今回は、前回の記事でもご紹介したシロアリ対策第二弾として、日本国内におけるシロアリ対策として主流となっているネオニコチノイド系の薬剤について解説します。

どのような住宅でも、新築時にシロアリ対策が施され、定期的にシロアリ駆除、シロアリ予防のために薬剤の散布などが行われることは、前回の記事でご紹介しました。シロアリは「家を食べる害虫」と呼ばれるように、日本の住宅にとっては天敵と言える存在で、大切な家を守っていくためには継続的にシロアリ対策を行わなければならないのです。

ただ昨今では、日本国内におけるシロアリ対策の主流であるネオニコチノイド系の薬剤が人体や環境に悪影響を与えるのではないか…と言った情報を耳にする機会が増えています。実際に、ネットでネオニコチノイドについて検索してみると「ネオニコチノイド 発達障害」「ネオニコチノイド 人体への影響」などというワードが関連表示されることから、一般の方にもこの情報が広まってきているのではないかと思われます。

そこでこの記事では、家のシロアリ対策について、薬剤による健康被害が本当にあるのかなどについて解説します。

関連:新築のシロアリ対策!シロアリ予防の薬剤は一生効果が持続するわけではない

住宅のシロアリ駆除・予防方法について

それではまず、住宅のシロアリ予防やシロアリ駆除の方法について、代表的な手法をいくつかご紹介します。

①消毒剤・薬剤を散布する

住宅のシロアリ対策として最もわかりやすいのが、シロアリを寄せ付けない、もしくは殺虫効果を持つ薬剤を散布するという方法です。メーカーによっては、家を構成する木材に薬剤を染み込ませておくといった方法を採用する場合もあります。

シロアリ予防や駆除剤は、農薬や殺虫剤に使用されることが多いネオニコチノイド系のものが主流とされていますが、これ以外にも、ピレスロイド系やカーバメート系、防虫剤で知られるホウ素系など、さまざまな種類の薬剤が存在します。

ただ、シロアリ対策の薬剤や農薬としても有名なネオニコチノイド系の薬剤は、即効性は高いものの環境や人体へ悪影響を及ぼす可能性があると言われるようになっています。実際に、海外では一部使用規制が進んでいるとされています。この辺りは後述します。

②ベイト工法

ベイト工法は、地中に毒エサを仕掛けておき、シロアリがそれを巣に持ち帰ることで、巣を丸ごと駆除するという、ゴキブリ退治に似た工法です。「シロアリの巣を丸ごと駆除してくれる」と聞くと、非常に優れたシロアリ対策と感じますが、効果を持続させるのに手間がかかる点が大きなデメリットになります。

また、毒エサは、本来は寄ってきてほしくないシロアリを引き寄せることになるため、一つの巣を駆除できたとしても、また別の巣のシロアリが毒エサに引き寄せられてしまいます。つまり、ベント工法は、シロアリの巣を「駆除し続ける」ことが必要な対策なのです。もう少しわかりやすく言うと、シロアリ対策を半永久的に行わなければならないため、定期的に毒エサの交換が必要になるなど、コスト・手間の両面で負担が大きい手法と言えます。
なお、ベント工法は、薬剤を散布するシロアリ対策と比較すると、人体にも環境にも優しい方法だという点はメリットでしょう。

③床下換気扇の設置

これは、特別な薬剤などを使用するのではなく、シロアリの生態を利用して家に寄せ付けないようにする方法です。シロアリは、高温多湿で風通しの悪い場所を好みます。また、日本国内に多いシロアリは、柔らかくて湿った木材を好みます。

こういったことから、シロアリの生息に適した環境を作らないため、床下換気扇を設置して、適度に換気するという方法がシロアリ対策になると言われているのです。ただ、この方法は、薬剤散布による予防と比較すると、その効果はどうしても低くなってしまうと言われています。もちろん、そこに住む人の健康被害の心配はないなど、安全性は高いです。

家のシロアリ対策の問題点について

前項でご紹介したように、一口にシロアリ対策と言っても、さまざまな方法があります。日本国内におけるシロアリ対策については、防蟻剤などを利用することで「侵入したシロアリを駆除する」という方向で対策が施されている場合が多いのですが、本来は「シロアリを侵入させない」という方向で考えるべきです。

ここでは、家のシロアリ対策としてよく採用される方法の問題点について簡単にご紹介します。

樹種選択によるシロアリ対策の問題

樹種選択によるシロアリ対策は、シロアリが好まない木材を使用して家を建てるという方法です。実際に、ハウスメーカーの中には「桧(ヒノキ)だからシロアリを寄せ付けない!」と言った広告を打ち出している場合も少なくありません。

確かに、木材を好んで食べるシロアリですが、全ての木材を同一視しているのではなく、好んで食べる物とそうでない物があるのです。そして、ヒノキは、シロアリが嫌う代表的な樹種として有名です。ただ、シロアリが嫌う木材を利用して家を建てたとしても、完全にシロアリを防げるのかというとそうではありません。樹種選択による対策は、限定的で普通にシロアリ被害を受けてしまうこともあるので樹種選択に頼りすぎるのはNGです。

防蟻剤によるシロアリ対策の問題

住宅のシロアリ対策では、防蟻剤を利用した方法が主流と言えるでしょう。しかし、防蟻剤によるシロアリ対策は、効果が永続するわけではないという点に注意しなければいけません。日本国内で最も多く使用される農薬系の防蟻剤については、別記事でもご紹介したようにその効果は5年程度が限界とされています。つまり、シロアリ予防の効果を継続させるためには、5年ごとのメンテナンス(防蟻剤の散布)が必須となるのです。

さらに防蟻剤の問題点としては、シロアリの侵入は、木材の表面ではなく、切断面から侵入することがほとんどだという点です。そのため、定期的に防蟻剤を散布し、表面に対策を施したとしても、シロアリの被害を完全に抑えることは難しいとされているのです。防蟻剤については、表面に散布するのではなく、圧力をかけて木材の内部にまで浸透させる「加圧注入」という方法もありますが、家の構成上、どうしても木材の切断面が生じることから、そこからの侵入を完全に防ぐことは難しいです。

上述したように、日本でのシロアリ対策は「侵入した物を駆除する」という視点で行われるケースが多いです。しかし、シロアリ対策で最も重要なのは、「家に侵入させない」ことなので、樹種選択や防蟻剤による対策だけでなく、侵入路対策を同時に行わなければならないと考えましょう。

ネオニコチノイド系の薬剤は危険?

上でも紹介しているように、日本国内のシロアリ対策では、ネオニコチノイド系の薬剤が主流となっています。しかし、このネオニコチノイド系の薬剤については、環境や人体に悪影響があると指摘されるようになっているのです。実際に、EUなどでは、ミツバチへのリスク懸念から屋外での使用が禁止されているのです。ちなみに、この情報をもとに「EUでネオニコチノイドが禁止されたからシロアリ対策としては危険!」と、必要以上にその危険性を煽る情報を見かける機会が多いですが、EU諸国での取り扱いについては、あくまでもミツバチへのリスク懸念から、農薬使用としてのネオニコチノイド系殺虫剤の規制が強化されただけで、施設内での使用は認められています。つまり、EU諸国では、人体の影響についてはそこまで大きくないという判断なのかもしれません。

しかし、生協ネットワークが公開している動画内では、ネオニコチノイドは人体に悪影響を与えるとしています。詳細は、以下の動画を確認してみてください。

> Youtubeで見る

ネオニコチノイド系の薬剤は、小さなお子様やお腹に赤ちゃんがいる妊婦さんにとっては危険なのではないかという指摘を耳にする機会が増えています。
そもそも、赤ちゃんなどの小さなお子様は、あらゆる菌に対する免疫力が低く、薬剤を吸い込んでしまうと嘔吐や咳、肌トラブル、更には脳の発達に影響を及ぼす危険性があるとされています。そして妊婦さんについても、同様に免疫力が低下しているため、薬剤への抵抗力が落ちてしまうとされているのです。さらに、妊婦さんが薬剤を吸い込んだ時には、胎児への影響があるとされていて、上で紹介した動画によると、母親がネオニコチノイドが付着した食べ物を口にすると、1時間後には約90%が胎児に移行していたと解説しています。

このような事から、ネオニコチノイド系の防蟻剤は、脳の発達にまで影響することが懸念されるようになっています。

まとめ

今回は、住宅のシロアリ予防について、昨今耳にするようになったネオニコチノイド系の薬剤は危険という情報は本当なのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、農薬などにも利用されるネオニコチノイドは、環境や人体への影響が懸念されるようになっており、海外では既に規制が行われている国もあるようです。日本国内での取り扱いについては、何らかの規制が明確化されているわけではありませんが、その危険性を紹介する情報は出回るようになっています。

ただ、どのような対策にしても、家を建てるのであれば何らかのシロアリ対策が必要になることは間違いありません。日本は、高温多湿な気候であり、住宅のほとんどが木造建築となることから、どうしてもシロアリの発生リスクが高くなってしまうと言えるのです。
悠建設では、そこに住む人の安全性を考慮したシロアリ対策を家に施しています。住宅のシロアリ対策について、詳細を知りたいという方がいれば、お気軽にお問い合わせください。

悠建設広報のM

悠建設のサイトでは当社の有資格者の監修のもと皆様の家創りにとって有益な情報を配信しております。 以下、各種許可、資格となります。

  • 一級建築士 3名
  • 二級建築士 1名
  • 二級福祉住環境コーディネーター 1名
  • 宅地建物取引士 1名
  • 二級建築施工管理技士 1名
  • 建築物石綿含有建材調査者 2名
  • 既存建物耐震診断士 2名