近年の新築業界では、家の省エネ性をどうやって高めていくのかということが重要視されるようになっています。新築に関わる国の補助金などでも家の省エネ性能が条件になっていたり、住宅ローン減税を受けるためにも省エネ性能が必須条件になっています。家の省エネ性を向上させる手法では、高気密・高断熱住宅にする、太陽光発電や家庭用蓄電池などの設備を導入するといった方法があり、特に太陽光発電設備に関しては、自治体の法令により義務化の動きが強まっています。
ただ、新築時に太陽光発電の設置を検討し、この設備についてインターネットでいろいろと調べてみると、「太陽光発電はやめたほうがいい…」「太陽光発電を設置して後悔している…」などのネガティブな情報を見かける機会が増えていることから、本当に太陽光発電を設置しても大丈夫なのか不安に感じてしまう方も多いようです。
そこでこの記事では、「太陽光発電はやめたほうがいい」と言われる理由が何なのか、また、本当に新築には太陽光発電を設置しない方がいいのかについて解説します。
太陽光発電がやめたほうがいいと言われる理由
それではまず、「太陽光発電はやめたほうがいい…」「太陽光発電を設置して後悔している…」と言ったネガティブな意見を見かける機会が増えている理由について解説します。
冒頭でご紹介したように、東京都をはじめとして、新築戸建てへの太陽光発電設備の設置を義務化する動きが各自治体で強まっている中、なぜ太陽光発電の設置をやめたほうがいいという意見が出るのでしょうか?太陽光発電は、自家発電した電気を電力会社に高値で買い取ってもらうことができる制度もありますし、自家消費することで電気代を削減することが可能な非常に優れた設備です。
しかし、以下のような理由から太陽光発電の設置に反対意見を持つ方が少なくないのです。
原因① 売電価格が下落しているから
現在、「太陽光発電はやめたほうがいい…」という方のほとんどは、FIT制度による売電価格が大幅に下落しているからという点が原因だと思います。住宅用太陽光発電は、国が普及を強く推進しており、固定価格買取り制度というものを制定しています。そして、この制度が開始された当初の2012年は、1kWh当たりの売電価格が42円と非常に高額に設定されていたのです。この売電価格は、10年間は電力会社に売電する時の価格が維持されますので、太陽光発電を設置するためにかけるコストを回収できるといった制度設計になっています。
ただ、FIT制度は「太陽光発電の設置コストを回収する」ということが目的になっていますので、システムの設置コストが下落すれば、それに比例して売電価格も下がっていくという仕組みになっています。実際に、ここ数年の売電価格の推移は以下のようになっています。
- 2020年度の売電価格:21円/kWh
- 2021年度の売電価格:19円/kWh
- 2022年度の売電価格:17円/kWh
- 2023年度の売電価格:16円/kWh
- 2024年度の売電価格:16円/kWh
上記のように、2012年は42円だった売電価格が、2024年度には16円まで下落しているのです。なお、FIT制度は「10年間は高値で売電できる」という仕組みになっていますので、2024年に太陽光発電を設置したお宅の場合は、2034年まで16円/kWhという売電価格が維持されます。ただ、制度開始時の売電価格と比較すると、1/3近くまで下落していることから、「今更、太陽光発電を導入しても、設置コストが回収できないのではないか…」と考える人がいて、その結果「太陽光発電はやめたほうがいい」という意見になっているのだと思います。ちなみに、今後の売電価格の動向については、さらに下落していくのではないかという予想が大半です。
この売電価格の状況を見ると、「太陽光発電はやめたほうがいい」という情報は正しいのではないかと感じるかもしれませんね。しかし、売電価格の下落を持って「太陽光発電はいらない」という判断をするのは少し間違っていると言わざるを得ません。
というのも、そもそもFIT制度というのは、太陽光発電の普及を後押しするための制度で、毎年見直しされる売電価格は、太陽光発電の設置にかかるコストを反映して、設置費用を回収できる範囲の価格が設定されています。つまり、売電価格が下落しているということは、太陽光発電の設置コストも下がっているということを意味しており、制度開始当初よりも不利になっているというわけではないのです。
実際に、太陽光発電の設置コストについては、容量5kW程度のもので、2012年で233万円だったものが、2024年には80万円まで下落しています。したがって、2024年現在でも、十分に設置コストを回収できるだけの売電価格の設定になっています。
原因② 高額な初期費用がかかるから
二つ目の理由は、太陽光発電を設置するためには、高額な初期費用がかかる点です。上で紹介したように、太陽光発電の設置コストは年々下落していますが、それでも100万円近い設置コストがかかる、高額な設備であることは変わりありません。
そのため、実際に自宅の屋根に太陽光発電を設置した方の中には、売電収入で徐々にかけたコストは取り戻せるものの、初期費用としてかけたコストの元を取るまでに、想像した以上に時間がかかり、「こんなことなら設置しない方が良かったのではないか…」と感じてしまう人もいるのです。特に、太陽光発電を設置した住宅の立地条件によっては、当初想定していたような発電量にならず、なかなかコストを取り戻せないことで「設置業者に騙されたのではないか…」と感じ「太陽光発電はやめたほうがいい」という意見にかわってしまうというケースもあるようです。
このような失敗をしないためには、複数の業者に相談し、提案や見積り金額を比較検討できるようにすることが大切です。太陽光発電は、設置費用が下がっては来ているものの、まだまだ「安い」とは言えない設備であることは間違いありません。また、設置後の発電量は、日当たりの良さや天候の条件なども関係してきますので、その辺りをきちんと調査し、正確な提案をしてくれる業者を選ばなければいけないのです。中には、太陽光発電の設置に適した条件ではないと分かっていて、設置をすすめてきたり、不当に高額な価格設定をする業者もあるのです。
したがって、間違った業者を選ばないようにするためにも、複数の業者に相見積もりをしてもらうのは忘れないようにしましょう。
原因③ 設置後のメンテナンス費用を考慮していなかった
3つ目の理由は、太陽光発電を設置した後、実際に運用するようになってからも費用がかかってしまう場合がある点です。いわゆる、設備のメンテナンス費用についてですが、お客様の中には、太陽光発電にかかるコストは設置時の初期費用のみで、メンテナンスに費用は掛からないと考えてしまっている方がいるのです。当然そのようなことはなく、太陽光発電設備は、定期的なメンテナンスが必要になりますので、設置後もいくばくかの費用は掛かってしまいます。メンテナンスにかかる費用については、最初に設置を依頼した業者によって変わります。
つまり、太陽光発電について、設置費用のことだけを考えていた方が、後から「メンテナンスに費用がかかる」という事実を知り、「それなら売電による利益が減ってしまう…」などと考え、太陽光発電の設置に後悔するケースがあるのです。
どのような設備でも同じです、一度設置すれば一生故障しないといった製品はありません。太陽光発電も同じで、通常利用の範囲でも故障してしまう可能性はありますし、屋外に設置する設備ですの、台風や雹などの悪天候による破損の可能性も少なくないのです。したがって、太陽光発電を設置する場合には、万一の故障や発電効率を維持するためにも、定期的に専門業者による点検とメンテナンスをしてもらう必要があると考えておきましょう。
なお、設置を依頼する業者選びの段階で、定期的なメンテナンスや故障時の対応など、アフターフォローサービスについてしっかり確認しておくのがおすすめです。例えば、初期費用の安さだけに着目してしまうと、運用時の保証やメンテナンスが何も付属されておらず、故障した際に高額な修理費用が発生してしまう可能性があります。太陽光発電は、システムそのものが20年以上利用することを想定した設備となります。したがって、設置後の点検やメンテナンス、万一の際の修理や保証条件なども含めて「最もお得に利用できる施工業者はどこか?」という視点で業者選びを進めるのがおすすめです。初期費用が高く見えても、保証やメンテナンスなどのアフターフォローが充実していた場合、10年以上利用する設備だと考えると、最も安価に太陽光発電の運用ができるかもしれません。
原因④ 太陽光発電のせいで問題が生じる
4つ目の理由は、太陽光発電を屋根の上に設置したことにより、屋根リフォームに不具合が生じる、施工不良を原因に雨漏りが発生したなどの問題で、「太陽光発電は止めたほうがいい」という意見です。この意見については、まっとうな意見のように感じるかもしれませんね。
まず、新築時に太陽光発電の設置を行った場合の注意点は、その他の部位と同じく、屋根もメンテナンスが必要だということです。例えば、スレート屋根を採用している場合、10年ごとの再塗装や、20年目あたりにカバー工事が必要など、定期的に屋根の大規模メンテナンスをしなければならなくなるのです。当然、こういった屋根工事は、太陽光パネルを載せたまま施工することができないため、屋根工事の度にパネルの取り外しと再設置が必要になります。ここまで言えばわかると思いますが、太陽光発電を設置していた場合、屋根リフォーム時の手間が増えてしまうため、メンテナンスコストが高くなってしまうのです。さらに、ほとんどの場合、屋根工事が理由だとしても、パネルの取り外しを行うと、太陽光発電の保証がなくなってしまいます。そのため、何らかの理由で早期に屋根工事が必要になった時には、屋根工事に通常よりも高い費用を支払ったうえ、太陽光発電の保証が早期に切れてしまう…と言った最悪な結果を招いてしまうのです。当然、このような状況になれば、太陽光発電の設置に後悔してしまうことでしょう。
また、リフォームで太陽光発電を設置する場合には、パネルの取り付け工事を原因として、屋根が破損し、雨漏りが始まってしまう…と言った問題が発生する可能性があります。実際に、ネットで検索してみると、太陽光発電の設置業者の不手際で、屋根が破損した…という事例は意外に多いです。これは、太陽光発電の設置は、屋根の専門家ではなく、電気工事を専門とする業者が施工するケースが多いのが要因と言われています。
残念ながら、太陽光発電周りには、悪質な業者も存在します。そのような業者に工事を依頼した場合、施工ミスにより家そのものが傷つけられることもあるので注意しましょう。また、これ以外にも、補助金が使えると聞いていたのに使えなかった…、営業時に説明された発電量に全く達しない…などの問題に陥るケースも少なくないようです。こういった悪質な業者が存在することもあり「太陽光発電はやめたほうがいい」という意見も根強く残っているのだと思います。
原因⑤ 設備を最大限活用したい場合、さらなる設備投資が必要
正直、この理由は「太陽光発電はやめたほうがいい」理由にはならないと筆者は思うのですが、こういった意見を持つ方がいるのも事実なのでご紹介します。
太陽光発電は、日射を電力に変換するシステムです。言い換えると、太陽が出ている昼間しか発電することができないのです。太陽光がなくなる、夜間や悪天候時は発電することができないため、太陽光発電設備のみで日常瀬克に利用する電力を完全に賄うことはできません。
そこで、近年注目されている設備が、家庭用蓄電池で、蓄電池と太陽光発電を連携させることができれば、昼間に発電した電気を蓄電池に貯めておき、それを夜間に使用するというサイクルを作ることができます。つまり、日々の生活にかかる電力を、全て自家発電した電気で賄うことも不可能ではなくなるのです。非常に大きなメリットのように感じますが、この体制を作るには、太陽光発電とは別に、家庭用蓄電池を購入して設置しなければいけません。そして、一般家庭が夜間に使用する電力を蓄えられるレベルの蓄電池となると、かなりの容量のものが必要で、優に100万円を超えるようなコストがかかってしまうのです。
したがって、太陽光発電の実力を最大限発揮させるためには、さらなる高額な設備投資が必要になることにネガティブなイメージを持ち、「太陽光発電はいらない」という印象に至っているのだと思います。
太陽光発電はやめたほうが良い人の条件
それでは次に、実際に太陽光発電の設置がオススメできない人の条件について解説します。上述したように、FIT制度による売電価格は、「太陽光発電設備の設置コストを回収できる」価格設定になるよう毎年見直しが行われています。つまり、基本的には、高値で電力を買い取ってもらえる10年間で、設置にかかるコストは回収できるような制度設計がなされているわけです。
ただ、これについても「絶対に損をしない」という保証のような物ではなく、住宅の立地条件や状態によっては太陽光発電の設置がオススメできないケースというのもあるのです。ここでは、新築や後付けで太陽光発電の設置を検討している方に向け、「やめたほうがいいかも…」と思える家の条件をいくつかご紹介します。
設置場所の条件が特殊で、設置コストを回収できない場合
太陽光発電設備は、どのような条件でも同じ発電量になるわけではなく、家の立地や向き、屋根の面積などによって発電量が左右されます。そのため、設置条件が特殊で、太陽光発電を設置したとしても、売電収入で設置コストを取り戻せない…と言った場合は、太陽光発電の導入はやめたほうがいいかもしれません。
例えば、狭小地に建設した3階建て住宅などの場合、屋根スペースが狭くて、十分な発電量を確保できるほどのパネルを設置できない場合があります。また、3階建て住宅の場合、調査や設置工事の費用が割高になるケースがあるため、発電量が少なければ初期費用を回収することが難しくなる場合があるのです。ちなみに、屋根スペースが狭くて、パネルの設置枚数が少なくなれば導入コストが安くなるのではないかと考える人が多いです。しかし、パネルの枚数が少なくなっても、安くなるのはパネルの費用分だけで、その他の工事部分はパネルの数に関係なく行われるため、設置コストはそこまで安くなりません。したがって、1kWあたりの太陽光発電のシステム費用(1kW発電させるために必要な導入費用)は、パネルの枚数が少ない方が高くなってしまいます。
このような特殊な条件の場合、高値での売電が保証される10年間でコストを回収することができない可能性があるため、太陽光発電の設置は避けた方が良いかもしれません。
なお、太陽光発電の設置目的が、災害による停電に備えるなど、自然災害対策だという場合は、どのような条件の家でも自家発電設備の導入はオススメできます。
屋根の劣化が進行している、屋根リフォームの時期が近い場合
住宅用太陽光発電は、基本的に家の屋根の上に設置する設備です。近年では、カーポートの屋根に太陽光パネルを設置するソーラーカーポートが登場していますが、まだまだ一般的と言える設備にはなっていません。
そして、太陽光発電の設置を考えた時には、住宅の屋根の状態がかなり重要になり、屋根が古く劣化が進行しているという状況の場合、設置したくても基準を満たせないために設置ができないのです。例えば、垂木や野地板がない屋根の場合、住人さんがどれだけ太陽光発電を設置したいと思っても、太陽光発電を導入できないのです。このような場合には、太陽光パネルを載せられる状態にするため、先に屋根のリフォーム工事を行わなければいけません。屋根全面の葺き替え工事が必要なんてことになると、太陽光発電以外の部分に100万円以上のリフォーム費用がかかってきます。新築時に太陽光発電の設置を行う場合には関係ないのですが、リフォームの場合は屋根の状態が意外な盲点となるので注意しましょう。
なお、リフォームで太陽光発電を後付けする場合、どのようなケースでも先に屋根リフォームを完了させておくのがおすすめです。上述したように、太陽光発電を導入した場合、その後の屋根リフォームではパネルの取り外し、再設置という余計な作業が必要になるため、リフォーム費用が高くなってしまいます。また、太陽光発電の保証などにも関係しますので、出来るだけ発電設備に触らなくても良いよう、先に屋根リフォームを完了させて、太陽光パネルを設置するという順番にするのが推奨されています。
気象条件の影響などで発電量が確保できない場合
太陽光発電は、日射を電力に変換する発電設備です。つまり、発電量は日当たりの良さが非常に大きな影響を与えるわけです。
例えば、冬場は、積雪量が多い地域などは、太陽が顔を出さない、パネルの上に雪が積もるなどと言った理由で、年間の発電量が伸びなくなってしまうことがあります。もちろん、他の地域と比較して、極端に発電量が少なくなるわけではなく、多少不利になる…程度ですが、それでも設置コストを取り戻す期間が長くなることは間違いないので、事前にしっかりとシミュレーションをしてもらうようにしましょう。
この他にも、家の前に屋根が日陰になるような大きな建物がある、北向きで片流れ屋根を採用しているため、一日中日当たりが悪い…などと言った条件の家も、発電量が確保しにくいため、太陽光発電の設置はオススメできません。
電気の使用量が多くない家の場合
日中は外出していて電気をほとんど使用しない、また夜も早く寝るため電気を使用しないというお宅の場合、太陽光発電を設置する意味があまりありません。
特に、2024年現在は、売電価格はかなり下落してきており、売電による経済メリットはほとんどないような状態になっています。太陽光発電による電力は、自家消費に回す方がメリットがあると言われるような時代ですし、電気使用量が少ないお宅の場合は、設置にかけたコストを取り戻すことが難しいため、設置はやめたほうがいいかもしれませんね。
その逆に、オール電化住宅で、日々の生活に大量の電気を使用するというお宅の場合は、太陽光発電や蓄電池など、電気周りの設備が非常に役立ちます。
太陽光発電はやめたほうがいいのかと迷っている方に向けたQ&A
それでは最後に、太陽光発電をやめたほうがいいと思っている方に向けたよくある質問をご紹介します。
売電価格が下がったし、今さら太陽光発電は遅い?
太陽光発電については、年々売電価格が下落していることもあり、「今さら太陽光発電を設置しても遅いのでは?」と考え、太陽光発電はやめたほうがいいという結論に至っている方も多いはずです。
これについては、太陽光発電は、今から始めたとしても全く遅くなく、お得に利用することができる設備であることは間違いありません。上述したように、FIT制度の売電価格は、「太陽光発電の設置コストを回収できる価格を設定する」と言う建付けになっているため、この制度が開始された当初の42円という売電価格と比較しても、そこまで不利になっているわけではないのです。太陽光発電システムそのものの価格がかなり下がってきていますので、2012年頃と比較すれば、現在の方が設置リスクが少なくなっているとさえ言えるでしょう。
さらに、昨今は、脱炭素社会に向け、住宅の省エネ化を国が強く推進するようになっています。そのため、太陽光発電のような再エネ設備の導入には、手厚い補助金制度が用意されているため、中長期的に見た場合には、今からでも設置するメリットは大きい設備と言えるでしょう。
FIT期間(10年)が終わったらどうすれば良い?
太陽光発電は、固定価格買取(FIT)制度によって、発電した電力を10年間同じ価格で電力会社に買い取ってもらうことができます。この10年間の買取価格が高額に設定されるため、設置コストが回収可能、売電収入が得られるなどとされているわけです。
ただ、FIT期間は、設備の設置から10年間と決まっているため、10年後はどうすれば良いのか…ということに悩み、設置を躊躇する方も少なくないようです。
この問題については、FIT期間が満了した後は、余剰電力を電力会社に売電するのではなく、できるだけ自宅で消費して日々の生活にかかる電気代の削減を目指すと良いです。なぜなら、FIT期間満了後の売電価格は、大幅に下落することになります。基本的に、電力会社から買電する価格よりもかなり安い価格設定になるため、売電量を増やすよりも買電量を減らす方向にもっていく方がお得になるのです。
注意が必要なのは、太陽光発電は日射を電力に変換する仕組みなので、発電は昼間しか行えません。したがって、夜間に自家発電した電気を使用するためには、太陽光発電とは別に蓄電システムを用意しなければいけないのです。蓄電池も、決して安価な設備ではないため、きちんとコスト回収が可能かシミュレーションを行ったうえで導入するかどうか決めましょう。
太陽光発電設置後のメンテナンス費用はいくらぐらいかかるの?
上述したように、太陽光発電は、発電量の維持や消耗部品の交換などを目的に、定期的な点検・メンテナンスが必要とされています。ただ、太陽光発電のメンテナンスについては、その費用相場が分からないため、導入を躊躇している方も多いようです。
まず、太陽光発電の定期点検・メンテナンスにかかる費用についてですが、一般的に、10kW未満の太陽光発電においては、1回あたりのメンテナンスで2万円程度が相場となっています。メンテナンスの頻度は、4年に1回程度が推奨されているため、一般的な太陽光発電の寿命である約20年間を考えると、合計で10万円前後の費用が点検・メンテナンスにかかると考えておけば良いでしょう。ただ、この費用については、機器の故障は想定していません。
なお、太陽光発電の点検・メンテナンスに関しては、施工会社によって取り扱いが変わります。中には、初期費用の中にメンテナンス費用を含めていて、定期的な点検を無料(修理に必要がある場合は有償)で行ってくれる企業もあります。もちろん、1~3万円の間の費用が発生する企業も多いので、定期点検の取り扱いは契約時にしっかりと確認しておきましょう。
この他にも、太陽光発電システムは、10〜15年程度でパワコンの交換が必要になり、その部分に20万円程度の費用がかかります。
参照:資源エネルギー庁資料より
蓄電池も一緒に導入したほうが良いのか?
新築時に太陽光発電の導入を検討しているお客様からは「家庭用蓄電池も同時に設置したほうがいいのですか?」と言った質問を受ける機会が多いです。これについては、太陽光発電と蓄電池は、非常に相性の良い設備であることは間違いないので、同時に設置したほうが良いというのが答えになります。
太陽光発電は、日射を電力に変換する発電設備ですが夜間に電気を作ることができません。これが、蓄電池を一緒に導入し連携させることができれば、発電した電力を蓄電池に貯め、夜間にそれを使用するというサイクルを作ることができます。つまり、うまくいけば、一日に使用する電力を全て自家発電した電気で賄うことができるようになり、光熱費を大幅に削減することができるようになるのです。
さらに、「太陽光発電+蓄電池」という体制ができていれば、地震や台風などの災害によって停電が発生したとしても、非常用電源として活用することができるようになります。太陽光発電や蓄電池は、電気代削減に役立つ省エネ設備と考えられがちなのですが、災害の発生件数が多い日本で考えると、非常用電源として非常に心強い設備になってくれるはずです。
まとめ
今回は、「太陽光発電の設置はやめたほうがいい」と言われる理由や、実際のところ新築時に太陽光発電を設置しても良いのかという問題について解説しました。
近年では、新築に太陽光発電設備の設置を義務付ける自治体が増加しているなど、再エネ設備の導入促進はさらに勢いを増しています。ただ、このような状況の中でも「太陽光発電はやめたほうがいい」という情報を耳にする機会が多いため、太陽光発電の設置に興味はあるけれど実際のとこお得に利用できる設備なのだろうか…と迷ってしまう方が多いのです。
結論としては、太陽光発電は、十分な発電量を確保できるだけの日当たりがある家であれば、設置しても損はしない設備だと考えて構わないと思います。上で紹介したように、「売電価格が年々下がっている」とネガティブに伝えられる太陽光発電設備ですが、売電価格は「設置コストを取り戻す」ということが目的に設定される価格なので、言い換えれば太陽光発電の設置にかかる費用が下落しているという意味でもあるのです。つまり、太陽光発電を自宅に設置する際に生じる金銭的リスクは、年々低下していて、災害時の停電対策になるアイテムと考えると、ほぼノーリスクな設備と考えても言い過ぎではないのです。
もちろん、家が高い建物に囲まれていて日射がほとんどない…なんて住宅の場合、発電量が確保できないため、さすがに設置はオススメできませんが、日本国内に存在する多くの住宅は、太陽光発電を設置しても損はしないと思いますよ。