どのような建物にも通風や採光を確保するために窓が設けられています。ただ、一口に窓といってもいろいろな種類の窓が存在していて、設置する場所や用途によって適切な物を選ばなければならないのです。

そして、昨今の家づくりでは、リビングなどに設置する窓として「掃き出し窓」が特に高い人気を誇るようになっています。掃き出し窓は、人が出入りしやすい大きな窓のことを指しているのですが、名前だけを聞いてもどのような特徴を持つ窓なのか、その全体像が頭に思い浮かばない…という方の方が多いと思います。

そこでこの記事では、これから家を建てようと考えている方が知っておきたい知識として、掃き出し窓がどのような特徴を持った窓なのかを解説したうえで、この窓のメリット・デメリット面を紹介したいと思います。なお、記事内では、掃き出し窓のデメリット面を解消するための対策についても触れておくので、家づくりの際はぜひ参考にしてください。

掃き出し窓とは?他の窓との違いも紹介!

それではまず、掃き出し窓がどのような窓なのかについて簡単に解説します。

掃き出し窓とは、窓の下枠が床と同じ高さになる、大きな引き戸式の窓のことを指しています。このタイプの窓は、床面から天井に近い高さまでと、非常に大きいことが特徴といえます。他の窓と比較すると、ガラス部分が大きくなるため、採光性が非常に高く部屋を明るくしてくれる、また窓を開けると風が良く入るので風通しが良くなるといった特性を持っています。また、床面から直接窓枠が始まるため、出入りがしやすくなるという特徴も持っていて、昨今の家づくりではリビングなどに採用され、開放感を演出できると人気になっています。

開閉方式については、引き違い窓と片引き窓、中央を開けることになる引き分け窓など、いくつかの種類が存在します。

引き違い窓との違いについて

掃き出し窓と対比される言葉として引き違い窓があります。そのため、人によっては掃き出し窓と引き違い窓の違いはどこにあるのだろう…と疑問に感じているかもしれませんね。

これについては、「両者は比較できるものではない」というのが答えです。というのも、引き違い窓は、あくまでも窓の開閉方法を表すための言葉で、窓の種類を指しているわけではないからです。一般的な住宅で採用される窓については、スライド形式によって以下のように分類されています。

  • 引き違い窓(2枚):左右両方の窓がスライドする
  • 引き違い窓(4枚):左2枚、右2枚の窓がそれぞれスライドする
  • 片引き窓(1枚):1枚の窓ガラスが1方向のみにスライドする
  • 引き分け窓(2枚):2枚の窓ガラスが両側に開き中央を開ける形にスライドする

一般的に、掃き出し窓は引き違い窓であることがほとんどです。つまり、ほどんどの住宅に設置されている掃き出し窓は「=引き違い窓」ということになるわけです。引き違い窓は、あくまでも窓の開閉方式を指している言葉と覚えておきましょう。

腰高窓との違いについて

窓の種類として掃き出し窓と対比できるのは「腰高窓」になるでしょう。一般住宅に設置される窓については、主に掃き出し窓と腰高窓の2種類があります。それぞれの窓の特徴は以下の通りです。

  • 掃き出し窓・・・窓の下枠が床と同じ高さになる、大きな引き戸式の窓
  • 腰高窓・・・大人の腰の高さより上に設置される窓

掃き出し窓と腰高窓は、上記のような違いがあります。掃き出し窓は、採光性や通風性の高さ、出入りがしやすくなるという特徴から、リビングなどに設置されることが多いです。一方、腰高窓は、寝室や子供部屋などの個室やキッチンなどに設置されることが多いです。ドラえもんののび太の部屋に設置されている窓をイメージすれば分かりやすいかもしれませんね。

掃き出し窓は、最近でこそ「眺望」や「デザイン」を重視して設置されるようになっていますが、基本的に人が出入りすることを目的とした場所に設置する窓となります。そのため、庭に繋がるリビングやベランダやバルコニーに続く部屋の窓として設置されるのが一般的です。

掃き出し窓のメリット

それでは掃き出し窓のメリット面について解説します。掃き出し窓は、その他の窓と比較すると、ガラス面積が広いという特徴を持っています。そのため、家のこのタイプの窓を設置した場合には、以下のようなメリットが得られます。

メリット1 出入りしやすい

掃き出し窓は、ベランダやバルコニーなど、室内と屋外を繋ぐための出入り口としての役割を担うことができるというメリットがあります。床面から天井近くまでの大きな窓となるため、リビングとテラスなどを掃き出し窓を使って隔てておけば、単なる出入口としてだけでなく、空間をより広く見せ、開放感のある住空間を作り出すことも可能なのです。

リビングなど、家族が長時間を過ごす場所に大きな窓があれば、自然光を浴びることができるため、リラックス効果も期待できるでしょう。つまり、掃き出し窓は、日々の暮らしに癒しを与えてくれる窓としても働いてくれるのです。さらに、ベランダやバルコニーと室内を繋ぐ部分に掃き出し窓を設置すれば、大きな家具や家電を搬入するための場所として活用することができます。昨今では、狭小地に3階建て住宅を建築することが増えているのですが、このタイプの住宅の場合、冷蔵庫や大きなベッド、ソファーなどを玄関から階段を使って搬入することが難しくなります。

この際、4枚の引き違い窓を採用した掃き出し窓を設置していた場合、大きな間口を確保することができ、大型の家具・家電を搬入しやすくなるのです。さらに、車椅子の家族などがいる場合、災害時などには、救急の避難ルートとしても利用可能になるなど、家族の安全を守る意味でも大きなメリットがあります。

メリット2 光や風を取り込みやすい

ガラス面積が広い掃き出し窓は、それだけ光や風を取り込みやすくなります。晴れた日にカーテンを開放していれば、それだけで自然光を部屋の中に取り込むことができますし、窓を開放すれば気持ちの良い風が部屋の中に入りこみ、空気を自然に循環してくれます。小まめに掃除をして清潔に保っている部屋の中でも、人の目には見えないハウスダストやカビの胞子などが舞っているため、効率的に空気を循環させることができる掃き出し窓は、非常に大きなメリットをもたらせてくれるでしょう。

家づくりの際に考えておきたい窓の配置については、日当たりの良い南側に掃き出し窓を設置し、日当たりが少ない北側は腰高窓を設置するという方法が一般的です。自然の光を取り込むことができるようになれば、照明にかかる光熱費も削減できるなど、さまざまなメリットが期待出来ます。

メリット3 眺めが良くなる

掃き出し窓は、ガラス面積が広いことから、外の眺めを楽しめる点もメリットです。一戸建て住宅の場合、高層マンションのような景色を楽しめるわけではないですし、「眺めが良くなる」点はそこまで大きなメリットには感じないという方も少なくないと思います。しかし実は、家の前に樹木を設置している、庭のガーデニングを楽しんでいるなんて方の場合、自宅のリビングにいて季節の移り変わりを体感することができ、自然を目にすることによるリラックス効果などが期待できるとされているのです。

なお、寝室に掃き出し窓を設置し、タイマーによりカーテンが開くシステムなどを導入すれば、自然光で目を覚ますことができ、さらに起きてすぐに外の景色を楽しむことができるといったメリットも考えられます。

メリット4 バリアフリー設計に適している

掃き出し窓は、バリアフリー設計の面でも大きなメリットが得られます。先ほどご紹介したように、掃き出し窓は、下枠が床と同じ高さになるため、段差がなく車いすや高齢者の方でもスムーズに出入りすることができるようになります。

そのため、将来的にバリアフリーを考えている家や、高齢者と同居する家の場合には、非常に役立つ窓の形となるのです。家の中に広い間口があれば、移動時のストレスを軽減することができますし、災害時の避難なども容易になるため、安心で快適な生活環境を作り出すことが期待出来ます。

掃き出し窓のデメリット

掃き出し窓は、ガラス面積が広くなるため、採光性や通風性、出入りの際の利便性といった面で大きなメリットが存在します。ただその一方、掃き出し窓ならではのデメリットもあるので、以下の点は注意が必要です。

デメリット1 断熱性の面では難点がある

掃き出し窓ならではのデメリットとしては、窓部分の断熱性に難点が生じるという点です。ガラスは、熱伝導率が高いため、外気温の影響を受けやすくなります。そのため、ガラス面積の広い掃き出し窓の場合、家の断熱性能が下がってしまうことがあるのです。

家の断熱性が下がると、エアコンなどを使って室温を調整しても、冬は寒く、夏は暑くなりやすくなります。さらにエアコンが常にフルパワーで運転するようになり、光熱費の上昇といった問題にも発展する可能性があるのです。

掃き出し窓を導入する際には、断熱性の高いガラスを選ぶ、断熱カーテンを設置するなど、窓部分の断熱対策が必要になると考えてください。

デメリット2 防犯、プライバシー面でのリスクが高くなる

掃き出し窓は、開放感のある空間が実現する反面、防犯やプライバシー面ではリスクが高くなってしまうという問題があります。ガラス面積が広い掃き出し窓は、カーテンを開ければ家の中から開放感のある景色を楽しむことができます。しかし、それは家の外から家の中が見えてしまうという意味でもあるため、掃き出し窓が設置された部屋の目の前に人通りの多い道路があると、人目がどうしても気になってしまいます。

さらに、外から家の中を確認しやすいということは、空き巣などの侵入犯からすると、狙いやすい家になってしまうリスクがあります。窓を破壊すれば、すぐに家の中に侵入できるわけですし、外から家の中の様子をうかがえる状態になると、窓破りなどの手法で侵入されてしまう危険が生じるでしょう。

もちろん、どのような窓を採用していたとしても、防犯対策が不十分であれば、侵入犯罪を防ぐことはできません。しかし、家の中の様子を確認したうえで侵入できる掃き出し窓は、防犯上より危険になる可能性があるので、防犯カメラシステムや防犯ガラスの導入、警備システムとの契約など、対策をしっかりと行うようにしましょう。

デメリット3 防音性が低くなる

ガラス面積が広い掃き出し窓は、断熱性能だけでなく、防音性も低くなるので注意が必要です。窓ガラスは、壁と比較すると非常に薄い素材となってしまうため、防音性に劣ります。そのため、ガラス面積が広くなるとそれだけ音が通りやすくなってしまうのです。さらに、窓を開けて換気している際などは、間口が大きいことから音の出入りも多くなってしまい、騒音に悩まされやすくなるのです。

掃き出し窓は、開放感のあるリラックスできる空間を作り出せると言われますが、騒音が発生しやすい場所に面している住宅の場合、窓を開けると騒音に悩まされるストレス空間になってしまうことがあるので注意が必要です。昨今では、防音ガラスなども開発されていますが、ガラス面積が広い掃き出し窓に採用する場合、非常に高額になるので、防音性を重視しなければならない場所は、腰高窓を採用する方が良いかもしれません。

デメリット4 掃除やメンテナンスが手間

掃き出し窓は、腰高窓などと比較すると、非常に大きな窓となるため、メンテナンスや掃除がかなり手間になります。床から天井までが窓ガラスとなるため、汚れなどがどうしても目立つので、小まめに掃除してあげる必要があります。

窓は、どのような形状の物でも、外側は雨やホコリなどで汚れやすいため、定期的な掃除が必要です。しかし、ガラス面が広い掃き出し窓は、より掃除の頻度が高くなってしまうのです。また、サッシ部分も広いため、その部分にゴミやホコリ、砂などがたまりやすくなります。放置すると、窓の開閉がスムーズにできなくなる可能性があるので、小まめにメンテナンスしてあげなければいけません。

掃き出し窓を採用する場合、手が届かない場所の掃除が必要になるので、自動で窓ふきをしてくれるロボット掃除機などの導入も検討しましょう。

掃き出し窓を導入する際のポイント

ここまでの解説で分かるように、掃き出し窓は一長一短があるため、何も考えずに家中掃き出し窓にするなんてことはできません。掃き出し窓を設置したいと考えた時に、家の中のどの部分に掃き出し窓を設置するのかをよく考え、デメリット面を解消しながら導入する必要があるのです。

そこでここでは、掃き出し窓を導入する際の注意点などについて解説します。

どの部分が掃き出し窓に適しているのか?

掃き出し窓は、どの部屋でも設置が適しているとは言えない窓の形式です。一般的に、1階のリビングルームや2階のバルコニーなどの窓として掃き出し窓が推奨されています。

1階部分の個室に掃き出し窓を設置することも可能なのですが、日当たりや防犯面のリスクが考えられるという場合、腰高窓の方が適していると考えられるケースもあります。また、人通りの多い道路に面している住宅の場合、目隠しとしてのカーテンや防犯対策として窓シャッターを設置するなど、周辺設備のことも十分に考慮しなければならないと考えてください。

サイズについて

掃き出し窓の一般的なサイズは、幅1.5〜1.8m、高さ1.8〜2.2mとなっています。標準サイズの掃き出し窓を採用すれば、既製品として販売されているため、導入コストが抑えられる、取り付けも容易なので施工費が抑えられるといったメリットが得られます。ただ、掃き出し窓は、部屋の大きさに合わせてオーダーメイドすることも可能です。この場合、費用は高くなるので、その点は注意しましょう。

掃き出し窓のサイズについては、高さを確保すると採光や通風性が確保しやすくなり、部屋を広く見せる効果が期待出来ます。したがって、南向きのリビングなどに掃き出し窓を導入する場合は、自然光を十分に取り込めるようにするため220cmの大きなサイズがおすすめです。その逆に、北向きの個室などに掃き出し窓を設置する際は、180cmの低いタイプがおすすめです。

注意点としては、掃き出し窓のサイズは、カーテンなどの周辺アイテムのことも考慮しておく必要があるということです。220cmなど、大きなサイズの掃き出し窓を採用する場合、カーテンも大型の物を設置しなければいけません。カーテンは、サイズが大きくなると想像以上に価格が高くなるので、家づくりの予算内に収まるかどうかをチェックするため、事前にカーテンなどの周辺アイテムの価格帯も調べておきましょう。

バリアフリーを重視する

テラスやバルコニーに続く掃き出し窓は、可能な限り段差が少なくなるようなバリアフリー設計を重視しましょう。

家を建てる時点では、車椅子や高齢者の方が同居しているわけではないというお宅でも、段差が少ない掃き出し窓の導入がおすすめです。これは、将来的にバリアフリーが必要になった際でも、窓部分のリフォームが不要になるため、コストの削減が可能になる事や、小さなお子様の思わぬ怪我を防ぐという面でも非常に有効だからです。

掃き出し窓を設置する際、中途半端な段差が残ると、より危険なのでバリアフリー設計はしっかりと意識しましょう。

断熱・防音対策を意識する

先ほど紹介したように、掃き出し窓は、ガラス面積が広くなる分、どうしても断熱性や防音性が低くなってしまいがちです。したがって、断熱性や防音性も考慮した掃き出し窓を設計するのがおすすめです。窓部分の断熱・防音対策は、以下のような方法が考えられます。

  • 真空ガラスなど、断熱性・防音性が高い窓ガラスを採用する
  • 二重サッシにする

窓部分の断熱・防音対策は、高性能な窓ガラスを選ぶ、もしくは二重窓にするという方法が一般的です。窓ガラスが大きくなる分、高性能なガラスの採用は、多額のコストがかかります。また、二重窓の場合は、開け閉めをする際に同じ行動を2回しなければならなくなるなど利便性が下がる点がデメリットです。
どちらの方法を採用するのかは、コストと生活利便性などを考慮して決めると良いでしょう。

防犯対策を施す

掃き出し窓は、ガラス面積が大きくなってしまうため、どうしても防犯リスクが高くなってしまいます。したがって、空き巣などの侵入犯罪を防止するためにも、しっかりと防犯対策を施す必要があります。

防犯対策としては、窓シャッターの取り付けや防犯ガラスの設置などが良いでしょう。シャッターであれば、外からの目線を遮断できるだけでなく、物理的に窓の破壊を防ぐことができます。防犯ガラスに関しては、二重サッシを導入する場合におすすめです。二重サッシは、窓ガラスを二枚設置する形になるのですが、どちらか一方を防犯ガラスにすれば、窓破りなどによる侵入犯罪を未然に防ぐことができるようになるでしょう。

家の防犯対策は、他にもさまざまな方法が考えられるので、予算と相談しながら最適な物を導入していきましょう。

価格について

注文住宅に掃き出し窓を設置する場合の費用については、窓のサイズや素材、ガラスの種類、設置場所などによって変わります。一般的なリビングに掃き出し窓を設置する場合、15~25万円程度が費用相場となるのですが、断熱や防音、防犯対策などのオプションを付け加えると、価格が高くなっていきます。

例えば、アルミフレームと単層ガラスで構成された掃き出し窓を設置する場合は、比較的安価で先ほど紹介した価格帯で設置が可能だと思います。しかし、ガラスなどを工夫して、高性能な窓にした場合、窓部分だけの費用で30万円以上かかってくるでしょう。シャッターなども設置する場合、当然その費用が加算されます。

断熱性や防音性を考慮した掃き出し窓にしたいと考える場合は、樹脂フレームと複層ガラス、Low-Eガラスなどを組み合わせた窓にするのがおすすめです。初期コストは高くなりますが、窓部分の断熱性が高くなるため、空調コストなどの光熱費を削減できるようになるので、中長期的に考えた時にはコストを抑えられるはずです。

まとめ

今回は、採光性や通風性が高く、開放感のある空間を演出してくれる掃き出し窓について解説しました。

昨今の家づくりでは、リビングに大きな窓を設置してテラスとリビングを一体的に利用できるようにしたいと考える人が増えています。掃き出し窓は、下枠が床面と同じ高さになり、段差を気にせずに出入りができるようになるため、本来の面積以上の広さを感じることができるようになります。

ただ、掃き出し窓は、メリットばかりが存在するのではなく、いくつか注意しておかなければならないデメリット面もあるので注意が必要です。特に、防犯面や防音面のリスクについては、家族の安全で快適な生活が阻害される要因となるので、新築時にしっかりと対策も施しておく必要があると考えてください。

悠建設では、掃き出し窓を採用しても、高い断熱性や防音性を確保できる家づくりのご提案も行っています。万一の災害時も家族の安全を守れるような耐震性も確保した快適な住宅を作りたい方は、お気軽に弊社までご相談ください。

悠建設広報のM

悠建設のサイトでは当社の有資格者の監修のもと皆様の家創りにとって有益な情報を配信しております。 以下、各種許可、資格となります。

  • 一級建築士 3名
  • 二級建築士 1名
  • 二級福祉住環境コーディネーター 1名
  • 宅地建物取引士 1名
  • 二級建築施工管理技士 1名
  • 建築物石綿含有建材調査者 2名
  • 既存建物耐震診断士 2名