証人を付けていたという場合は注意が必要です。この場合、債務者本人が自己破産した時には、主たる債務者が支払い不能に陥ったという事実に基づき、ペアローンの相手方や連帯保証人に残債の一括返済の請求が行われることになるのです。
一括返済に応じることができなかった場合、連帯保証人やペアローンの相手方も債務整理を検討しなくてはならなくなります。ペアローンの場合は、夫婦そろって自己破産する結果になる、連帯保証人の場合、関係が致命的に壊れるなど、自己破産の影響が広範囲に及んでしまう可能性があります。このようなケースでは、自己破産に陥る前に対処できるよう、早めに専門家に相談するのがおすすめです。
パターン④ 住宅ローン完済後に破産手続きをする
住宅ローンを完済した後に破産手続きをする場合、持ち家だけは守れると考えるかもしれません。しかし、この場合でも、管財人による売却後、換価したお金は財団に組み入れられ、債権者に配当されるという流れになります。
自己破産は、一般的に20万円以上の価値がある財産を高額資産とみなし、処分対象とします。
自己破産前に検討したいローンの返済方法と持ち家を残す方法
住宅ローンの返済を負担に感じ始めたのであれば、自己破産しなくてはならない…という状況に陥る前に、その他の対処を検討すべきです。住宅ローンの返済が困難になった場合、解決策は自己破産以外にもあるのです。
任意売却によるローンの返済。自己破産との違いについて
ローンの返済を困難に感じ始めた時には、自己破産以外の方法で家を残す事はできないのか、売却するにしても競売よりも有利に売却できないのかを検討すべきです。家を手放さざるを得ないというケースでも、競売を避け、任意売却を選択することで、売却価格や退去時期の面で大きなメリットを得ることも可能なのです。
任意売却は、競売と比較すると、高値で売却できる可能性があるため、住宅ローンの残債の負担を大きく軽減することができるかもしれません。競売は、売却手続きが裁判所の判断にゆだねられるため、売主の希望に沿った条件で売却を目指すことが難しく、結果的に売却価格が下がりやすくなってしまうのです。一般的に、市場価格よりも低い価格で落札されるケースの方が多いとされているため、売主にとっては何のメリットもない取引となるのです。また、退去時期なども自分でコントロールすることが難しくなるため、生活の再建がさらに遅れてしまう可能性が高くなります。
一方、任意売却は、債権者(金融機関)の合意を得ながら一般市場にて売却活動を進めるという方法となります。いわゆる「仲介」と呼ばれる売却方法と同じで、より高値で買ってくれる購入希望者を募ることができるうえ、退去時期に関しても柔軟に調整することができるようになるのです。任意売却で住宅ローンを完済することができれば、自己破産そのものを避けることができるかもしれません。
自己破産した後も住み続ける方法はある?
住宅ローンの返済負担を軽減するための方法としては、本来、自己破産の状況にまで陥る前に、任意売却などの選択を取るのがおすすめです。しかし、大切なマイホームを手放す…という選択は、なかなか決断できるものではなく、あれこれと迷っている間に、自己破産せざるを得ない状況に陥るケースもあるのです。
この場合、どうにかして「今の持ち家を手放さずに住み続ける方法はないのか?」と考える方が多いと思います。このようなケースでは、以下のような方法で、今の持ち家に住み続けられる可能性があります。
- 親族に家を買い取ってもらい、借りる
競売にかけられた家を親族に買い取ってもらい、その親族から借りる形をとれば、自己破産をしたとしても家に住み続けることができます。なお、親族が家を買いとる金額については、不動産市場における実勢価格並みかそれ以上でなければいけません。不当に安い価格とみなされた場合、破産管財人によって否認される可能性があります。また、親族に買い取ってもらう場合には、住宅ローンが完済できるような価格にするか、低い場合は抵当権者である金融機関の承諾が必要となります。オーバーローンの場合は、金融機関との調整が難航する可能性が高いとされています。 - リースバックを利用する
リースバックは、不動産会社に持ち家を売却したうえ、賃貸物件として貸してもらうことで住み続けるという方法となります。親族に家を買い取ってもらった場合であれば、賃料を安く抑えてもらう(無償の場合も)ことも可能だと思いますが、リースバックの場合は、市場相場通りの賃料になるでしょう。ちなみに、この場合でも、持ち家の買取価格は、市場の実勢価格並みかそれ以上でなければいけません。また、抵当権者との関係についても、ローンを完済できる金額での売却、もしくは金融機関の承諾が必要になります。
上記のような方法であれば、持ち家を手放した後も住み続けることができるでしょう。ただ、いずれも場合も価格の相当性が厳しくチェックされます。ちなみに、上記の方法については、自己破産ではなく、任意売却という形でも良いです。
自己破産以外の方法で家を残すには?
家は、生活再建のための拠点となるわけなので、可能な限り残したいと考えるはずです。それでは、自己破産も回避し、さらに任意売却などによって家を手放さなくて済むような方法はあるのでしょうか?
実は、マイホームを何としても手放したくないという場合、個人再生や任意整理と呼ばれる制度を利用すれば、住宅ローンだけを継続的に支払いながら他の借金を調整することができる可能性があるのです。もちろん、どの方法がその人にとって最良なのかは、状況によって変わるため、専門家に相談しながら最適な対処法を検討するようにしましょう。
ここでは、自己破産以外の方法で、持ち家を残せる可能性がある手段をご紹介します。
①住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付き個人再生を利用
個人再生の制度については、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することで、住宅ローンを除いた借金を大幅に減額して、家を残すという方法が用意されています。この制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 居住用の住宅である
- 個人再生を申立てする本人所有の住宅である
- 再生債務者が居住しているか、居住予定の住宅である
- 対象となる住宅に抵当権が設定されている
- 借入れが「住宅ローン」である
- 対象の住宅に住宅ローン以外の抵当権がない
- 税金などの滞納で対象の住宅が差し押さえされていない
- 保証会社による代位弁済から6か月以上経っていない
上記のような条件を満たしている必要がありますが、この制度を利用すれば、家を担保にしたローンの支払いはそのまま支払い続けることで、保有を継続できることになります。そして、他の債務を整理していくことで、生活の再建を目指すことができるわけです。
ちなみに、個人再生は、自己破産と異なり、借金が全額免除になるわけではないので、その点は注意しましょう。
②住宅ローン以外の債務を任意整理する
任意整理とは、債権者との合意によって借金などの負担を軽減できる手続きです。この制度は、整理する対象の借金を選ぶことができるので、住宅ローンを整理対象から外し、ほかの借金についてのみ返済条件を見直すことで、家を残すことができるわけです。裁判所を通さない手続きなので、比較的シンプルに手続きを進めることができます。
任意整理によって、消費者金融やカードローンなどの将来利息のカットや返済期間の延長に関する交渉を行い、返済負担を軽減することで生活の再建を目指します。注意点としては、任意整理の場合、元本の減額は認められないケースが多く、借金の元本そのものは減らないのが一般的です。そのため、根本的な借金問題の解決にはなりません。
一度自己破産すると、その後一生住宅ローンは組めないのか?
自己破産と呼ばれる制度の利用については、「一度自己破産すると、その後一生ローンを組めなくなるのではないか?」という不安を抱えてしまう人が多いです。ローンを組めなくなると、将来的に生活が再建できたとしても、二度と持ち家が買えなくなるのではないか…と考えてしまう訳です。
この点については、自己破産をしたとしても、一定期間が経過すれば、再び住宅ローンを組むことができる可能性はあります。一般的に、5~7年程度経過すれば、住宅ローンの審査にも通過できるようになる可能性があるとされています。
それでは、なぜ自己破産後、一定期間経過すれば再度ローンが組めるようになるのか、またローン審査を通過するためには何に注意すれば良いのでしょうか?ここでは、自己破産後に、再度住宅ローンを組んで家を取得するための知識についても簡単にご紹介します。
信用情報機関の事故情報は5~7年で消える
自己破産を申請した場合、その事実が個人信用情報機関に事故情報として登録されます。これは、いわゆるブラックリスト入りの状態を指します。ブラックリスト入りすると、ローンやクレジットの利用に関して、個人の信用に悪影響を与えるネガティブな情報となるため、登録期間中は住宅ローンの審査などに通過できなくなるのです。
ただ、この事故情報の登録に関しては、一生涯リスト入りしているわけではなく、一定期間が経過すると自動的に削除されるのです。主な個人信用情報機関の登録期間は以下の通りです。
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC):7年
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):5年
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC) :5年
住宅ローンの審査を行う時には、金融機関が個人信用情報機関のデータベースを必ず参照するとされています。そのため、自己破産をした場合には、上記の期間中はブラックリスト入りしているため、審査を通過できなくなるのです。ただ、7年を経過すると、全ての機関から事故情報が削除されるため、住宅ローンの審査に通過できる可能性が出てくるという訳です。
なお、事故情報の登録期間が経過すれば、必ず住宅ローンの審査に通るわけではないので、その点は注意しましょう。住宅ローンの審査は、信用情報に登録されているかどうかだけではなく、安定した収入を証明できるか、頭金がいくらあるのかなどが非常に重要です。
自己破産後に住宅ローンを組むためのポイント
それでは最後に、一度自己破産をした方が、その後住宅ローンを使って家を入手するためのポイントについてもご紹介していきます。ここでは、住宅ローンの審査を通過するためにおさえておくべきポイントを解説するので、長期的な視点で「再度住宅ローンが組めるようにする」という計画を立てていきましょう。
ポイント① 事故情報が消えていることを確認する
個人信用情報機関に事故情報が残っている場合、その時点で住宅ローンの審査を通過することはできません。したがって、一度自己破産を経験したという方の場合、それが認められてから「7年」は最低待たなければならないと考えておきましょう。
なお、自己破産の情報が個人信用情報機関から削除されたかどうかは、それぞれの機関から信用情報の開示を受けることで確認することができます。住宅ローンの審査を受ける前に、信用情報の開示請求を行うと良いです。
ポイント② 頭金をしっかりと用意する
住宅ローンの審査は、借入額を低く抑えることで、通過しやすくなります。また、返済のことを考えても、借入額は少ない方が安心なはずです。
したがって、十分な頭金を確保したうえで、マイホームの入手に動くようにすると良いです。自己破産後、生活を再建できた後は、将来的なマイホームの入手を目指して、しっかりと貯蓄などによって頭金を確保しておくと良いです。
ポイント③ 過去に借り入れ経験のある金融機関を避ける
自己破産手続きの際、債権者であった金融機関については、個人信用情報機関の事故情報がデータから消えていたとしても、自社内のデータとして事故情報の履歴が残っている可能性があります。
これは、いわゆる「社内ブラック」と呼ばれる状態で、この場合は、履歴が残る銀行や系列の保証会社からの借り入れが困難になり、審査落ちする可能性が高いです。
ポイント④ 短期間で複数の金融機関に申し込まない
住宅ローンを一度に複数の金融機関に申し込むと、信用情報機関に申し込み履歴が残ります。この場合、立て続けに信用調査が行われることになり、「他社の審査で落ちたから申し込んできた!」と判断される可能性があるのです。この際には、申し込みブラックと呼ばれる状況に陥って、審査に通過できなくなる可能性があるのです。
短期間に複数の金融機関に対して、立て続けに審査を申し込むという行為は、全ての審査に落ちやすくなる可能性があるため、タイミングをずらしながら申し込みをしていきましょう。可能であれば、時間的余裕をもって、事前審査の感触などをしっかりと確かめながら、慎重に審査の申し込みを行うようにすると良いです。
ポイント⑤ 自身の信用を高める
住宅ローンの審査を通過するためには、自身の信用を高めることが非常に重要です。事故情報が削除されていたとしても、ローン審査を申し込む際、定職についていない、収入が低い、頭金を用意できないというような状況になってしまうと、審査を通過することはできません。一般的に、住宅ローンの審査では、以下のような点が重視されます。
- 審査申請時点の収入
- 安定した収入があることを証明する(同じ仕事を続けている期間など)
- クレジットヒストリー(過去のローンやクレジットの取引履歴)
住宅ローンの審査を実施する金融機関は、「きちんと返済できる人なのか?」を確認したいと思っています。例えば、短期間で転職を繰り返しているという方の場合、「収入が安定しないのでは?」と言った不安を持たれてしまいます。また、収入が低ければ、返済が滞る可能性が高くなるため、申請者側は副業などで収入を増やすことも検討する必要があるでしょう。この他、クレジットカードの支払履歴について、きちんと遅れずに支払っているという状況は、「きちんとお金を返す人だ」と、金融機関からの信用を高めることができます。過去にクレジットカードなどを一度も利用したことがないなど、信用情報が真っ白な状態(スーパーホワイト)は、逆効果に働く可能性があるので、携帯電話の端末代金の分割払いや少額のクレジットカード利用などを通じて、クリーンなクレジットヒストリーを構築しておくことも大切です。
まとめ
今回は、ローンの返済付帯が限界を超え、自己破産することになった際の住宅ローンや持ち家の取り扱いについて解説しました。
自己破産を進める場合、悩みの種となっている住宅ローンなどの借入金については全てチャラにしてもらうことができます。ただ、自己破産を進める際には、所有している高額資産を手放さなければならないため、現在の住まいである持ち家に住めなくなる可能性があるのです。
記事内では、持ち家を残した状態で借入金をどうにかする方法も紹介していますが、利用にはいろいろな条件を満たす必要があるため、なかなかハードルが高いです。また、事故破産は、その後の生活の再建もかなり難しくなるため、可能であれば「自己破産に陥る前に対処する」ということを心がけましょう。持ち家は手放すことになりますが、任意売却であれば、高値で買い手を見つけることができるかもしれませんし、そうすることで負担となっている借入を解消できる可能性があるのです。
近年では、住宅ローンの金利上昇が指摘されるようになっていて、変動金利を選んでいた方の中には、毎月の返済が大きな負担になっているかもしれません。家族の生活を大きく圧迫するような状況にまで陥っているのであれば、信頼できる専門家に早めに相談するのがおすすめです。生活が再建できれば、改めてマイホームの入手に動けば良いだけなので、なるべく自己破産の状態にまでは追い込まれないようにしましょう。
