今回は、2025年度、新築住宅の購入負担を軽減してくれる補助金である子育てグリーン住宅支援事業の速報をご紹介したいと思います。子育てグリーン住宅支援事業は、2024年に実施された「子育てエコホーム支援事業」の後継事業となり、徐々にその概要が明らかになってきましたので、どういった時にこの補助金が利用できるのかについて解説します。
昨今では、脱炭素やカーボンニュートラルといった言葉を耳にする機会が増えていると思います。これは、世界中で問題視されている地球温暖化などの環境問題を解決する為の取り組みで、簡単に言うと人間が生きていく上で生じさせる二酸化炭素の排出量を削減するための取り組みとなります。CO2排出量削減のための取り組み方法はさまざまあるのですが、日本では2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されているため、CO2排出量削減に寄与する取り組みを国が積極的に支援するようになっているのです。
特に、住宅領域でのCO2排出量の削減は、カーボンニュートラル実現に必要不可欠とされているため、高い省エネルギー性能を持つ新築住宅の建築や省エネリフォームには手厚い補助金制度が設けられています。今回紹介する子育てグリーン住宅支援事業もその一環なのですが、従来の新築住宅に対する補助金と比較すると支援内容が強化されていると言われています。そこで、現時点で発表されている情報をもとに、昨年度からの変更点などについてもご紹介します。
子育てグリーン住宅支援事業とは?
それではまず、子育てグリーン住宅支援事業がどのような補助金制度なのかを簡単に解説します。2050年カーボンニュートラルの実現が目指されている日本では、住宅領域の脱炭素化が非常に重要とみなされており、それに寄与する取り組みを後押しする動きが強まっています。例えば、国は2022年11月より、環境省・経済産業省・国土交通省の3省が連携して、「住宅省エネキャンペーン」と言う取り組みを開始しているのですが、子育てグリーン住宅支援事業はその一環として新築やリフォームに対する補助を行う制度となっています。
なお、2025年度の住宅省エネキャンペーンは、以下の4つの事業で成り立っています。
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 先進的窓リノベ2025事業
- 給湯省エネ2025事業
- 賃貸集合給湯省エネ2025事業
先進的窓リノベ2025事業や給湯省エネ2025事業などは聞き馴染みがあると思いますが、子育てグリーン住宅支援事業については新たに始まった制度のように感じますね。ただ、子育てグリーン住宅支援事業についても、2024年度に似たような事業が行われていて、実は昨年度は「子育てエコホーム支援事業」と言う名称で運用されていただけです。先ほども指摘したように、子育てグリーン住宅支援事業は、「子育てエコホーム支援事業」の後継事業で、対象世帯の拡大や基準の見直しなどが行われています。
子育てグリーン住宅支援事業の概要
子育てグリーン住宅支援事業は、「子育て世帯」や「若者夫婦世帯」を中心とした全世帯が対象で、高い省エネ性能を有した「注文住宅」「分譲住宅」「賃貸住宅」を新築する場合や、既存住宅の省エネ性能を高めるためのリフォーム工事を行う場合、それにかかる費用を補助してくれるという補助金制度となっています。
この補助金が制定された背景には、2050年カーボンニュートラルの実現目標があり、以下のような目的で制定されたとされています。
- エネルギー価格などの物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して、「ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅」の導入を支援する
- 2030年度までの「新築住宅のZEH基準の水準の省エネルギー性能確保」の義務化に向けた支援を行う
子育てグリーン住宅支援事業は、上記のように、住宅領域での脱炭素化を推し進めるため、省エネ性能が高い住宅を広く普及させることが大きな目的となっています。なお、この補助金で言う「子育て世帯」「若者夫婦世帯」の定義については、「子育て世帯:申請時点において、18歳未満の子を有する世帯」「若者夫婦世帯:申請時点において、夫婦のいずれかが39歳以下の世帯」となっています。
2024年度に運用されていた子育てエコホーム支援事業との違いについては、住宅の条件によっては『新築』であっても全世帯が対象になることです。子育てグリーン住宅支援事業の対象や気になる補助金額については、次項で詳しく解説していきます。
子育てグリーン住宅支援事業の対象と補助金額について
それでは、子育てグリーン住宅支援事業の補助金対象となる方や補助金の金額について解説していきます。なお、この補助金は、新築かリフォームかによって対象住宅や補助額が変わります。
ここでは、住宅を新築する場合に受けられる補助について解説します。リフォーム関連の補助金についてはまた別の機会に解説します。
子育てグリーン住宅支援事業の新築に対する補助金の金額
子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ性が高い住宅を新築する世帯に対して多額の補助金を給付する制度です。なお、同じ新築住宅でも、建てる家の種類によって対象となる世帯や補助金額が変わります。
- すべての世帯・・・GX志向型住宅なら160万円/戸
- 子育て世帯、若者夫婦世帯・・・長期優良住宅なら最大100万円/戸、ZEH水準住宅なら最大60万円/戸
昨年度に運用されていた「子育てエコホーム支援事業」では、新築の場合の補助金支給対象が「子育て世帯など」に限られていたのですが、子育てグリーン住宅支援事業では、「GX志向型住宅」を取得するケースに限り、全ての世帯が対象となります。なお、蓄電池の設置に関する補助事業も併用することができるため、省エネ性が高い住宅の建築を検討している方は、ぜひこの補助金の利用を考えてみましょう。
子育てグリーン住宅支援事業の対象となる「GX志向型住宅」とは?
GX志向型住宅(グリーントランスフォーメーション)と言う言葉はまだまだ聞き馴染みがない…と感じた方が多いと思います。GX志向型住宅を簡単に解説すると、ZEH水準を大きく上回る省エネ性能を持った「脱炭素志向住宅」のことを指しています。住宅の形には、ZEH住宅や低炭素住宅、長期優良住宅などさまざまなタイプのものが存在します。そして、これまでの省エネ住宅に関しては、太陽光発電などの創エネ設備と省エネ性の高い設備を導入することで、一年間のエネルギー収支をゼロ以下にするという「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」が主な基準となっていました。
しかし、2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、住宅領域でのさらなる脱炭素化が必要と考えられ、ZEH水準をも上回る区分として「GX志向型住宅」が設けられたのです。GX志向型住宅の具体的な性能要件については、以下のように定められています。
- (1)断熱等性能等級「6以上」
- (2)再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
- (3)再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」
※寒冷地等に限っては75%以上(Nearly ZEH)も可。 都市部狭小地等の場合に限っては再生可能エネルギー未導入(ZEH Oriented)も可。
GX志向型住宅は、非常に高い断熱性能が求められます。住宅の断熱性能を示す指標には断熱等性能等級と言うものがあり、2025年1月現在の最高等級が「7」となっています。GX志向型住宅の場合、断熱等性能等級6と言う非常に高い基準が求められるのです。ちなみに、ZEHや低炭素住宅、長期優良住宅に求められる断熱性能は「断熱等性能等級5以上」なので、ZEHを上回る水準と言えます。
このほかにも、省エネルギー性能についても明確な基準が設けられています。GX志向型住宅は、太陽光発電などの創エネ設備を除いた状態で、通常の住宅と比較して、35%以上のエネルギー消費削減が求められます。さらに、再エネ設備も含めると、一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」が求められ、これは住宅で使用する電力の全てを再エネ設備で賄えるようにするという意味です。この部分に関しても、従来の省エネ住宅であるZEHに求められる基準よりも厳しい基準が設けられています。
参照:国土交通省webサイト
子育てグリーン住宅支援事業になって何が変更された?
冒頭でご紹介したように、子育てグリーン住宅支援事業は、子育てエコホーム支援事業の後継となる補助金事業です。当然、2024年に運用されていた子育てエコホーム支援事業と比較した場合、名称が変わっただけでなく、その中身もいくつかの変更点が存在するのです。
ここでは、2024年度の子育てエコホーム支援事業が子育てグリーン住宅支援事業になって何が変更されたのかについて簡単に解説します。
補助金の対象となる世帯が拡大された
子育てグリーン住宅支援事業は、「GX志向型住宅」を取得する場合に限りますが、補助金の対象は「全ての世帯」と、2024年度の事業と比較すると、支援の対象がかなり拡大しています。
2024年度の子育てエコホーム支援事業は、新築の場合、子育て世帯や若者夫婦世帯のみが支援対象となっていて、使いたくても使えない…と言うケースも少なくなかったとされます。
補助金額の見直しがあった
子育てグリーン住宅支援事業では、補助金の金額の見直しが行われています。長期優良住宅やZEH水準住宅は、子育てエコホーム支援事業にて、以下の金額の補助金が給付されていました。
- 長期優良住宅・・・一律100万円/戸
- ZEH水準住宅・・・一律80万円/戸
一方、子育てグリーン住宅支援事業では、補助金額が建て替え時の古い住宅の除却(取り壊し)を行うかどうかという条件が付けくわえられ、除却を行う場合とそうでない場合では、補助金額に差が設けられています。具体的には、以下のように定められています。
- 長期優良住宅は、建て替え前住宅等の除却を行う場合は「100万円/戸」、それ以外の場合は「80万円/戸」
- ZEH水準住宅は、建て替え前住宅等の除却を行う場合は「60万円/戸」、それ以外の場合は「40万円/戸」
このように、後継事業である子育てグリーン住宅支援事業は、古い住宅を取り壊したうえで、建て替えするという場合、より多くの補助金が受けられる仕組みとなっています。ただ、ZEH水準住宅については、補助金額が全体的に引き下げられています。これは、ZEH水準を上回る省エネ性能を持つ「GX志向型住宅」の普及を推進することが目的だと考えられます。
まとめ
今回は、2025年に実施が予定されている子育てグリーン住宅支援事業の概要について解説しました。記事内でご紹介したように、子育てグリーン住宅支援事業は、2024年度の「子育てエコホーム支援事業」の後継事業でいくつかの変更点が加えられています。
大きな変更点では、新たに「GX志向型住宅」という区分が追加され、全体の補助金額が変わったということが重要なポイントとなるでしょう。なお、新築住宅における補助金額は、
- GX志向型住宅:160万円/戸
- 長期優良住宅:80万~100万円/戸
- ZEH水準住宅:40万~60万円/戸
となっており、長期優良住宅やZEH水準住宅への補助金額は、前年度よりも引き下げられています。ただ、前年度は、新築においては「子育て世帯」「若者夫婦世帯」が対象だったのですが、新たに追加された「GX志向型住宅」は全世帯が対象となっています。ZEH水準住宅を上回る性能が求められるため、建築コストの面では高くなってしまうと予想できますが、非常に高い省エネ性能を持つ住宅になるため、日々の生活にかかる光熱費は大幅に削減できると期待でき、補助金で初期コストの負担軽減ができるとなると、中長期的に見た場合、家の建築・維持にかかるトータルコストは削減できるのではないでしょうか?