今回は、日本の新築業界で良く耳にするようになった「健康住宅」について、家族が安心して健康に暮らせる住宅を作るためにおさえておきたいポイントについて解説します。住宅そのものやそこで暮らす人にとっても非常に悩ましい問題となるのが結露です。結露は、住宅内と屋外の気温差により窓などに水滴がたくさん付着する問題で、皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか?住宅の結露問題は、単に水分を拭き取るのが面倒など、日常的な家事の手間が増える…と言った問題ではなく、カビやダニの繁殖により家族の健康被害につながる非常に恐ろしい問題と考えなければいけません。

そもそも、日本の住宅は高温多湿な気候でも快適に過ごせるよう、通気性や調湿性に優れた工夫が施されていました。しかし、現代の住宅については、建材や建築技術の飛躍的な進歩により、気密性や断熱性を高め、熱を逃がさない家づくりが主流となっています。これにより、空調効率の向上などが見込めるため、省エネ性を高めることができ、さまざまな環境問題に貢献できると、国も高気密・高断熱な家づくりを推奨しています。

ただ、家の気密性や断熱性が急激に高まる中、人の体が住環境の急な変化についていくことができず、人によっては家が健康を阻害する要因になってしまう…なんてことが分かってきました。そのため、気密性や断熱性を維持したまま、人が健康に暮らせるような工夫をさらに施した住宅が健康住宅などと呼ばれるようになったのです。そこでこの記事では、家族が健康に暮らしていくことができる家を建てるため、新築時に検討しておきたい『結露対策』について解説します。記事の後半では、家の安全性を高めることができる画期的な工法についてもご紹介しますので、是非これからの家づくりの参考にしてみてください。

新築でも結露はするのか?

住宅の結露問題については、「古い家で起こるものなのでは?」と考え、最新技術が詰め込まれた新築住宅は結露の心配はないと考えている方も多いです。

結論から言ってしまいますが、住宅における結露は、何も古い家のみで起きるのではなく、建てたばかり新築住宅であっても条件さえ揃えば普通に結露が発生します。さらに、古い住宅は、高温多湿という日本の気候に対応するため、通気性を高める工夫が施されているので、高気密化が進んだ現在の新築住宅のほうが結露が発生する条件が整っているとさえ言えます。

ただ、新築住宅の場合は、家を建てる際に結露の発生を抑える対策を検討することが可能です。例えば、断熱材をしっかりと入れ、結露しにくいサッシを採用したうえ、さらに日常生活の中で小まめに換気を行うといった対策で、最大限結露を防ぐことは可能です。この他にも、詳細は後述しますが、家を建てる工法によって結露を防ぐことができるようになっているため、「新築は結露しにくい」という認識が広まっています。
それでは、住宅で発生する結露は、何が原因となっているのでしょうか?次項で見ていきましょう。

住宅で結露が発生する理由とは?

上述の通り、結露はさまざまな面で著しい進化を遂げている新築住宅でも普通に発生する可能性があります。それでは、結露が発生してしまう要因とはどのようなことが考えられるのでしょう。原因をきちんと押さえておけば、適切な対策を検討することが可能になるはずですので、以下のポイントはきちんと押さえておきましょう。

①換気不足

住宅で結露が発生する一つの要因として、換気不足に陥っているという理由があります。結露は、空気が一定の場所にとどまり続けることで発生します。

居室内で換気不足に陥ると、窓周辺にある空気が入れ替わることなく、留まり続けてしまうので、結露を引き起こしてしまうのです。気密性が高くなっている現代の住宅は、24時間換気システムが設置されているもの、何らかの理由で換気不足になってしまうと、結露が発生します。古い家は、「隙間風が入る…」などというネガティブなイメージがありますが、空気が流動するという面で結露は防ぎやすいです。

②湿度が高くなっている

室内の湿度が高くなってしまうことが原因で、結露が発生するケースは多いです。例えば、洗濯物を室内干しにしている、加湿器を稼働させているなどといった状況の場合、高湿状態による結露が起きやすくなります。

この問題については、小まめに換気して湿気を逃がしてあげる、除湿器や除湿剤で湿気を取り除くなど、室内の湿度が上がりすぎないようにするという対策が有効です。

③通気性が悪くなっている

新築住宅において、結露問題が発生するケースでは、家の通気性が悪いという理由が考えられます。

現代の新築業界では、「高気密・高断熱」という機能が非常に重要とみなされていて、住宅販売のチラシのキーワードに使用されたり、補助金の条件になったりしています。しかし、高気密・高断熱住宅で、適切に換気システムが活用できていないケースでは、結露の発生に悩まされてしまう…という方が多いです。

気密性が高まっている昨今の住宅の場合、常に24時間換気システムが稼働している状態にしなければいけません。たまに、「換気の音が気になる…」「空調効率が悪くなるのでは…」などと言った理由で換気システムを止めてしまう人がいるのですが、通気性が悪くなり結露が発生する条件が整ってしまうので絶対にやめましょう。

住宅で発生する結露は何が問題?

冒頭でご紹介したように、近年では「健康住宅」という言葉が注目されるようになっています。これは、住宅の高気密化が進んだことで、シックハウス症候群など、住宅そのものが原因となる健康被害の報告が急増したことが大きな要因となっています。そして、健康住宅を作るためには、結露対策も非常に重要とみなされています。なぜなら、住宅で発生する結露は、単に「窓周辺の水分を小まめに拭き取らなくてはいけない…」などの家事の手間が増えるといった問題が発生するだけでなく、家族の健康被害の要因にもなり得るからです。

憧れのマイホームを購入したとしても、結露の発生が多いという状況になると、あっという間にカビが繁殖が進んでしまいます。結露によるカビの発生は、通気性の悪いクローゼットや押入の中、クロスの内側など、普段目に入らない場所で起きてしまいますので、気付いたときには広範囲にカビの被害が拡大する…と言った恐れがあります。
さらに、住宅内でカビが繁殖してしまうと、家の中にカビの胞子が浮遊することになり、さまざまな健康被害を引き起こす可能性があります。住宅で発生する結露が問題視されるのは、以下のような健康被害を引き起こす可能性があるからです。

  • アトピー性皮膚炎
    アトピー性皮膚炎は、はっきりとした原因は不明ですが、皮膚のバリア機能の低下や環境が原因と言われています。その中でも、住環境にカビやダニなどのアレルゲンが存在すると、発症する可能性があるとされます。
  • アレルギー症状
    結露によってカビやダニなどの微生物が繁殖してしまうと、アレルギーやぜんそくなど、人体に悪影響のある症状が出る場合があります。

住宅で発生する結露は、上記のように人の健康被害問題に発展するケースがあります。もちろん、結露を全く発生させない家を作るのはなかなか難しいですが、可能な限り結露が発生しない環境を構築する必要があります。そして住宅の結露対策は、家族全員が安心して健康に暮らすことができるようになるため、健康住宅を作る上では非常に重要なポイントになるのです。なお、家の中で結露を見つけた時には、その都度しっかりと水分を除去するなど、カビが発生しないようにすることも大切です。

新築時にできる結露対策とは?

それでは、新築住宅を建てる際、結露しにくい家を作るための対策についても解説していきます。健康住宅を建てるための工法については後述することにして、ここでは導入する設備による結露対策に着目して、いくつかの方法をご紹介します。

①樹脂サッシを採用する

一つ目の対策は、窓ガラスをはめ込むサッシに、最も断熱性能が高いとされる樹脂サッシを採用するというものです。樹脂サッシは、寒冷地の住宅では普及し始めていますが、一般地の新築の場合はまだそこまで普及率が高くありません。これは、アルミサッシなどと比較すると、製品の価格が高いことが理由です。

ただ、低コストで導入できるアルミサッシの場合、素材的に熱伝導率が高くなり、外気温の影響を受けやすくなるため結露しやすい窓になります。近年では、アルミサッシの性能が向上し、結露しにくくなっているとされますが、それでも樹脂サッシと比較すると断熱性などはかなり劣ります。樹脂サッシは、高価なので、新築時の建築コスト削減を考え採用しない方も多いのですが、住み始めてから結露に悩まされる、結露により窓が早期劣化するなどと言ったことを考えると、長い目で見た場合にはお得な建材と言えるでしょう。

②トリプルガラスや二重窓を採用する

窓部分の結露対策には、サッシ以外にもトリプルガラスの採用や二重窓の採用が考えられます。トリプルガラスとは、ガラスが3重になっていて間に空気の層ができることから、高い断熱性を実現することができます。室内側のガラスは、空気層ができることで外気温の影響を受けにくくなるため、結露の発生を抑えることができるのです。

この他にも、二重窓にして窓部分の断熱性を高めるという方法もあります。二重窓は、窓の内側にもう一枚窓を設置するという方法で、こちらも窓と窓の間に空気層ができるため、外気温の影響を受けにくくすることができ、結露を防ぎます。なお、二重窓は、防音対策としても有効とされていて、窓から騒音が侵入することも防いでくれます。ただ、窓の開閉時には、同じ行動を2回行わなければならなくなるなど、利便性は低下します。

③24時間換気システムを設置し適切に稼動させる

住宅の高気密化が進んだことにより、24時間換気システムの設置が建築基準法により義務化されています。これは、シックハウス症候群を発症する人が増加したことが要因とされていますが、結露対策を考えた時にも非常に重要な設備となります。高気密住宅は、機械によって強制的に換気しなければ、同じ場所に空気が留まることで汚れてしまいます。それを防ぐ目的で設置されるのが24時間換気システムです。

ただ、24時間換気システムを設置していたとしても、適切に設備を稼働させていなければ意味がありません。例えば、冬場などは、吸排気口が寒いといった理由で、換気システムを止めてしまう方がいます。在宅中にどうしても寒さを感じる場合は、停止させても良いのですが、その場合は定期的に窓を開けることで換気しなければならないと考えてください。また、外出時や就寝時など、人為的に換気が行えない場合は、必ず換気システムを稼働させ、通気性を保たなければいけません。

関連:24時間換気システムとは?常時換気の落とし穴と24時間換気の弱点を補う対策

④暖房器具は水蒸気の発生が少ない物を採用する

気密性が高くなった現代の住宅では、冬場に利用する暖房器具として、水蒸気が発生しないものを選んで使用するのがおすすめです。そうすることで、結露しにくい空間を作ることができます。

昭和時代を描いたアニメなどでは、ストーブの上に水を入れたやかんを置いて、水蒸気をワザと発生させるような描写が為されています。これは、昔の住宅は、通気性が良くなる工夫がなされていたため、水蒸気を発生させても、自然と排出されるため、適度な湿度を保ちながら室温を維持する工夫となっていたのでしょう。しかし、高気密化が進んだ現在の住宅で同じことをすると、室内に湿気がこもってしまい、結露しやすい環境が作り出されてしまいます。
結露しにくい環境を作りながら、室内を暖めたい場合には、エアコンやパネルヒーター、床暖房など、水蒸気を発生させないものがおすすめです。石油ストーブやファンヒーターは暖める際に水蒸気を発生させるため、湿度が上がりやすく結露の危険性が高まります。

【番外編】生活の工夫による結露対策

新築住宅の結露対策については、上記のように採用する建材や設備の特性を利用したものが多いです。ただ、高性能な設備の導入は、その分建築コストの上昇につながりますので「低コストで可能な結露対策はないのか?」という部分も気になりますよね。実は、住宅の結露対策については、日常生活の中でちょっとした工夫を行うことで効果を期待することができるのです。

ここでは、誰でも簡単にできる新築住宅の結露対策をご紹介します。

  • 定期的な換気を心がける
    結露対策を考えた時には、定期的に換気することが非常に効果的です。窓を開けて換気することで、室内の空気が入れ替わるため、結露しにくい空間を作ることができます。夏場や冬場などは、短時間でも良いので、換気を心がけるようにしましょう。
  • 収納スペースに空気の通り道を作る
    押入やクローゼットなどの収納スペースは、閉め切った空間になることで、気付かないうちに結露が発生し、カビの温床になる場合があります。閉め切った空間は、空気が滞留するため、結露がしやすくなるのです。したがって、見えない位置での結露を防ぐためにも、収納スペースにはきちんと空気の通り道を作りましょう。また、小まめに収納の扉を開閉して、空気を入れ替えることも忘れずに。
  • 家具の置き方に注意する
    大型家具を設置する際には、少し壁から離しておくことも結露対策として有効です。壁にギリギリまでくっつける方が多いのですが、その場合、空気の流れが悪くなり、結露の原因となります。適度に壁から離して、空気の通り道を作りましょう。

このように、ちょっとした工夫で結露しにくい空間を作り出すことが可能です。上述したように、頻繁に結露が発生する空間になってしまうと、カビの発生を招いて、最悪の場合、家族の健康被害に発展してしまう恐れがあります。家族全員が、安全で健康に暮らしていけるようにするためにも、結露対策はしっかりと行いましょう。

結露しにくい健康住宅を建てるならWB工法がおすすめ!

ここまでの解説で、住宅にとって結露がどれほど恐ろしいものなのか分かっていただけたのではないでしょうか?住宅で頻繁に結露が発生するようになれば、家そのものが傷んでしまうだけでなく、そこに住む家族全員の健康被害に発展しかねないと考えなければいけないのです。

それでは、家族が安全に健康で暮らせる住宅を建てるには、どうすれば良いのでしょうか?結露は、温度や湿度の変化によって起こる現象なので、全く結露しない家を建てることは簡単ではありません。また、全く結露しない家を目指す場合、通気性が良すぎるため暑さや寒さの対策が難しくなってしまう、室内の空気が乾燥しすぎてしまうなどと言った別の問題が発生し、快適に過ごすことができない家になってしまう可能性もあるでしょう。

ただ、結露をきちんと防ぎ、家族全員が快適で健康に暮らすことができる家を建てることは不可能ではありません。住宅の建築技術は飛躍的に進化しており、その中でも「健康住宅」を実現するための工法として注目されているのが『WB工法(通気断熱WB工法)』です。WB工法で建てた家は、建物そのものが呼吸することで、不用な湿気などを排出し、結露しにくい環境を作り出してくれます。実際に、WB工法を開発したメーカーによると、以下のように解説されています。

ひとつめの呼吸は、「家の呼吸」です。気温の変化で反応する形状記憶合金を使った仕組みで、壁の中の空気をコントロール。夏は、壁の中の空気を流して室内の空気を快適に保ち、冬は、外の空気を遮断し、気密性と断熱性を上げることで、室内の熱を逃がしにくくします。
もうひとつの呼吸は、「壁面の呼吸」です。伝統的な土壁が持つ湿気を通す作用を応用し、季節に応じて、家そのものが呼吸する仕組みを開発。室内の化学物資や臭いを、屋外に排出するしくみです。湿度があがりにくいので、カビの抑制にも効果を発揮します。
引用:WB HOUSE公式サイトより

通気断熱WB工法の「WB」は、「W BREATH(ダブルブレス)」の頭文字を取った造語で、二つの呼吸を意味しています。通気断熱WB工法で建てられた家は、「家の呼吸」と「壁面の呼吸」が実現することから結露対策など、さまざまな機能性が得られます。ここでは、WB工法を採用することで、なぜ結露対策に有効なのかを簡単にご紹介します。

壁の中に通気層が設置されている

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

通気断熱WB工法で建てられる家は、壁の中に通気層が設置される点が大きな特徴です。

家の壁の中に、自然な空気が循環する通気層があることで、無駄な湿気や夏の熱気が住宅内に閉じ込められることがなく、外に排出することができるようになります。湿気は、木造住宅の天敵となるもので、結露の原因や木材の腐食など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。WB工法では、その湿気を逃がすことができるため、家そのものが長持ちすることになります。

WB工法で建てられた家では、上図のように、通気口から入った空気は、床下のひんやりした空気と混ざり、通気層を上昇していくことになります。そのため、壁が焼け込みの熱を緩和することで、蒸し暑さを軽減することができ、真夏でもエアコンをそれほど使わずに快適で涼しい環境を維持することができるようになります。

壁が呼吸することで除湿してくれる

画像引用:WB HOUSE公式サイトより

WB工法の家は、壁から湿気を逃がして除湿することができます。公式サイトで公表されている情報によると、WB工法では、土壁の原理を応用しており、臭いや化学物質も湿気と一緒に壁を通過するようになっています。そして、この機能により、換気システムに頼らなくても、結露しないクリーンな環境の家を実現することが可能です。住宅の結露は、カビの発生原因となり、家族の健康被害に発展する恐れもありますが、WB工法では家そのものが湿気を除去してくれるようになるため、快適で健康な住空間を作り出してくれるのです。

さらに、WB工法を採用した家は、シックハウス症候群の原因となる有害物質や、嫌な生活臭などを湿気と共に屋外に逃がしてくれるため、常に快適でクリーンな空間を維持することが可能です。ペットを室内で飼育しているご家庭や、小さなお子様がいるご家庭には非常におすすめの住宅工法と言えるでしょう。

関連:通気断熱WB工法とは?WB工法のメリットはよく耳にするけど、実際のところデメリットはないの?

まとめ

今回は、どのような住宅でも発生する結露について、出来るだけ結露の発生を抑えて、家族の健康な生活を守るためにどうすれば良いのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、室内と屋外の気温差で発生する結露は、掃除などの面倒な作業を増やすといった問題ではなく、カビの発生原因となり家族の健康を阻害する可能性がある非常に恐ろしい現象なのです。一昔前までの日本の住宅は、通気性が非常に良かったこともあり、室内の湿気を自然に逃がすことができている場合も多かったです。しかし、現在の新築業界では、住宅の高気密化が年々進んでいて、機械的もしくは人為的に換気を行わなければ、室内に湿気がこもってしまい、結露の発生につながる可能性が高くなっているのです。

現代では、健康住宅が求められるようになっていますし、健康被害の原因となり得る結露は、可能な限り防ぎたいと考える方が多いと思います。そのような方におすすめできるのが、WB工法で建てる住宅で、WB工法の家は、家そのものと家の壁が呼吸することで、安全で快適な環境を作ってくれます。
これからマイホームの購入を検討している方で、健康住宅の実現をお考えなら、お気軽に悠建設にご相談ください。

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