今回は、2023年にスタートした、新築住宅・既存住宅に対する非常に手厚い大型補助金である『住宅省エネキャンペーン』の2025年度版、開口部の断熱化に関する補助金の概要を紹介します。住宅省エネキャンペーンは、経済産業省、国土交通省、環境省と言う3省が連携して進める補助金事業で、以下の4つの補助金をワンストップで申請利用できることが大きな特徴です。

  • 先進的窓リノベ2025事業(環境省)
  • 子育てグリーン住宅支援事業(国土交通省)
  • 給湯省エネ2025事業(経済産業省)
  • 賃貸集合給湯省エネ2025事業(経済産業省)

この補助金は、その他の制度と比較しても、非常に補助額が大きいのですが、ほとんどの住宅が希望する工事が対象となるため、予算の消化も驚くほど速いです。実際に、先進的窓リノベ事業の2023年度版に関しては、大きな予算を確保していたのに9月頃には予算が全て消化されてしまうという驚きの結果をもたらせています。

先進的窓リノベ事業は、窓やドアの高断熱化対策を行う場合、その工事にかかる費用の一部を補助してくれるという内容となっています。補助金の名称が『住宅省エネキャンペーン』となっていることから分かるように、住宅領域での省エネ化を進めカーボンニュートラルの実現を後押しすることが目的となっています。2023年からの継続事業であるため、大まかな内容は理解できているという方も多いと思いますが、補助金の内容が一部変更を加えられている部分もあるので、当記事で、先進的窓リノベ2025事業の基本的な内容と申請の流れなどについて解説します。なお、子育てグリーン住宅支援事業、給湯省エネ2025事業については、別記事で解説しているのでそちらを確認してください。

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先進的窓リノベ2025事業の概要について

それでは、先進的窓リノベ2025事業について、この補助金の対象がどのような方なのか、その逆にどのようなケースでは補助対象外となってしまうのかなど、補助金の概要を分かりやすく解説します。

窓とドアの断熱化リフォームが対象となる

先進的窓リノベ2025事業は、その名称から分かるように、窓部分のリフォームに対する補助金となります。ただ、単に窓を交換する工事を補助してくれるわけではなく、断熱窓への改修を促進することが目的です。日本では、2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されていて、そのためには住宅領域での断熱化が非常に重要とみなされています。そして、窓部分の断熱性が高まれば、空調効率が改善することで省エネルギー住宅に一歩近づくことが可能です。特に、築年数が経過した住宅の場合、窓部分の断熱性が不十分な場合が多く、この補助金によって断熱窓への改修促進を図り、省エネ住宅を増やそうとしているわけです。

なお、補助金の対象となる部位ですが、2024年度の先進的窓リノベ事業より「ドア」も対象に加えられています。ドアについては「住宅の外皮部分にある開口部に設置する建具のうち、屋外から施錠できる建具をいいます。」と言う条件が付いていることから分かるように、基本的に玄関ドアのことを指しています。また、ドアの断熱改修への補助金の利用に関しては、「窓と同一契約でリフォームを行う場合」に限られている点に注意が必要です。

なお、先進的窓リノベ2025事業の補助金対象となる要件を以下にまとめておきます。以下の情報は、2025年2月現在に判明している情報です。

  • 対象となる世帯:全世帯が対象
  • 対象となる工事:住宅所有者がリフォーム事業者(登録事業者)に発注して実施する高性能な断熱窓(Uw値1.9以下等)へのリフォーム工事で、申請する補助額の合計が5万円以上
  • 対象となる住宅:既存住宅(戸建、集合住宅などの別は問わない)

先進的窓リノベ2025事業の対象は上記の通りです。なお、現時点では、補助対象の詳細な情報が公表されていないため、参考として先進的窓リノベ 2024事業の情報を掲載しています。対象期間については、環境省が公表した資料内で以下のように記載されています。

令和6年 11 月 22 日以降に対象工事(断熱窓への改修を含むリフォーム工事全体をいう)に着手※し、令和7年 12 月 31 日までに工事が完了するものを対象とします。ただし、別途定める期間内に交付申請が可能なものに限ります。
※ 工事請負契約後に行われる工事であること
引用:環境省資料より

申請額が30万円以上の場合、既存住宅の証明が必要です

前項の通り、先進的窓リノベ事業は「既存住宅」が対象となっています。ここで言う既存住宅は、「リフォーム工事の工事請負契約日時点において、建築から1年が経過した住宅または過去に人が居住した住宅(現に人が居住している住宅を含む)」と定義されています。

そして実は、先進的窓リノベ事業を利用して窓の断熱化リフォームを行う場合で、補助金の申請額が30万円以上となる場合には、以下のような書類によって既存住宅であることを証明しなければいけません。

  • 建築確認における検査済証の写し
  • 建物の不動産登記事項証明書の写し
  • 固定資産税の納税通知又は証明書の写し

上記の書類のうち、どれか一つを提出しなければいけません。なお、上記の書類が用意出来ない場合には、住民票の写しなどによって、人が居住したことを確認できる書類の追加提出が必要です。

補助対象外となるケースについて

先進的窓リノベ事業は、窓のリフォーム工事全てに利用できるわけではありません。以下のようなケースは補助金の対象外となるので注意しましょう。

  • 熱貫流率の基準を満たさない窓リフォーム工事
    先進的窓リノベ事業は、熱貫流率の基準を満たしていなければいけません。窓が古くなったからと、性能を無視して交換するといった工事は対象外です。
  • 同一開口部の複数回のリフォームは対象外
    同じ窓に対し複数回の改修を行なう、既存の窓1つに対して3つ以上の窓を新たに取り付けるなどの工事は対象外です。ただ、同一住宅において、性能などを満たすリフォーム工事を複数回行う場合、複数回の申請を行うことは可能です。
  • 補助金額が工事代金を上回る
    補助金とは、リフォーム工事にかかる費用の『一部』を補助して技術などの普及を推進するのが基本的な目的です。そのため、補助金によって利益が得られるような使い方はできません。
  • 登録事業者と契約を締結していない
    先進的窓リノベ事業は、「窓リノベ事業者(登録事業者)と工事請負契約を締結」することが条件です。したがって、リフォーム業者が登録していない、工事請負契約を結んでいないなどのケースは対象外となります。このほか、交付申請を制限される事業者(過去3年以内の国などの補助事業において、交付決定の取り消しや補助金の返還を求められたことのある事業者、反社会的組織に関係のある事業者)による申請も対象外です。
  • 住宅以外の窓に対する工事
    先進的窓リノベ事業は、『住宅』の断熱化リフォームが対象です。そのため、店舗・事業所・店舗併用住宅の店舗部分などは対象外となります。
  • ドアのみの断熱改修
    先程紹介したように、ドアの断熱化は、窓の断熱改修と同一契約である場合に限ります。ドアのみの断熱改修は補助対象外になるので注意しましょう。

なお、先進的窓リノベ事業は、工事に利用できる対象製品も決まっています。補助金の対象となる製品は、メーカーが申請して、事務局が既定の性能を満たしていることを確認した物だけとなります。2025年度の対象製品はまだ公表されていないので、公式サイトが完成次第、確認しに行くと良いでしょう。
ちなみに、補助金の対象製品であっても、中古品の利用はできません。

先進的窓リノベ2025事業の補助額と性能基準について

ここまでの解説で、先進的窓リノベ事業の概要はある程度分かっていただけたと思います。それでは、窓の断熱化リフォームを行うとなった場合、どれほどの補助金が給付されるのでしょうか?また、どの程度の性能を持つ窓にすれば補助金の給付を受けられるのでしょうか?

この部分については、既に経済産業省などの資料で紹介されているので、以下で解説していきます。

先進的窓リノベ2025事業の補助金額について

先進的窓リノベ2025事業は、一戸当たりの上限補助金額として200万円が設定されています。ただ、一律で200万円の補助金が給付されるわけではなく、住宅の種別、窓(ドア)リフォームの工法、断熱性能のグレード、窓のサイズなどによって補助金の単価が設定されています。

申請下限額は5万円/戸となっていますが、複数の窓を同時にリフォームする場合、「補助単価×施工箇所数」と言う計算式で補助金額を算出します。補助金の単価については、以下のように定められています。

引用:経済産業省資料より

上図から分かるように、断熱化を検討している窓でも、サイズが小さい場所の場合、1箇所だけでは補助金の申請条件を満たさないケースも考えられます。

なお、2024年度の先進的窓リノベ事業との違いについては、内窓設置のみは補助金の金額が縮小されている、極上サイズの窓が対象から無くなっている、中高層集合住宅にて「Bグレード」が廃止されているといった点です。
先進的窓リノベ事業は、断熱グレードが高くなるほど補助金の単価も高く設定されています。ちなみに「はつり工法」の補助金単価が非常に高く設定されているのでは、窓の周りの外壁を一度壊してから枠ごと交換する工事となるため、そもそもの工事代金が高くなるからです。

先進的窓リノベ2025事業の性能基準について

それでは、先進的窓リノベ事業の性能基準についても解説します。先ほどから言及しているように、先進的窓リノベ2025事業は、どのような窓リフォームでも補助金の対象となるわけではなく、一定の断熱化を実現することが要件となるのです。当然、「どの程度の断熱性を実現すべきか?」と言う性能基準も定められています。

それでは、先進的窓リノベ事業の対象となるためにはどのような性能の窓にしなければならないのでしょうか?その性能基準は、「熱貫流率」というもので表されています。

「熱貫流率」は、余り聞き馴染みがない言葉だと思いますが、簡単に言うと、窓ガラスをどの程度の熱が通過できるのかを示す値です。例えば、真夏の暑い時期に、屋外の熱が窓ガラスを通過して室内に入ってくるようでは、いくら冷房をかけていても室内の温度は下がりにくくなりますよね。もちろん、冬場の冷気が室内に簡単に入るようなら、暖房をつけていても寒さを感じてしまう部屋になってしまいます。
つまり、窓部分の「熱貫流率」が悪い状態なら、エアコンの効率を著しく悪化させてしまうということで、逆にこれを高めてあげることで空調効率を上げ、住宅全体の省エネ性が高くなるという訳なのです。

熱貫流率は、「W/㎡K」という単位で表され、数値が大きいほど、熱が伝わりやすく、断熱性能が低いことを意味します。そして、先進的窓リノベ事業については、窓リフォーム後の熱貫流率について、以下のような基準が設けられています。

引用:環境省資料より

上記の性能基準はドアについても同じ基準が適用されます。

2024年度の先進的窓リノベ事業では、Uw2.3以下のBグレードもあったのですが、2025年度は「1.9以下(Aグレード)」が基準となっています。この性能基準については、一般の方が自分で測れるような物ではありません。先進的窓リノベ事業は、対象製品をメーカーが登録申請し、事務局側が性能基準を満たしているのかを確認することとなっています。そして、認められた製品は、メーカーから、製品の性能やサイズが記載された「性能証明書」が発行されるので、カタログなどにより「熱貫流率」の基準を満たしているかどうかを判断しましょう。

先進的窓リノベ2025事業の申請の流れと必要書類

補助金の申請については、「手間と時間がかかりそう…」「専門家ではないし難しそう…」と不安に感じる方も多いです。ただ、先進的窓リノベ事業については、工事を行う事業者が申請を代行するので安心してください。

補助金の申請は、全ての工事が完了したのち、事業者側がオンラインで申請します。そして、審査を経て承認されると補助金が事業者に振り込まれるという流れになります。なお、給付された補助金については、工事発注者へ全額還元されなければいけないので、還元方法については窓リフォーム工事の契約前にきちんと取り決めておきましょう。

先進的窓リノベ事業の申請から補助金給付までの流れが経済産業省の資料で紹介されているので、以下に引用しておきます。

引用:経済産業省資料より

先進的窓リノベ2025事業の申請の必要書類

先進的窓リノベ2025事業は、工事完了後に以下の書類を用意して補助金の給付申請を行います。多くの書類は、リフォーム工事を請け負ってくれた業者が用意するのですが、一部工事発注者が用意しなければならないものもあります。

引用:環境省資料より

上記の書類のうち、本人確認書類や既存住宅であることが確認できる書類については、工事発注者でなければ用意することができません。したがって、工事業者のアドバイスのもと、補助金申請に必要な書類を用意し、業者に渡すと良いでしょう。

交付申請の「予約」について

先進的窓リノベ2025事業は、工事完了後に補助金申請を行うという流れが基本です。ただ、この補助金には「予約」と言う制度が設けられていて、工事着工後であれば、予約申請を行うことができるのです。

冒頭でもご紹介しましたが、住宅省エネキャンペーンは、新築やリフォームに対する補助金の中でも、特に大型の制度となっています。そのため、非常に人気の高い補助金で、予算の消化が非常に速いという特徴があるのです。実際に、2023年度の窓に関わる補助金については、予定された申請受付の締切よりも3カ月以上早い、9月には予算がなくなり、新規の受付が停止されるという事態に陥りました。

当然、申請終了日を待たずに予算が尽きてしまうと、補助金を受けられない事態になってしまうことでしょう。補助金を見込んで、リフォーム工事の契約をしたのに、肝心の補助金が受け取れず、全額実費になってしまう…なんてことになれば非常に困ってしまいますよね。

そこで、ぜひ利用したい制度がこの「予約」と言うシステムなのです。

予約すれば、一定期間予算が確保!

先進的窓リノベ2025事業における「予約」と言うシステムは、環境省の資料の中でも「予約によって補助金が一定期間確保されます。」と解説されています。

分かりやすく言うと、予約申請を済ませておけば、予約から3カ月間は、あなたの工事分の補助金の予算が確保されるようになるのです。予約提出後3ヶ月以内かつ交付申請期間内に交付申請が無かった場合、予約は取り消されますが、その期間内に交付申請をおこなえば、予算が尽きて新規の申請受付が終わっていたとしても、補助金が確保されているので、安心できるはずです。

予約申請は、手間が増えてしまうものの、補助金が一定期間確保されるという非常に大きなメリットがあります。特に、先進的窓リノベ事業は、予算の消化が非常に速い傾向にあるので、予約なしの場合、工事が完了するまでに申請受付が終了する可能性も無くはないのです。

なお、予約から本申請まで間に工事内容などが変更になった場合、予約が取り消されてしまうのでその点は注意しましょう。

まとめ

今回は、窓の断熱化リフォームを行う際、その費用の一部を補助してくれる補助金、先進的窓リノベ2025事業について解説しました。先進的窓リノベ事業は、2023年からスタートした3省連携の住宅省エネキャンペーンを構成する補助金の一つです。

住宅の断熱性能を考えた時、窓の断熱性能の低さが大きな弱点になるという話は皆さんも耳にしたことがあるはずです。一般的な窓は、外壁などと比較すると、非常に薄い素材で構成されているため、どうしても熱の出入りを防ぐ能力が低くなってしまうのです。実際に、エアコンを稼働させているにもかかわらず、夏の暑さや冬の寒さを感じてしまうのは、窓から冷気や熱気が侵入しているとされています。そして、この窓の断熱性の低さは、空調効率を低下させることで省エネにも悪影響を与える結果を招いてしまいます。

2050年カーボンニュートラルの実現が目指されている中、政府は住宅領域での脱炭素化を重要視していて、窓の断熱化工事には非常に手厚い補助金が給付されることとなったのです。現在、窓部分の断熱性の低さに悩んでいるというお宅があれば、補助金を利用した断熱リフォームを検討してみてはいかがでしょう。窓の断熱化リフォームは、初期コストがかかるものの、その後は空調効率を改善させるといったメリットが得られるため、日々の生活にかかる光熱費の削減が期待できるはずです。

築年数が経過した住宅で、窓の断熱化を検討している方はお気軽に悠建設に相談してください。

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