新築注文住宅を建てる際、意外に見落とされがちなのですが、日常生活の中で利用頻度の高い設備としてインターホンがあります。インターホンは、来客や宅配便の到着を知らせてくれる設備で、これがあるとないでは、普段の生活の利便性が大きく変わってしまいます。また、カメラ付きインターホンであれば、玄関を開けずに誰が来たのかを確認することができ、不審者やセールスが家の中に入ってくることを未然に防ぐことができるという防犯面でも非常に有効なアイテムになります。

新築時には、必ず設置されることになるインターホンですが、設置する位置や高さによって使いにくさを感じたり、防犯上のリスクが高まってしまうことがある点に注意しなければいけません。インターホンの設置場所については、特に気にすることなく、業者さんに丸投げする方が多いのですが、家の中での過ごし方は人それぞれですし、きちんと応対のしやすさや防犯性などを考慮して設置する位置を決めなければいけません。

そこでこの記事では、ほとんどの住宅に設置されるようになったインターホンについて、適切な場所に設置できるようにするため、正しい位置や高さの考え方についてご紹介します。

屋外に設置するインターホンの位置と高さについて

インターホンは、来客や宅配があったことを知らせるための設備なので、屋外と屋内、それぞれに機械を設置します。屋外側には、ボタンが取り付けられていて、それを押すことで屋内にいる住人が気付けるよう音が鳴るという仕組みになっています。

それでは、来客者の利用が主となる屋外側のインターホンは、どの位置に設置するのが正しいのでしょうか?これについては、「インターホンが分かる位置ならどこでも良いのでは?」と考えてしまう人が多いと思います。しかし、インターホンを設置する位置によって、防犯上のリスクが大きく変わってくるので、設置する位置や高さについては慎重に検討しなければならないと考えてください。一般的には、以下に紹介する部分の中から利便性と防犯性を考慮しながら決めることになります。

  • 門扉や門柱(外構設備として門扉を設置しているお宅の場合)
  • 玄関ポーチ前の門袖
  • 玄関ドア付近

インターホンの設置場所については、住宅・外構の造りによって設置可能な位置が変わります。例えば、都市部の住宅などの場合、敷地面積の都合上、門扉などの外構設備を設置できないケースがあります。この場合、門扉や門柱がないため、門袖や玄関付近にしか設置することはできません。その逆に、庭付き一戸建てで、門扉などを設置している住宅は、上記の3パターンの中から設置場所を選ぶことになります。

ここでは、それぞれの設置位置について、そこにインターホンを設置する場合のメリットとデメリットをご紹介します。

門扉や門柱にインターホンを設置する

一つ目は、門扉や門柱に設置するという方法です。この設置位置は、当然、門扉を設置できるだけの敷地の広さを確保できているという条件が付きます。

門扉や門柱にインターホンを設置するという場合、来訪者が敷地内に入ることはなく、玄関ドアとの距離がある程度確保できてるため、防犯上は最も安心できる設置位置と言えます。特に、飛び込み営業のセールスマンなど、部外者が勝手に敷地内に入る口実を与えることが無くなるため、見ず知らずの人が玄関に近づくことができなくなるので、プライバシーなども確保しやすくなります。

門扉などにインターホンを設置する場合、住居からある程度の距離にまでしか近づくことができなくなるため、室内側の生活音なども聞こえにくくなります。そのため、モニターで来訪者を確認した時、セールスや不安を感じるような人物だった時には、バレずに居留守を使うことができるようになる点もメリットになるでしょう。

デメリット面としては、宅配便の応対の場合、利便性が下がる可能性がある点です。門扉や門柱にインターホンを設置すると、玄関からの距離分、荷物の受け取りのために移動しなければいけません。重量のある荷物の場合、門扉を開けて玄関まで運んでもらえば良いのですが、どちらにせよ移動が発生してしまいます。雨などの悪天候時には、わざわざ傘をさして出迎えなければならないなど、意外に不便に感じてしまう機会があるかもしれません。

ちなみに、インターホンを門柱に設置して、日中は門扉を開放しておけば、モニターで来客を確認したうえで「玄関までどうぞ」と声をかければ、移動を無くすことができ、負担が軽減できます。もちろん、この場合、日中の防犯性は低くなるので、一長一短ではあります。

玄関ポーチ前に門袖を設置してインターホンを取り付ける

都市部などでは、狭小地に3階建て住宅を建てるケースが増えていて、敷地面積をギリギリまで建物に利用するというケースが多くなっています。この場合、お庭などを用意することはできませんし、門扉や門柱がないため、インターホンは玄関付近に設置しなければならないのかなと考える人が多くなります。インターホンの設置位置として玄関付近を選ぶことにもメリットはあるのですが、プライバシーや防犯面から「なんか嫌だな…」と考える人も多いです。

この場合、玄関前などに「門袖(もんそで)」と呼ばれる外構設備を設置して、そこにインターホンを取り付けるという方法がおすすめです。門袖は、省スペースで設置することができますし、さまざまなデザイン性のものが販売されていることから、住宅全体の外観イメージを向上させることができるというメリットも得られます。
さらに、門袖を設置してそこにインターホンを取り付けるという方法の場合、玄関に取り付けるケースのデメリットを解消することができるのです。門袖の設置位置は、敷地内にはなるものの、玄関ポーチからは下りた位置となるため、玄関からある程度の距離をとることができます。そのため、屋内の生活音なども聞こえにくくなりますし、不安に感じるような来訪者の場合は気付かれずに居留守を使うといったことも出来るようになります。また、宅配便の応対については、重たい荷物も玄関内にまで運び入れてもらいやすくなるというメリットもあります。つまり、門袖へのインターホンの設置は、玄関・門扉へのインターホンの設置にあるデメリットを解消できるわけです。

ただし、門袖へのインターホンの設置は、インターホンの存在に気付いてもらえない恐れがある点がデメリットです。ポストや宅配ボックスと併用の門袖など、その存在が目立つようなタイプを設置すれば、インターホンの存在に気付いてもらいやすくなりますが、この場合、門袖自体が存在感を持つため、住宅全体の外観イメージを壊してしまう可能性が生じます。
門袖のインターホンに気付いてもらえない場合、玄関ドアをノックすることで来訪が伝えられることになり、来訪者を確認できずに応対しなくてはならなくなる可能性があります。悪質なセールスの場合、わざと「インターホンに気付かなかった…」などと、玄関ノックの口実にされてしまう可能性が生じるので、門袖にインターホンを設置する場合は、きちんと気付いてもらえるような対策が必要です。

玄関ドア周辺にインターホンを取り付ける

3つ目の設置位置は、玄関周辺にインターホンを設置するという方法です。玄関付近へのインターホンの設置は、来客者にとって最も利便性が高い位置と言えるでしょう。

玄関ドアの横などにインターホンを設置した場合、庇のある玄関ポーチ部分でインターホンを押し、返答を待つことができるようになります。したがって、悪天候時でも、雨風をしのげる状態で待っておくことができるのです。なお、住人側にとっても、インターホンに雨風が当たりにくくなるので、機器が長持ちする可能性が高くなるというメリットが得られます。もともと屋外に設置することを想定した機械なので、雨にさらされたぐらいですぐに故障するような心配はありません。しかし、昨今では、夏場のゲリラ豪雨など、非常に強烈な雨が降る場合があるため、門扉や門袖にインターホンを設置した場合、玄関付近に設置するよりも早く壊れる可能性があります。
この他、荷物の配達などに関しては、玄関部分まで来ているため、受け取りが楽になる点もメリットと言えるでしょう。

デメリットとしては、やはり防犯面、プライバシー面に不安が残ってしまう点です。玄関にインターホンがある場合、見知らぬ人が敷地内に侵入することは当然な状況となります。近所の方は、玄関に人がいても不思議に感じることがなくなるため、空き巣などの不審者が玄関部分にいるのを見かけたとしても、近所の人が「来客者だ」と怪しむ可能性は限りなく低くなります。
さらに、来客者は玄関ドア直前まで来ているため、悪質な訪問販売などの場合、ドア部分に足を挟んで無理矢理勧誘してくるといった被害を受ける可能性があります。また、万一強盗だった場合には、侵入を防ぐことは困難になるでしょう。

玄関ドア付近にインターホンを設置する場合は、必ず室内側のモニターで来客者が誰なのかを確認したうえで応対するようにしましょう。可能であれば、後ろに不審者が隠れていないかまで確認できるような、広範囲を映せるカメラが搭載されたモデルが望ましいです。

インターホンを設置する高さについて

屋外に設置するインターホンについては、利便性のことを考えると位置だけでなく高さにも注目する必要があります。一般的に、屋外に設置するインターホンの高さは、110~130cm程度が良いとされています。ただ、バリアフリーを意識する場合は、90~120cm程度が良いとされているため、高齢者などの来客が多い場合は、少し低めに設定するのが良いかもしれません。

屋外に設置するインターホンは、「誰が来たか?」「どんな人か?」を室内のモニターで確認できるようにすることが大切なので、高さに注目する必要があります。例えば、インターホンを玄関付近に設置する場合、インターホンの前に階段や段差がある可能性があります。この場合、来客者はインターホンを押した後、少し離れた位置で待つ可能性があるため、カメラに映らない位置となり、モニターで誰が来たのかを判断できなくなる可能性があるのです。インターホンのカメラは、全角度を移せるわけではないため、来客者が応答を待つ時の場所を想定し、死角が生じないように設置する位置や高さを検討することも大切です。

どうしても来客者の立ち位置が予想できない…という場合は、広角カメラが搭載されたモデルを設置すると良いでしょう。一般的なインターホンのカメラは、50cmの距離にいる場合「縦65㎝×横95㎝」程度の範囲が映るとされています。一方、高角カメラの場合は「縦200㎝×横400㎝」程度と、かなり広い範囲を映せるようになるのです。

屋内のインターホンの位置と高さについて

それでは次に、屋内側に設置するインターホンの位置についてです。カメラ付きインターホンは、室内モニターを使って来客者の確認や応対ができるようになるため、利便性だけでなくて防犯上も必要不可欠な設備という扱いを受けるようになっています。

それでは、日常生活の中でも利用頻度が高くなると想定されるインターホンは、どこに設置するのが正解なのでしょうか?ここでは、主な設置位置と、新たなインターホンの形などについて解説します。

基本的には滞在時間が長いリビングが推奨される

インターホンを設置する場所としては、「人が滞在している可能性が高い部屋」が正解と言えるでしょう。来客者がインターホンを押した時には、室内側で「誰が来たのか?」を確認したうえで応対しなければいけません。そのため、普段家族が常駐していない部屋に取り付けた場合、来客の応対をするために移動しなくてはならなくなるのです。

リビングは、家族全員が長時間利用することが想定されています。リビングは、家族がくつろぐためのリラックススペースや家事を行うスペースなどとして利用されるため、ここにインターホンを設置しておけば、部屋を移動することなくスムーズに来客に応対することができるようになります。特に、リビングの中でも、玄関に繋がるリビングドア付近にインターホンを取り付けると、インターホンで応対して、そのままスムーズに玄関に行き出迎えることができるようになるのでおすすめです。

ただ、リビングへのインターホンの設置については、以下のような点が問題になるケースがあるので、その点は注意しましょう。

  • リビングは、にぎやかな場所でもあるため、インターホンからの音声が聞こえにくい
  • リビングでの会話などがインターホン越しに来客者に聞こえてしまう

皆さんも、知り合いの家に遊びに行ったとき、インターホンでの応対の際に、室内側の声や物音が聞こえて苦笑いをした…という経験はあるのではないでしょうか?リビングは、もともと家族の憩いの場として利用されるスペースのため、さまざまな音が存在していて、その音がインターホンを通して伝わってしまい、恥ずかしい思いをするケースもあるのです。
これらの問題については、家族が会話を楽しむソファーや大きな音が生じるテレビからある程度離れた位置にインターホンを設置することである程度は解消することができます。しかし、室内側の音声もインターホンを通して外に伝わってしまうという点は、家族全員に意識させておく必要はあると思います。

屋内側は複数台の設置が望ましい?

屋内側のインターホンについては、基本的には、リビングに一台設置するというケースが多いです。しかし、戸建て住宅の構造によっては、複数台のインターホンを設置することが望ましいケースもあります。

例えば、テレワークが導入され、日中はインターホンが設置されていない書斎などにいることが多いという方の場合、リビングと仕事部屋に1台ずつ設置しておいた方が良いかもしれません。そのほか、都市部では3階建て住宅が増えているのですが、この場合は2階部分のリビングのほか、3階部分にもインターホンを設置しておくと応対が遅れるといった事態を防ぐことができるようになります。

注意は必要なのは、2個目のインターホンの設置位置です。2個目のインターホンは、各部屋からのアクセスの良さを重視して、廊下への設置を検討する方が多いのですが、この場合、来客者があった時には、家中にチャイムの音が響いてしまうことになります。2階や3階の廊下は、階段に面しているため、その他の階にまで大きな音が響いてしまい、静かな環境を大切にしている人にとっては、後から設置場所を後悔する結果になる可能性が高いのです。

なお、最近では、持ち運びが可能なワイヤレスタイプのモニターが販売されるようになっているので、リビングではなく個室で過ごすことが多いという方の場合は、移動可能なタイプにして持ち運ぶのも良いかもしれません。

スマートフォンを組み合わせる

最近は、インターホンシステムもかなり進化していて、スマートフォンをインターホンの子機として利用できるようなシステムが登場しています。このタイプのインターホンを選べば、スマートフォンさえ持っていれば、どの部屋にいても来客に応対することが可能になります。室内モニターの設置は欠かせませんが、インターホンがある部屋から離れた場所にいても、スマートフォンを子機として利用することができるようになるため、複数台のモニターを設置する必要がなくなるのです。インターホンのモニターを複数台設置する場合、当然、その分工事費が加算されてしまうので、2台目の設置工事費を削減することができるわけです。

ただ、自宅にいる時もスマートフォンを肌身離さず持っておかなければならない点に注意が必要です。若者世代であれば、近くにスマートフォンがないと落ち着かない…という人が多いのですが、親世代の場合、スマートフォンも常にリビングに置いたままにしているといった使い方をしている人も多いです。当然、スマートフォンを持たずにリビング離れた時には、来客のチャイム音に気付くことができない可能性があります。

この他、スマートフォンは有線で接続されているわけではないため、電波状況によって問題が生じる可能性があります。また、画質は親機となるリビングのモニターよりも劣ってしまうことが多いので、来客者が誰なのかを正確に確認できない可能性が生じます。誰が来たのかが不安な場合は、リビングモニターでチェックしなくてはならないので、二度手間になる可能性があります。

屋内に設置するインターホンの高さについて

屋内に設置するインターホンは、目線に位置に合わせて高さを決めると利便性が高くなります。

屋内に設置するインターホンは、モニターで来客者が誰なのかを確認することが目的となります。そのため、誰もが確認しやすい145cm前後の高さに設置するのが理想と言われています。この高さに設置しておけば、少し離れた位置からでも、来客者が誰なのかをすぐに確認することができるでしょう。150cm前後の高さを確保しておくと、視界を遮るものが少なくなるので、あらゆる場所からモニターを確認することができるようになります。

なお、リビングなどにインターホンを設置する時には、背が低いお子様が応対するケースも考えられます。小学生ぐらいのお子様になると、145cm程度の高さはモニターを確認しづらいと感じますし、開錠のボタンを押すことも難しく感じるかもしれません。そのため、「子供でも使いやすいように」ということを意識して、低めの位置に設置したほうが良いか…と考える人がいるかもしれません。しかし、小さなお子様も数年後には大人とほぼ同じような目線になると考えられるため、基本的には大人が便利に使えることを想定して高さを決めるのが良いと思います。
お子様の対処については、モニタ付近に踏み台を用意しておけば、問題なく応対できるようになるはずです。

まとめ

今回は、住宅に取り付ける設備の中でも、利用頻度が非常に高い設備の一つであるインターホンについて、屋外と屋内の設置位置を解説しました。

記事内でご紹介したように、インターホンの設置位置は、防犯やプライバシーの確保を左右することがあるなど、どこに設置しても良いというわけではないのです。敷地面積の都合上、門扉などの外構設備を利用しないケースでは、何も考えずに玄関ドア周辺に取り付ける方も多いのですが、この場合、玄関直前まで近づく口実を与える結果になるのです。インターホンが玄関部分にあれば、玄関ポーチに誰かが立ち入ったとしても、ご近所さんは来客者としか思いませんよね。

したがって、これから新築注文住宅を建てようと考えている方は、防犯面や生活利便性のことを考えながら、インターホンの設置位置と高さについて慎重に検討するようにしましょう。もちろん、どこに設置するのが良いか分からないという場合、具体的な設置場所に関しては専門家のアドバイスを参考にすると良いと思います。

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