SE工法(SE構法)は、注文住宅を建てる際に用いられる木造建築の工法の一つです。家を建てるための工法は、現在でも研究開発が進められており、注文住宅を建てる際にきちんと工法にまで注目することで、より優れた家を建てることができるようになります。
SE工法は、特に「耐震性が高い木造住宅を建てたい!」とお考えの方に推奨される工法で、従来の在来軸組構法よりも耐震性に優れた家を建てられるため、家族が安心して安全に生活できる家を実現することができるとされているのです。さらにSE工法は、高い耐震性とは相反する住宅の形である「開放的な空間」も両立できるうえ、断熱性なども高めやすいなど、まさに現代の住宅に求められる性能を詰め込んだ品質の高い住宅を実現することも不可能ではありません。
ただ、これから新築注文住宅の建築を検討している方の中には、「SE工法って何?」などと、この工法の名前すら初めて耳にしたという方が多いはずです。日常生活の中では、家の建築工法が話題に上がることは少ないですし、SE工法についても採用した場合のメリットやデメリット部分が気になるという方も多いです。そこでこの記事では、SE工法の特徴や、採用する場合のメリット・デメリットを解説します。
SE工法(SE構法)とは?その特徴をご紹介
それではまず、高い耐震性と開放的な空間を両立できる工法として注目されているSE工法について、その特徴やなぜこの工法が開発されたのかをご紹介します。
SE工法の「SE」とは、「Safety Engineeringn(工学的に安全)」の頭文字をとった略語で、許容応力度計算や立体解析構造計算プログラムなどの構造計算を行うことで、高い耐震性を持つ家を実現することができる工法です。そもそもSE工法は、「地震に強い木造住宅を作る」ことを目的に開発されていて、一定の強度が確保された構造用集成材の使用や柱や梁を独自開発の金属部品(金物)で緊結することで、非常に高い耐震性を実現することが可能です。
SE工法で建てる家は、耐力壁が少なくて済むので、間取りの自由度が高いうえに、柱や壁のない広い空間を作ることができます。実際に、SE工法を開発したメーカーの公式サイトでも、『在来工法(従来の木造建築技術)では不可能とされてきた自由度の高い空間設計と、高い耐震性能の両方を叶える「家の建て方」』と紹介されています。
SE工法が開発された経緯
日本は、諸外国と比較すると、大規模な地震の発生件数が非常に多い国として有名です。例えば、2011年から2020年まででみると、マグニチュード6.0以上の地震は、全世界の17.9%が日本周辺で発生したとされています。規模が比較的小さな地震を含めても、日本は地震の発生回数ランキングで世界4位に入っているなど、地震への備えが必要不可欠な国と言えるのです。
実際に、日本の地震対策は、世界的に評価されていて、被災時の対応だけでなく、「地震に強い家を建てる」という部分についても注目されています。日本で家を建てる際には、建築基準法により満たさなければならない耐震基準が定められているなど、人命を守るための安全対策が昔から続けられています。しかし、高い耐震強度を持つはずの日本の住宅でも、想定外の巨大地震が発生した時には、大きなダメージを受けてしまいます。2024年も、石川県能登地方でマグニチュード7.6という巨大地震が発生して、多くの建物が被災しています。
SE工法は、このような日本という国の特性に合わせて開発されて木造建築技術となります。実は、SE工法は、1995年に発生した阪神淡路暖震災により、木造家屋の倒壊が数多く発生したことから、このような被害を防ぐために開発されたとされているのです。先ほどもご紹介したように、SE工法は、単に自由度の高い間取りや開放的な空間を実現するための工法ではなく「地震に強い木造住宅を作る」ことが目的となっているのです。
この工法は、株式会社エヌ・シー・エヌが構造建築家の「播 繁(ばん しげる)」氏と共同開発を行い、木造でありながら鉄骨やRC造に負けないレベルの耐震性を実現しています。SE工法は、1999年に、建築基準法第38条に基づく建設大臣の認定も受けており、SE住宅性能保証制度と呼ばれる10年間の無償保証制度もスタートしています。
木造でありながらラーメン構造を初めて実現!
SE工法は、ラーメン構造を日本の木造住宅で初めて実現している点も大きな特徴です。
ラーメン構造は、柱と梁で建物を支える構造のことを言います。ちなみに、「ラーメン」は食べ物ではなく、ドイツ語で「額縁」を意味しており、長方形に組まれた骨組み(部材)の各接合箇所を剛接合した構造形式のひとつです。ラーメン構造は、柱と梁で枠組みを作り、そこに壁や床を張っていきます。柱と梁の接合部を剛接合(強く固定すること)することによって耐震性を高められます。一般的には、鉄骨造・鉄筋コンクリート造のマンションや公共建築物などに採用されている構造です。
このラーメン構造が木造住宅で採用されていないのは、主な材料となる木が天然素材であることが大きな要因です。天然素材である木は、均一の強度を持つ木材を調達し、さらに接合面で剛接合させることが難しいため、木造住宅ではラーメン構造の実現が困難だったわけです。しかし。SE工法の場合、一定の強度が確保された構造用集成材を使用する、接合部は独自開発の「SE金物」と「Sボルト」によって強い接合部を実現することができるようになったため、従来の施工では困難であった木造住宅でのラーメン構造を日本で初めて実現できたのです。
SE工法は、木造でありながら、マンションなどに採用されているラーメン構造を取り入れることで、非常に高い耐震性を実現しています。
高い技術を認められた工務店が施工する
SE工法による注文住宅は、高い技術力を保有する工務店が施工するという点も特徴の一つです。こう聞くと、「家を建てる人が工務店を決めるのに、なぜ高い技術力があるとわかるのか?」と疑問を感じる方も多いかもしれません。
しかし、SE工法は、開発元である株式会社エヌ・シー・エヌの他、株式会社エヌ・シー・エヌから「SE構法登録施工店」の認定を受けなければ、SE工法で家を建設することができないのです。SE工法を施工するためには、一定以上のスキルとノウハウが必要になるため、工法の開発元から認定を受けなければならないわけです。
逆に言うと、SE工法を施工できる工務店については、一定の技術力があると考えられ、安心して施工を任せることができるでしょう。
SE工法のメリット・デメリット
SE工法の特徴が分かっていただけたと思うので、ここからは注文住宅を建てる際、SE工法を採用することで得られるメリットと、注意しなければならないデメリットについて解説します。
SE工法は、阪神淡路大震災を契機に、巨大地震が発生した時でも家族が安心して過ごすことができるようにすることを目的に開発された工法です。この工法は、自由な空間デザインと高い耐震性能を両立することができるとされているのですが、多くのメリットがある反面、いくつか注意しなければならないデメリットも存在します。
ここでは、SE工法の代表的なメリットとデメリットをご紹介します。
SE工法のメリット
まずはSE工法のメリット面からです。注文住宅を建てる際、SE工法を採用することで、以下のようなメリットが得られます。
耐震性が高い家を実現できる
SE工法の最大のメリットは、やはり高い耐震性能を持つ家が建てられるため、地震などの災害に備えられるという点でしょう。上述したように、SE工法は、阪神淡路大震災で、数多くの木造住宅に被害が生じたのを契機に開発された工法で、被災した木造住宅を細部まで研究して、巨大地震にも耐えられるような高い耐震性を実現しています。SE工法で建てられた住宅は、過去に16,000棟以上あるとされていますが、現在のところ構造の損傷や倒壊は一棟もないとされています。
阪神淡路大震災以降も、東日本大震災や熊本地震など、全国各地で大きな地震が発生しています。SE工法は、そういった巨大地震でも倒壊しなかったという圧倒的な耐震性能を誇っているため、今後発生が予想される南海トラフ地震や首都直下地震に備えることを考えると、家族の安全を守れる可能性が高いという点が大きなメリットになるでしょう。
断熱性能を高めやすい
SE工法は、耐震性だけでなく、断熱性も高めやすい工法とされていて、一般的な木造住宅と比較すると、耐震等級や断熱等性能等級などが取得しやすく、高品質な家を実現できるとされています。
SE工法の耐震性能は、先ほどご紹介したように、ラーメン構造が採用されていることが大きく、さらにここに耐力壁を組み合わせることで、非常に高い耐震性能を実現しています。そして、SE工法の耐力壁は、断熱材を充填しやすい構造になっているため、家の外側を断熱材で包む外断熱工法が実施しやすいという特徴があるのです。
こういったことから、SE工法は、高い耐震性と高断熱を両立した、誰もが住みやすい空間を実現可能です。
自由度の高い間取りと開放感のある空間を実現
SE工法は、ラーメン構造と耐力壁を組み合わせることで、従来の木造住宅よりも少ない柱や梁で施工することが可能です。つまり、今までの工法なら、家の中に必要であった柱や壁が少なくて済むようになるため、間取りの自由度が一気に高くなるのです。SE工法の家であれば、広い面積のLDKやビルトインガレージなどを実現しても、耐震性に悪影響を与えることがないため、自分が理想とする間取りを自由に考えることが可能です。
SE工法は、高い耐震性や断熱性などという高機能性と開放的な空間を兼ね備えることができるため、デザイン性と安全性を両立した理想の住宅を建てることが可能です。
地域密着の工務店が施工するため、コストパフォーマンスが良い
SE工法は、開発元であるエヌ・シー・エヌから認定を受けた工務店が施工を行います。SE工法の施工を行う工務店の多くは、技術力が高い地域密着型の会社が多く、大手ハウスメーカーが建てる家と比較すると、余計な部分にコストがかからないため、費用対効果が高くなるとされているのです。
例えば、大手ハウスメーカーの場合、全国に支店を持っている、展示場を開設している、多くの従業員を抱えているなどと言ったことから、広告宣伝費や人件費などに莫大なコストがかかります。当然、これらのコストは、住宅の費用に影響を与えることから、どうしても割高な価格設定になってしまうのです。
これが、地域密着型の工務店の場合、広告や営業にそこまでのコストがかからないため、コストパフォーマンスが良くなるわけです。なお、デメリット部分で紹介しますが、SE工法は、一般的な住宅を建てる場合よりはコスト高になってしまいます。しかし、中小規模の会社が施工を担うという点で、同じコストをかけることで、高品質な家に仕上がる可能性があるのです。
SE工法のデメリット
次はSE工法のデメリット面です。上述したように、SE工法は、非常に優れた住宅を建てることが可能ですが、いくつか注意しなければならないポイントも存在します。ここでは、SE工法のデメリットとしてよく指摘されることをご紹介します。
施工できる業者が限られている
SE工法は、開発元である株式会社エヌ・シー・エヌから「SE構法登録施工店」の認定を受けなければ施工をすることができません。この認定制度は、高い技術力を持った施工会社なのだという証明になる一方、施工できる業者が限られてしまうことがデメリットにもなり得るのです。
現在では、「SE構法登録施工店」の認定を受けている会社が全国各地で増えていますが、それでもどこにでも存在するという訳ではありません。そのため、あなたが家を建てようと考えているエリアの近くに、SE構法登録施工店がない場合もあり、その際にはSE工法で家を建てたくても建てられない…というデメリットが生じてしまうのです。
SE構法登録施工店の検索については、開発元であるメーカーのwebサイト内で検索することができるので、自分が家を建てようとしている場所の近くに施工可能な会社があるかは事前に確認しておきましょう。
工法としてはまだ歴史が浅い
SE工法の二つ目のデメリットは、開発されてまだ間もない技術だという点です。先ほどもご紹介したように、SE工法は、阪神淡路大震災が契機となり、地震による被害を可能な限り少なくするために開発された工法です。建設大臣の認定を受けたのも、1997年と、その他の木造住宅の工法と比較すると、圧倒的に新しい工法と言えるのです。
最新の工法と聞くと、良い面ばかりをイメージする方もいますが、住宅の工法としては、将来的に耐震補強などが必要になった際、どのような対応をすれば良いのかが確立されていない…という問題があるのです。例えば、一般的な木造住宅の工法である在来軸組構法であれば、住宅が古くなった時の耐震補強の方法などもきちんと確立され、実績も残っています。
これが、SE工法の場合、まだまだ築年数が浅い住宅ばかりで、補強工事の実例などもないというのが現状なのです。そのため、将来的にどのような不具合が生じるのか、またどのような対応が必要になるのかがまだ不確かだという点は大きなデメリットと言えるでしょう。
一般的な住宅建築工法よりもコストが割高
3つ目は、一般的な木造住宅(在来軸組構法)と比較すると、建設コストが割高になってしまう点です。
SE工法は、基礎工事に高い精度が求められることや、柱や梁の集成材、強い接合のための専用の金物を使用しなければならないという点から、一般的な木造住宅よりもどうしてもコストが高くなってしまいます。さらに、SE工法の場合は、優れた耐震性を実現するために構造設計が必要で、そのために費用として住宅1棟あたり150万円程度の追加費用がかかるとされています。
大手ハウスメーカーに依頼する場合と比較すると、コストパフォーマンスが良いとされますが、同じ施工会社に依頼することを比較すると、在来工法の住宅よりもコストがかかることは覚悟しておく必要があります。
SE工法を採用することで実現できる家の形とは?
それでは最後に、注文住宅を建てる際、SE工法を採用することで可能になる間取りやデザインについても簡単にご紹介します。先ほどご紹介したように、SE工法は、通常の木造住宅に比べて家の内側に柱や梁、壁が少なくて済み、間取りの自由度が高くなるというメリットがあります。
この特徴から、SE工法で建てた家は、以下のようなデザインを実現することが可能になるのです。
大空間を実現
SE工法で建てた家は、従来の一般住宅とは異なり、木造ラーメン構造を生かして迫力のある大空間を実現することが可能です。
在来工法の木造住宅では、耐震性を高めるために多くの柱や耐力壁が必要になります。そのため、広いリビングなどを設けたくても、耐震性の関係で実現することができない…なんてケースもあるのです。一方、SE工法の場合、ラーメン構造の強みを持つ強い構造躯体が実現できるため、開放的な大空間と高い耐震性能を両立することが可能になります。
例えば、30畳以上の大きなリビングルームや二層分吹き抜けにした6mの高さを超える天井高など、迫力のある大きな空間を家の中に作り出すことが可能です。SE工法は、余計な柱を必要としないため、景色を遮る事のない、パノラマに広がる大開口を実現できるのが大きな魅力です。
壁いっぱいから採光できる大開口
SE工法は、壁に頼らない工法であることから、開口窓もできるだけ大きく設置することができます。
眺望や採光のことを考えると、開口窓はできるだけ大きくとりたいと考えるものですが、一般的な在来工法の場合は、開口部を大きくとると耐震性を落としてしまう原因になります。一方、木造ラーメン構造を採用したSE工法の場合、耐震性を損なうことなく、大開口を実現可能なのです。
SE工法は、柱や梁、壁を少なくしたとしても耐震性や強度をきちんと保つ頃ができるため、住宅のデザイン性や眺望、採光による住みやすさを全て兼ね備えた高品質な住空間を実現可能です。
ダイナミックな吹き抜けを実現可能
木造住宅の構造において、実は床の存在は非常に大きな影響があるのです。一般的な在来工法では、大きな吹き抜けを作る場合、耐震性を低下させる要因になってしまうため、実現不可能なケースもあります。
しかしSE工法の場合、強い躯体を生かしながら構造計算で家全体の強度を検証しているため、大きな吹き抜けも安全に設計することが可能です。開放感のある吹き抜けを取り入れることができれば、空間を視覚的に広く見せることができますし、室内も明るく開放的な雰囲気になります。さらに、上下階にいる家族のコミュニケーションを活性化させることも出来るなど、空間デザイン面だけでないメリットもたくさん得られるはずです。
大きなビルトインガレージを設けたガレージハウスも実現可能
近年では、土地面積の関係上、駐車場を建物内に設置するビルトインガレージが一般的になっています。そして、SE工法は、このビルトインガレージとの相性が非常に良いのです。
ビルトインガレージは、建物の一階部分をガレージにする間取りなのですが、車が停められるほどの大きな空間をとることになるため、耐震性に不安が残ってしまいます。しかし、SE工法の場合は、耐震性が柱や梁、壁の数に依存しないことから、大きなビルトインガレージを導入したとしても、耐震性に優れた家を設計することが可能なのです。
メーカーのサイト内では、「最大3台まで駐車できる最大間口が9mまでのビルトインガレージを実現」と紹介されているなど、車好きの方にとっては非常におすすめできる住宅の建築工法となります。
まとめ
今回は、住宅の建築工法の一つであるSE工法について、この工法がどのような工法なのか、また実際に採用した場合にどんなメリットとデメリットがあるのかについて解説しました。
記事内でご紹介したように、SE工法は、阪神淡路大震災を契機に開発された工法で、大規模地震があった際でも、家族が安心して過ごせるような耐震性の高い家にするための工法とされています。ただ、SE工法を採用した家は、単に耐震性が高くなるだけでなく、断熱性の向上や自由度の高い間取りの実現も可能となるため、家の建築を検討している方からの注目度が年々高くなっているのです。
家を建てる際には、建物の外観にこだわったり、建築コストの安さに注目する方が多いですが、長く安心して過ごす家を実現するためには、家の建築工法にも着目するようにしましょう。悠建設では、お客様が安全に快適に過ごすための注文住宅の建設をお手伝いしていますので、お気軽にご相談ください。