
近年、新築業界で人気が上昇しているのが平屋です。何かとメディアなどでも取り上げられることが多くなっていることもあり、ちょっとしたブームのようになっていると言われています。
平屋は、階段がなく、つまずきや転倒のリスクを減らすことができるバリアフリーな住まいであるという特徴から、高齢者世帯に支持されているというイメージが強いと思いますが、昨今では若者夫婦や子育て世帯からの注目も集まっていると言われるようになっていて、実際にこの記事をご覧いただいている方の中にも、平屋の建築を考えているという方がいるのではないでしょうか?
ただ、平屋住宅の建築を考え、ネットで情報を集めてみると、デメリットとして指摘されているポイントも意外に多く、「平屋はやめたほうがいい」という意見を見かけることも少なくありません。昨今の人気とは裏腹に、平屋に対する懸念事項を多く目にしたときには、「やっぱり平屋を選ぶのはダメなのだろうか?」と不安に感じてしまう方が多いと思います。
そこでこの記事では、「平屋はやめたほうがいい」と言われている理由について解説していきたいと思います。
平屋とは?
まずは、平屋と呼ばれる住宅がどのような形状なのかについて簡単に解説します。平屋とは、ずばり「1階建ての住宅」のことを指しています。
少子高齢化や核家族化が進行していると言われる日本では、平屋住宅への注目度が年々高くなっていると言われています。一昔前までの戸建て住宅のことを考えると、その多くで2階建てが選ばれていたというイメージが強いと思います。しかし、国土交通省の建築物着工統計と確認してみると、2024年における平屋の着工棟数は61,338棟となっており、全着工棟数における平屋の比率は17%に達しています。2023年の平屋の着工件数は57,848棟となっているため、僅か1年で3,500棟近く増えている計算になります。さらに、10年前の2014年(32,827棟)と比べると約2倍にまで増加していることが分かり、まさに「平屋ブーム到来」と言っても良い状況となっているのです。
新築業界で、平屋住宅がこれほどまで支持されるのはさまざまな要因が考えられますが、主な要因としては高齢者世帯が増えている、核家族化により少人数世帯が増えているということがあげられると思います。家族の人数が減り、住宅に求められる広さが減ったことで、2階建てや3階建てのような広さは必要ないと考える方が増えているのだと思います。さらに、高齢者世帯にとっては、日常生活の中で階段の上り下りがなくなるため、暮らしやすいということで平屋が選ばれているとされています。
近年では、平屋はおしゃれなデザインや機能的な間取りが充実していることも、さまざまな世代から選ばれる要因になっているのだと思います。ただ、「平屋ブーム」と呼べるような状況下でも、平屋に対して否定的な意見が根強く残っていることも事実です。そこで次項では、平屋について「やめたほうがいい」という意見の方が考えているデメリット面について解説します。
「平屋はやめたほうがいい」と言われる理由
それでは、平屋住宅に対して「やめたほうがいい」という意見が出る理由についてご紹介していきます。先程紹介したように、昨今の日本では、住まいに求められる条件が大きく変化しており、平屋住宅が選ばれるケースはかなり多くなっています。
しかし、平屋住宅に対しては、以下のような点をデメリットとみなす方も多く、現在でも「やめたほうがいい」という指摘がなされることがあるのです。ここでは、「平屋はやめたほうがいい」と言われる主な理由をご紹介します。
①固定資産税が高くなる傾向がある
一つ目の理由は、平屋住宅の場合、固定資産税が高くなる傾向にあるという点です。固定資産税とは、土地と建物の評価額を基準に計算されるのですが、実は、平屋建ての場合はその基準額が高くなってしまうのです。
固定資産税の計算は、土地と建物それぞれに固定資産税評価額が設定されます。そしてその次に、建物の評価額に経年原価補正率が、土地と建物の評価額には税率が適用されていきます。最後に、築年数や面積、長期優良住宅の認定取得などの要因が考慮され、軽減措置が適用されて、税額が決まるといった感じです。
平屋の場合、2階建て以上の住宅と比較すると、土地や屋根面積が広くなってしまいます。そのため、基準となる固定資産税評価額が高くなりがちなのです。ただ、固定資産税に関しては、2階建て以上の住宅でも発生するため、そこまで大きな金額差にはならないので、必要以上に心配する必要はありません。また、固定資産税は、さまざまな軽減措置が用意されているため、国の制度を上手に活用しながら減額を目指すのも一つの手です。
②広い土地が必要になる
平屋住宅で、十分な生活スペースを確保するためには、それだけ広いスペースが求められます。2階建て住宅の場合、1階部分と2階部分が居住スペースとして確保できるわけなので、極端に言うと、平屋建ての半分の面積があれば良いのです。
広い土地の確保については、まず問題となるのが土地の取得費が高くなるという点です。当然、土地の取得費は、広くなればなるほど高くなっていきます。さらに、大阪市内など、都市部に関しては、そもそも広い土地を確保することが難しいという根本的な問題も立ちはだかります。駅近や商業施設が近いなど、利便性の高い地域となると、戸建て用に十分な広さの土地を確保することは非常に困難な時代になっています。
こういった問題から、平屋を希望する場合には、立地や予算とのバランス調整が難しく、理想の立地条件で適切な広さの土地を見つけるのに時間がかかりすぎてしまう場合が多い点で、「やめたほうがいい」という意見になる方も多いです。土地の取得費を抑えたい場合、都心から離れた場所に家を建てることになるため、住み始めてから不便に感じることが多くなる、その逆に立地を重視した場合、土地にお金がかかりすぎて、建物や設備に妥協しなくてはならなくなるという可能性が考えられるので注意が必要です。
③セキュリティやプライバシー確保の面で懸念がある
平屋住宅のデメリットとしてよく指摘されているのは、セキュリティ面やプライバシーの確保の面で、2階建て以上の住宅と比較すると、懸念点が多くなるという点です。
例えば、セキュリティの面では、2階建て住宅と比較した場合、地上階に窓やドアなどの出入り口が多くなると想定できるため、不審者が侵入しやすくなるのではないかとされています。そのため、平屋建ての場合、セキュリティ面の問題に対処するため、以下のような防犯対策をしっかりと行う必要があるとされ、この部分にコストがかかると考えられているのです。
- 窓を高い位置に設置する
- 格子や窓シャッター、防犯ガラスの導入
- 防犯カメラやセンサー付きライトなどを設置する
- ホームセキュリティへの加入
空き巣対策のことを考えると、上記のような防犯対策が必要とされ、「コストがかかるから平屋はやめたほうがいい」という意見を持つ方がいるのです。ただ、住宅の防犯対策については、「平屋だから必要」というわけではないので、この部分は平屋のデメリットにはなり得ないと考えても良いです。防犯対策が不十分な住宅の場合、2階建て以上の住宅でも普通に狙われてしまう訳なので、平屋以外の戸建てでもセキュリティ面の対策は必要不可欠です。
プライバシー面の問題については、1階建てである平屋の場合、外部からの視線や家族間の生活音に対して特別な配慮が必要になるのは確かです。1階建ての平屋は、通行人や車から家の中が見通せてしまう可能性があるため、家族のプライバシーを配慮するためにはさまざまな対策が求められます。例えば、窓の配置や高さを工夫する、庭木を設置することで視線を防ぐなど、1階建て特有の対策が求められることもあるのです。
また、平屋建ては、家族の生活空間が近くなることで家族間の生活音が問題になるケースもあり、この点で「平屋はやめたほうがいい」という意見を持つ方もいます。この問題については、間取りの工夫やプライベート空間の防音処理などで対処することができます。
④十分な収納スペースが確保できない
平屋住宅は、1階建てとなるため、スペース的な問題を抱えやすい点がデメリットと言えます。特に、平屋を選ぶ方の多くは、ゆとりのあるリビングや居室を重視する傾向にあるため、生活空間を広くとることで収納スペースの確保が難しくなりやすいとされているのです。
限られた床面積で生活空間の広さを重視した場合、必然的に収納スペースに割り当てられる面積が減少してしまうことになります。その結果として、そこでの生活が始まってみると、生活に必要な日用品や季節物の片づけに苦労してしまう方が多いのです。目に見える位置に荷物がたくさん出ていると、それだけで部屋が狭く見えてしまい、平屋を選んだことを後悔する可能性もあるでしょう。
ただ、収納スペースを確保するため「広大な土地を取得する」という方法は、家の建築コストが高くなりすぎてしまうという別の問題が生じます。平屋は、家族が増えるとスペース的な問題を抱えやすくなるので、生活空間の広さと収納のバランスは慎重に考慮しなければいけません。
⑤外部騒音の影響を受けやすい
「平屋はやめたほうがいい」という意見を持っている方の中には、1階建てとなる平屋は、自動車の走行音や室外機の音など、外部騒音の影響を受けやすくなるという点を指摘する方も多いです。
ただ、このような外部騒音の問題については、平屋か2階建てかといった住宅の形態よりも、建物そのものの性能に大きく左右されるので、平屋特有のデメリットと考えなくても良いです。平屋でも、高性能な断熱材を採用して、窓に遮音性の高い防音ガラスを採用するなど、建物の設計や構造に工夫を施すことで、外部騒音の侵入を防ぐことができるのです。
つまり、住宅を取り巻く騒音問題につては、平屋か2階建てかはあまり関係なく、建物そのものに防音対策を施しているかどうかで変わるという点を認識しておきましょう。静かで快適な住環境を求めるなら、建物の設計や使用する材料こだわって、断熱性や気密性、防音性の高い環境を構築してもらうと良いです。
⑥風通しが悪くなる可能性がある
平屋住宅は、十分な居住空間を確保する目的で、横に広がる構造になりがちです。そのため、構造的な問題から風通しが悪くなると思われ、「やめたほうがいい」という意見を持つ方がいるのです。
ただ、この点については、適切な設計と設備の工夫などにより、十分な通気性を確保することが可能なので、そこまで気にする必要はないと思います。例えば、窓を開けた時、自然な風の流れができるよう、風の入り口と出口をきちんと作っておけば、両方を開放することでしっかりと風が通るようになるのです。
この他、昨今では機械による換気が当たり前になっているので、しっかりとした換気システムを導入することで、室内空間の空気循環は効率的に行われるようになります。平屋は、風通しの問題が生じやすいのですが、建築時に換気方法などについてしっかりと計画しておくことで、快適な室内環境を維持することができます。この他、WB工法の採用など、建築技術によって室内の空気環境を改善できる方法もあるので、専門家に相談してみると良いでしょう。
⑦日当たりの問題が生じる可能性がある
平屋は、1階建て住宅となるため、周囲を高い建物で囲まれることで、日当たりが悪くなると考えられがちです。実際に、平屋を選んで建築した後、周囲にマンションなどが建設されると、日当たり条件が悪くなる可能性が考えられます。
ただ、この問題については、実際のところそこまで大きな問題にならないケースの方が多いです。というのも、居住空間を確保しなければならない平屋住宅は、広い土地が必要になるため、都心部や住宅密集地に建てるのではなく、郊外や比較的土地にゆとりのある地域に建てられるケースが多いです。
こういった土地に関しては、周囲の建物と十分な距離をとることができるため、日当たりの問題を抱えるケースは少なくなるのです。日当たりの問題については、都心部に建てた2階建てや3階建てなど、平屋よりも背の高い建物の方が懸念点になるケースが多いです。都心部など、利便性の高い地域は、後から高層マンションなどが建築される可能性が高いためです。
⑧水害時は被害が拡大する恐れがある
平屋住宅は、その構造上、どうしても水害による被害を受けやすくなるという点は注意が必要です。これは、1階建てとなる平屋の場合、全ての居住空間が1階部分に集中するのが理由で、豪雨や洪水による浸水などが発生した場合、生活空間全てが浸水し、家具や家電も大きな被害が出てしまう可能性があるからです。
2階建てや3階建て住宅の場合、2階以上にメインとなる生活空間を配置することで水害時の被害を少なくすることができます。一方、平屋の場合は、そのような対処が不可能であるため、水害の発生頻度が増えている昨今では、「平屋はやめたほうがいい」という意見を持つ方がいるのだと思います。
この問題については、土地選びの段階で、ハザードマップなどをチェックして、水害リスクが低い土地を選ぶという方法が良いでしょう。何らかの理由で、水害リスクが高い土地を選ばざるを得ない場合には、平屋の建築は避けるのが賢明と言えます。どうしても平屋にこだわりたいという場合、土地のかさ上げや耐水設計の採用など、水害の被害を軽減できる対策を検討しなければいけません。
「平屋はやめたほうがいい」という方は、上記のような懸念点が気になっているのだと思います。ただ、「平屋ブーム到来」と言われるほど、新築時に平屋を選択する方が増えているというのも事実です。これは、平屋には、2階建て以上の物件にはないメリットが認められているからです。ちなみに、平屋のメリットについては、以前別の記事で解説しているので、以下の記事も併せて確認してみてください。
関連:新築一戸建てはおしゃれな平屋の人気が急上昇?平屋を建てる場合のメリットとデメリットをご紹介
平屋が向いている人と向かない人の条件について
それではここから、新築注文住宅の購入を検討している方で「平屋ってどうなんだろう?」と考えている方に向け、平屋の建築が向いている人とそうでない人の条件について解説します。
平屋が向いている人の条件について
平屋の建築が向いていると考えられるのは以下のような方です。
- 育児や介護の必要があるご家庭
平屋は、階段移動が無く、全ての生活空間がワンフロアでつながっています。そのため、小さなお子様や介護が必要な高齢者は、常に目に届く範囲内にあるため、家族全員の様子を把握しながら安心して生活することができるようになります。子育てや高齢者の介護についても、家事をしている時でも常に目の届く範囲にいられるため、安心感をもたらせてくれるでしょう。また、家族の生活空間が近くなるため、自然とコミュニケーションが増え、より密接な関係性を築きやすいとされています。 - 同じ家に長く住みたいと考えている人
平屋は、階段移動が無くなるという点から、将来、年をとってからも安心して生活できるという点が大きなメリットになります。家は「一生の買い物」と言われていますが、数十年先のことも見据えて家を建てるということはなかなか難しいです。しかし、平屋の場合、最初からバリアフリーのことも意識して家づくりが進められるようになるため、生涯にわたって安心して暮らせる住まいになると考えられ、近年人気が高くなっているのです。 - コンパクトで快適な暮らしを求める人
平屋は、生活動線をコンパクトにまとめやすく、家事動線や生活動線が短くなるという点も大きなメリットになります。そのため、夫婦二人暮らしや一人暮らしなど、コンパクトな住まいを求めているという方には向いている住宅の形と言えるでしょう。
上記のような方には、階段移動が必要のない平屋住宅が向いていると言えます。
平屋が向かない人の条件について
「平屋ブームが到来している」と言われるなど、年々平屋の着工棟数が増加しているものの、いくつかの条件を抱えている方の場合、平屋の建築は向かない可能性があります。以下のような方は、平屋ではなく、2階建て以上の家を建てるのがおすすめです。
- 都心部や住宅密集地に家を建てたい方
余裕のある生活空間を実現した平屋を建てるためには広い土地が必要になります。そのため、都心部や住宅密集地などの場合、平屋を建築するための適切な用地を見つけることが困難になると考えられます。駅近や商業施設などが充実しているといった人気の立地の場合、十分な広さの区画が少なく、あったとしても驚くほど高価であることが一般的です。そのため、平屋を建てたいと考えている方は、郊外や地方など、比較的余裕を持った土地を確保しやすい地域を選ばなければならないのです。したがって、「立地条件にこだわりがある」という方の場合、平屋に向かないケースが多いです。 - 水害が多い地域
先程紹介したように、平屋は水害の被害を受けやすいという点が大きな懸念点になります。そのため、親から相続した土地に家を建てる場合などで、ハザードマップを見ると水害の危険性が高いというケースでは、平屋は避けた方が良いです。土地のかさ上げなどを実行して浸水対策を施すことも出来ますが、この場合、追加の費用がかかりますし、その上で完全に安全を保障できるわけではありません。そのため、どうしても平屋住宅が建てたいという方の場合は、水害の頻度が少なくリスクも低い土地を探し、そこで建てる方が良いです。
平屋住宅は、人気が上昇しているとはいえ、全ての方にとって向いている住宅の形とは言えません。上記のような考えを持つ方の場合、他の選択肢を検討すべきかもしれませんね。
まとめ
今回は、年々その人気が上昇していると言われる平屋住宅について、人気の高さとは裏腹に「平屋はやめたほうがいい」という意見が出る理由について解説しました。
記事内でご紹介したように、平屋の着工棟数は、10年前と比較すると、なんと2倍に増えているというデータがあるのです。これは、少子高齢化の影響により、子育てが終わったシニア世代の方が、階段の移動が無くなる平屋に建て替えしているというケースが増えているとも考えられるのですが、実は、若者世代でも平屋の人気が高くなっていると言われているのです。
しかし、平屋住宅は、メリットしか存在しないというわけではないため、実際に家の建築を考えた時に、本当に自分たちのライフスタイルに平屋が合っているのかは慎重に検討しなければいけません。
