今回は、住宅の購入を検討した時、耳にする機会は多いものの、一般の方がいまいち理解できない専門用語の意味について解説します。

注文住宅の購入を検討した時には、土地探しから始める方が多いと思います。そして、その際に必ずチェックしなければならないとされているのが建ぺい率と容積率です。新築住宅の購入を検討した場合、まずはインターネットで家の購入に関してさまざまな情報を集めると思うのですが、その際にも建ぺい率と容積率という言葉を目にする機会は多いはずです。しかし、住宅関連の企業に勤めているわけではないという方の中には、建ぺい率と容積率についてなんとなく言葉の意味をイメージできるものの、正確な意味まで知っているわけではないというケースがほとんどだと思います。

ただ、建ぺい率や容積率に関して、正しい知識を把握しないまま土地の購入を進めると、いざ家の建築段階になってから「住宅ローンの審査を通過できない…」「理想の間取りを実現できない…」「希望の広さを確保できない」と言った問題に発展する恐れがあるのです。
そこでこの記事では、注文住宅の建築に失敗しないためにも、皆さんがおさえておきたい建ぺい率や容積率の意味や実際の計算方法などについて解説します。

建ぺい率と容積率の意味について

自分で購入した土地だったとしても、家を建てる際にはさまざまな制限をクリアしなければいけません。建ぺい率や容積率は、家を建てる際に存在するさまざまな制限の中でも、代表と言えるもので、法で定められた建ぺい率と容積率の数値を超えた家は建築基準法に違反することになり、建てることができません。自分の土地なのだから「土地いっぱいに家を建てたい」と考えるかもしれませんが、そういうわけにはいかないのです。

それでは、建ぺい率と容積率とは、どのような意味で、どんな制限をしているのでしょうか?ここでは、建ぺい率と容積率の意味と計算方法について解説します。

建ぺい率とは?

まずは建ぺい率からです。建ぺい率は、国交省の資料の中で「建築物の建築面積の敷地面積に対する割合をいう」と解説されています。分かりやすく言うと、敷地の何%が建物に使えるのかを制限する数値で、「敷地の面積に対して真上から見た建物の面積の割合」などと解説されることが多いです。

なお、建築面積に関しては、「建物の壁や柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」のことを指しています。なお、住宅の場合は、柱の外側にバルコニーや屋根の庇などが出ているケースが多いですが、これらの突き出ている部分について「1m以下」の部分は計算に含まないこととされています。一方、突き出ている部分が1m以上ある場合、1m後退したところまでが建築面積となります。
建ぺい率については、建物を真上から見た時の面積が基準となるため、1階と2階の大きさが異なる場合は、広いほうの面積が建築面積になります。

建ぺい率は、「建築物の敷地内に一定割合以上の空地を確保することにより、建築物の日照、通風、防火、避難等を確保するため、都市計画区域内においては、用途地域の種別、建築物の構造等により、その最高限度が制限される」とされています。一般的には、30~80%の間で制限が設けられているのですが、建ぺい率の計算は以下の式で算出します。

建ぺい率は、上図のように「建築面積 ÷ 敷地面積 × 100」という式に当てはめることで算出します。

例えば、100㎡の敷地に1階が60㎡、2階が50㎡の建築面積を持つ建物を建てる場合は、広い面積を持つ1階部分が採用され、以下の建ぺい率になります。

60 ÷ 100 × 100 = 60

この場合の建ぺい率は「60%」になるわけです。なお、先ほどご紹介したように、建ぺい率は、行政による都市計画などによって、建築基準法にある数値の中から、各地域ごとに上限が定められています。これは、主に地域防災が目的となっています。例えば、敷地にある程度の余裕を作っておけば、万一火災が発生した時でも、周囲への延焼被害を抑えられる可能性が高くなります。この他にも、周辺住宅の日照や風通しの確保、圧迫感のない美しい景観の保護などを目的に建ぺい率に制限が設けられています。

参考資料:国土交通省資料より

容積率とは?

次は容積率についてです。容積率は、敷地面積に対する建物の延床面積の割合です。容積率も、建ぺい率と同様に、行政が都市計画などによって、建築基準法にある数値の中から地域ごとに上限を定めています。容積率の制限は、「建築物の規模とその地域の道路などの公共施設の整備状況とのバランスを確保することなどを目的」とされています。

容積率は、「延べ床面積」の割合なので、2階建てでも3階建てでも、全ての階の床面積を合計して計算することになります。したがって、「建ぺい率=どの程度の広さにできるのか?」に対し、「容積率=どのぐらいの高さを実現できるか?」を決める制限と考えても良いでしょう。
なお、容積率には、「前面道路による制限」というものもあるので注意が必要です。敷地が面している道路の幅員が「12m未満」である場合は、「その幅員に定数(0.4や0.6など、地域によります)をかけた数値」と「行政の定める容積率の上限」、いずれか低い割合のものが採用されることになります。

例えば、「行政による容積率の上限が300%」に指定されている土地でも、「土地が4mの道路に接していて定数が0.6」の場合は「4m × 0.6 × 100 =240%」という計算がなされ、容積率の上限は240%となってしまうのです。

一般的に容積率は50~1300%の範囲内で設定されていて、計算式は以下のイラストのようになっています。

容積率は「延床面積 ÷ 敷地面積 × 100」の式に当てはめることで算出できます。
例えば、敷地面積が100㎡の土地に建てる2階建ての一戸建てで、延床面積が「1階:50㎡」「2階:30㎡」の80㎡である場合、以下のようになります。

(50 + 30) ÷ 100 × 100 = 80%

この場合、建物の容積率は80%となります。なお、容積率に関しては、さまざまな制限や規制によって変わる点は注意しましょう。

■容積率は他の制限が関係する
住宅に関わる制限については、建ぺい率や容積率以外にも、以下のような制限・規制が設けられています。

  • 斜線制限
  • 日影規制
  • 絶対高さ制限
  • 高度地区指定
  • 前面道路幅員制限

これらの制限は、周辺住宅の日当たりや風通しなど、地域の住環境が悪くならないようにするためのものです。そして、先ほどご紹介したように、敷地に面した道路の幅員が容積率の制限に関係するのです。住宅に関わる様々な制限については、また別の機会に解説したいと思います。

建ぺい率・容積率の上限は用途地域が関係する

建ぺい率と容積率の上限は、地域ごとに異なり、行政によっても変わります。上でも少し触れましたが、建ぺい率や容積率の上限は、「用途地域」に応じてそれぞれの自治体が決定しているのです。なお、用途地域とは、以下のように解説されています。

用途地域は、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、13種類あります。用途地域が指定されると、それぞれの目的に応じて、建てられる建物の種類が決められます。表紙の都市計画図のように、地域の目指すべき土地利用の方向を考えて、いわば色塗りが行われるわけです。
引用:国土交通省資料より

日本国内の土地は、用途地域が定められていて、用途に合わせて快適な環境を整備するため、建物の用途や建ぺい率、容積率などが規制を受けるようになっています。用途地域ごとの建ぺい率・容積率の上限は以下のように定められています。

引用:国土交通省資料より

各地域における建ぺい率や容積率については、上記の値から行政が選択してしている形になっています。

建ぺい率・容積率の条件は緩和されることもある

ここまでの解説で、自分で購入した土地であっても、自由に建物を建てることができないということが分かっていただけたと思います。建ぺい率や容積率は、用途地域によって守らなければならない上限が決められていて、それを無視すると建築許可が下りないため、家を建てることはできません。昔ながらの高級住宅街と言われているような地域では「建ぺい率30%、容積率60%」などと、非常に厳しい上限規制が設けられている地域がありますので、土地を購入する段階から、どのような規制があるのかを事前に確認しなければいけません。

ただ、建ぺい率と容積率については、一定の要件を満たすことで緩和措置を受けることが可能です。ここで、それぞれの緩和条件をご紹介します。

建ぺい率の緩和条件

まずは建ぺい率の緩和条件からです。建ぺい率は、一定の条件を満たしている場合、指定の建ぺい率に10%加算することができるという緩和措置が用意されています。緩和措置が受けられる条件は、以下の通りです。

  • 指定される道路幅や接する長さなど、条件を満たした2つの道路に挟まれた敷地
  • 指定される道路幅や交わる角度など、条件を満たした2つの道路の角地にある敷地
  • 『防火地域』の指定がされている区域内であり、建築する建物が『耐火建築物』である場合
  • 『準防火地域』の指定がされている区域内であり、耐火建築物、準耐火建築物およびこれらと同等以上の延焼防止性能を持つ建築物を計画している場合

上記の内、どれか一つの条件でも当てはまる場合は、建ぺい率の緩和が適用され「+10%」となります。なお、条件によっては併用することも可能で、緩和条件を2つ同時に満たしている場合は、合算して20%まで建ぺい率を加算することが可能です。

容積率の緩和条件

容積率についても、いくつかの条件を満たすことで緩和措置を受けることが可能です。容積率は、延べ床面積が関わるものですので、利用しない場合と比較すると、利用できた方が広い住まいを建てることが可能なので、是非頭に入れておきましょう。

以下のようなケースでは、容積率を緩和することが可能です。

  • ロフト、屋根裏収納
    ロフトや屋根裏収納を設ける場合、その直下の部屋の床面積1/2を限度として、容積率を算出する際に含まないという特例が受けられます。ただ、ロフトや屋根裏収納は高さを1,400mm以下としなければいけません。
  • 地下室
    地下室を設ける場合、住宅として使用する部分の床面積の1/3までが容積率の計算から除外することができます。
  • ビルトインガレージ(インナーガレージ)
    建物内にガレージを設置する、いわゆるビルトインガレージは、建物の床面積の1/5を限度として、容積率の算出から除外されます。
  • 特定道路から分岐した道路に接する土地
    特定道路は、幅員が15m以上ある道路を指すのですが、これから分岐した道路(幅員が6m以上12m未満で特定道路までの距離が70m以内)に面する土地に家を建てる場合、容積率の緩和特例が受けられます。この場合、特定道路までの距離によって容積率を加算できます。
  • その他
    昇降機(エレベーター)の昇降路(上下に移動する空間)は容積率の対象から除外、防災備蓄庫や自家発電設備は容積率の計算に含まれません。

上記以外にも、マンションなどの集合住宅にて、廊下、階段といった共用スペースは容積率に算入されないという緩和措置が用意されています。

まとめ

今回は、新築注文住宅を建てる際、希望する広さの家を建てたいなら絶対におさえておきたい建ぺい率と容積率の基礎知識について解説しました。

日本国内で家を建てる際には、建築基準法に定められて制限を守らなければいけません。高い費用をかけて土地を手に入れたとしても、全て自分の思い通りに家を建てることは難しいのです。そして、建ぺい率と容積率は、地域によって上限が定められているため、余裕のある住空間を望んでいる場合は、厳しい制限が設けられていない土地を選ばなければいけません。

家を建てるための土地選びは、立地条件の良さばかりに注目する方が多いのですが、法による制限などについてもしっかりと確認するようにしましょう。なお、大阪府内など、近畿地方で土地を探す場合は、お気軽に悠建設までお問い合わせください。

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