昨今の新築業界では、高気密・高断熱住宅が標準仕様になりつつあることから、住空間を快適にしてくれる空調に関して「全館空調」を選ぶご家庭が増えていると言われています。全館空調と聞くと、大型のテナントビルや商業施設で取り入れられる空調方式と考えられがちですが、一般住宅用の設備としても開発されており、家の中の空気を綺麗に保つことができる、冬場のヒートショックを防止できるなどの面をメリットとして、導入を検討する方が多いのです。

しかし、原則として24時間365日稼働させておく必要がある全館空調は、エアコンなどと比較すると電気代が高くなるのではないか…という印象を持つ人が多く、ネット上では「全館空調はやめたほうがいい」という意見を散見するようになっています。特にここ数年は、電気代を始めとしたエネルギー価格の高騰が社会問題化していることもあり、常に稼働させる必要がある全館空調は、コスト的なデメリットが大きいと考える人が多いのだと思います。

それでは、家の空調方式として全館空調を導入した場合、エアコンなどと比較すると電気代は本当に高くなるのでしょうか?また「全館空調はやめたほうがいい」という方は何をもってこの設備に否定的なのでしょうか?この記事では、全館空調の導入に迷っている方に向け、後悔しないためにおさえておきたいポイントをご紹介します。

全館空調とは?

全館空調は、家全体の空気を循環させる空調システムのことで、これにより家中の空気を綺麗にたもちつつ、そこに住む人が過ごしやすいと感じる一定の温度に調整することがで出来るようになっています。

一般的な住宅の場合、リビングや寝室など、各部屋に冷暖房機器を設置して室温の調整を行うのですが、全館空調の場合は、メインとなる空調機1~2台を使って家全体の温度を調整します。戸建て住宅の場合、基本的には、玄関やトイレ、洗面所、廊下などには空調設備がついていない住宅がほとんどで、各空間ごとに温度差が生じてしまいます。全館空調の場合は、各居室はもちろんのこと、トイレや廊下など、家全体の空調を担っていることから、どの場所でも快適な温度に管理されているという点が特徴となります。

なお、全館空調システムの空調の仕組みにも、いくつかの種類が存在していて、メーカーによって以下の4種類の方法で、温度管理などを行うような仕組みになっています。

  • 吹き出し型全館空調
    天井裏などに空調機を設置し、ダクトを通して各部屋に送風し、天井に設置された吹き出し口から風を送ります
  • 床下冷暖房型全館空調
    廊下の基礎部分を断熱し、冷暖気を蓄熱します。そして床ガラリと天井吹き出し口から送風します
  • 壁パネル輻射型全館空調
    壁に大型の冷暖房パネルを設置し、パネルからの輻射熱により家の中の空気を調整します
  • 壁掛けエアコン応用型全館空調
    1台の壁掛けエアコンを設置し、ダクトを通して各部屋にエアコンの空気を送風します

全館空調の電気代は高いのか?

全館空調については、エアコンを利用する場合と比較すると、電気代が高くなってしまう…というイメージを持っている方が多いです。これは、エアコンの場合であれば、必要な時だけに稼働させることができるうえ、春や秋などエアコンが不要な時期はコンセントを抜いて待機電力まで節約することができるため、全館空調よりもお金がかからないと考えられているのだと思います。先ほど紹介したように、全館空調は、原則として24時間365日稼動させる事が前提ですし、室温調整をしなければならない面積もエアコンよりも広くなる点から、電気代が高くなると考えるのだと思います。

ただ、エアコンの電気代と全館空調の電気代を比較した場合、一概に全館空調の方が高くなるとは言えないという情報も存在します。以下に、FINANCIAL FIELD編集部が紹介したエアコンと全館空調の電気代を比較した記事の内容を引用してみます。

全館空調の年間の電気代は、40坪4人家族の家庭で約10万円、50坪4人家族の家庭で約13万円です。
(中略)
あるエアコンの年間の期間消費電力量は1022キロワットアワーとされており、ある電力会社の1キロワットアワーの電力量料金は30円とされています。このことからエアコンの年間の電気代は、1022キロワットアワー×30円=3万660円になります。
ただし、これはエアコン1台の計算となり、戸建ての場合それぞれの部屋で計4台のエアコンを稼働させると、年間で3万660円×4=12万2640円の電気代が必要です。
引用:インフォシークニュースより

上記のように、エアコンを4台以上設置する場合は、全館空調の方が年間の空調コストを抑えられるというデータもあるのです。もちろん、エアコンの温度設定や使用方法などは、各ご家庭によって変わるため、絶対に全館空調の方が安くつくとは言えません。ただ、一般的な広さの住宅で普通にエアコンを使うのと比較しても、全館空調の方が圧倒的に電気代が高くなるなんてことはないと考えて良いでしょう。

なお、全館空調を導入している方の中には、電気代の節約のため、小まめに電源を切るというような使い方をする人がいます。しかし、冷暖房機器は運転起動時に最も電力を消費する設備なので、この使い方は余計に電気代が高くなる可能性があるのでやめておきましょう。また、全館空調は、稼働していない間、ダクト内に結露やカビが発生しやすくなるので、故障リスクが高くなってしまいます。全館空調は、設備の規模が大きいため、修理には数十万円以上かかってしまうことがあるので、電気代節約どころの話ではなくなってしまう可能性があります。

全館空調はやめたほうがいいと言われる理由

冒頭でご紹介したように、全館空調は、エアコンを利用するのと比較すると、空調コストが高いというイメージから「やめたほうがいい」と言われるのだと考えている方が多いですよね。しかし実際には、エアコンを4台設置したお宅の空調コストと比較すると、安く抑えられる可能性が高いとされているのです。

こう聞くと、家中の空気を綺麗に快適に保ってくれるわけだし、全館空調の方が優れているのでは…と感じてしまいますよね。しかし、「全館空調はやめたほうがいい」と言われる理由は、他にもたくさんあるのです。ここでは、全館空調に対するネガティブな意見をまとめてみます。

①故障した場合、家全体の冷暖房ができなくなる

全館空調は、一つの大きな空調設備という扱いです。この設備一つで、家中の空調を管理できることがメリットなのですが、万一故障が発生した時には、家全体の冷暖房ができなくなるという大きな落とし穴も存在します。ルームエアコンの場合、1台が故障しても他のエアコンに影響を与えることなどありませんし、真夏や真冬などに故障したとしても、他の空調が効く部屋に避難するという対処が可能です。一方、全館空調の場合、家全体の空調ができなくなるわけなので、避難する場所もなく、修理が完了するまでは過酷な環境での生活を強いられてしまいます。ちなみに、全館空調は、換気システムと連動しているため、システムが故障した際には、空調だけでなく換気機能も働かなくなります。

全館空調が故障した際には、すぐに買い替えが可能なエアコンと比較すると、空調の復帰までに時間がかかってしまいがちです。したがって、全館空調を取り入れる際は、万一の故障も想定し、修理が短期間で完了する製品を選ぶ、スポット的に利用できる冷暖房器具を備えておくという対策も考えておきましょう。

②各部屋、各人で温度調整ができない

全館空調は、一つの設備を使って家中の温度を均一に調節できる点が大きな特徴です。しかし、温度の感じ方は人それぞれで、同じ温度環境にいても「ちょうどいい」と感じる人と「寒い(暑い)…」と感じる人に分かれてしまう可能性があるのです。エアコンの場合、各々が快適に感じる室温に調整すれば良いのですが、全館空調の場合は、各部屋ごとに温度を調整するといったことができず、家族内で温度に関する意見が分かれてしまうことに面倒さを感じ、全館空調はやめれば良かった…と後悔する人がいるのです。

全館空調は、家中を「均一の温度」に保つための設備なので、家族の中に「暑がりの人」もしくは「寒がりの人」がいる場合、その人に限り補助的な冷暖房器具を使用するといった工夫を検討しましょう。

導入コストが高い

全館空調は、一つの設備として考えた時には、確かにさまざまな住宅設備と比較しても高額な部類に入ると思います。

ただ、エアコンなど、他の空調設備と比較した時、絶対に全館空調の導入コストが高いかというとそうでもありません。戸建て住宅の場合、エアコンは複数台導入しなければならないので、台数によっては設置工事費を含めると100万円を優に超えるコストになる…なんてケースは珍しくないですよね。また、暖房器具として床暖房を設置する際には、エアコンと床暖房のセットで全館空調以上のコストがかかってしまう場合もあります。つまり、空調設備にかけるコストについては、どれを選んだとしても多額のコストがかかるため、何を選んでも「他の設備の方が安くついたのでは…」という後悔を感じる可能性があります。

とはいえ、全館空調の導入コストは、決して安くはないので、上で紹介したような使い勝手の悪さを感じた時には「コストパフォーマンスが悪い」とやめたほうがいいという意見になる方も多いのだと思います。

電気代が高い

全館空調はやめたほうがいいと考えている方の多くは、各部屋の空調として個別のエアコンを使った方が電気代を抑えられるからというイメージを持っています。

この点については、先ほど詳しくご紹介しているので、そちらを確認してください。簡単に言うと、エアコンの使い方によって変わりますが、4台以上のエアコンを稼働させる場合と比較すると、全館空調の方が電気代を抑えられるというデータも存在します。つまり、「全館空調は電気代が高い」というイメージで躊躇しているのであれば、個別エアコンなら何台設置するのかを検討し、ランニングコストを予想すると良いでしょう。

お子様が3人以上いて、リビングなども含めると5台以上のエアコンが必要…なんて場合、全館空調の方がオススメかもしれません。

空気が乾燥する

全館空調は、冷暖房設備から出る風を常に循環させることで、家中の温度を均一に保ちます。特に冬場に関しては、設定温度よりも暖められた空気が常に吹き出されるようになるため、エアコンと比較しても、空気が乾燥しやすいとされています。

冬場の室内の乾燥は、誰でも好ましくないと考えますし、全館空調はやめたほうがいいと言われる理由の一つとなっています。なお、全館空調設備の中には加湿機能付きのものもありますし、家族が長く滞在する部屋は加湿器を併用するなど、対策自体はそこまで難しくありません。

ダクトの掃除ができないから空気が汚れる

全館空調は、家の中の各空間をダクトでつなぐことで、適温の空気を効率的に循環させ、温度を一定に保つことができるようになっています。ただ、全館空調のダクトの中は、日常生活の中で小まめに掃除することができないため、「その中を通る空気は汚れている」と考え、全館空調はやめたほうがいいという意見になる人もいるのです。

なお、ダクト内を通る空気については、フィルターを通して取り入れられているので、健康被害を引き起こすほどひどく汚れてしまう可能性は低いです。しかし、築年数が経過していけば、長年の汚れ(ホコリなど)が蓄積していってしまうのは間違いないので、お手入れをきちんとしていなければ、家の中の空気が汚れてしまう可能性はあります。
したがって、全館空調を取り入れる際は、定期的な点検とメンテナンスも請け負ってくれるような、アフターフォローがしっかりした住宅会社を選ぶのが安心です。

修理やメンテナンスにコストがかかってしまうから

全館空調は、機器そのものが大型のため、修理や交換などのメンテナンスに費用がかかりやすいです。もちろん、一般的なエアコンに関しても、修理やメンテナンスに費用は掛かりますが、家中のエアコンが一度に全て壊れる…なんてことは考えにくく、故障時の修理費に関しては分散させることができます。

全館空調の場合、一つの設備が家中の空調を担う訳ですので、修理や交換などの対応が必要になった時には、コストが一度にまとめてかかってしまいます。そのため、エアコンのメンテナンスコストと比較すると「高すぎる…」と感じやすく、やめたほうがいいという意見になってしまうのだと思います。ちなみに、エアコンのメンテナンスにかかるコストについても、総額で考えると、全館空調よりも圧倒的に安くなるわけではありません。

全館空調のメンテナンスコストについては、イメージしにくいと思いますので、新築時にしっかりと確認しておきましょう。

気密性や断熱性の低い家だと余計なコストがかかるから

全館空調は、高気密・高断熱とセットで考えなければいけません。住宅の建築コストを抑えるため、この部分の性能を低くしてしまうと、空調にかかるコストが高くなってしまいます。

気密性・断熱性が低い住宅の場合、全館空調で調節した冷気や暖気が屋外に逃げてしまいやすくなるため、室温を一定に保つために余計な電力を消費してしまうことになります。昨今では、高気密・高断熱住宅が選ばれるようになっていますが、そこまで高い性能を実現していない家に全館空調を導入し、空調コストの高さに後悔する方も一定数います。

なお、既存の住宅に全館空調を導入する際には、併せて高気密・高断熱リフォームが必要です。

そもそも全館空調を導入するメリットは何なの?

ここまでの解説で、ネット上で「全館空調はやめたほうがいい」と言われている理由がある程度分かっていただけたと思います。空調設備と考えた時には、個人個人が自分が快適と感じる温度帯に調整することができない…という点を嫌う人が多いです。コスト面に関しては、各部屋にエアコンを設置するのと比較したとしても、そこまで大きな差は生じないので、致命的な問題とまでは考えなくて良いと思います。

昨今の新築業界では、家の気密性や断熱性が飛躍的に向上していることから、全館空調システムが推奨できる場合も多くなっています。そもそも、全館空調システムには、以下のように、他の空調機器にはないメリットもたくさんあるのです。

家全体を快適な温度に保てる

全館空調の最大のメリットは、特定の部屋だけでなく、家中を快適な温度に保つことができるようになる点です。家の中なら、どこにいても快適な温度帯で保たれていることから、日常生活の中で温度によるストレスを感じなくてすみます。

冷暖房機器としてエアコンを利用する場合、リビングや寝室など、エアコンが設置されている部屋のみが快適になります。トイレや洗面所など、空調機器が設置されていない部屋は、「寒くて凍える…」「お風呂に入ったのにすぐに汗をかく…」など、不快感を持ってしまうことになるでしょう。

全館空調は、住まい全体を常に快適な温度に保ってくれる点は非常に大きなメリットになります。

ヒートショックなど、温度が原因となる健康被害を防げる

高齢者が同居するご家庭の場合、全館空調は温度が原因となる事故を防止できるという点が非常に大きなメリットになります。

昨今では、冬場のヒートショックによる死亡事故が社会問題化しています。ヒートショックは、脱衣所と浴室の温度差により発症するとされているのですが、全館空調を導入していれば、廊下や脱衣所など、家中が一定の温度で保たれることになるため、温度差による体の負担を軽減することができるようになるのです。

さらに、年々猛暑化が進んでいると言われる夏場に関しても、高齢者の家の中での熱中症を防止することができるようになります。全館空調は、居住空間の快適性を高めるだけでなく、そこに住む人の健康にも好影響を与えてくれます。

内装のデザイン性を高められる

全館空調は、メインとなる空調機が表に剥き出しにされるのではなく、収納の中や天井裏、床下などに設置されるケースがほとんどとなります。空調機器として、目に見えるのは、天井などに設けられる吹き出し口ぐらいなので、大きな設備の割にスッキリとして目立たないという点がメリットです。

エアコンを利用する場合には、壁にエアコンを設置するためのスペースを確保しなければいけませんし、専用のコンセントも必要になります。全館空調の場合は、エアコンをつける場所にインテリアやアクセントウォールを採用することができ、内装のコーディネートの幅も広げることができるのです。

新築時は、外観デザインだけでなく、内装デザインにもこだわりたいという方が多いのですが、全館空調の場合は、デザインの自由度がかなり高くなるのでおすすめです。

開放的な広い空間を作れる

全館空調は、間取りの自由度も高くなる点がメリットです。エアコンの場合、各部屋を局所的に暖めるor冷やす空調機器のため、大きな空間に採用することは難しく、ある程度の間隔で間仕切りをしなければいけません。

一方、全館空調の場合は、効率的に空気を循環させることで、より効果を実感できるシステムとなっていて、以下のような空間のつながりがある間取りの方が、より温度差のない住空間を作り出せるのです。

  • 1階と2階が繋がる吹き抜け空間
  • ドアや壁がない大空間
  • 廊下を設けず、各空間が繋がる間取り

空調機器としてエアコンを利用すると、吹き抜けなどの大空間の温度調節が難しくなるという話は耳にしたことがあるはずです。例えば、暖かい空気は上にいくという特性があるため、吹き抜けリビングなどの間取りを導入すると、人がいる1階部分が寒くなってしまう…などという問題が生じるのです。
全館空調の場合は、家中の空気を循環させることで、温度を一定に保つシステムなので、空間が繋がっている方が効率的に稼動できるのです。

空調コストを抑えられる場合もある

上でも少し触れていますが、全館空調は「光熱費がかかる…」というイメージが持たれているものの、実際には空調コストを抑えることができるご家庭もあるのです。

そもそも、全館空調は、24時間ずっと省エネ運転を続けているという仕組みで、急激に冷暖房するエアコンなどと比較すると、電気の消費量は少なくて済むと考えられます。さらに、エアコンを設置する台数は、各ご家庭ごとに異なり、中には一軒の住宅で5台や6台ものエアコンを設置するケースもあるのです。

そして、エアコンと全館空調を比較した場合、5台以上のエアコンを設置する場合は、全館空調の方が安くつくと言われています。つまり、同居する家族の人数が多いご家庭の場合は、全館空調を導入することで、空調コストを抑えられるというメリットが得られるわけです。

全館空調に後悔しないためのポイント

それでは最後に、家の空調方式として全館空調の導入を検討している方が、後悔しないためにおさえておきたいポイントをご紹介します。

ここまでの解説で分かるように、全館空調は誰にとってもおすすめできる設備というわけではないので、以下の点をしっかりと認識したうえで、自分たちの生活に合う設備なのかどうかを検討しましょう。

コスト面についてしっかりと比較する

全館空調は、イニシャルコスト、ランニングコスト、メンテナンスコストなど、すべてのコストを考慮したうえで、エアコンなどと比較検討すべきです。

先ほど紹介したように、一般的に「空調方式の中でお金が最もかかる」と考えられがちな全館空調ですが、エアコンの導入台数によっては、イニシャルコスト、ランニングコスト両面が安く抑えられる可能性もあるのです。ただ、メンテナンスコストについては、全館空調の方が手間もコストもかかると思いますので、住宅会社がどこまでアフターフォローや保証を付けてくれるのかを確認しておく必要があります。

全館空調の場合、故障した場合、修理までにかなりの時間を要す…なんてことがあり、その間は空調なしでの生活を強いられてしまう可能性がある点も注意です。

高気密・高断熱な住宅を建てる

全館空調は、高気密・高断熱とセットで考えなければいけません。家の建築コストを削減したい場合でも、全館空調を設置するなら、断熱対策や気密対策に手を抜くことはできないのです。

家の断熱性や気密性に問題がある場合、空調機器を使って温めたり冷やしたりしても、暖気や冷気が外に逃げて行ってしまいます。そのため、機器は常にフル稼働しなくてはならなくなり、余計な光熱費がかかってしまうことになるのです。新築時に、一時的にコスト削減が実現しても、日々の生活にかかる光熱費が常に高くなるのであれば、中長期的に見ると、損になってしまうでしょう。

熱交換型第一種換気システムを採用する

全館空調は、換気と空調がセットになって設計されます。そのため、空調にかかるコストのことを考えると、換気設備の質も非常に重要な要素となるのです。

現在の住宅は、24時間換気システムの設置が義務付けられているのですが、全館空調を導入する場合は、最も効率的な「熱交換型第一種換気システム」と全館空調を組み合わせると良いです。

熱交換型第一種換気システムは、換気の際、屋外に出る前の排気の熱を吸収し、屋外からの給気に熱を再利用するという方式になっているため、より温度差のない住空間を作りやすくなるのです。また、換気の部分で熱の再利用が可能となるため、冬場などでも、外から入ってくる冷たい空気を温め直す必要がなくなり、空調にかかるコストを削減できます。

メンテナンスについて確認する

全館空調のメンテナンスは、最も一般的な空調機器といえるエアコンとは大きく異なります。

エアコンの場合、フィルターのお掃除は住人が小まめに行い、年に1~2回程度、専門業者にクリーニングをお願いするという方法が一般的です。しかし、全館空調の場合、換気設備のフィルター清掃や住宅会社による定期的な点検が必要になるケースがほとんどなのです。

当然、メンテナンスの際は立会いが必要になるため、時間や手間が意外にとられてしまうことになります。自らが作業を行う必要がない点では楽かもしれませんが、住宅会社などが行うメンテナンスをしっかりと受けなければいけないという点は注意が必要です。面倒に感じ、メンテナンスをすっぽかしてしまうと、ダクト内にカビなどが発生し、住宅内の空気環境の悪化を招く恐れがあります。

まとめ

今回は、住宅の高気密、高断熱化が進むなか、エアコン以外の空調方式として人気になっている全館空調システムについて解説しました。

全館空調についてインターネットで検索してみると「全館空調はやめたほうがいい」といったように、ネガティブな意見を見かける機会が多いです。そのため、実際に家を建てようと思った時には、全館空調の導入に躊躇してしまう人も少なくないのです。ただ、記事内でご紹介したように、全館空調システムは、他の空調方式にはない非常に大きなメリットがあるのも事実なので、自分たち家族の暮らしとマッチすると思えば、採用を検討すべきといえるでしょう。例えば、祖父母世帯も一緒に暮らす3世代住宅などの場合、家の中の温度を一定に保つ全館空調は、ヒートショックや熱中症の対策として非常に有効に働いてくれます。

もちろん、家の空調方式として、全館空調が全員におすすめできるとは言いませんが、ネットなどで揶揄されるような悪い設備では決してないので、導入による効果などをしっかりと確認してみると良いでしょう。

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