これから注文住宅を建てようと考えている方は、家づくりの段階で花粉症対策について考えておくべきと言えるでしょう。花粉症は、日本人にとって国民病と言われるような状況になっており、今や日本人の二人に一人は花粉症を患っていると言われるほどなのです。

実際に、この時期になると、花粉の飛散情報について気になってしまう…と言う方も多くなり、テレビのニュースなどでも花粉の飛散量を紹介するようになってきます。2025年については、前シーズン(2024年)と比べると、九州から近畿では非常に多く、北陸・関東甲信と東北南部も多い傾向になるのではと予想されています。ちなみに、東京に関しては、記事制作時点の1月24日時点で、既に花粉の飛散が開始されたという発表もあり、日常生活の中で花粉対策が必須の状況となっています。

そして、花粉症に関しては、外出先よりも家の中にいる時の方が症状がひどい…と悩む方が多いとされています。実は、この現象については、家づくりの際に花粉対策を怠ってしまい、家族の生活空間にまで花粉を持ち込んでいるのが大きな要因とされています。実は、こういった花粉症の問題については、家づくりの段階でちょっとした工夫を施すことで対策することが可能です。
そこでこの記事では、これから新築注文住宅の建築を検討している方に向け、新築住宅で考えておくべき花粉症対策について解説します。ちなみに、日常生活の中で出来る花粉症対策については、以前別の記事で紹介しているので、以下の記事もご確認ください。

関連:花粉症が家の中の方がひどい…花粉症対策を考えた家づくりと普段できる対処について

新築住宅で考えたい花粉症対策について

住宅の花粉症対策を考えた時、非常に重要なポイントになるのが、「家族の生活スペースに花粉を持ち込まないようにするにはどうすれば良いのか?」と言うことです。冒頭でもご紹介したように、花粉症の方は、ばっちりと対策を施している外出時よりも、家の中にいる時の方が症状がひどい…と悩む方が多いです。家の中は、壁や窓、ドアなどで外部と遮断されているのに「なぜ家の中で花粉症の症状が出るの?」と疑問に感じてしまう方もいるかと思います。

この問題については、非常に単純で、住人さん自身が家の中に花粉を持ち込んでいることが要因です。例えば、外出先から帰宅した際、衣服などに付着した花粉をそのまま持ち込む、換気の際に空気と一緒に花粉が侵入する、洗濯物を取り込む際に花粉も一緒についてくるなどと言った理由で、家の中に大量の花粉が存在する状況が作られるわけです。

それでは、このような問題を解消するための家づくりのポイントはどこにあるのでしょうか?ここでは、新築住宅で出来る花粉症対策を考慮した工夫について代表的な手法をご紹介します。

玄関近くに洗面やクローゼットを配置

新型コロナウイルス対策としても注目された、玄関付近に手洗いができる洗面所を設けるという方法は、花粉症対策としても有効です。また、コートなど、外出時に着用していた衣服をかけられる場所を玄関部分に用意するという方法も、家の中に花粉を持ち込まないという面では非常に有効です。

花粉の飛散が多くなる時期は、外出時にマスクや眼鏡などを必ず着用するといった対策を施す方が多いと思います。これにより、体内に取り込む花粉の量を減らすことができるわけです。しかし、外出時に着用しているコートやカバンなどは、大量の花粉が付着することになるため、帰宅後その姿のままリビングなどの生活スペースに入ったのでは、家の中に花粉が侵入することを防ぐことができなくなるのです。先ほどご紹介したように、外出時よりも家の中の方が花粉症がひどい…と悩む方の多くは、衣服やカバンなどに付着した花粉をそのまま生活スペースに持ち込んでいるといった生活スタイルになっている方が多いです。

玄関の近くに、洗面所やクローゼットを設けておけば、このような問題を解消することができ、効果的な花粉症対策が可能になります。例えば、外出先から帰ってきたとき、そのままの姿で家族の生活スペースに入るのではなく、大量の花粉が付着したコートだけでも玄関近くにあるクローゼットにかけることにすれば、衣服に付着した花粉が家の中に入らなくなりますよね。また、洗濯済みの綺麗な衣服と、花粉が付着した衣服の収納場所を分けることができるため、他の服に花粉が移ることを防止することも出来るのです。さらに、洗面所があれば、帰宅後すぐに手洗いやうがいをすることができ、体に付着した花粉を除去したうえで室内に入ることができるようになります。

最近では、玄関部分に大きめのシューズクロークなどを用意し、そこに外出用のコートやカバンも収納できるようにするという間取りを採用する方が増えているのですが、これは単に玄関が綺麗に片付くだけでなく、花粉症対策の効果を狙っているという部分もあるのです。

部屋干しできるようにする

家の中に花粉を持ち込む要因としては、洗濯と言う作業があります。最近では、洗濯乾燥機を導入していて、ボタン一つで洗濯物が乾いた状態で出てくるというご家庭も増えています。しかし、日光のもとで乾かした洗濯物は、独特の良い臭いがすることから、洗濯物は外干ししたいと考える人が多いのも事実です。

ただ、花粉が飛散する時期は、洗濯物を外に干すという行為が、家の中に花粉を持ち込む要因となってしまうのです。洗濯物の天日干しは、乾きが早い、ダニや菌などを殺菌効果が期待できるといった良い面もあるのですが、空気中に飛散している花粉が洗濯物に付着し、それを取り込む際には花粉も一緒に取り込むことになる…と言う大きな落とし穴があるのです。花粉が飛散する時期は、洗濯物を取り込む際に、しっかりとはたいて取り込むようにするという方も多いですが、全ての花粉を除去することは難しいのが実情で、家の中の方が花粉症の症状がひどい…なんてことになりやすいのです。

ご家族の中で、重度の花粉症を持っている方がいる場合は、花粉症シーズンは洗濯物の外干しは正直おすすめできません。最近では、花粉がつきにくくなる洗剤なども販売されていますが、完全に除去できるわけではないので、室内干しもしくは乾燥機を利用するのがおすすめです。実際に、近年では、花粉症やアレルギーを持つ家族がいるご家庭や共働き世帯の場合、洗濯物は外干ししないと決め、バルコニーを設けない間取りにするケースも多くなっています。バルコニーを無くせば、居住スペースを少し広くできる、掃除やメンテナンスの手間がなくなる、防犯上も有効などさまざまなメリットが存在するのです。この場合、家の中に洗濯物を干せるスペースを用意するか、大きな乾燥機を設置できるスペースを確保するケースが多いです。

換気は換気システムを頼る

家の花粉症対策を検討した時には、換気システムに注目することが大切です。室内の換気と聞いたときには、窓を開放して新鮮な空気を取り込むという行為をイメージする方が多いと思います。しかし、窓を開放する換気方法は、空気と一緒に花粉を取り込む結果となるため、花粉が飛散するシーズンになると症状の悪化を招きます。網戸を閉じていても、花粉は網戸の隙間よりも小さいので、侵入を防ぐことはできません。

換気により花粉が家の中に入ると、絨毯やカーテンなどに付着し、人が動いて気流ができると室内で舞ってしまい、花粉症の症状が悪化する…と言う悪循環ができてしまいます。しかし、花粉症のシーズンだからと、換気不足に陥るのもそれはそれでよくありません。

重度の花粉症を持っている方が家族にいる場合、部屋の換気は窓による換気を避け、新築時に換気システムを導入することで、花粉の侵入を防ぎながら新鮮な空気を取り込むことができるようにするのがおすすめです。現在の住宅は、24時間換気システムの導入が義務付けられているため、何らかの換気システムが必ず導入されます。しかし、換気システムの構造をきちんと確認しなければ、空気と一緒に花粉も取り込むタイプの設備を取り付けられてしまう恐れもあるので注意が必要です。
ちなみに、室内の換気のことを考えると、窓の開放よりも換気システムによる換気の方が、効率的と言われています。

家の機能性による花粉症対策について

ここまでは、新築時の間取りの工夫で実現できる花粉症対策について解説しました。花粉の飛散量が多くなるシーズンは、外出先から帰宅する、外干しした洗濯物を取り込むなんて時、家の中に大量の花粉を持ち込んでしまう可能性が高くなります。正直なところ、一切の花粉を家の中に持ち込まないことは不可能ですし、家族の生活スペースに侵入する花粉の量をどれだけ少なくできるのかが非常に重要になるのです。そのためには、玄関部分で花粉を落とす、洗濯物を室内に干すことで花粉の侵入を防ぐといった対策が有効になるのです。

そして、新築住宅の花粉症対策については、間取り以外にも家そのものの機能性を高めるという方法も有効なのです。ここでは、家の花粉症対策を考えた時、高めておきたい機能について解説します。

家の気密性を高める

家の花粉症対策を考えた時、一番に注目したいのが住宅の気密性です。家の気密性を高めてあげると、花粉対策として非常に高い効果が期待できます。昨今では、家の気密性や断熱性を高めた高気密・高断熱住宅が注目されています。ただ、高気密・高断熱住宅は、空調効率を高めてくれるなど、家の省エネ性能を向上させるための対策と考えられがちです。しかし実は、高い気密性と断熱性を保持した家は、花粉対策の面でも効果が期待できるのです。

「なぜ高気密住宅は花粉対策になるのか?」という疑問を感じた人もいるかもしれませんが、その答えは単純で「気密性能が高い=家に隙間が少ない」と言うことを意味するからです。逆に言うと、気密性が低い住宅と言うのは、各所に隙間が生じているということを意味しています。家に隙間が多くなれば、その部分から空気と一緒に花粉が侵入してくることになります。いくら間取りを工夫して、人や衣服に付着して侵入する花粉の量を少なくしたとしても、目に見えない隙間から大量の花粉が侵入してしまい、家の中で花粉症の症状が出てしまう…なんて状況になってしまうのです。

高気密・高断熱住宅は、家の隙間がほとんどないことを意味するため、外部からの花粉の侵入を効果的に防いでくれるようになるのです。また、換気システムを導入し、外気の影響を受けにくい計画換気で室内の空気を循環させるようにすれば、室内の温度や質を一定に保つことができ、常に綺麗な状態の空気を維持することができるようになります。

高気密・高断熱住宅は、実現するための建築コストが高くなるものの、家族の花粉症対策など、健康維持の面を考えると、非常に効果的な対策と言えます。

24時間換気システムは「第1種換気」を選ぶ

2003年の建築基準法改正により、すべての建築物で24時間換気システムの設置が義務化されています。ただ、24時間換気システムにもいくつかの種類が存在していて、家の花粉症対策を考えた時には、第1種換気がおすすめとされているのです。24時間換気システムは、3種類あり、以下のような特徴を持っています。

  • 第1種換気
    第1種換気は、入口である給気口・出口である排気口の双方に、ファンなどの機械換気装置を設置する方式です。機械により強制的に空気を循環させることができるので、効率よく計画的に換気ができます。また、熱交換システムにより、室内の温度を一定に保つことも出来ます。
  • 第2種換気
    第2種換気は、給気口にのみファンなどの機械換気装置を設置し、出口である排気口は自然換気に頼るという方式です。排気口に関しては、「ただ穴が開いているだけ」と言った感じです。入口にあるファンにより、強制的に空気を取り込み、それにより排気口から室内の空気が押し出されるといった仕組みになっていて、室内の気圧が外気よりも高くなるため、外からの異物などの侵入を防げます。ただし、排気の能力は弱いため、室内に湿気がこもりやすい点が難点です。なお、第2種換気は、工場や病院などで採用されることはあるものの、一般住宅では最も普及していない換気方式となります。
  • 第3種換気
    第3種換気は、第2種換気とは逆に、給気は自然給気で行い、排気口にファンなどの機械換気装置を取り付けるという方式となります。出口部分で空気を強制的に引っ張り出す方式なので、室内は外気よりも気圧が低くなります。第3種換気の場合、全ての部屋に給気口の設置が必要ですが、自然給気となるため、設置コストやランニングコストは安いです。ただ、熱交換システムには対応していません。

3つの換気方式の中では、コストが安い第3種換気が一番普及している換気方式です。ただ、花粉症対策を考慮し、室内の空気を綺麗に保ちたいと考えるなら、第1種換気が最もオススメです。第1種換気は、給気も機械で行うのですが、給気口に高性能なフィルターなどを設置しておけば、室内に花粉を取り込む心配がなくなります。また、熱交換換気システムであれば、空調効率を悪くする心配もありません。

通気断熱WB工法を採用する

家の花粉対策を考えた時、家を建てる際の工法に注目するというのも有効です。そして、家族が家の中で花粉症に悩まなくても良い環境を作りたいと考える場合、通気断熱WB工法を採用した家づくりが非常におすすめです。

WB工法を採用した家がどのようになるのかについては、以前別の記事で詳しく解説しています。簡単に言うと、家そのものが人と同じように呼吸し、湿気やシックハウス症候群の原因物質などを排出してくれることから、換気システムに頼らなくても室内の空気を常に清潔に保ってくれるという工法となっています。WB工法の詳細については、以下の記事をご参照ください。

参考:通気断熱WB工法とは?WB工法のメリットはよく耳にするけど、実際のところデメリットはないの?

家の中に花粉が侵入するその経路については、衣服や洗濯物、人に付着して…と言うのが約40%とされています。そして実は、換気口や窓からの換気によるものが約60%とされていて、24時間換気システムの花粉対策を施していない場合、勝手に花粉が侵入してくる状況になってしまっているのです。先ほどご紹介したように、換気システムに関しては、第1種換気を採用したうえ、給気口に高性能フィルターを装着するといった対策で、花粉の侵入を防ぐことができますが、多くの場合、第3種換気が採用されていて花粉の侵入を防げない状況になっているのです。

通気暖断熱WB工法は、24時間換気を止めたとしても、家そのものが呼吸することで、常に新鮮な空気環境を維持することができるようになります。また、湿気や建材由来の化学物質なども自然と排出してくれるため、家族の健康を守るという意味では、非常に効果的な対策となるのです。大阪府内など、関西地方で花粉症に強い家を建てたいと考えている方がいれば、ぜひお気軽に悠建設にお問い合わせください。

まとめ

今回は、家づくりの際に考えてみたい花粉症対策について解説しました。記事内でご紹介したように、花粉症は日本人にとってまさに国民病と言っても良いような状況になっていて、2025年現在では国民の2人に1人は花粉症を患っているとされているのです。

一般的に花粉症は、空気中に大量の花粉が舞っている屋外に滞在する時にさまざまな症状が出ると考えられがちですが、マスクや眼鏡、薬と言った対処法がある現在では、外出中よりも家の中の方がしんどい…という声が多くなっています。花粉シーズンは、毎朝薬を飲み、マスクを着用して外出すれば、屋外ではほとんど症状が出ないという方も多いと思います。しかし、自宅に帰った時には、マスクを外すことになるため、家の中に花粉があると、症状が出てしまう訳です。

そして実は、花粉は衣服や人に付着して侵入したり、換気の際に侵入したりするため、家の中にも大量に存在している場合があります。実際に、ネットで花粉症について検索してみると「家の中の方が花粉症がひどい…」と言う声を見かけることが多くなっているのです。こういったことから、多くの方が花粉症を患っている現在、家づくりの際に花粉症対策に注目することが重要と言えます。新築住宅の計画を立てている時は、家の外観や間取りに注目しがちですが、家族が健康に快適に暮らせるようにするにはどうすれば良いのかという視点も持っておくのがおすすめです。

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