新築注文住宅を計画しているお客様からは、明るくて広々とした空間を実現にするため、吹き抜けを作りたいという相談を受ける機会が非常に多いです。吹き抜けとは、説明するまでもないかもしれませんが、1階から2階(もしくはそれ以上の階)の間に天井や床がなく、2層以上のフロアをひとつの空間とすることを指します。そのため、吹き抜けを実現した場合、その部分は、一階から最上階までが繋がった大きな空間となります。

吹き抜けを採用すれば、開口部が大きくとれますので、季節に関係なく効果的に採光することができるようになりますし、視覚的に実際の広さ以上に、開放感溢れる広い空間に仕上がる点が大きな特徴です。ただし、多くの方が希望する吹き抜けについては、誰にとっても「吹き抜けがある家は最高!」と言い切れないのが実情です。実は、昔から憧れていたという理由だけで吹き抜けを作ってしまい、実際にそこで生活を始めてみると、さまざまな面に支障が出てしまい、吹き抜けを作ったことを後悔してしまう方も一定数いるのです。

そこでこの記事では、これから注文住宅の建設を検討している方で「絶対に吹き抜けが欲しい!」と考えている方に向け、家に吹き抜けを作る場合のメリットとデメリットについて解説します。

吹き抜けのメリットとは?

それではまず、吹き抜けを作ることで得られるメリットからご紹介します。吹き抜けは、効率的に採光できる、空間を広く感じられるなどと言った点がメリットと言われていますが、その他にもさまざまなメリットが存在します。

そこでここでは、吹き抜けの代表的なメリットをいくつかご紹介します。

メリット① 自然光を取り込みやすい

吹き抜けは、季節や時間帯に左右されず、日光が取り込みやすくなるという点が大きなメリットです。吹き抜けにした部分は、天井が高くなるため、その分、通常よりも高い位置に窓を設置することができます。そのため、上から下に向けて自然光が入り込むことになるので、部屋の奥まで光が届きやすく、太陽が出ている時間帯は室内が明るくなります。さらに、太陽の位置が低くなってしまう冬場に関しても、安定して自然光を取り込むことができます。

都市部の住宅などは、隣家との間隔が狭くなってしまうため、「大きな建物があるせいで南側から採光できない」「1階に大きな窓を設計しづらい」などの悩みを抱える場合が多いです。また、大きな窓を設置できたとしても、「カーテンを開けると視線が気になる…」と言ったプライバシーの問題が立ちはだかったりするのです。
こういった問題に関しては、吹き抜けを設けることで解決できるケースが少なくありません。自然光をいつでも取り込むことができるようになれば、日中に照明が必要になる機会が減ることで、電気代の削減にも役立つことでしょう。

メリット② 視覚的に空間を広く感じる

人の空間の広さの感じ方については、実は「高さ」が大きく関係していると言われています。例えば、ある程度の広さを確保したリビングを作っても、その空間が完全に区切られていたり、天井が低かったりすると、圧迫感を感じて実際よりも狭く感じてしまう人が多いと言われているのです。

吹き抜けを実現した場合、天井が高く伸びやかな空間を実現することができます。そのため、人の視覚的には開放感を感じることができるようになるとされ、床面積としてはやや手狭な空間だったとしても、窮屈に感じることはなく、快適に過ごすことができるとされています。さらに、吹き抜けのある空間は、おしゃれに見せる効果もあるとされていて、洗練された見栄えのする空間を演出することができるため、ゲストを招くための空間としても最適と、人気になっているのだと思います。

メリット③ 家族のコミュニケーションを育みやすい

吹き抜けを作ると1階と2階が繋がることになるため、家族が別々の場所にいたとしても「今、誰がどこにいる?」といった家族の気配を感じやすくなり、自然とコミュニケーションをとる機会が増えるとされています。また、吹き抜けのあるリビングを実現した場合、完全個室のリビングよりも人が集まりやすくなるとされていて、家族の距離がより近くなるという効果が期待できるのです。

子供部屋は用意するけど「子供が部屋にこもって生活するのは避けたい…」「毎日家族で会話する時間が作りたい」などの要望を持っているのであれば、吹き抜けのある空間を作るのはおすすめです。特に、「リビング階段」は、必然的に家族が顔を合わせることになるため、コミュニケーションがとりやすい間取りを実現したいと考えている方にはオススメです。

メリット④ 風通しの効果が高まる

吹き抜けは、風通しが良く、空気が循環しやすい環境を作れる点もメリットです。空気がきちんと循環する環境を作るには、低い位置から風を入れて、高い位置から抜けていくという構造を作ることが大切とされています。吹き抜けは、窓の設置位置について、高低差をつけやすく、1階の窓から2階の窓へ対角線上に風の通り道を作ることができるため、自然換気が非常にしやすい状況を作ることができるのです。

なお、高い位置に設置する窓について、きちんと開閉できるタイプにしなければ、空間の上部に空気が溜まってしまうことになります。したがって、効率的に換気できるようにしたいという要望があるなら、吹き抜けの上部に設置する窓は開閉可能なタイプを採用しましょう。

メリット⑤ 将来的に部屋を増やすことが可能

多くの吹き抜けは、リビング部分に設けられることになります。ただ、リビングは南側に配置されることが多いため、ここに吹き抜けを作ると、本来2階部分に作ることができる日当たりの良い部屋を失ってしまうとも言えるのです。吹き抜けは、2階部分を作らないことで開放感のある空間を実現する方法ですので、どうしても部屋数が少なくなるという点は我慢しなければいけません。

もちろん、夫婦二人で生活している時期は、開放感があり、おしゃれでゲストを招きやすいという点は大きなメリットになります。しかし、将来的に家族が増えた時には、子供部屋を用意するには部屋数が足らない…なんてことになる可能性もゼロではありません。したがって、注文住宅を検討する時には、「憧れていた開放感のある吹き抜けを作るか、将来のことを考えて部屋を増やすか」で悩む方が少なくないのです。このような悩みを抱えている方であれば、将来のことも見越して必要に応じて後から部屋にできる吹く抜けを設計するのがおすすめです。

吹き抜け部分に後から床を張れるような設計をしておけば、将来、書斎や子供部屋が必要になった時、吹き抜けを部屋に転用することができるようになります。家を建てる時に、将来を考慮しておけば、構造や配線の計画などもスムーズになります。なお、増床は建築確認が必要になるケースが多いため、その辺りは建築会社とよく話しあって計画を作りましょう。

吹き抜けのデメリットとは?

上述のように、吹き抜けにはさまざまなメリットが存在します。そのため、「家を建てるなら吹き抜けのある空間を作りたい!」などと、吹き抜けに憧れを持っている方が多いのです。しかし、吹き抜けのある空間は、メリットばかりが存在するのではなく、決して見落とすことができないデメリット面も存在します。

そこでここでは、家を建てた後、吹き抜けに後悔しないために皆さんがおさえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

デメリット① 空調効率が悪くなりやすい

吹き抜けのデメリットとして有名なのは、暖房や冷房など、空調機器の効率が低下してしまう…という点です。上述したように、吹き抜けは、通常の部屋と比較すると、天井がかなり高くなってしまいます。

そして、空気の特性では、暖かい空気は上昇する性質があり、冷たい空気は下に溜まるという性質があるのです。つまり、吹き抜けのある空間は上下間で温度差が生じやすく、暖房をつけているのに足元が温まらない…、冷暖房の効きが悪い…と言った状況になってしまいがちなのです。

このような問題を解消するには、断熱材の充填や高性能サッシの採用により家そのものの断熱性能を高めるとか、室内の空気を強制的に循環させるためにシーリングファンを設置する、足元から温める床暖房を設置するといった対策が必要になります。どの対策を行うにしても、設備投資に余計なコストがかかる可能性があるため、空調効率の問題が解消できたとしても、デメリットと捉えられてしまいます。

デメリット② 音やニオイが伝わりやすい

これは、吹き抜けの構造上、どうしようもないデメリットです。吹き抜けにする場合、広い空間が実現できる反面、一階と二階部分が空間でつながってしまうことから、1階部分で発生した音やニオイが2階部分にまで広がってしまう可能性が高いのです。音やニオイに関しては、実際にそれを実感するまでなかなかイメージできないこともあり、吹き抜けのある家に住んで初めてこの問題に気付く方が多く、吹き抜けに後悔する大きな理由になっています。

家族のコミュニケーションがとりやすいようにと、リビングに吹き抜けを作ったり、リビング階段を採用する方が増えていますが、実際にそこに住んでみると「調理の臭いが2階の寝室まで充満して困る…」とか「2階の子供部屋から聞こえる音がうるさい…」と、開放感のある空間づくりに後悔してしまう人は少なくないのです。
これらの問題への対策としては、プライベートを確保したい部屋には防音対策を施すとか、防臭効果を持つ壁紙を採用する、高性能な換気扇を採用するといった方法があります。しかし、どれも家が完成した後に対策を施す場合、それなりに高額な費用がかかってしまうため、吹き抜けに後悔してしまうのです。

デメリット③ 部屋数が少なくなる

メリット面では、将来は家族構成に合わせて部屋を増やせるとご紹介しました。しかし、建築時点で考えてみると、吹き抜けのせいで、本来は真上に作れるはずの部屋を作れなくなるため、部屋数が少なくなるというデメリットが生じます。

もちろん、必要な部屋数を確保できているのであれば、そこまで大きな問題にはなりませんが、子供の成長は早いもので、家の完成後、数年で部屋数が足りないと感じ始めることも珍しくなく、吹き抜けではなく部屋にすれば良かった…と後悔する人もいるのです。特に、現在の新築事情を考えてみると、狭小地に家を建てるケースが増えているため、居住空間の確保がままならない…なんて本末転倒な結果になるケースもあるのです。

この問題を解消するには、上で紹介したように「将来的に吹き抜け部分を部屋にできるように計画しておく」というのがおすすめです。また、部屋数が足りている場合でも、「デッドスペースをなるべく作らない間取りにする」「廊下を少なくして部屋数を確保できるようにする」と言った工夫を行い、限られたスペースを可能な限り有効活用できるようにしましょう。

デメリット④ メンテナンスが大変

吹き抜けは、高い位置に窓を設けて、自然光を効率よく取り込むことができる点が大きなメリットです。ただ、夜間のことを考えると、照明は必要ですし、空調効率を考えるとシーリングファンなどを設置する必要があります。

つまり、家の中でも特に高い位置に、さまざまな設備が設置されることになるのです。そのため、日々の清掃や設備のメンテナンスが一般の方では困難になり、掃除を怠ってしまう、ちょっとした電球の取り換えを専門業者に依頼しなくてはならなくなる…なんてことに後悔を感じる人もいます。
特に、高所に取り付ける窓に関しては、室内と室外の寒暖差により結露が発生しやすくなります。手の届く位置にある通常の窓であれば、小まめに水分を拭き取ることができますが、吹き抜けの窓は人目に付きにくいこともあり、手入れがおざなりになってカビが大繁殖してしまう…なんてことになりがちです。吹き抜けを作る場合には、こういった日々のメンテナンス性のこともきちんと考慮しておかなければならないと考えて下さい。

例えば、高所の窓やシーリングファンを掃除するため、キャットウォークのような通路を設置しておく、照明などは電動で昇降できるタイプにして、自分で掃除や電球の入れ替えができるようにすると良いでしょう。

吹き抜けを作る際、考慮すべきポイントについて

それでは最後に、家を建てる時、吹き抜けを作ろうと考えている方が注意しなければならないポイントをいくつかご紹介しますし。

①法律との適合性について

吹き抜けを設置する場合は、家を建てる地域の法規制や建築許可に準拠しなければいけません。実は、地域によって吹き抜けの高さや安全規定が異なるため、建築前に法律との適合性をしっかりと確認しなければならないのです。

②断熱性や気密性について

吹き抜けは、温度変化の影響を受けやすいので、家の断熱性や気密性についてしっかりと計画しなければいけません。暖かい空気は上に溜まるという特性上、冬場は吹き抜けの上部で、室温と外気温の格差が大きくなりがちです。そのため、断熱対策が不十分な家の場合、結露の発生によりさまざまな問題が発生することがあるのです。例えば、吹き抜けの最上部に天窓を設置したお宅で、冬場になると窓の結露水が雨漏りのように落ちてくる…と言った失敗例はよく耳にします。
こういったことから、吹き抜けを作る場合には、断熱性・気密性を高めるため、建材選びや空間設計が非常に重要になると考えてください。なお、悠建設がおすすめする、WB工法の家は、非常に高い断熱性を実現できるため、吹き抜けのある間取りに最適な工法となります。

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③冷暖房の計画について

上述しましたが、吹き抜けは、冷房や暖房など、空調効率を悪くしてしまうという点が大きなデメリットです。現在の生活を考えてみると、冷房や暖房などの空調機器は必需品と言ってもよく、夏場や冬場の電気代は冷房や暖房が大きな割合を占めるようになっています。冷暖房の計画をしっかりとせずに吹き抜けを作った場合、空調効率が悪くなり、余計な電気代がかかってしまう…なんてことになりかねません。
したがって、吹き抜けを作るのであれば、空調効率が悪くならないように、しっかりと冷暖房の計画を行いましょう。例えば、シーリングファンにより空気を循環させる、暖房は足元から温める床暖房を採用するなど、設置する設備選びからきちんと計画をたてましょう。

④音やニオイへの対策について

吹き抜けを作る位置によっては、ニオイや音が家中に広がり、住環境を壊してしまうことがあります。したがって、まずは家全体の間取りを考慮したうえで吹き抜けを作るかどうかを検討しなければならないと考えましょう。吹き抜けを作る場合、吸音材の設置や防音室の導入など音への対処や、換気システムの導入により臭いが家の中に広がらない対策が必要です。
なお、WB工法の家は、壁が呼吸することで、臭いや湿気を家そのものが排出してくれるようになります。したがって、吹き抜けのある住空間を作っても、臭いなどの影響が抑えられます。

⑤安全性について

吹き抜けは、安全対策を欠かすことができません。特に、家族のコミュニケーションの取りやすさを重視し、リビングに吹き抜けを作り二階部分が見えるようにするなどと言った場合、手すりやバルコニーなどの安全対策が必須です。
特に、小さなお子様やペットがいるご家庭の場合、しっかりした安全対策を行わなければ、落下事故の危険性が残ってしまいます。

⑥メンテナンス性について

吹き抜けを作る場合、人の手が届かない位置にさまざまな設備が設置されるということを意識しましょう。上でも解説しましたが、吹き抜けに設置される設備は、メンテナンスの困難さから掃除などが放置されてしまいやすいのです。
したがって、このような事態に陥らないようにするためにも、吹き抜けを計画する時点で、メンテナンス方法についてきちんと考慮してもらうと良いです。例えば、電動で昇降できる照明を採用する、簡単なお手入れができるようにキャットウォークのような物を設置するといった対策が有効です。なお、窓部分の雨漏りを防止する目的などから、必要に応じて専門業者に点検やメンテナンスを依頼することも検討しましょう。

まとめ

今回は、注文住宅の要望の中でも特に高い人気を誇る「吹き抜け」のある間取りについて、意外に多くの方が見落としてしまっている、吹き抜けのメリットとデメリットについて解説しました。

吹き抜けは、家族がコミュニケーションがとりやすくなる家が求められるようになってから、新築業界で非常に高い人気を誇るようになっています。吹き抜けは、コミュニケーション以外にも、空間が広く感じられる、おしゃれな空間が実現する、自然光を取り込みやすいなどのメリットがあるため、快適な住空間を構築するための工夫としても非常に有効だと言えるのです。
ただ、吹き抜けに関しては、何もメリットばかりがあるのではなく、実際に住んでみると後悔する可能性がある、デメリット面も少なくないということに注意しなければいけません。記事内でご紹介しているように、住んでみると致命的ともいえる問題が発生する可能性があるので、「憧れ」だけで吹き抜けを採用するのはおすすめすることはできません。

もちろん、予算をかけることで吹き抜けのデメリット部分を解消することは可能ですが、そのコストをかけてまで実現するメリットがあるのかは慎重に検討しなければならないでしょう。悠建設では、お客様の要望をお聞きし、デメリット面やそれを解消するための対策まで、しっかりとご説明させていただきます。

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