
注文住宅を建てるにあたって、多くのお客様が希望する条件として「もっと収納スペースを確保したい!」という要望があります。
東京や大阪などの都市部では、土地価格の高騰などもあり、狭小地に3階建て住宅を建築するケースが増えています。そのため、家族が広々と生活できる居住スペースを確保しようと考えると、収納のためのスペースが不足しがちになってしまう…という問題が生じやすいのです。特に、キャンプなどのアウドドアレジャーに関する趣味を持っている方などであれば、大きな荷物を収納するためのスペースの確保が難しく、家の建築計画に悩んでしまう可能性が高くなります。
このような悩みを抱えているのであれば、小屋裏収納や屋根裏収納と呼ばれる間取り手法を取り入れることがおすすめです。小屋裏収納は、屋根下のできる空間を活用する方法で、限られた間取りの中で収納力を大幅にアップさせるのに非常に効果的な方法となります。屋根下の空間を使う訳なので、2階建て住宅だけでなく平屋の場合でも、十分な収納スペースを確保するための方法として非常に有効です。
そこで今回は、デッドスペースをうまく利用して収納スペースを確保できる小屋裏収納について、注文住宅に取り入れる場合のメリット・デメリットや、ロフトとの違いについて解説します。
小屋裏収納とは?ロフトとの違いもご紹介
それではまず、小屋裏収納や屋根裏収納と呼ばれる間取り手法について、これがどのようなものなのかについて解説します。
なお、小屋裏収納については、その特徴から「ロフトと何が違うの?」という疑問を持つ方も多いので、ここではロフトとの違いについても簡単にご紹介します。
小屋裏収納の基礎知識について
それではまず、小屋裏収納がどのような場所なのかについて解説します。小屋裏収納は、屋根と天井の間にある「小屋裏」と呼ばれる空間を活用した収納スペースのことを指しています。ちなみに、小屋裏以外にも、「屋根裏」「天井裏」「グルニエ」などとも呼ばれています。
このスペースは、主に片流れ屋根や寄棟屋根・切妻屋根など、確度のついた屋根と最上階との天井の間に作られるスペースとなります。一般的によく見られる方式としては、天井に開閉式の扉が設けられ、折り畳み式のはしごを設置することで、そのスペースに出入りできるようにするといったものが多いです。
なお、小屋裏収納は、建築基準法によって、その大きさや作り方について、以下のような制約が設けられています。
- 床から天井までの高さが1.4m未満であること
- 広さは下階の2分の1以下未満であること
上記の条件を満たしている場合、建築基準法上の居室とみなされず、延べ床面積に算入されなくなります。
したがって、小屋裏収納は、延べ床面積や階数に加わらないため、固定資産税や容積率の計算に含まれず、収納のための広いスペースを確保しながら固定資産税がかからないという点が魅力となるのです。
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ロフトとの違いは?
小屋裏収納については、ロフトとの違いがいまいち分からないという声を聞く機会が多いです。上で解説した小屋裏収納の特徴を見ても「それはロフトなのでは?」と感じた方もいるかもしれませんね。
しかし、一見同じように見えるロフトと小屋裏収納ですが、構造に少し違いがあるのです。
ロフトは、居室の天井を高くして、その上部に設けられた2層目の空間のことを指しています。なお、ロフトも小屋裏収納と同じく、「天井高1.4m以下」「床面積が直下階の1/2未満」という条件を満たしていれば、延べ床面積に算入されないという特例を受けられます。ただ、詳しく見ていくと、使い方や構造に明確な違いがあるので、以下で両者を比較してみたいと思います。
■空間の性質について
小屋裏収納は、屋根と天井の間にある「小屋裏」を利用した独立空間となります。しかしロフトは、居室の一部を2層化した上部空間で、独立していません。
■空間の特徴について
小屋裏収納とロフトは、空間としての特徴も異なります。小屋裏収納の場合、下階から独立した空間となるので、個室感が得られます。一方ロフトはというと、部屋の中の一部なので下の階が見え、半個室と言った感じになります。
■アクセス方法について
小屋裏収納もロフトもはしごや固定階段によって出入りします。ただ、小屋裏収納は、地域によって「固定階段は不可」といった決まりが設けられていることがあります。
■用途について
小屋裏収納とロフトの最大の違いは用途でしょう。小屋裏収納は、その名称から分かるように、「収納」が主な用途となります。しかし、ロフトは、あくまでも居住空間の延長という扱いで、収納については「収納スペースとしても利用できる」といった感じにおまけの機能と言った扱いになります。
小屋裏収納とロフトの違いは、小屋裏収納は独立した物置で、ロフトは部屋の延長と言った感じで考えておけば良いと思います。
小屋裏収納を取り入れるメリット・デメリット
それでは次に、注文住宅を建てる際、小屋裏収納を取り入れることで得られるメリットと、注意すべきデメリットについて解説していきたいと思います。
小屋裏収納を取り入れるメリット
まずは、小屋裏収納を取り入れることで得られるメリットからご紹介します。小屋裏収納は、通常はデッドスペースとなる場所を収納スペースとして活用するという方法なので、限られたスペースを有効活用することができるようになるという点が最大の魅力と言えます。具体的には、以下のような点がメリットと言えるでしょう。
メリット1 延床面積に含まれないスペースを確保できる
家族が広々と生活できるようにしたいと考えると、家の延べ床面積を広げたいと考えるはずです。しかし、延べ床面積が広くなれば、固定資産税が高くなる可能性があるのです。
この点、小屋裏収納は、先ほど紹介した条件を満たしていれば、延べ床面積に含まれない状態で広い収納スペースを確保することができるようになります。そのため、居室側に関しては、クローゼットの数を減らすことができるようになり、家族の居住スペースを効率的に増やすことが可能になるのです。
クローゼットやパントリーなどの収納スペースは延べ床面積に含まれるため、小屋裏収納の導入は、賢くお得に収納スペースを確保するための方法と言えます。
メリット2 収納力のあるスペースとなる
小屋裏収納は、プランによって変わるものの、ほとんどのケースで通常の収納スペースと比較すると、広い空間を確保することができ、収納力がアップするというメリットが得られます。
先程紹介したように、「天井高1.4m以下」「床面積が直下階の1/2未満」という条件は守らなければならないものの、これだけのスペースが確保できていれば、大きな物でも十分に収納することができるでしょう。例えば、衣服や布団など、かさばる荷物でも収納ケースにまとめて保管することができますし、ベビーカーやチャイルドシートなどの大きな荷物を保管する場所としても重宝するはずです。
これだけ大きな荷物を保管できる場所が、延べ床面積に算入されない状態で確保できるのは大きな魅力になると思います。
メリット3 さまざまな用途で使える
小屋裏収納は、収納スペース以外にも、さまざまな用途として活用できる場所となる点もメリットです。制約はあるものの、収納以外に、子供の遊び場として使う、大人でもワークスペースとして活用するなど、収納スペース以外にも有効活用することが可能です。
ただ、デメリット面でもご紹介しますが、小屋裏のスペースは、室温が上がりやすいなど、いくつか注意しなければならない点があります。
メリット4 雨漏り点検がしやすくなる
小屋裏収納は、屋根の真下に作られる空間なので、雨漏りの発生に早く気付くことができる可能性が高くなります。
雨漏りは「天井から水滴が落ちてくる」と言った状態まで放置されるのではなく、「天井クロスに雨染みができている」「湿気やかび臭さを感じる」と言った症状で気づく方が多いです。しかし、このような状況は、雨漏りがかなり進行している状況と言えるのです。
一方、小屋裏を収納スペースなどとして活用し、定期的に小屋裏に立ち入るようになっていれば、雨漏りがあった時には早期発見できる可能性が高くなります。そのため、万一雨漏り被害があったとしても、その被害を最小限におさえられる可能性が高くなるのです。
小屋裏収納を取り入れるデメリット
次は小屋裏収納のデメリットについてです。小屋裏は、屋根の真下にある空間である事や天井高に制限が設けられていることを要因とした問題、家の中でも最も高い場所に収納スペースが用意されるといった点で、いくつかの問題点が生じます。
具体的には、以下のような点がデメリットになります。
デメリット1 「夏は暑くて冬は寒い」など、快適に過ごせない
小屋裏は、屋根に最も近いスペースとなるため、熱がこもりやすい空間となります。また、居室と異なり、換気もあまり重視されないことから、通気性が悪くジメジメした空間になりやすいです。
したがって、断熱対策がしっかりと行われていない小屋裏収納の場合、”夏は暑すぎる・冬は寒すぎる”と言った空間になってしまいます。収納スペースとしてしか使わないという場合、快適性は無視しても良いと考える方も多いのですが、収納スペースとして考えた場合もあまり良い状況と言えません。例えば、猛暑化が指摘されている昨今では、断熱対策が行われていない小屋裏は、室温が異常に高くなり、電子機器やゴム製品を置いておくと、熱によって故障や破損してしまう可能性があるのです。また、通気性が悪い状態だと、湿気がこもり衣服や布団などにカビによる被害が生じてしまう可能性があるでしょう。
こういった問題を防ぐためには、収納専用のスペースとする場合でも、断熱性や気密性、また通気性などにも注意しなければいけません。
デメリット2 荷物の出し入れがスムーズにできない可能性がある
小屋裏収納への出入りは、はしごを使うのが一般的です。当然、はしごで上り下りする場合、階段などと比較すると、安定感がありませんし、2人以上で同時に上り下りすることが難しくなります。
つまり、小屋裏収納は、大きな荷物でも収納できるスペースが確保できる一方で、重たい荷物をそこまで運ぶことが非常に困難な場所になるという問題があるのです。衣服や布団など、一人でも簡単に運べるような荷物であれば、非常に有効な収納スペースになるのですが、重たくて大きな荷物を収納したいと考える場合、小屋裏まで持ち運ぶのにかなりの労力がかかる点に注意が必要です。また、取り出す際には、同様の労力がかかってしまうので、最終的に使わなくなる…などといったことも考えられます。
ちなみに、条件をクリアすればはしごではなく階段を設置することが可能になるので、重たい荷物なども収納したいと考えているなら、階段の設置ができないか、建築会社に相談してみると良いです。
デメリット3 建築コストがかかる
3つ目のデメリットは分かりやすいです。小屋裏収納は、作らない時と比較すると、これを取り入れる場合は家の建築コストが高くなってしまう点がデメリットです。
小屋裏を利用しない場合、内装などにこだわる必要はありません。しかし、収納、もしくはフリースペースとして利用することを考えると、内装工事が必要になります。また、快適な空間にするためには、床の補強や換気のための窓、電気の設置などに手を加えなければいけませんし、収納する荷物の種類によっては、断熱対策に力を入れなければならないケースもあるでしょう。
つまり、小屋裏収納は、用途によって費用が変わるものの、ない時と比較すると確実にコストがかかってしまうのです。小屋裏収納にかかる費用を抑えたい場合、優先順位をきちんと決めて、用途などを検討すると良いです。例えば、収納のためのスペースとしてしか利用しない場合、壁紙などにこだわる必要はありませんし、窓なども不要になるので、その部分のコストを削減するといった対処が可能になります。どちらにせよ、コストがかかるのは間違いないので、その点は注意が必要です。
小屋裏収納を取り入れたい場合の注意点について
それでは最後に、注文住宅を建てる時、小屋裏収納を取り入れたいとい考えている方が注意すべきポイントについて解説します。
建築基準法の制限に従う
一つ目のポイントは、小屋裏収納を作る場合、建築基準法が定めている制限を必ず守ることが大切という点です。小屋裏収納の定義としては、「天井高1.4m以下」「床面積が直下階の1/2未満」という制限があるので、これを必ず守らなければならないと考えてください。
さらに、これらの制限以外にも、エアコンを設置しない、畳を敷かないなど、細かな条件があります。また、地域によって独自の制限が設けられている可能性もあるので、家を建てるエリアの法令に詳しい建築会社に相談しながらどのような小屋裏収納にするのか慎重に検討すると良いです。
小屋裏収納は、決められた基準を守らなかった場合、居室扱いとなり、延べ床面積に算入されてしまいます。
断熱や換気の対策を行う
先程ご紹介したように、屋根直下の空間となる小屋裏収納は、夏は暑く冬は寒いという環境になりがちです。
収納スペースとしてしか使わない場合でも、異常な高温や湿気がこもると、保管物品の状態が悪くなる可能性があるので、断熱や換気、湿気対策などをしっかりと行うようにしてください。小屋裏収納は、エアコンを設置することができないため、暑さや寒さの対策をしっかりと行わないと、人がそこで過ごすことは難しくなります。
用途によってアクセス方法を検討する
屋根裏収納へのアクセス方法についてもしっかりと検討しなければいけません。
特に、用途によっては、安全性を重視しないと、思わぬ事故に発展してしまうことになります。例えば、小さなお子様を遊ばせる、重たい荷物を収納する場所として利用するというケースでは、はしごではなく固定階段の設置が望ましいです。ただ、固定階段の設置は、地域によって制限がかけられる場合があるので、どのようなアクセス方法が実現できるのかは建築会社のアドバイスを良く聞きましょう。
なお、はしごを採用する場合でも、強度や滑りにくさなどを事前にチェックし、事故が起こらないような環境作りを心掛けてください。
照明やコンセントについて
小屋裏収納は、照明とコンセントにも注意しなければいけません。
コンセントは1箇所しかつけられないので、一番使いやすい場所がどこなのかよく考えて、設置する場所を決定しましょう。照明については、装飾性のある照明はNGです。収納場所として利用する場合、ある程度の明るさがないと使いにくい場所となるので、照明の設置は認められています。しかし、装飾性のある照明を設置すると、居室と看做される可能性があるので注意しましょう。
まとめ
今回は、自宅の収納力を大幅にアップさせることができる小屋裏収納について、その特徴やロフトとの違いについて解説しました。
注文住宅を建てる際、小屋裏収納という間取り方法を導入すれば、狭小地に建てる住宅でも、家族の居住スペースを確保しながら収納不足の問題を解決できる可能性が高いです。さらに、小屋裏収納は、子供の遊び場所や集中して仕事に取り組むためのワークスペースなどとしても活用できるなど、幅広い用途も魅力になると言えるでしょう。
ただ、記事内でご紹介しているように、小屋裏収納の設置は、建築コストが高くなる、断熱や気密対策をしっかりと行わないと、保管する荷物の状態が悪くなるなど、いくつかの注意点があるので、その点については家を建ててもらう建築会社とよく相談したうえで導入するかどうかを決定すると良いでしょう。
昨今では、悠建設が推奨する通気断熱WB工法など、高気密・高断熱を実現した家が増えているため、小屋裏収納を実現すれば、単なる収納スペースとしてだけでなく、家族のフリースペースとして活用できるかもしれませんよ。