
日本は、諸外国と比較すると、地震の発生件数が非常に多いと言われています。実際に、過去に私たちの生活に深刻な問題を引き起こすことになった巨大地震はいくつも発生していますし、さらに南海トラフ地震や首都直下地震など、過去に例を見ない大きな地震の発生が近づいていると言われています。
こういったこともあり、日本では、建物を建築する際には最低限の耐震性能を確保することが法律で定められていて、家の耐震性を高める手法もさまざまなものが開発されています。家の耐震性を向上させる方法はいくつかあるのですが、その中でも近年注目されているのがコーチパネル工法とです。コーチパネル工法は、飛行機にも採用されるモノコック構造で家を建てるため、耐震性が飛躍的に高まると注目されているのです。さらに、耐震性のみでなく、昨今の住宅に必須の能力とされている気密性や断熱性も同時に高めることができ、現在の新築業界で求められる機能をすべて兼ね備えているのではないかと思えるぐらい高性能な家を実現できます。
コーチパネル工法は、近年普及しつつある最先端の工法であり、悠建設でも有力なプランの一つとしてお客様にご提案しています。ただ、まだまだ「コーチパネル」に聞き馴染みがなくどういったものかその概要すら分からない…と言う方も多いので、この記事ではコーチパネル工法がどういったもので、どんなメリットがあるのかを簡単に解説します。
建物の耐震性を高める方法とは?
地震の発生頻度が高い日本では、建築基準法により最低限確保しなければならない耐震性能が決められています。設計の段階で、その耐震基準に満たないとなれば家を建てることはできないのです。それでは、建物の耐震性を高めるとはどのような方法が採用されているのでしょうか?
新築住宅を建てる際の流れは、まず基礎工事から始まり、基礎が出来上がり次第、その上に柱を立て、梁をのせて家の骨組みを作っていくという流れで進みます。そして、耐震部分の対策については、外周部に耐力面材というボードを張っていく工法が主流となっています。
この耐力面材は、非常に強度が高く、1枚あたり60本以上の釘を使用してしっかりと固定することで地震に耐えられる耐力壁となります。この工法は、面材を外周部全体に設置していくことで、地震のエネルギーが面全体で分散され、耐震性が高くなるという仕組みになるのです。そしてさらに、室内側の対策としては、柱と柱の間に筋交いと呼ばれる部材を斜めに設置することで固定し、耐震性の補助を行います。
筋交いについては、それぞれの建物について、間取りや耐力壁のバランスなどによって配置する場所と数が変わります。なお、一昔前までの耐震対策では、筋交いを用いることで耐震性をあげる方法が一般的でした。しかし、外周部の対策としては面材の方がメリットが大きいことから、近年の耐震対策では面材が用いられるのが一般的となっています。
筋交いよりも面材が主流になった理由
昨今の耐震対策としては、上述の通り筋交いよりも耐力面材の方が広く普及しています。面材が主流になっていった要因は、固定するための釘の本数と打つ場所による耐震性の違いからだとされています。
筋交いは、ビスを打つ場所が2箇所26本と面材よりも少なくなります。そして地震の揺れがあった際には、その少ない固定部分に力が集中してかかることになります。面材については、先ほど紹介したように、全体にまんべんなく60本もの釘を打つことで固定するため、地震の力も満遍なくかかることになるわけです。
筋交いと面材に関しては、単純に固定に使用する釘が26本と60本と言う違いがあり、全体的に満遍なく釘を打てる面材の方が地震の力を分散させることができるため、耐震性が向上します。なお、筋交いに関しては、1本だけでなくたすき掛けのように2本の筋交いを交差させるように設置すれば、固定のための釘は4カ所52本になるため、高い耐震性を確保することが可能です。
しかし、筋交いの数を増やすということは、単純に施工の手間やコストが高くなることに繋がりますし、筋交いを通すために設置可能な断熱材の体積が少なくなり、断熱性も低下するといったデメリットが生じます。こういったことから、昨今の建物の耐震対策では、外周部分は面材を利用する、建物内部は筋交いを使うといったケースが多くみられるようになっています。
コーチパネルについて
耐力面材を利用した耐震対策では、外側から耐震面材を張り付けるという方法が主流となっています。しかし、コーチパネル工法では、頑丈なパネルを柱と柱の間にはめ込んでしまうという方法が採用されています。このパネルには、先ほどの耐力面材が釘で打ち込まれているため、耐力壁として機能します。
さらに、柱と柱の間にパネルをはめ込むというモノコック構造により、耐震性が飛躍的に高くなるとされているのです。ちなみに、住宅におけるモノコック構造については、外皮(天井や壁、床)全体で建物を支える構造で、地震や台風などの自然災害に強い家になるとして注目度が年々高くなっています。
コーチパネルの耐震性の高さについては、実験でも明確にその効果が目に見えるようになっています。メーカーが動画で公表しているのですが、一般的な耐力面材を外側から張る方法と、コーチパネル工法の構造物にて、同じ揺れを与える実験が行われています。この実験では、コーチパネルの方が何度も大きな揺れに耐えていて、同じ耐震等級3でも、工法によって地震によって生じる影響が大きく異なることが良く分かると思います。
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コーチパネル工法は、気密性・断熱性も確保できる
コーチパネルは、トップレベルの断熱性能を持つ断熱材を埋め込むことができます。数値が小さいほど断熱性能が高いことを示す熱伝導率が0.020W/(m・k)を誇るトップクラスの断熱材「ネオマフォーム」を埋め込むことができるので、非常に高い断熱性を持つ家にすることが可能です。
また、埋め込んだパネルと柱部分に気密テープを施工することで、高い気密性も確保することができるのです。
昨今の住宅は、高い耐震性は当然として、断熱性や気密性も確保することが重要視されています。コーチパネル工法は、「耐震性・断熱性・気密性」という住宅の3大性能を非常に高いレベルで実現できることが大きな特徴と言えるでしょう。
精度にばらつきがなく、コストも抑えられる
コーチパネルは、ハウスメーカーによる新築住宅と比べると、同じ性能をよりローコストで実現できることも大きなメリットです。これは、コーチパネルが工場生産のため、現場の作業が大幅に効率化されているのが要因です。
耐力面材による耐震対策では、通常、職人さんが現場で釘を打って固定します。しかし、コーチパネルの場合、工場で既に固定された状態の物が製造され、現場に運ばれてくるのです。実は、耐力面材の釘打ちは、非常に重要なポイントになり、力を強く入れ過ぎて釘がめり込んでしまうと、耐力壁の性能が落ちてしまうとされるのです。そのため、新築現場は、高い技術力を持った職人さんが必要で、当然技術力の高い人材は人件費などのコストが高くなります。
コーチパネルの場合、機械で正確な釘打ちが行われるため、製品によって性能の誤差が生じることがありません。さらに、現場は、送られてきたパネルを組み立てていくことで、高い性能を誇る家が出来上がるようになっているため、建築コストそのものを抑えることができるわけです。
まとめ
今回は、耐震性の高い住宅を実現できると注目されているコーチパネル工法について解説しました。日本は、地震の発生件数が非常に多いことから、建物を建てる際には法律に沿った耐震性を確保しなければならないようになっています。
注意が必要なのは、現在の耐震基準は「震度6~7程度の地震でも建物が倒壊しない」ことが基準となっているのですが、これはあくまでも1度の地震に耐えることが想定されています。しかし、震度7クラスの地震が発生する場合、その前後に本震に準じた規模の大きな地震が発生するケースがほとんどで、建物の耐震のことを考えると、繰り返し発生する地震に耐えられることも非常に重要なのです。上で紹介した動画を見ていただければ分かりますが、コーチパネル工法は、一度の巨大地震に耐えられるだけでなく、繰り返し発生する揺れにも耐えられるようになっていて、繰り返す地震に対しても「住み続けられる家」であることが実証されています。
このほか、コーチパネル工法は、耐震性だけでなく、断熱性や気密性についても、非常に高レベルの性能を実現しているため、まさに現在求められる住宅の機能はすべて兼ね備えていると言っても良いでしょう。なお、コーチパネルは、建材として非常に高性能なので、コストがそれなりにかかってしまう…と解説される場合が多いです。しかし、他のハウスメーカーの工法などにより、同じ性能の家を建てる場合と比較すれば、十分コストパフォーマンスが良いと言える住宅になるので、コストについてそこまで不安に感じる必要はないでしょう。
なお、コーチパネルは、悠建設が推奨する通気断熱WB工法との相性が非常に良い工法とされています。現在、耐震性が高く、長く家族が安心して過ごせる住宅の建築を検討中の方がいれば、お気軽に弊社のお問い合わせください。