家の建て替えを計画した時には、もともとそこで暮らしていた人は施工中どこで暮らせば良いのかという問題に頭を悩ませる方が多いです。いわゆる、家の建て替えにおける仮住まい問題ですが、過去に家の建て替えを経験した方は、仮住まいはどうしたのか、またどれぐらいの期間仮住まいに住んで、いくらぐらいの費用がかかるものなのかなど、さまざまな疑問が頭をよぎってしまうはずです。
家の建て替えは、もともとあった一軒家を取り壊し、同じ場所に新しい家を建築する工事になるわけですので、当然、家の施工中は別の場所に住まいを用意しなければいけません。しかし、仮住まいを用意する際にも、いくつかの注意点がありますので、この記事では、家の建て替えにともない、仮住まいを用意する際の課題と探し方、費用などについて解説します。
家の建て替え。仮住まいの期間はどれぐらいが一般的?
それではまず、家の建て替えを行う際、どれぐらいの期間、仮住まいで生活をしなければならないのかについて解説します。仮住まいで生活する期間は、もともと住んでいた家を解体し、新しい家が完成するまでなので、一般的な建て替えスケジュールからその仮住まいの期間を逆算することが可能です。
一般的な家の建て替えは、以下のようなスケジュールで進みます。
- STEP1 建て替え計画の事前準備
家の建て替え計画を立てます。自分たちの要望をまとめ、建て替えを依頼する業者が決まれば、仮住まいを用意します。 - STEP2 仮住まいへの引っ越し
- STEP3 旧居の取り壊し
建て替え工事のスタートです。最初に旧居の解体を行い、地盤調査と必要であれば地盤改良などを行います。旧居の解体は1カ月程度かかるのが一般的です。 - STEP4 新築工事
この段階は、一般的な新築住宅を建てるのと同じ工程になります。建設する家の大きさや工法などによって工期は変わりますが、着工から竣工まで4~10カ月程度かかります。 - STEP5 引き渡し
竣工検査を行い、細かな修正や大型家具の搬入が進められます。この段階では、仮住まいの退去も同時進行する必要があります。
家の建て替えに際して、仮住まいへの引っ越しが必要になるのは、旧居の取り壊しが始まる前となります。新しく建てる家の計画に並行して、一時的に生活するための仮住まいを探さなければならないため、通常の新築計画よりもバタバタしてしまうので注意しましょう。
そして、仮住まいが必要になる期間については、新築する建物のプランによって変わりますが、短くても半年程度は必要になると思います。長ければ、仮住まいで1年近くを生活するケースもありますので、家族が安心して生活できるような仮住まいを見つけることも非常に重要だと考えてください。
仮住まい探しの課題とポイントについて
前項で解説したように、家の建て替えにともなう仮住まいは、短くても半年、長ければ1年以上にわたる場合もあるなど、家族が安心して生活するためには決して適当に選ぶことができない重要な物と考えられます。
それでは、実際に家の建て替えで仮住まいを探す時、どのような問題が立ちはだかるのか、また仮住まいを探す際に注意すべきポイントはどこなのかについて解説します。
仮住まい探しでよくある課題
それではまず、家の建て替えにともなう仮住まい探しにおいて、多くの方がぶつかってしまいやすい代表的な課題をご紹介します。家の建て替えにより必要になる仮住まいは、近くにある賃貸住宅が候補にあがりますが、短期間の仮住まいであるということで、意外な壁が立ちはだかることがあります。
仮住まい探しの際には、以下のような課題があると理解したうえで、物件探しを進めると良いでしょう。
- 短期で借りられる物件が少ない
多くの賃貸物件は、2年契約となっていて、短ければ半年間で新居に移ることになる仮住まいの場合、短期間の契約に対応してもらうことができないケースがほとんどです。これは、賃貸業界の繁忙期が大きく関係しています。賃貸物件は、2月や3月など春シーズンに需要が集中しやすく、夏場や秋ごろは需要が落ち着きやすい傾向にあります。時期によって入居希望者の数に大きな格差が生じてしまう業界なのです。そのため、半年限定で部屋を借りたいと言っても「1月に借りて7月に退去する予定」などと言った場合、8月以降に入居者を見つけることができなくなるというリスクが大家さんにのしかかってしまうのです。そのため、一般的な賃貸住宅の場合、短期の仮住まいの契約は敬遠される傾向にあり、希望する条件の物件を見つけるのにかなり苦労する方が多いです。 - ペットを飼っている場合はさらに難しい
犬や猫などのペットを飼育している方は多いですが、ペットがいる場合は「ペット可」の物件を探さなければならないため、仮住まいを見つけるのはさらに難しくなります。ペットを室内で飼育する場合、臭いや傷が付きやすいなどの問題があるため、通常の賃貸物件では禁止になっていることが多いです。これは、賃貸の場合、入居者の入れ替えが前提となるためです。仮住まいの場合、「短期で借りられる物件」という制限が既にあるうえで、「ペット可」という条件も付属されるため、部屋探しのハードルがさらに高くなります。したがって、一時的にペットだけ実家に預かってもらう…などの対応も検討しましょう。 - 荷物が入りきらない
家の建て替えで、一時的に賃貸マンションなどを仮住まいにするという場合、荷物が多すぎて入りきらない…なんてことが問題になるケースも多いです。集合住宅は、戸建てと比較すると、住居面積がどうしても狭くなってしまいますし、大型の荷物を「庭や倉庫に片付ける」なんてこともできません。そのため、仮住まいを探すときには、荷物を収納できる広さの物件が見つからないことに悩むケースも少なくないのです。ただ、このような場合は、無理に広い部屋を借りるのではなく、仮住まいとは別にトランクルームなどを借りて、不用な荷物を預けておくという対策が有効です。広い物件はそれだけ家賃も高くなりますし、トランクルームを借りる方が、コスト的なメリットが大きいはずです。また、せっかく家を建て替えるなら、それに合わせて古い家具や家電の買い替えを実行するのも良いのではないでしょうか?
家の建て替えにともない、仮住まいを探すときには、上記のような課題が立ちはだかる場合が多いと思います。一時的に賃貸物件で生活しようと考えている方は、満足のいく物件を見つけるにはかなりの時間がかかると想定し、早めに動くことを推奨します。また、一時的な拠点ですので、妥協できる部分は妥協するようにしましょう。
仮住まい探しのポイント
それでは、家の建て替えで一時的に仮住まいが必要になった方が、物件探しをする際に注意しておかなければならないポイントもご紹介します。
- お子様がいる場合、学区を優先する
一次的な仮住まいでも、生活の利便性を考えると、広さや立地などを重視したくなるものです。しかし、小中学校に通うお子様がいる場合は、通学のことを考えて同じ学区内に収まる範囲で仮住まいを探すようにしましょう。もちろん、学区を優先するとなると、エリアがかなり絞られますので、満足のいく物件を見つけるのは難しくなります。しかし、あくまでも一時的な拠点と考えると、広さなど、他の条件を妥協して物件探しを進めるのがおすすめです。 - 仮住まいの期間や必要なものを重視して物件を決める
仮住まいが必要になる期間は、物件を契約する前に明確になっているはずです。上述したように、一般的には半年程度となるケースが多いため、仮住まいに持っていくものは限定することが可能です。衣服などについても、すべてを持っていく必要はなく、一時的にトランクルームを借りる、実家に預かってもらうといった対処をすれば、必要最低限の広さの物件で済み、仮住まいにかかるコストを削減することができます。仮住まいは、長くても1年程度過ごすだけの拠点になるわけですので、今の家と同じ広さを求めるのではなく、仮住まいする期間から必要な物を限定し、最小限の広さに抑える工夫をするのがおすすめです。そうすることで、仮住まいにかかる費用をかなり削減することができるはずです。
仮住まいの選択肢について
それでは次に、家の建て替えを検討した時、一時的に家族で過ごすための仮住まいについて、どのような選択肢が存在するのかについても解説します。一般的には、一時的に賃貸マンションなどを借りて生活することをイメージする方が多いのですが、それ以外にもいくつかの選択肢が存在します。
ここでは、代表的な仮住まいの選択肢と大まかな費用についてご紹介します。
賃貸物件を借りる
仮住まいの選択肢として、最も一般的な手法が賃貸物件を借りるという方法です。賃貸住宅には一軒家やアパート、マンション、UR賃貸などさまざまな種類がありますし、物件数そのものが多いため、希望するエリアや広さなど、自分たちが仮住まいに求める条件に合った物件を探しやすい点がメリットです。
ただ、賃貸物件を借りる際には、短期間の入居であっても、家賃の数か月分(4~6ヶ月分)の初期費用が必要になりますので、コスト的な問題が立ちはだかるケースもあります。場合によっては、住むための部屋とは別にトランクルームを借りなければならない場合もありますので、仮住まいを用意するために、まとまった初期費用が必要になることもあります。
なお、賃貸物件の中には、1年未満で契約可能な定期借家契約の物件も存在します。定期借家契約は、通常の賃貸物件のように契約更新ができないものの、条件の割に家賃が安く設定されている物件が多いです。したがって、物件探しをしているエリア内に、仮住まいのスケジュールと契約期間が一致するような定期借家があれば、それを選ぶのもおすすめです。
■賃貸物件を仮住まいにする際の費用
ここでは、大阪市内で2LDKの賃貸マンションを借りる場合の費用相場をご紹介します。
- 2LDKのマンションの家賃:12万円~
- 管理費・共益費(1カ月あたり):6千円~1万円)
- 礼金・敷金:24万円(各家賃の1カ月分が目安)
- 保証料:6万円(家賃の0.5カ月分が目安)
- 仲介手数料:12万円(家賃1カ月分が上限)
- 火災保険料:5千円~1万円
上記のような賃貸マンションに、6カ月程度仮住まいする場合の費用は、最低でも150万円程度となるでしょう。
短期賃貸マンションを借りる
賃貸物件の中でも、いわゆる「マンスリー」などと呼ばれる物件を借りるという選択肢もあります。マンスリーマンションであれば、1ヶ月単位からの短期契約も可能です。
マンスリーマンションは、通常の賃貸物件よりも家賃が割高に設定されていますが、日常生活に必要になる家具や家電が備わっていて、電気やガスの開通手続きなども不要です。契約すれば、すぐにでも生活を始められる点が非常に大きなメリットになるでしょう。
マンスリーマンションは、家建て替え時の仮住まいとして選ぶ方が増えていますが、家具・家電などの荷物は別の場所に預けなければならないので、トランクルームなども用意しなければいけません。
■短期賃貸マンションを仮住まいにする際の費用
短期賃貸マンションは、入居時の初期費用は不要の場合が多いですが、家賃は通常の賃貸よりもかなり割高に設定されています。2LDKの短期賃貸を半年程度仮住まいに利用する場合は、以下のような費用がかかります。
- 2LDKの短期賃貸マンションの家賃:20万円~
- 管理費・共益費(1カ月あたり):2万円
短期賃貸の場合、初期費用は家賃の10%程度必要になるぐらいです。したがって、半年間短期賃貸を借りる費用としては、約130万円を想定しておけばよいでしょう。ただ、もともと使用していた家具や家電を処分しない場合、それらを一時的に保管しておくため、トランクルームを借りなければいけません。トランクルームは1畳あたり1万円程度かかりますので、別にトランクルームを借りなければならない場合は、通常の賃貸物件を借りるよりも高くつく場合もあるでしょう。
実家に行く
夫婦どちらかの実家が近くにある場合、一時的に実家に身を寄せるという方法が最もコストを抑えられます。
もちろん、県をまたぐなど、居住エリアが大きく変わってしまえば、仕事や子供の通学に大きな影響が生まれるため、学区を変えなくても良い場所に実家がある場合に限ります。
また、一時的とはいえ、異なる世帯が同居することになるので、精神的な負担にも配慮が必要になります。
■実家を仮住まいにする際の費用
実家を一時的な仮住まいとして利用できる場合、その他の手法とは比較にならないほどコストを抑えることができます。実家であれば、いくばくかの生活費を支払わなければならないかもしれませんが、家を借りるための初期費用や月々の家賃などは不要です。実家のスペースに余裕があれば、荷物なども一緒にもっていくことで、トランクルームの費用も抑えることが可能です。
例えば、4畳程度のトランクルームのみを借りて、実家を仮住まいにすると考えると、仮住まいにかかる費用は約25万円程度で済みます。
プレハブ(ユニットハウス)をレンタルして敷地内に建てる
敷地に余裕がある場合、プレハブ(ユニットハウス)をレンタルして、新築工事の邪魔にならない場所に設置して住むという方法があります。敷地内ですので、お子様の通学にも影響を与えませんし、工事の様子を随時確認することも可能です。
ただ、プレハブを建てる際も、建築基準法に基づく必要がありますし、人が数カ月以上そこで暮らせるようにするには、水回り設備や空調設備なども準備しなくてはいけません。また、空調設備をきちんと整えたとしても、構造自体が外気の影響を受けやすいため、季節によっては短期間でも過ごしにくいと感じます。
したがって、コスト面、住み心地などの問題で、プレハブを仮住まいとして選ぶ方は少ないです。
建て替え中の仮住まいに関する疑問
それでは最後に、家の建て替えを検討している方が、仮住まいについて疑問に感じやすいポイントについてその答えも合わせてご紹介します。
引っ越し費用について
家の建て替えにともない、一時的に仮住まいで生活することになった時には、賃貸物件やトランクルームの家賃以外にも、引っ越しにまとまった費用が必要になります。引っ越し費用については、荷物の量や時期によってかかる費用がかなり変わります。例えば、引っ越し業者の繁忙期となる2~3月に仮住まいに引っ越しする場合と、それ以外の時期で比較すると、同じ荷物の量でも2~5万円ほど引っ越し費用が安くなるとされているのです。
したがって、家の建て替えは、引っ越しの繁忙期と重ならないように計画することで、引っ越し費用などを節約することが可能だと覚えておきましょう。また、荷物の量を少なくすることで、引っ越し費用が削減できますので、家の建て替えに合わせて不要な家具や家電、生活雑貨を処分すると良いでしょう。
なお、家の建て替えで一時的に仮住まいに引っ越しする場合は、「旧居からの退去時」「新居への入居時」の2回引っ越しが必要になります。引っ越しにかかる費用について、4人家族であれば合わせて20万円前後を想定しておけば良いでしょう。
住民票の取り扱いは?
仮住まいとはいえ、引っ越しするのであれば住民票も移さなければならないのではないか…という点に不安を感じる方は多いと思います。一般的には、引っ越しする際には、引っ越し完了後、速やかに役所に行き、住民票を移さなければならないとされています。
しかし、住民票については、生活の拠点が異動(移動)しない、異動期間が1年未満であるとあらかじめ分かっているという場合、移す必要はないとされています。したがって、家の建て替えスケジュールを確認し、1年以内に新居に戻れる場合は住民票を移す必要がないと考えて問題ありません。ただ、1年以上にわたって仮住まいで生活する事が見込まれる場合、自治体に相談する必要があります。
水道、ガスなどのライフラインはとめる?
家を建て替える際、水道やガス、電気などのライフラインの扱いに迷う方は多いです。一時的に引っ越ししたとしても、数カ月で戻ってくるわけですので、止めずにそのままにしておいた方が良いのかな…と考える方が多いと思います。
これについては、一般的に、家を一度解体するわけですので、水道や電気、ガスは止めてしまいます。タイミングとしては、仮住まいに引っ越す際に手続きの連絡をすると良いです。
なお、家の建て替えでライフラインをストップする際には、水道、電気、ガスを止める理由が「家の解体」であることもきちんと伝えなければいけません。この場合、単に利用を停止するのではなく、メーターなどの設備も撤去して置き換えることになるからです。
郵便物の転送手続きは必要?
家の建て替えで仮住まいに引っ越す場合、住民票の移動は必要ありませんが、郵便物の転送手続きは必要になります。家を建て替える場合、一時的に家がなくなるわけですので、転送手続きをしなければ、配達されなくなります。したがって、仮住まいに引っ越すタイミングで郵便局に足を運び、転送手続きだけは行っておきましょう。
なお、郵便の転送サービスは、1年間が期限となっていますので、何らかの事情で仮住まいが1年以上にわたる場合は、再度手続きを行いましょう。
クレジットカードや各種サービスの住所は変更すべき?
家の建て替えによる仮住まいへの引っ越しでは、クレジットカードを始めとした各種サービスに登録した住所の変更が必要になるのか…という点に疑問を感じる方も多いです。
これについては、仮住まいへの引っ越しに合わせて、住所の変更を行うのが推奨されます。最近では、専用サイトからマイページにログインするだけで住所の変更が簡単にできますし、そこまで手間もないはずです。クレジットカードの郵便物は、転送不要郵便物として発送されるため、郵便局で転送手続きを行ったとしても転送されません。仮住まいに引っ越ししている間にクレジットカードの更新時期がきて、住所変更を怠っていた場合、新しいクレジットカードが手元に届かない…なんて不都合が生じる恐れもあります。
火災保険はどうすれば良い?
家を建て替えする場合、火災保険は契約しなおす必要があります。というのも、火災保険は建物を対象とした保険なので、一度家を解体する建て替えの場合、もともとの契約は解約する必要があるのです。
新しい家を建て直した時には、新たに火災保険を契約しなおしましょう。
まとめ
今回は、家の建て替えにともなう仮住まいについて、仮住まい探しの注意点やどれぐらいの費用がかかるのかを解説しました。
家を建て替える場合、旧居は取り壊しをしてから新たな家を建てていくわけですので、新居が完成するまでは家族が生活をするための拠点を別に設けなければいけません。こう聞くと、世の中にはたくさんの賃貸住宅があるのだから、近くにある賃貸物件を借りれば良いと考えてしまう人が多いはずです。しかし、通常の賃貸物件は、2年契約を結ぶのが一般的で、半年などの短期間の契約は大家さんのリスクが大きくなるため、審査の段階で契約を断られてしまう可能性が高いのです。最近では、マンスリーなどと呼ばれる短期契約の賃貸物件も登場していますが、一時拠点を考えているエリア内にあるとは限りません。
こういったことから、家の建て替えにともなう仮住まい探しは、皆さんが考えている以上に難易度が高いと考えておきましょう。悠建設では、家の建て替え計画はもちろん、一時的な仮住まい探しもサポートさせていただきますので、関西圏内で建て替えを検討した際は、お気軽にお問い合わせください。