今回は、土地や建物など、不動産の名義変更が必要になった場合について、名義変更の流れや手続きに必要になる費用について解説します。

土地や建物など、不動産の名義変更手続きは、親が亡くなった時の相続をイメージする方が多いのですが、これ以外にも贈与や財産分与、不動産売買の場面で必要になるなど、意外に立ち会う可能性が高い手続きと言えます。基本的に、不動産の名義変更については、対象の土地を管轄する法務局で手続することになるのですが、この手続きの際には必要な書類や課せられる税金などが変わってきます。したがって、土地の名義変更に関する知識が何もない方が自分で手続きを行おうと考えた時には、書類の訂正などで無駄に時間をかけてしまう…なんてことになりかねません。

そこで当コラムでは、いつ、だれが必要になるか分からない土地の名義変更について、この手続きを自分で進める場合にかかる費用や必要書類などについて解説します。

土地の名義変更の一般的な流れ

それではまず、自分で土地の名義変更手続きを進める場合について、一般的な流れをいくつかの手順に分けてご紹介します。専門家に任せると、決して安くない費用がかかりますので、以下の流れを見て自分で可能だと思えばご自身で手続きを進めるのも良いかと思います。

なお、土地の名義変更については、相続や贈与、売買など、いくつかの理由が考えられますが、ここでは相続によって土地を取得する場合の流れをご紹介します。

STEP1 登記簿を取得する

土地の名義変更の第一ステップは、対象となる土地の登記簿を取得して、現状の名義がどうなっているのかを確認することとなります。

土地の名義変更は、冒頭でご紹介したように、対象となる土地を管轄する法務局で「登記」の手続きを進めることで行うのですが、過去の相続時に必要な相続登記が行われていなかった場合、原則として過去の相続までさかのぼって登記手続きを行わなければいけません。

過去の相続登記がなされていなかった場合には、当時の関係者と遺産分割協議をしなければならない点に注意しましょう。

STEP2 相続人の確定

登記簿を確認したところ、過去の相続でもきちんと名義変更がなされていた場合は、今回の相続における登記手続きを進めれば良いです。

この場合、「被相続人(亡くなった人)」の戸籍謄本などから相続人となり得る人物を確認していき、今回の相続における相続人の確定作業を進めます。

STEP3 登記に必要な書類を用意する

相続人が確定したら、登記手続きに必要になる書類の準備を行います。なお、必要書類は、土地の名義変更を行う理由によって異なるので注意しましょう。

基本的には、「登記申請書、収入印紙、添付書類」などが必要になるのですが、書類の詳細については後述します。

STEP4 法務局にて登記申請をする

必要書類の準備が完了したら、土地を管轄する法務局に足を運び、相続登記の申請を行います。登記申請については、集めた書類を法務局の窓口で提出するだけです。なお、書類に不備がないと自信がある場合は、窓口まで足を運ばなくても郵送で済ませることも可能です。

法務局の窓口まで足を運べば、書類の作成に関して不明点があればその場でアドバイスを受けられますので、可能であれば法務局まで書類を持参して確認してもらうのが安全だと思います。

STEP5 登記識別情報通知が交付される

提出した書類に不備がなく、相続登記が受理されたら、申請から1~2週間で名義変更が完了します。名義変更の完了をもって、登記識別情報通知書が交付されます。きちんと名義変更が完了しているのかを確認したい場合、登記識別情報通知書を受け取ってから土地の登記簿を取得してみましょう。登記簿上の名義が自分に変更されていれば、登記手続きは完了です。

なお、登記識別情報通知書とは、過去に「土地の権利書」と呼ばれていた重要な書類です。現在は、名称が変更されていますが、その重要度は変わりなく、紛失すると再発行ができないので、無くさないように大切に保管してください。土地の売買などを行う時には、この書類が必要になります。

土地の名義変更のポイント

前項で土地の名義変更の流れはある程度分かっていただけたと思います。土地の名義変更は、さまざまな書類を準備しなければいけませんし、場合によっては過去の相続に関わる人との協議が必要になることもあるなど、意外に面倒な手続きのように感じる方も多いと思います。

それでは、こういった手続きについては、必ず行わなければならないものなのでしょうか?登記の流れにもあるように「過去に相続登記が行われていない」なんてケースもあるため、行わなくても良いのではないかと考えてしまう方もいます。

そこでここでは、土地の名義変更について、この手続きが本当に必要なのかなど、おさえておきたいポイントを簡単にご紹介します。

土地の名義変更の必要性について

土地の名義変更については、「手続きが面倒だし放置しても良いのかな?」と考えてしまう方がいるかもしれません。しかし、この考えは大きな間違いで、以下のような理由から必ず行わなければならない手続きだと考えてください。

  • 権利主張ができなくなる恐れがある
    土地の名義変更を怠れば、登記簿上の所有者名義は自分ではないことになります。このような状況になると、自分の土地であることを主張することができませんし、土地の売却をしたくても売買取引を進めることができなくなります。
  • 相続関係が複雑になる
    相続登記を放置すると、相続人が雪だるま式に増えていき、後に登記手続きを行おうとした際に、苦労することになります。
  • 義務化されることが決定している
    土地の名義変更は、上記のような弊害を無視したとしても、必ず行わなければならなくなります。というのも、所有者不明の土地がこれ以上増えないように、2024の4月1日からは相続登記が義務化されます。

相続登記は、法で義務化されることが決定しているうえ、これを無視した場合には罰則まで用意されています。したがって、土地の名義変更の手順などは皆さんもおさえておきたい内容となります。

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土地の名義変更を専門家に依頼する方が良いケース

相続登記など、土地の名義変更手続きは、自分で行うことも可能です。しかし、必要書類の準備や相続人の確定など、専門知識が必要になる場面も少なくないため、専門家に依頼する人も少なくありません。

専門家に依頼せずに、自分で登記手続きを進めれば、手続きに必要になる費用を削減することができます。ただ、その反面、以下のような事が問題になることもあります。

  • 手間と時間がかかる
  • 一定の法律知識が必要となる
  • 平日に行動できる時間を確保しなければならない

相続登記は、さまざまな書類を準備しなければならないですし、場合によって遺産分割協議書を作成しなければならないため、関係者との協議に時間も手間もかなり掛かってしまいます。もちろん、相続に関することなので、それに関わる法律知識が必要とされる場面も少なくありません。なお、役所とのやり取りに関しては、基本的に平日に行わなければならないため、平日に役所に足を運ぶ時間を作らなければならない点も、高いハードルになるケースがあるでしょう。

こういったことから、以下のような条件に当てはまる方の場合、自分で手続きを行うのではなく、専門家に依頼するのがおすすめです。

  • 法律に関する知識が少ない
    法律など、知識面に不安がある方の場合、書類不備などで余計な手間と時間がかかる可能性が高いため、費用がかかったとしても専門家に依頼するのがおすすめです。
  • 自分で動く時間を確保できない
    平日に行動する時間が確保できない、仕事が忙しくその他の手間は可能な限り省きたいと考えている方は専門家に依頼するのがおすすめです。
  • 相続人や不動産が多い
    不動産の数が多ければ、それに比例して登記手続きの手間も増えていきます。また、相続人が多い場合も、関係者間の協議の手間が増えますし、書類の数も増えます。こういった場合、専門家に任せる方が良いでしょう。

相続登記は、司法書士や弁護士に依頼することができます。なお、相続人の間で揉め事に発展している場合は、司法書士ではなく、弁護士に相談するのが良いでしょう。

土地の名義変更にかかる費用について

それでは、本題である「土地の名義変更はいくらかかるのか?」という問題について解説していきます。土地の名義変更には、主に登録免許税、必要書類の取得費用、専門家へ依頼した時の報酬の3つの費用がかかります。

ここでは、それぞれの費用について解説します。

登録免許税

まずは、登録免許税についてです。土地の名義変更では、登録免許税の納税が必要になるのですが、この費用は「土地の固定資産税評価額×税率」で計算します。なお、税率については、名義変更を行う理由によって変わり、また一部には軽減税率が適用されます。名義変更の理由ごとの税率は以下のように決まっています。

  • 相続の場合:0.4%
  • 贈与の場合:2%
  • 財産分与の場合:2%
  • 売買の場合:1.5%

売買における土地の名義変更については、建物を一緒に購入する場合、それが居住用の家屋であれば、一定の条件を満たしていれば「建物にかかる登録免許税の税率が2%から0.3%に軽減」という特例が適応できます。

名義変更に必要な書類にかかる費用

土地の名義変更手続きにはさまざまな書類が必要になります。そして、これらの書類を取得する際には、それぞれに手数料が必要になります。例えば、お住いの地域の役所などで取得する住民票や印鑑証明の取得費用、土地の現在の名義を確認するための登記簿を法務局で取得する際にも手数料が必要です。

なお、上述したように、土地の名義変更に必要な書類については、名義変更手続きの理由によって異なります。したがって、名義変更を行う人によって多少費用が上下すると考えてください。以下に、土地の名義変更の際に必要になる主な書類とそれぞれの取得費用の目安をご紹介しておきますので、参考にしてみてください。ちなみに、各種書類の取得手数料は、自治体によって微妙に異なる場合があるので、その点は注意しましょう。

  • 住民票:300円
  • 固定資産評価証明書:200円~300円
  • 登記簿謄本(全部事項証明書):600円
  • 印鑑証明書:300円

名義変更を専門家に依頼する場合の費用について

最後は、土地の名義変更手続きを、司法書士などの専門家に依頼する場合の費用です。各種手続きを専門家に依頼する場合、報酬としていくらかの費用を支払わなければいけません。

司法書士への報酬については、事務所ごとに単価が異なりますので明確な費用を断言することは難しいです。ただ、複雑な問題などがない通常の相続による名義変更の場合、6~10万円が相場となるでしょう。過去の相続人をさかのぼる必要があるなど、手続きが複雑になればなるほど報酬が高くなりますので、その点は注意してください。

なお、相続について揉め事に発展している場合は、弁護士に手続きを依頼したほうが良いのですが、この場合はさらに報酬が高くなると考えられます。

※土地の名義変更手続きにかかる費用は上記の通りですが、名義変更の理由によっては、変更後に税金がかかります。例えば、相続の場合は相続税が、贈与の場合は贈与税がかかる可能性があるので、この辺りも頭に入れておきましょう。

相続による土地の名義変更で必要になる書類について

それでは最後に、相続を理由に土地の名義変更が必要になった場合、その手続きに必要になる書類について解説します。他の理由とは異なり、ケースによっては非常に複雑な手続きになる場合があるので、用意しなければならない書類の知識は持っておく必要があるでしょう。特に、2024年4月からは、相続登記の義務化がスタートしますので、多くの方が関わる問題となります。

相続登記では、以下のような書類を準備する必要があります。

☑登記申請書
法務局の公式サイトで様式をダウンロードすることができます。なお、代理人が手続きを行う場合には、委任状も必要になります。

☑収入印紙
上述した登録免許税は、収入印紙を貼付して収めることになります。上で紹介した計算方法により、自分で計算して収入印紙を購入しましょう。

☑添付書類
以下のような添付書類を用意しなければいけません。

  • 被相続人の「出生~死亡」までのすべての戸籍謄本
  • 除籍謄本
  • 原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)※登記簿上の住所とのつながりのわかるもの
  • 相続人全員の現在戸籍謄本
  • 相続人の住民票(不動産を取得する相続人のもの)
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図

相続による土地の名義変更では、上記のような書類を用意しなくてはいけません。なお、相続関係説明図については、必ず用意しなくてはいけないものではありません。相続関係説明図を作成して添付すれば、戸籍謄本等の証明書の原本の返却手続きが楽になるため、書類が多い場合には作成しておくと便利です。

さらに、遺産分割の場合は、「相続人の印鑑証明書」「遺産分割協議書(全員の署名及び実印での押印が必要です)」が必要で、遺言による相続の場合は「遺言書」「検認調書(自筆証書遺言の場合)」などが必要です。ちなみに、詳細は省きますが、遺言による相続登記の場合は、必要書類が少なくなります。

まとめ

今回は、何らかの理由で土地の名義変更が必要になった時に困らなくて良いよう、一般的な相続登記の流れや土地の名義変更にかかる費用などについて解説しました。

土地の名義変更について、家を購入する際の手続きに関しては、基本的に購入者は用意された書類にサインする必要がある程度で、あれこれと手間のかかる作業が必要になることはありません。しかし、親が亡くなった際の相続登記に関しては、相続人となる人がさまざまな手続きを進めなければならないので、皆さんが考えている以上に負担に感じる場合があります。

もちろん、多少の費用は我慢できると考える方であれば、自分で手続きを進めるのではなく、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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