
木造住宅が多い日本では、住宅周りの害虫として最も恐ろしい存在になるのがシロアリです。シロアリは「家を食べる」と表現されているように、適切な対策を施さなければ、気付かないうちにどんどん食害が進み、家の耐久力を大幅に低下させてしまうなどの問題があるのです。日本は、地震や台風などの自然災害が多い国としても有名ですし、シロアリ被害を放置すると、災害時に家が倒壊するなど、大きな被害に発展してしまう恐れがあるのです。
ちなみに、現在では、建築基準法により地面から1メートル以内の土台や柱などに防蟻処理を施すことが義務化されています。これは、シロアリ被害を防ぎ、住宅の耐久性と寿命を延ばすことが目的とされているのですが、逆に考えると、法律でシロアリ対策の実施を義務化しなければならないほど恐ろしい害虫なのだと判断できますよね。
そして、新築住宅に実施される防蟻処理については、一度行えば一生その効果が持つというものではありません。薬剤を使用した防蟻処理は、その効果が徐々に薄れてしまい、シロアリの繁殖を防止できなくなるため、防蟻処理は定期的に実施しなければいけません。また、シロアリは、日常生活の中でも目につかない場所で繁殖するため、被害が生じるまで食害が起きていることに気付けないケースが多いです。そこでこの記事では、「シロアリ被害が起きているのでは?」と考えるべきシロアリ被害の初期症状をご紹介します。
シロアリから家を守るためには、食害が起こる前に駆除することが大切なので、どのような現象を見つけた時、専門家に相談すべきかをご紹介します。
シロアリの初期症状と言われる事象について
それではまず、シロアリの初期症状とされている代表的な事象についてご紹介します。以下のような現象が家で起きている場合、シロアリ被害が発生していると考えましょう。
家の中で羽アリを発見した
シロアリの一部は、4月から7月にかけて羽アリとなり、巣から大量に飛び立つという習性を持っています。そのため、この時期に室内や庭で大量の羽アリを発見したという場合、シロアリ被害が発生している可能性が高いと言えます。なお、羽アリに関しては、クロアリの場合もあるので、羽アリが発生する時期をおさえておき、シロアリ被害の有無を確認できるようにしましょう。
■シロアリの羽アリが発生する時期
- ヤマトシロアリ:4月初めから5月終わりごろ(10~12時ごろ)
- イエシロアリ:6月初めから7月終わりごろ(夕方)
- アメリカカンザイシロアリ:7月初めから10月終わりごろ(日中)
■クロアリの羽アリが発生する時期
- ケアリの仲間:6月初めから8月終わりごろ
- キイロシリアゲアリ:9月頃
- サクラアリ:10月初めから11月終わりごろ
発生した羽アリが「シロアリの羽アリ」か「クロアリの羽アリ」かについては、羽や触覚の形状などから見分けると良いです。シロアリの羽アリの方が羽が全体的に大きく、触覚も細かい粒が連なっているように見える「数珠状」だという点が特徴です。クロアリの羽アリは、触覚がくの字に曲がっているので、見た目から見分けると良いです。
4~7月ごろ、室内や庭で大量のシロアリの羽アリを見かけたという場合、すぐにシロアリ駆除業者に相談しましょう。
蟻道(ぎどう)を発見した
二つ目は、自宅の基礎部分や床下に「蟻道(ぎどう)」があるというケースです。蟻道とは、シロアリが土や排泄物を使って作る通り道のことなのですが、実は、シロアリは皮膚が薄く弱い生き物なので、日光や風にさらされると生存できません。そのため、餌場となる場所まで、この蟻道を作り、その中を通ってエサや水を運ぶという性質を持っているのです。
シロアリは、普段は地中に生息しているため、人の目に直接触れることはほどんどありません。そして、住宅内に侵入する際には、蟻道を作ってその中を通るのです。つまり、自宅に蟻道があるということは、シロアリが活動している、もしくは活動していた証拠となるため、出来るだけ早く駆除業者に相談するのがおすすめです。
畳を踏むとふわふわする、床がきしむ
住宅内で移動する際、床がきしんだり、畳の上を歩くとふわふわする…などといった違和感を感じる場合、床材やそれを支えている材木にシロアリ被害が発生している可能性が考えられます。
シロアリは、木材を食べるというイメージが強いのですが、フローリングの床だけでなく、畳も被害を受けやすいという点に注意が必要です。なお、床材について、シロアリ被害が深刻化した場合、単に床材の交換をするだけではすまず、床の補強工事などが必要となるケースがあります。当然、補強工事まで必要になると、修繕費が高くなるため、出来るだけ早くシロアリ被害に気付き、対処しなければいけません。
なお、畳については、定期的にひっくり返すことで、シロアリ被害が発生していないか確認できます。
柱や框(かまち)などの木材を叩くと空洞音が聞こえるなど
家の中にある壁や柱、框などは、内部にシロアリの食害が発生することがあるので、定期的に木材に触れて、異常が生じていないか確認することをおすすめします。
例えば、柱などの木材に触れた時に凹む、叩いてみるとポコポコと言った空洞音がなるといった場合、木材内部にシロアリの食害が発生していて、空洞化している可能性が考えられます。シロアリは、木材の中でも柔らかい部分を中心に食べていきます。そのため、外見上は問題が生じていない場合でも、内部で食害が発生していて、空洞化している…というケースが考えられるのです。この場合、指で押すと指が突き刺さる、凹むなどといった症状が出ます。
家の中でも、「浴室のドア枠」「窓枠」「玄関の框(かまち)」などの部分で被害が多いため、定期的に確認すると良いです。なお、この状態に気付けず、食害がさらに進むと、人が触れていなくても木材部分が凹む、穴があく、割れるといった症状に発展します。
木材が変色している
シロアリの食害が進むと、壁や柱、床材などの木材が変色するという症状が表れます。
シロアリは、水分を運びながら木材を軟らかくして食べ進めるという習性があるので、食害が発生した周辺の木材は、湿気を帯びることで変色するのです。木材の変色については、食害がかなり進んでいると考えられるため、出来るだけ早く対処しなければいけません。
ちなみに、木材の変色については、雨漏りのサインの可能性もあります。「天井からポタポタ水が落ちてくる…」といった現象の前に、天井裏などの木材が水を吸い、湿気を帯びることで雨染みとなるのです。これについては、雨漏り修理を進めなければいけませんが、雨漏りによって木材に湿気ると、シロアリを引き寄せてしまう要因になるので、出来るだけ早く修理しましょう。
ドアや窓の建てつけが悪くなる
先程紹介したように、シロアリの食害が進むと、柱やドア枠、窓枠と言った木材部分が変形します。そして、その変形の影響を受け、ドアや窓の開閉を行う際、部材同士が接触するようになり開きにくくなったり、閉めてもしっかりと閉まらなくなるといった問題が生じることがあるのです。
なお、ドアや窓の建てつけの問題については、単純に経年劣化が要因となっているケースもあるので、確実にシロアリ被害とは言えません。ただ、シロアリの食害が進んでいる可能性があるため、床下や家の基礎に蟻道などがないか確認してみましょう。不安な方は、自分で判断するのではなく、専門業者に相談して調査してもらうと良いです。
シロアリのフンが落ちている
シロアリの中でも、昨今日本で被害が拡大していると言われているのがアメリカカンザイシロアリです。アメリカカンザイシロアリは、その他のシロアリと異なり、家から家へと直接飛来するという特徴を持っているため、従来の防蟻処理が効果を発揮しにくい、発見が難しいなどの問題があります。従来のシロアリは、普段は地中に生息していて、蟻道を通じて家の木材に達するという性質があるので、建築基準法による「地面から1メートル以内の部分(柱、筋交い、土台など)」の防蟻処理が効果的な訳です。しかし、アメリカカンザイシロアリは、お隣の家から直接飛来するわけなので、新築したての住宅でも被害が発生してしまう可能性があるのです。
そして、このアメリカカンザイシロアリについては、食害を受けた木材の周辺に、砂粒のような糞を排出するという習性を持っています。つまり、人が何もしていないのに、砂の山のような物ができている場合、そこでアメリカカンザイシロアリが活動していたと考えられるわけです。
アメリカカンザイシロアリは、非常に危険視されるシロアリの一種なので、砂粒状のフンを見つけた時には、すぐに専門業者に相談しましょう。その際、発見したフンは、シロアリの住処を特定するための材料になるため、残したままにしておきましょう。
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木材の中からカタカタと言った音がする
シロアリは、基本的に音を生じさせる害虫ではありません。しかし、シロアリが仲間に危険を知らせようとする際、体を周囲に叩きつけて警戒音を発生させることがあるとされます。
日中であれば、ほとんど気付くことがない小さな音なのですが、夜寝静まっている際などには「カタカタ」と言った異音を感じることがあるかもしれません。これらの音は、ネズミなどの小動物が原因の可能性もありますが、シロアリの警戒音かもしれないため、他の初期症状のような物が出ていないか確認し、不安なら専門業者に調査してもらいましょう。
屋外にある木材がシロアリの被害を受けている
シロアリは、家を構成する木材のみを餌とするわけではありません。基本的に、木材なら何でもエサにする害虫なので、屋外にある木材がシロアリを引き寄せている可能性もあるのです。例えば、庭に枯れ木や切り株を放置している、ダンボールなどを保管している、花壇を作るための木材を使用しているといったケースでは、これらから先にシロアリの食害を受ける可能性が高いです。
そして、庭にある木材がシロアリに食べられている場合は、敷地内にシロアリが発生している証拠となるわけで、いつ家を構成する木材の食害に発展するか分かりません。したがって、庭にある木材がシロアリに食べられた形跡があるという場合、家に被害が生じていないか確認するためにも、専門業者に調査してもらうべきです。
また、庭に木材や段ボールなどの廃材を放置することもやめましょう。これらはシロアリのエサとなるものなので、敷地内にシロアリを誘引する原因となり、最悪の場合、住宅内への侵入を許してしまいます。
シロアリ被害を防ぐには蟻道に早く気付くことが大切
ここまでは、一般的に「シロアリの初期症状」として紹介されることが多い事象について解説しました。
ただ、皆さんもこれを見て気になったと思うのですが、シロアリの初期症状と言われている事象のほとんどは「既にシロアリ被害が発生している!」という状況で、これを初期症状と言って良いものなのか…と疑問に感じたはずです。特に、床がきしむ、木材を叩くと空洞音が聞こえる、ドアなどの建てつけが悪くなっているという状況については、シロアリの食害がかなり進行したうえで生じる状況なため、本来はここに至る前にシロアリ被害に気付き、対処しなければならないのです。
その点から考えると、シロアリ被害の初期症状と言える状況は「蟻道を見つけた」という一つに限られるのではないかと考えられます。そこでここでは、シロアリによる深刻な被害を防止するため、最も重要な初期症状と言える蟻道に気付くためのポイントをいくつかご紹介します。
蟻道とは?
先程紹介したように、蟻道は、シロアリが土の外で活動するために作る、密閉されたシロアリ専用のトンネルのような物を指しています。シロアリは、皮膚が非常に弱い生き物なので、外気や直射日光に当たらず餌場と巣を行き来できるようにするため、蟻道を作っているのです。
つまり、蟻道を発見することは、家でシロアリが活動しているのかどうかを判断するための非常に重要なポイントになり、これを早期に見つけることができれば、木材の食害に発展する前にシロアリを駆除することも出来るかもしれないのです。
蟻道については、ほとんどの方が目にしたこともないと思うので、どのような症状があった時、危険と判断すべきかが分からない場合も多いです。
上の画像の赤丸部分周辺の土が盛り上がっている場所が、シロアリが作った蟻道です。シロアリは、この蟻道を使って餌場と巣を行き来することになるのです。
なお、シロアリの蟻道は、一般的に床下に作られている場合が多いのですが、外基礎や外壁に蟻道を作って家の中に侵入することもあります。シロアリ駆除や食害にあった部分の修繕は、早めに対処できればできるほど費用を抑えることができるので、いち早く蟻道を見つけて家に深刻な被害が出る前に専門業者に対処してもらえるようにすることが大切です。
蟻道を見つける方法について
それでは最後に、シロアリによる深刻な被害を未然に防ぐため、唯一の初期症状と言えるシロアリの蟻道を自分で見つける方法をご紹介します。
先程紹介したように、シロアリの蟻道は、基本的に床下に作られているのですが、外基礎や外壁から家の中に侵入されるケースもあるので、定期的に以下の方法で蟻道の有無を確認するようにしましょう。
①家の外周を回って外基礎を確認する
一つ目の方法は単純です。
外基礎からシロアリが侵入する場合、外基礎の部分に蟻道が作られるので、定期的に家の外周を回って蟻道が作られていないか確認するようにしましょう。蟻道は、上の画像で紹介したように、土の塊が木材部分に伸びる形で形成されていきます。したがって、月に1回などの頻度で外周を回り、家の外基礎となる低い部分を慎重に目視してみましょう。
その時、土の塊が上画像のように、家に向かって伸びていたらシロアリが発生していると判断できるため、すぐに専門業者に連絡し対処してもらうと良いでしょう。
②床下に入って蟻道を探す
家の外基礎部分は、注意深く目視しながら家の外周を見て回るだけなので、誰でも簡単に確認することができます。しかし、床下部分に作られる蟻道については、確認作業に危険を伴うので注意しなければいけません。床下は、日光が入らないため暗く、さらにほふく前進出ないと進むことが難しい場合もあるため、一般の方が中に入って作業するのはなかなか難しいです。
また、床下には、床板に打ち付けられた長い釘が残っていたりして、それを原因に怪我をする可能性もあります。当然、衣服は汚れてしまいますし、湿気などもこもっているため、夏場の床下での作業は熱中症の危険なども考えられます。したがって、基本的には、床下の蟻道の調査については、自分で行うのではなく、コストをかけてでも定期的に専門業者に依頼するのがおすすめです。
ただ、危険性を承知した上でも、自分で行いたいという方は、以下のようなアイテムを用意して、床下に入ると良いでしょう。
- 頭部を守るヘルメット
- 汚れても良い長袖長ズボン(できるだけ露出のない衣服)
- 手袋
- 懐中電灯やヘッドライト
- マスク
- 床下の間取りがわかる図面
床下に入る時には、怪我の可能性をできるだけ低くするため、肌の露出が少ない長そで長ズボンが望ましいです。可能であれば、ホームセンターなどに行って作業用の衣服を購入しておくのがおすすめです。この他、頭部を守るためのヘルメットや、視界を確保するための懐中電灯なども用意しましょう。床下がほふく前進でないと移動できないケースでは、両手を開けるためにもヘッドライトが望ましいです。また、床下で迷わないようにするためにも、床下の間取りが分かるような図面があるとなお良いです。
そして、床下にできる蟻道を探す時には、以下の部分を重点的に確認すると良いです。
- 水回り周辺(キッチンやお風呂)
- 配管周辺など、湿気が多い場所
- 基礎の立ち上がり
- 束石(つかいし)
一般的なシロアリは、湿気を含む木材を好むため、水回りなど湿気が多い場所の基礎の立ち上がりなどを重点的に確認しましょう。また、束石に関しても、注意深く確認してください。束石は、床束(ゆかつか)という床の柱部分を支えるための石なのですが、シロアリが床束の木材をよく食べるため、束石に蟻道が作られている場合が多いです。
床下は、想像以上に狭く、暗い場所です。一般の方でも入れないことはないのですが、小さなシロアリの痕跡を見つけることはなかなか難しい場所でもあるため、基本的には、定期的な調査を専門業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
今回は、家をシロアリ被害から守るため、シロアリが発生していると判断できる初期症状について解説しました。記事内でご紹介したような事象が家の中で起きている場合、シロアリが発生していると考えられるため、速やかに専門業者に連絡し、対処してもらうと良いでしょう。
なお、シロアリ被害を防ぐためには、出来るだけ早くシロアリに気付くことが非常に重要です。そして、シロアリの初期症状として最も重要になるのが蟻道の有無と言えます。その他の事象については、既にシロアリによる食害が発生しているわけなので、正直に言うと、これを初期症状と言っても良いものか少し疑問に感じるという方が多いはずです。
シロアリから家を守るためには、以下のような対策を検討すると良いでしょう。
- 年に1回は、蟻道ができていないか確認する(床下は専門業者に調査してもらうのがおすすめ)
- 5年に1回の頻度で、防蟻処理を実施する(薬剤の散布)
新築時に実施される防蟻処理に関しては、いずれその効果が切れてしまいます。したがって、シロアリから家を守りたいと考えるなら、新築時の防蟻処理だけでなく、その後のシロアリ対策として何を行ってくれるのかを建築会社に確認しておくことが大切です。なお、悠建設では、10年間の防蟻保証を標準に備えていて、その後の点検や薬剤散布などのアフターフォローの相談も受け付けています。