
2階建て以上の一戸建て住宅では、トイレは1階に設置するケースが一般的です。特に昨今では、2階建て以上の住宅でも、1階に主寝室を設けたいと考えている方が増えていることもあり、トイレの位置を考えた時には、自動的に1階に作ることをイメージする方が多くなると思います。
ただ、1階にトイレを設置した新居で生活を始めてみると、「2階にもトイレがあった方が便利だったかも…」と感じてしまうことも少なくないようです。特に、二人以上のお子様と暮らしている、または親世代と同居しているなど、一緒に暮らす人の人数が多いご家庭の場合には、1階のトイレだけでは何かと不便に感じてしまうこともあり、リフォームしてでも2階部分にトイレを増設したいと考えるケースがあるようです。
そこでこの記事では、2階にもトイレを設置することで得られるメリットや、その逆のデメリットについて解説します。また、2階トイレに関しては、生活し始めてから後悔してしまうという話を耳にする機会もあるため、どのような点に後悔する方がいるのかもご紹介します。
2階にトイレを設置することで得られるメリットについて
それではまず、1階部分だけでなく、2階にもトイレを設置することで得られるメリットについて解説します。一般的には、トイレは1階部分に1箇所あれば良いと考える人が多いのですが、家族構成などによっては2階にもトイレがあった方が良いと感じるケースがあります。
実際に、1階だけでなく2階にもトイレを設けた場合、以下のようなメリットが期待出来ます。
メリット1 トイレ渋滞を緩和できる
一つ目のメリットは、1階と2階、それぞれにトイレがあることで、家族間でのトイレの取り合いを回避できるようになるという点です。家族の人数が多ければ多いほど、トイレは混雑しやすくなります。
特に、通勤や通学の時間が家族の間で重なってしまう「朝」の時間帯は、トイレに行きたくなるタイミングが被りやすいため、家のトイレが1箇所しかない場合は、渋滞が発生する可能性が高くなるのです。
これが、家の中にトイレが2カ所あれば、それぞれのトイレを使用することができるようになるので、朝の忙しい時間帯でも、トイレの取り合いを回避することができるようになります。
メリット2 来客時にもトイレが使用しやすくなる
トイレは、家の中でもバスルームと並んで、特にプライベート性が高いスペースになります。さらに、トイレの場合、汚れや匂いがつきやすいという特性があるため、来客時にはトイレを共有することに抵抗を感じてしまうという方も少なくないのです。また、来客者側にとっても、家主と同じトイレを使用するとなると、少し気を使ってしまう…という場合が多いです。
これが、1階部分と2階部分、2カ所のトイレがあれば、来客者があった時は「1階はゲスト用、2階は家族用」などと、使い分けることができるようになり、お互いが気兼ねなくトイレを使用することができるようになるのです。
メリット3 夜中に階段移動をしなくて済む
3つ目のメリットは、2階に寝室が設けられている場合、夜中にトイレに行きたくなった際、階段を利用しなくて済むため、安全性が高まるという点です。
最近は、1階に主寝室を設けるケースも増えていますが、一般的な日本の戸建て住宅の場合、1階にはリビングやキッチンを配置し、2階に寝室と子供部屋を配置するという間取りが多いです。ちなみに、1階に寝室を設ける場合でも、子供部屋は2階に配置されることがほとんどです。この場合、1階にしかトイレを設置していないケースでは、夜中にトイレに行きたくなった時には、階段移動が必要になります。住み慣れた自宅とはいえ、夜中に寝ぼけ眼で階段移動をする場合、踏み外して転落してしまうといった事故の可能性が残ってしまいます。また、トイレまでの移動のせいで、目がさえてしまう、他の家族が起こされてしまうといった問題も発生するかもしれません。
2階にもトイレを配置しておけば、同じフロア内での移動となるため、そうしたリスクを軽減することができるのです。特に、小さなお子様や高齢者が同居する家の場合、安全第一に考えると2階にもトイレを配置する事が望ましいかもしれませんね。
2階にトイレを設置することで生じるデメリットについて
2階にもトイレを設置すれば、上記のようにさまざまなメリットが得られます。ただ、いくつか注意すべきデメリットも存在するので、以下の点については、きちんと押さえておきましょう。
デメリット1 コストがかかる
トイレを2階にも設置する場合の最もわかりやすいデメリットは、コストがかかる点です。
2階にトイレを設置する費用は、一般的に50~100万円が相場とされています。当然、1階に加えて2階にもトイレを設置する場合、この費用が追加されてしまう訳なので、明確なデメリットと言えるでしょう。
新築時に、1階と2階にトイレを設置してみたものの、生活を始めてみるとどちらか一方だけで問題なかったと感じると、当然、費用をかけたことに後悔してしまうでしょう。
デメリット2 掃除など、メンテナンスの手間が増える
2階にもトイレを設置する場合、掃除の手間は単純に2倍になってしまいます。トイレは、家の中でも汚れがつきやすい場所となるので、小まめな清掃が求められるため、日常生活の中でトイレを2カ所にしたことをデメリットに感じてしまうことも多くなると思います。
また、トイレが2カ所になるということは、定期的なメンテナンスや修理にかかる手間や費用が倍になる、トイレの掃除用具や芳香剤(消臭剤)など、トイレ雑貨の購入頻度が高くなるなどといった理由で、その部分のコストが高くなる点に注意が必要です。
デメリット3 階下で排水音が気になる場合がある
排水音の問題は、集合住宅でありがちなトラブルなのですが、戸建て住宅でも、2階部分にトイレやお風呂を設けた場合、排水音が1階にいる人の耳に入り、不快に感じられてしまうという問題が生じることがあります。
1階寝室プランを採用し、親世代が1階で就寝するという形の場合、子供世代との生活時間が大きく異なるため、夜中にトイレの排水音が聞こえて起こされてしまう…と言ったトラブルに発展する可能性があります。この他、食事中やリビングでくつろいでいる時にトイレを流す音が聞こえたりする可能性があるので、人によっては不快感を感じる可能性があります。
ちなみに、排水音の問題については、トイレの設置場所や配管の位置を工夫する、防音仕様にするといった工夫で対策を施すことは可能です。ただ、この場合、配管距離が伸びてしまう、防音対策など本来は不要な対処が必要になるといったことで、余計な建築コストがかかる場合があります。そのため、家の構造によっては、大きなデメリットになる可能性があるので注意しましょう。
2階トイレに後悔しやすいポイントと後悔しないための工夫
それでは次に、2階にもトイレを設置すると言う選択をしたとき、後悔してしまいがちなポイントとそれを解消するための注意点について解説します。
排水管のつまりが原因で、1階のトイレが逆流する
1階と2階、両方にトイレを設置した場合、排水管のつまりが原因となり、1階部分のトイレが逆流するというトラブルに発展する可能性があります。
1階と2階のトイレを繋ぐためのメインの配管が詰まれば、1階のトイレが逆流してしまうという事例が発生してしまうことがあります。これは、排水速度が遅くなるものの、トイレを洗浄する水の速度は変わらないため、1階部分のトイレが逆流してしまうという仕組みです。
このようなトラブルを防止るためには、メインとなる排水管が詰まらないように運用するということが大切です。例えば、1度に大量のトイレットペーパーを流さない、トイレットペーパー以外の物を流さないなど、適切なトイレの使用方法を守っていれば、大きな問題には発展しにくいと思います。万一、トイレが詰まってしまった場合、自力での対処はかなり難しいので、専門業者に早めに相談するようにしましょう。
配管の問題で、2階トイレが下水臭くなる
2階にもトイレを設置するという選択をした場合、配管の問題で、2階のトイレ周りが下水臭くなってしまう場合があります。当然、トイレから常に悪臭を感じるといった環境になれば、2階にトイレを設置したことに後悔してしまうでしょう。
通常、2階建て以上の建物の場合、トイレの配管には通気管が備わっていて、これにより空気圧を調整しています。しかし、この通気管に何らかのトラブルが発生した場合、トイレの封水が保たれなくなり、通気管や壁、床の隙間から臭いが漏れてしまうことがあるのです。
このような問題を防ぐためには、通気管に異常が生じていないかどうかを小まめにチェックすることが大切です。また、正しく設置されているのかなどもチェックし、何か異変を感じた時にはすぐに専門業者に相談するようにしましょう。
水漏れして、1階の天井が水浸しに
この問題も、2階にトイレを設置しなければ起こり得ないので、「2階にトイレを設置する」と言う選択を後悔するポイントになってしまいます。
2階に設置したトイレで水漏れが発生した場合、結果的に1階の天井部分が水浸しになってしまいます。トイレの水漏れに関しては、便器の損傷や給水管・排水管の緩み、破損など、さまざまな原因が考えられますが、経年劣化による故障のほかにも、地震などによって突発的に配管がズレ、水漏れしてしまうこともあるのです。この場合、配管のズレを修正する、部品を交換するなど、比較的軽微な修理で対処することができる場合もありますが、状況によってはトイレを全面的に改修しなければならなくなるケースもあるのです。当然、トイレの全交換となると、多額の修理費がかかってしまうので、2階にトイレを設置したことを後悔する可能性があるでしょう。
水漏れに関しては、すぐに気づくことができない場合もあるのですが、特定の部屋だけ湿気が高く感じる、かび臭さを感じるなどといった場合、天井裏に水が溜まっている可能性があるので、専門業者に調査してもらうと良いです。また、水漏れは、水道代が突然高くなるといった問題で気づける場合もあるので、専門業者に相談して、なにが原因なのか特定してもらい、それに応じた対処を実行しましょう。
トイレの設置場所(間取り)について
ここからは、2階に設置するトイレそのものの問題について後悔しがちなポイントをご紹介します。まずは設置位置についてですが、2階にトイレを設置する場合は、以下のような場所が候補となります。
- 廊下に隣接した場所
- 部屋の中に設置する
- 収納スペースをトイレに変更する
新築の場合、居住のためのスペースを少し減らし、トイレにすれば良いので、廊下に隣接した場所を選ぶと良いです。しかし、後から増設するという場合、間取りに余裕がなければ、廊下に隣接した場所を選ぶことができないのです。この場合、ベランダや収納スペースをトイレに変更するなどの対処が行われます。
ただ、トイレの場所を選ぶときには、可能な限り1階のトイレに近い場所を選ぶ、階段の近くは避けるといった点に注意することが、後悔を防ぐポイントになります。1階のトイレから離れた位置にトイレを設置すると、配管の距離が長くなってしまうため、コストが余計にかかってしまうことになります。また、階段の近くを選んだ時には、誤って転落してしまうリスクが残ってしまうのです。
トイレの設置場所は、コストや安全性を考慮しながら、最適な場所を選ぶようにしましょう。
トイレの広さについて
次は、トイレの広さについてです。トイレの広さは利用時の利便性や掃除のしやすさに直結する問題となるので、後悔を防ぐためには慎重に検討すべきです。
一般的に、戸建て住宅に設けられるトイレは1畳程度になることが多いです。ただ、1畳は、広さとしては余り余裕がなく、収納なども設置しにくいので、生活を始めてから「もう少し広く取れば良かった…」と後悔を感じてしまいやすいです。
したがって、トイレ雑貨なども余裕で収納できるようにするためには、1.3畳程度の広さを確保しておくのがおすすめです。家が大きく、スペース的に余裕があるという場合、1.6畳程度の広さを確保しておけば、掃除もしやすくなるでしょう。
なお、家の大きさ的に、あまり広いスペースを確保できないという場合、タンクレストイレなど、省スペースで設置できるコンパクトな便器を選ぶと良いです。タンクレストイレは、その名称通り、貯水タンクがないタイプのことで、スペースがあまり確保できなくても、使い勝手の良いトイレを実現することができます。
ドアのタイプについて
ドアの形式には、内開き、外開き、引き戸の3パターンがあります。
トイレ内のスペースに余裕があるのであれば、内開きのドアでも良いのですが、余りスペースが確保されていないトイレの場合、出る時に不便に感じてしまう可能性があります。この場合、廊下側にドアを開く外開きのドアがおすすめです。外開きのドアを使用すれば、トイレ内のスペースを有効活用することが可能になります。ただ、トイレから出る時、廊下に人がいるとぶつけてしまう可能性があるので、その辺りは注意する必要があります。
この他、トイレ内も廊下も十分なスペースがないというケースでは、引き戸タイプがおすすめです。引き戸タイプのドアは、軽い力で開閉できるため、高齢者や小さなお子様も開け閉めしやすくなります。トイレのドアの形式は、使い勝手や収納面に関係してくるので、どのタイプが適切なのかは慎重に選びましょう。
まとめ
今回は、これから新築住宅の購入を考えているという方で、「2階のトイレはいるの?いらないの?」ということに悩んでいる方に向け、2階トイレを実現した場合のメリット・デメリットや、実際に2階にトイレを設置すると決めた時、将来的に後悔しないようにするためにおさえておくべきポイントについて解説しました。
多くの方は、トイレは1階に1箇所あれば十分だと考えると思いますが、家族の人数が増えていくと、毎日トイレ渋滞が発生することに困ってしまう…という事態に悩む人も多いのです。実際に、住み始めてからリフォームを実施することで2階にもトイレを増設するという方は少なくないのです。
もちろん、2階にもトイレを設置するという間取りは、将来的な後悔に繋がるケースもあるので、本当に自分たち家族は2カ所のトイレが必要なライフスタイルなのかは慎重に検討すると良いです。
