新築戸建て住宅の購入を考えた時、規格住宅や注文住宅どちらの場合でも、重要性は高い割に一般の方が見落としてしまいがちなポイントとなるのが外構工事です。

外構工事は、住宅を引き立たせる重要な役割や庭の演出、ガレージやアプローチなどの家の価値に関わる工事を指すのですが、新築の購入を検討して見積りをとった場合は「外構工事は別途」という文言が記載されていて「外構工事とはどの部分を指すのだろう?」「外構工事にいくらぐらいかかるの?」と言った疑問を抱える方が多いです。「外構」という文字から、恐らくは建物の外に関わる部分だということはイメージできるものの、具体的にどの部分が外構なのか、またどういった工事が行われるのかが分からず困ってしまう方も多いです。

そこでこの記事では、新築戸建ての購入時に、非常に重要なポイントとなる外構工事について、「そもそも外構とは何を指しているのか?」また外構工事はどのような工事を言うのかなどについて解説します。なお、外構にもいくつかの種類があるので、それぞれの特徴についても簡単にご紹介します。

そもそも外構とは?外構工事は何をする?

それではまず、家の中で「外構」と呼ばれる部分がどこで、外構工事がどのような工事を指しているのかについて解説します。家の中で「外構」と呼ばれる部分は、上図の赤丸で囲まれているような場所を指していて、具体的には、家の敷地を取り囲む塀や生垣、門扉に 外灯、玄関までのアプローチや車庫(カーポート)、そして庭などと言った、敷地内の家の周りを構成する部分のことを指しています。

そして外構工事については、敷地の建物外部の造園、庭づくりやアプローチ、ガレージもしくはカーポートの設置や門扉とともに表札やポストなどを設置する工事を指しています。この他にも、リビングから外に出られるテラスやウッドデッキ、アプローチのタイル張りと言った舗装工事など、家の外部周りに関するさまざまな工事を総称して「外構工事」と呼ばれているのです。ちなみに、外構工事は、建物と調和した美観の構築や敷地内の機能性の向上、セキュリティやプライバシー性の確保などが主な目的となっていますが、家そのものが周辺環境になじむようにすることも重要視されます。

なお、外構工事と同じような意味で使われる言葉に「エクステリア工事」というものがあります。一般の方の間では、多くの場合「外構工事=エクステリア工事」という認識になっていますが、多少意味合いが異なる部分もあるので注意しましょう。外構工事は、先ほどご紹介したように、建物の外側にある構造物自体の工事を指しているのですが、エクステリア工事に関しては、敷地内の空間全体の工事を指しているとされます。もう少し噛み砕くと、エクステリア工事は、建物の外回りの空間を「おしゃれに装飾するための工事」という意味が強く、外構工事は「機能性重視の工事」というニュアンスで使い分けられています。

新築住宅の購入時は、規格住宅や注文住宅の「本体工事」に外構工事が含まれていない場合が多いです。外構部分に関しては、家を建ててくれるハウスメーカーに別途見積りを依頼したり、外構専門の業者を別に選任して工事を行ったりするケースが多いです。中には、外構部分に関しては、自分たちで施工をするという方もいます。

外構工事の必要性について

先ほどご紹介したように、新築注文住宅の購入を検討して、見積りを依頼した場合「外構工事は別途」となり、本体工事には含まれない場合が多いです。ただ、外構工事は、建物の外側にある、駐車場や庭、塀や門扉などを指しているわけですので、これらの工事を全くしないという扱いにすることは難しいです。もちろん、建物が完成し、住み始めてから住人さん自身が必要な部分の外構工事を行うという方法もありますが、駐車場のコンクリート土間工事や、アプローチの舗装、生垣の植栽や門扉の設置など、素人の方では難しい工事がたくさんあります。

それでは、わざわざ本体工事とは別にされている外構工事は、本当に行う必要があるのでしょうか?ここでは、外構工事の必要性について考えてみます。

セキュリティ面の強化

外構工事の必要性を考えた時には、セキュリティ性を高めるという部分を目的にする方が最も多いのではないでしょうか?外構工事は、庭や駐車場の機能性を高めることも大きな目的となるのですが、敷地を囲うようにブロックフェンスや植栽を設置することで、外部からの侵入を防ぐことができるようになり、セキュリティ面の強化につながります。外構工事をせず、塀や門扉、植栽などが何もなければ、敷地内に誰でも容易に侵入することができるようになってしまいます。当然、空き巣などの侵入犯罪の被害に遭う危険性は高くなってしまうでしょう。

家の敷地をきちんと囲うように、高い塀や植栽を作っておけば、外部から中が見えにくくなることで狙われにくくなる、侵入されにくくなるので、犯罪に巻き込まれる確率は少なくなります。他にも、敷地内の死角部分に砂利を敷く、駐車場に門扉を設置する、人感センサーを設置し人がいれば照明がつくようにするなどの外構工事を行えば、防犯効果も高まります。

プライバシーの保護

外構工事は、家族のプライバシーを保護するという目的もあります。先ほどご紹介したように、家の周りについて塀や植栽などを設置せずにいると、外から家の中の様子が丸見えになってしまい、いつだれが侵入してきてもおかしくない状況になります。

逆に、きちんと家の周りを囲うように塀や植栽を設置しておけば、家の前を通る人からの視線を遮ることができ、家族がリラックスして過ごせるようになります。なお、塀や植栽の設置は、隣地との境界を明確にするという意味もあり、植栽の越境や侵入物などによる隣人トラブルを防止する効果も期待できます。

お子様やペットの安全性を確保できる

庭付きの一戸建ての場合、外部からの侵入を防止できるだけでなく、小さなお子様やペットなどが安易に家の外に飛び出し、危険な目に遭う…ということを防止するための障害物としても役立ってくれます。

例えば、南向きの住宅では、前面道路に接するように駐車場を設けるケースが多いのですが、門扉などを設置していない場合、駐車場で遊んでいた子供が道路に飛び出し、事故に巻き込まれてしまう…などという危険が生じます。この他にも、庭でペットを遊ばせている時、塀などに囲われていない場合、何かの音に驚いてペットが敷地外にまで逃げ出してしまう…なんて可能性もあるでしょう。これが、きちんと塀や門扉などの障害物を設けておけば、簡単に敷地外に出ていくのを防ぐことができ、余計な事故に遭う可能性を低くすることができるのです。外構工事は、家族やペットの安全を守るためにも必要性が高くなっています。

空間のデザイン

注文住宅を建てる場合、いくら立派で豪華な建物を建てたとしても、外構工事が不十分であった場合、家全体として見た場合、どこか締まりがなく中途半端なイメージになってしまう場合があります。

外構工事は、空間をデザインする意味でも重要とされていて、建物と庭、外構設備とのバランスなどを考慮しながら、家全体の景観を演出するためにも重要な役割を持っているのです。

家族のコミュニケーションやリラックス空間として活用できる

きちんと外構工事にまで力を入れ、おしゃれなテラスやウッドデッキを設けていた場合、家族や友人と庭でバーベキューを楽しむ、天気の良い日にテラスでお茶を飲むなど、コミュニケーションやリラックス空間として活用することができるようになります。また、庭に芝生を敷いたり、果樹を植えたりすることで、子供が安全に遊べる、季節の味覚を楽しむことができるようになるでしょう。

外構工事は、単に敷地内の機能性やデザイン性を良くするだけでなく、そこで暮らす人の安全性やプライバシー性を高め、豊かな生活を実現するためにも重要な工事となるのです。

外構の種類とそれぞれの特徴について

ここまでの解説で、外構や外構工事がどういったものなのかはある程度理解していただけたと思います。ただ、一口に「外構」と言っても、そのスタイルから「オープン外構」と「クローズ外構」、その中間の「セミクローズ外構」の3つに分けることができます。

ここでは、それぞれの外構の特徴と導入した時のメリット・デメリットをご紹介します。

オープン外構の特徴

一つ目は「オープン外構」と呼ばれるスタイルです。これは、家の敷地と道路との境界に、塀や生垣などを設置せず、人や車などが自由に出入りできるようにした開放的なスタイルの外構を指しています。

オープン外構は、外構工事を行う主な目的であるセキュリティ性やプライバシー性を捨てることになりますが、必要な外構設備が少なくなる分、外構工事にかかるコストが安くなる点がメリットです。オープン外構のメリット・デメリットに関して、もう少し具体的にご紹介します。

オープン外構のメリット

オープン外構のメリットは以下のような点です。

  • 家の周りに障害物がなくなるので、風通しや日当たりが良くなり、開放感のある空間になる
  • 塀やフェンス、門扉や生垣などの外構設備が不要になるので、外構工事が低コストになる

オープン外構は、敷地内に設置される構造物が最小限に抑えられるため、視界が開けた空間になり、日当たりや風通しが良い開放感のある空間が実現できます。セキュリティー面などは弱くなりますが、ご近所さんとのコミュニケーションは取りやすくなるので、隣人との関係を重視したいという方にはオススメです。また、必要最小限の外構工事で済みますので、工事にかかるコストが安くなるのが大きなメリットになるでしょう。外構工事は、DIYでも可能な部分が多いですし、必要であれば後から自分たちで手を加えることも可能です。

オープン外構のデメリット

オープン外構は、上記のようなメリットがある一方、以下のような点に注意しなければいけません。

  • 外部からの視線を遮る構造物がないので、プライバシーを保ちづらい
  • 敷地内に誰でも簡単に侵入できるなど、セキュリティ性が悪い

オープン外構は、敷地内を隠す囲いなどを何も設けない方法なので、中で暮らす家族のプライバシーが守りにくくなります。また、敷地内に誰でも簡単に侵入できるため、セキュリティーの面でも不安が残ります。プライバシーの問題に関しては、昼間でもカーテンを閉じておかなければならないなど、せっかく日当たりが良くなっても、家の中まで日の光を取り込めなくなる可能性があります。セキュリティー面に関しては、砂利を敷く、防犯ガラスや窓シャッターを設置するなどの方法で対処可能ですが、別の部分にコストがかかるため「オープン外構は低コスト」というメリットが打ち消されてしまうでしょう。

クローズ外構の特徴

クローズ外構は、その名称から分かるようにオープン外構の真逆のスタイルで、家の敷地を塀や生垣などで囲うという外構の形となります。なお、クローズ外構の場合、駐車場についても、シャッターやゲートなどを設置して、容易に人や車が出入りできなくします。

オープン外構と比較すれば、セキュリティーやプライバシー保護の面で非常に有利になります。ただ、設置しなければならない外構設備が多い、設備のグレードも高くなるという点から、外構工事に必要なコストは高くなります。クローズ外構の具体的なメリット・デメリットは以下の通りです。

クローズ外構のメリット

クローズ外構のメリットは以下のような点です。

  • 塀や生垣で敷地外からの視線を遮ることができ、プライバシーをしっかりと保護できる
  • 塀や生垣、門扉などにより関係者以外の侵入を防ぐことができる
  • 小さなお子様やペットが道路に突然飛び出すのを防げる

クローズ外構のメリットは、プライバシー性やセキュリティー性が高くなる点です。人の目線よりも高い塀を設けることができれば、周囲からの視線を気にすることなく生活することができるでしょう。さらに、塀や門扉を設置しておけば、外部からの不審者の侵入が容易にできなくなるため、防犯性を高めることができ、そこに住む家族の安全を守りやすくなります。なお、塀や門扉は、敷地内から敷地外に飛び出す…という、子供やペット特有の危険からも守ってくれるので安心です。

クローズ外構のデメリット

クローズ外構のデメリットは以下のような点です。

  • 一度不審者に侵入されると、その存在を外部に気付いてもらいにくくなる
  • 高い塀を設けると日射や風を遮るので、日当たりや風通しが悪くなる
  • 外構工事にかかる費用が高くなる

クローズ外構は、不審者が侵入しにくくなるものの、一度侵入されてしまうと、敷地外の人からは発見しにくくなる点が落とし穴です。簡単に言うと、敷地外からの目線を気にしなくても良いので、空き巣犯などからすれば犯行がしやすくなるのです。したがって、クローズ外構を取り入れる場合でも、防犯カメラシステムやセンサー付きライト、警備会社の導入など、防犯対策は必須と考えましょう。
この他のデメリットとしては、塀の高さや建物との距離感などによっては、日当たりや風通しが悪くなる可能性があります。場所によっては、湿気などがこもりやすくなり、外壁にコケやカビが繁殖してしまうという問題も指摘されます。

セミクローズ外構の特徴

セミクローズ外構は、上述したオープン外構とクローズ外構の「良いとこ取り」をした外構の形と解説されることが多いです。セミクローズ外構は、門周りや駐車場周りに関しては、機能性を重視してオープンスタイルを採用します。ただ、庭や家族の生活空間についてはプライバシー保護やセキュリティーを重視し、塀を設けることでクローズスタイルにするなど、場所や住人さんの希望によって、外構の形を柔軟に組み合わせていく方法です。

こう聞くと、セミクローズ外構はメリットばかりで、弱点などもないのではないかと考えられがちですが、そうではありません。以下に、セミクローズ外構のメリットとデメリットについてもご紹介します。

セミクローズ外構のメリット

クローズ外構のメリットは以下のような点です。

  • 家族のプライバシーを保護しつつ、程よく開放的な空間を実現できる
  • 機能性とセキュリティ性のバランスを調整できる(メリハリの効いた空間を演出できる)

セミクローズ外構では、車や人の出入りがしやすくなるようになど、防犯やプライバシー保護だけでなく、機能性のことが重視されている点がメリットです。もちろん、一般的に、プライバシーの保護や防犯面が重視されがちな庭や部屋周りに関しては、きちんと塀やフェンス、生垣などで対策を施すので、機能性と防犯・プライバシー保護のバランスが良いメリハリの効いた空間を作り出すことができるのです。

セミクローズ外構のデメリット

クローズ外構のメリットは以下のような点です。

  • オープンにする場所とクローズにする場所の選択を間違うと、中途半端な外構になる

セミクローズ外構は、オープンにする場所とクローズにする場所をきちんと選ばなければいけません。この問題については、人それぞれの部分があり、住んでみなければ分からない面も多いため、選択を間違えて中途半端な外構スタイルになってしまう可能性があります。したがって、経験豊富な業者としっかりと打ち合わせを行い、オープンとクローズの適切な範囲を判断しなければいけません。
なお、セミクローズ外構は、オープンスタイルとクローズスタイルを組み合わせているわけですので、部分的に両者のデメリットの影響を受ける点は、大きな弱点と考えられるでしょう。

まとめ

今回は、これから新築住宅の購入を検討している方がおさえておきたい外構と外構工事の基礎知識について解説しました。

記事内でご紹介したように、外構とは、塀や門扉、玄関までのアプローチや駐車場など、建物の外側にある設備などのことを指しています。新築住宅の購入を考えた時には、間取りや建物の外観など、家そのものに注目が集まりがちなのですが、そこに住んだ時の防犯性やプライバシー保護、安全性のことを考えると、外構工事が非常に重要度が高くなるのです。

記事内では、主な外構のスタイルについてもご紹介していますので、家を建てる時の参考にしてみてください。なお、外構工事は、建物の本体工事の中には含まれていないケースがほとんどなので、建物と外構の予算を別々に考えておかなければいけません。

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