住宅の購入を検討している方の中には、親世代と一緒に生活をする二世帯住宅の建築を考えている方も多いのではないでしょうか?
しかし、二世帯住宅については、インターネットなどで調べてみると「二世帯住宅はデメリットだらけ!」といった情報を見かける機会も多く、本当に二世帯住宅を選ぶのが正解なのか…と不安に感じる人が多いと言われています。当然、考え方が異なる人が一緒に生活することになれば、それだけトラブルになる可能性が高くなるのは間違いありませんし、同じ建物内に別の家族が一緒に生活をする二世帯住宅の場合、いろいろな問題が発生しそうだな…と考えてしまいますよね。
それでは、実際に二世帯住宅で生活している方は、どのような面を指して「デメリットだらけ…」と言っているのでしょうか?また、二世帯住宅での生活には、メリット面がないものなのでしょうか?実は、共働き世帯が増加している昨今では、家づくりの際にちょっとして工夫を凝らすことで二世帯住宅の問題を解消し、メリットを享受することができるようになるとされています。
そこでこの記事では、一般的に二世帯住宅のデメリットとされているポイントや、その逆のメリットについて解説します。記事内では、二世帯住宅の失敗を防ぐための工夫についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
二世帯住宅のデメリットとは?
二世帯住宅については、あまり良いイメージを持っていないという方が多いかもしれません。ただ、国は誰もが安心して暮らせる社会づくりを推進するため、「三世代同居に対応した良質な新築住宅の取得」「三世代同居に対応した長期優良住宅化リフォーム」を推進する取り組みを行っています。
少子高齢化が進む日本では、年々、核家族化が進んでいて三世代が同居する形のご家庭は減少していると言われています。もちろん、仕事の関係などで親世帯と子世帯が離れた場所で生活をするという姿が当たり前になっていますし、二世帯住宅の減少は致し方ない面もあるでしょう。
しかし、ある程度近い距離で生活している方の中にも「二世帯住宅はデメリットだらけ」という情報を鵜呑みにして、二世帯住宅の建設に躊躇してしまうという方も多いようです。それでは、二世帯住宅に指摘されているデメリット面とは、どのような問題があるのでしょうか?ここではまず、二世帯住宅のデメリットと指摘されているポイントをご紹介します。
①お金の問題で揉め事になる
二世帯住宅にありがちなトラブルとしては、光熱費の支払いなど、お金の面で揉め事に発展するというものです。お金に対する考え方や行動パターンは人それぞれなので、親世帯と子世帯、複数の世帯が一緒に生活する二世帯住宅では、お金に関するトラブルは意外に多いと言われています。
まず、二世帯住宅を建てる際には、共有スペースを完全に分ける「完全分離タイプ」は、キッチンやお風呂などの設備を2つずつ用意しなければならなくなるため、その分家の建築費用が高くなってしまいます。この場合、親世帯の金銭的な援助が望めない方の場合、家を建てる際の子世帯の負担が大きくなってしまいます。もちろん、親世帯の金銭的援助があったとしても、お金のかかる設備を二つずつ用意するとなると、想像以上のお金がかかってしまい、お互いの理想の住まいを建築することは難しくなってしまうでしょう。そのため、家を建てる際に、共有スペースの取り扱いについてもめてしまうケースが少なくないとされます。
また、建築費用を抑えるため、全てもしくは一部の設備を共有する形にした場合、実際の生活を進める際の水道光熱費の把握が難しくなるという問題が生じます。多くの場合、最初に負担割合を決めておくものですが、生活を始めてみると片方の世帯の使用頻度が高く思えてしまい、水道光熱費の負担割合を不公平に感じて、トラブルに発展してしまう可能性があるのです。
お金の問題は、家族だからこそ大きなトラブルになる可能性があるので注意が必要です。
②生活リズムが違うため、お互いの生活音が問題になる
二世帯住宅では、多くの場合、親世帯と子世帯の生活リズムが異なります。そしてこの生活リズムの違いは、お互いがストレスを抱えてしまう…という問題に発展するようです。
例えば、子世帯が夜遅くまで起きていて、親世帯が睡眠を妨げられてしまう…なんてケースが考えられます。もちろん、その逆に親世帯が朝早くから行動を始めるため、子世帯が起こされてしまうというケースもあるでしょう。
二世帯住宅は、世代が大きく異なる人が同じ建物内で生活することになるため、就寝や起床時間など、日常生活のリズムの違いが原因となり、お互いがストレスを抱えることが多いです。生活音は、そこまで大きな音ではないと感じるかもしれませんが、最近では、生活音を原因に隣人同士がトラブルになる…なんてことも増えていると言われますし、同じ建物内で生活する場合、余計にうるさく感じてしまう人もいるでしょう。
③プライバシーの確保が難しい
仲の良い家族であっても、自分の時間を大切にしたいと考える方は多いですね。しかし、二世帯住宅の場合、どうしても個人のプライバシーを確保しにくく、さまざまな場面で気を使わなければいけません。たとえ顔を合わせていない時でも、同じ建物内で生活しているため、ちょっとした生活音で何をしているのか、家にいるのかなどの行動が察知されてしまうので、常にだれかに見られているように感じてリラックスできなくなる…という声を聞くことも多いです。
また、キッチンや洗面、トイレやリビングなど、共有するスペースが多くなると、掃除などの家事を行う時に、使用するタイミングなどをお互いが気を使わなければならなくなり、自宅にいるのに窮屈に感じるなんてこともあるようです。特に、トイレなどは匂いの問題などもあるため、二世帯住宅での生活がデメリットに感じる人は多いようです。
④お互いの干渉がストレス源になる
親世帯と子世帯が一緒に生活する二世帯住宅では、お互いの生活に対する過干渉がストレス原因になり、デメリットに感じてしまう人がいるようです。
例えば、親世帯はいつまでたっても子供の生活が気になるものなので、一緒に生活している場合、何かと世話を焼きたくなってしまうものです。その逆に、親世帯が高齢になっているのであれば、子世帯が心配してあれこれと口を出してしまう…なんてことも考えられるでしょう。
それぞれが良かれと思って気にかけている行動なのですが、毎日の生活になるとありがた迷惑と感じて二世帯住宅のデメリットと指摘する方がいます。
⑤売却する際に買い手がつきにくい
二世帯住宅は、建築時にお金がかかるのですが、売却時には買手を見つけにくいので注意が必要です。特に、キッチンやトイレ、リビングなどを共有にしている物件の場合は、かなり売却が難しくなります。
なお、完全分離タイプの二世帯住宅であれば、一方で購入者が生活し、もう一方を賃貸に出すといった対応が可能になるため、売却時の不安は少なくなるとされています。しかしその場合、建築時に多額のコストがかかってしまうため、建築時の初期費用が大きな負担となってしまいます。
現在の新築業界では、玄関や浴室、キッチンなどを共有にするタイプの二世帯住宅が多いのですが、将来的に売却が難しくなる可能性が高いと理解したうえで家を建てるようにしましょう。
⑥相続トラブルになりやすい
これも将来的な懸念点なのですが、二世帯住宅のデメリットとしてよく指摘されます。子供が複数人いるご家庭の場合は、相続の問題でトラブルになるケースは多いです。
特に、遺産の大部分が二世帯住宅である場合、現金や預貯金のように分割して相続することが困難になり、兄弟間で取り分についてトラブルになる可能性があるのです。二世帯住宅の場合、家を建てる際に資金の援助などを受けている可能性も高いですし、相続人の間で不公平感が生じてしまい、家が兄弟のトラブル原因になってしまうことがあるのです。
二世帯住宅はメリットも多い
ここまでの解説で、二世帯住宅はデメリットだらけと言われる理由がある程度理解できたのではないでしょうか。二世帯住宅は、親世帯と子世帯が一緒に生活することになるため、年代の違いなどを理由に生活リズムがズレ、お互いがストレスを抱えてしまいやすいのも事実です。
ただ、デメリットしかないのかというとそうではなく、二世帯住宅には、親世帯と子世帯が同居することで得られるメリットも多いのです。ここでは、二世帯住宅のメリット面についてもご紹介します。
①子育てに協力してもらえる
小さなお子様がいる子世帯の場合、親世帯と同居することで、日常生活の中で子育ての協力を得やすくなるという非常に大きなメリットが得られます。特に、共働きが増えている昨今では、幼い子供の預け先に困る…という話をよく耳にしますが、二世帯住宅の場合、自分たちが働いている間は祖父母に子供の面倒を見てもらうことができるようになるのです。
「親世帯の負担が増えるのでは…」と考えるかもしれませんが、親世帯にとっては子供よりもかわいい「孫」の面倒を見ることができるわけなので、喜んで預かりたいという方が多いです。
②家事を分担してもらえる
二世帯住宅は、「お互いの過干渉がストレス…」という方もいますが、両世帯が上手く付き合っているご家庭の場合、家事を分担できるため、お互いの負担が少なくて二世帯にしてよかったという方もいるのです。
子世帯の場合、仕事のある平日はなかなか家事ができないことに悩む方が多いです。その逆に、親世帯の場合は、加齢による体力の低下で、若いころのような力仕事が難しくなります。実は、二世帯住宅の場合、このような問題をお互いがサポートすることで、普段の家事をうまく分担することができるようになるのです。
子世帯が仕事がある平日は、親世帯が夕食の準備をする、重たい荷物がある日用品の買い物などは子世帯が担うなど、お互いが苦手とする部分をきちんと話し合い、補い合うことができれば、生活面の負担を大幅に軽減することができるようになります。二世帯住宅の場合、各家庭のライフスタイルに合わせて、家事負担を調整できるという点は大きなメリットといえるのではないでしょうか。
③防犯性の向上が期待できる
二世帯住宅は、単世帯住宅と比較すると、家に誰もいない時間が少なくなります。子世帯が平日の昼間に共働きで外出したとしても、親世帯が常に在宅しているというお宅も多く、誰かしらが家にいることで空き巣被害などの不安が軽減できるとされています。
なお、昨今では、人が家の中にいても押し入るような凶悪犯罪が増えています。したがって、二世帯住宅だからといって、防犯設備が必要ないというわけではないので、しっかりと防犯対策は行っておきましょう。
④水道光熱費の負担を軽減できる
二世帯住宅では、水道光熱費など、お金の面で揉め事に発展しやすいのは事実です。しかし、一緒に生活を始める前に、しっかりと話し合いを持ち、両世帯が金銭的負担について同意が得られているのであれば、単世帯住宅よりも水道光熱費に対する負担が軽減できるようになります。
二世帯住宅は、人が増える分、使用する光熱費が増加するのは間違いないのですが、人数が倍になれば電気やガスの使用量が倍になる…なんてことはありません。電気ガス、水道の基本料金のことなどを考えると、二世帯で分割できるようになれば、かなりの負担軽減が実現できるはずです。水道光熱費の負担軽減ができれば、子供の将来のための貯蓄を増やす、住宅ローンを早めに返済するなど、他の部分にお金を回すことができるようになります。
⑤万一の際は、サポートしあえる
二世帯住宅は、人手が多いということから、家族の誰かが病気をしたときなどは、お互いがサポートしやすいという点がメリットです。例えば、子世帯の子どもが風邪をひいた…なんて場合、祖父母に面倒を見てもらいながら自分は安心して仕事に行くことができるようになります。
もちろん、その逆に、親世帯が病院に通わなければならない…なんて時でも、子世帯に送迎や手続きなどを行ってもらうことができるようになります。将来的に、介護が必要になった際も、子世帯のサポートがあるため、安心して暮らすことができるようになります。
⑥相続税を減額できる
これは、「小規模宅地等の特例」の対象に該当する場合に限られるメリットです。
「小規模宅地等の特例」は、一定の条件を満たすことで、相続税の課税評価額が最大80%減額されるという制度です。この制度の要件には、「親・子世帯が同じ敷地内(上限330m²)に、同居あるいは生計を共にしていること」などがあるため、二世帯住宅の場合は対象になる可能性が高くなるのです。
「小規模宅地等の特例」の対象となった場合、土地の課税評価額が1,000万円であったとしても、特例を受けて課税評価額が200万円まで減額されます。非常に大きなメリットになるので、要件についてはしっかりと調べておきましょう。
⑦手厚い補助金が用意されている
二世帯住宅の建築・改修には、国や自治体が非常に手厚い補助金を用意しています。冒頭でもご紹介しましたが、国は三世代同居に対応した良質な新築住宅の取得やリフォームを推進していて、多くの方がこの取り組みに参加できるよう、補助金などとして金銭的な援助を行っているのです。
補助金の種類に関しては、年度によって名称が異なりますし、自治体によっては独自の補助金制度が設けられています。自分たちがどの補助金を利用可能なのかは、家の建築を依頼する建設会社に質問してみると良いでしょう。
二世帯住宅の建築に失敗しないための工夫とは?
ここまでの解説で、二世帯住宅にはメリットとデメリット、両方が潜んでいるということが分かっていただけたと思います。記事内の情報を見ればよくわかると思うのですが、二世帯住宅のデメリットについては、ちょっとした工夫や心構えによりメリットに転換することも不可能ではないのです。
そこでここでは、これから二世帯住宅を建てようと考えている方に向け、住み始めてから「失敗した…」と感じないようにするための工夫をご紹介します。
自分達に合ったタイプの二世帯住宅の形を選択する
二世帯住宅を検討する際は、まずお互いの生活スタイルの洗い出しを行い、それぞれの生活スタイルに見合った形の家づくりをすることが大切です。
というのも、一口に二世帯住宅といっても、その形は複数存在します。二世帯住宅にも、「ほぼすべてのスペースを共用する完全同居型」、「キッチンや浴室など、部分的に共用する一部共用型」、「玄関を始めとして、全ての空間を別々に作る完全分離型」と、大きく分けただけでも3つ形が存在するのです。
当然、実現する二世帯住宅の形によって、得られるメリットと注意すべきデメリットが変わるため、自分たちの現在の生活スタイルや実現した新しい生活の形を具体的にイメージし、より良い姿の家になるように心がけましょう。以下に、それぞれの形のメリット・デメリットをご紹介するのでぜひ参考にしてください。
- 完全同居型
完全同居型は、ほとんどの空間を共有することになるため、二世帯住宅を建てる際の建築コストや、生活時のランニングコストを抑えやすいのがメリットです。ただ、生活時間のズレや共用スペースの使い方でストレスを感じやすい点がデメリットです。 - 一部共用型
完全分離型と比較すると、二世帯住宅を建てる際の建築コストを抑えやすいです。また、キッチンやお風呂など、光熱費がかかる部分を共用すれば、ランニングコストも抑えられます。ただ、同居型よりは間取りに制約が生じやすい、完全分離型ほどはプライバシーの確保ができないなど、中途半端な面がデメリットです。 - 完全分離型
それぞれの世帯が自立した生活を維持できるため、ストレスなくお互いを補助できる点がメリットです。しかし、共用スペースが無く、全ての設備を二つずつ作る必要があるため、建築費やランニングコストがかかりやすいです。また、家を建てるためには広い敷地が必要です。
二世帯住宅を建てる際には、自分たちがどのような生活を求めているのか、慎重に検討しながら、最適な形の家を作らなければいけません。
間取りの工夫をする
生活時間、生活スタイルの違いによるストレスや家族間のプライバシー問題については、間取りを工夫することで軽減することが可能です。
例えば、足音などの音に関わるトラブルを避けるためには、上下のフロアで長い時間過ごす場所が重ならないようにするといった工夫が大切です。具体例を紹介すると、子世帯が2階のリビングで夜遅くまで過ごすという場合に、真下に親世帯の寝室を作ると、足音やテレビの音、話し声などでストレスを与えてしまう可能性が高くなります。
一般的に、二世帯住宅を建てる際には、移動の負担を軽減する目的で、親世帯が下の階を選ぶことが多くなると思います。しかし、子世帯の方が夜遅くまで行動する場合が多いため、その音が階下に響かないような間取りの工夫や防音対策をしておくべきなのです。
お金や家事の分担を事前に決めておく
二世帯住宅の中でも、完全分離型以外の形になると、光熱費や生活費など、お金の分担をあらかじめ決めておかなければいけません。この部分をなぁなぁで済ませておくと、実際の生活に入ってから「私たちの方が負担が大きい…」などと不公平感を感じてしまいやすいのです。一般的には、親世帯が現役の間は親世帯が多めに負担し、親世帯が高齢化し収入が少なくなった際には、子世帯が多めに負担するといった取り決めを行っているご家庭が多いように思えます。
なお、二世帯住宅における分担については、お金だけでなく、家事負担についても事前に話し合っておきましょう。特に、キッチンやお風呂、トイレにリビングなど、共有する部分が多い住宅の場合は、きちんと家事の負担を決めておかなければ、後々のトラブルに発展しやすいです。
この他、可能であればお風呂に入る時間などの生活ルールに関しても取り決めしておけば、日常生活のストレスを軽減することが可能です。もちろん、最初に全ての面で取り決めを行うのは難しいと思うので、気になったことがあれば、お互いが気軽に相談できるような体制を作っておくのが良いでしょう。
まとめ
今回は、国も推奨している二世帯住宅について、「二世帯住宅はデメリットだらけ」と言う情報が本当なのかについて解説しました。
記事内でご紹介したように、別々の年代の世帯が一緒に生活することになる二世帯住宅は、生活時間やスタイルの違いからデメリットに感じてしまう場面が多いのも事実です。しかし、共働き世帯が増加している昨今では、親世帯にお子様の面倒を見てもらうことができるようになり、現役世代が自分のキャリアを維持しながら生活できるという非常に大きなメリットも存在するのです。
もちろん、二世帯が良いかどうかは、人それぞれいろいろな考え方があるため、全ての方におすすめできるとは言えません。しかし、二世帯での生活を始める前に、きちんと話し合いを行えば、かなりメリットの多い暮らし方になるのは間違いないと思いますよ!