新築注文住宅を建てると決めた後、多くの方が初めて経験する行事に『地鎮祭(じちんさい)』というものがあります。普段の生活の中で、町を歩いている際、何も建っていない土地で神主さんが何やらよくわからない儀式をしているのを見かけ「何をやっているのだろうか?」と疑問に感じたことがある人も多いと思いますが、それが地鎮祭と呼ばれるものです。

新築で家を建てる時には、多くの方が行う「地鎮祭」ですが、実際にこれを行おうと考えている方の中にも、「なぜ行うのか?」「どういった儀式で何が目的なのか?」はきちんと理解できていない…という方の方が多いと思います。そこでこの記事では、新築時に多くの方が経験することになる地鎮祭について、これがどういった儀式なのか、また地鎮祭をするときの服装や費用、準備しなければならないものはあるのかについて解説したいと思います。

なお、最初に言っておきますが、地鎮祭は多くの方が行う儀式であるのは間違いありませんが、注文住宅を建てるからと言って、必ず行わなければならないというものではありません。記事内では、地鎮祭に関する基礎知識をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

地鎮祭とは?

それではまず、家を建てる際に行われている「地鎮祭」について、「何の目的で行われる儀式なのか?」について解説します。

地鎮祭は、土木工事や建築工事の着工前に行われる儀式で、「工事が無事完了すること」を祈願するための儀式とされています。日本には、神道と呼ばれる特有の宗教があり、古くから日本人の暮らしには「万物には神が宿る」という考えが暮らしの中に溶け込んでいます。建物を建てる前に地鎮祭が行われるのも、この考えが元となっており、土地を守る氏神様から土地を利用する許可を得ることで、安全に建築工事が進められるように祈願するというものなのです。なお、地鎮祭は、一般的には「じちんさい」と呼ばれていますが、「とこしずめのまつり」という読み方がされる場合もあるようです。

地鎮祭は、全国的に浸透している風習で、多くの方が現在でも行っています。ただ、冒頭でもご紹介しているように、「絶対にに行わなければならない」という義務ではありません。実際に、時代の変化とともに、現在の若者世代が家を建てる際には、地鎮祭を行わないという方も増えているようです。ちなみに、一般的な注文住宅の流れでは、以下のようなタイミングで地鎮祭が行われます。

  • STEP1 ハウスメーカーを決める
  • STEP2 建築プランを決定して工事請負契約を結ぶ
  • STEP3 地鎮祭と挨拶回り
  • STEP4 工事スタート
  • STEP5 上棟式
  • STEP6 竣工(完成)、引き渡し
  • STEP6 引っ越しして生活がスタート

注文住宅の建設は上記のような流れで進みます。実は、地鎮祭以外にも、住宅建築にまつわる儀式として『上棟式』というものもあります。上棟式は、工事が棟上げまで完了した際に行うもので、これは「安全に工事を進められた」ことに対して感謝を示したうえ、残りの工事も安全に完成まで持っていけるよう、無事を祈るための儀式となります。

※上棟式も、地鎮祭と同様に必ず行わなければならないものではありません。特に近年では、「地鎮祭は行うものの上棟式は行わない」というケースが増えています。この辺りは、人それぞれ、考え方が異なりますので、ご自身の考えに従って行うかどうかを決めると良いでしょう。

地鎮祭の費用とのし袋の書き方

家の建築における地鎮祭で気になるのは、「地鎮祭を行うのにかかる費用は?」と言った点ではないでしょうか?もちろん、工事の安全を祈願するものですので、コストは度外視するという人もいるかと思いますが、どれぐらいの費用を用意しておけば良いのかで迷ってしまう方は多いはずです。

そこでここでは、地鎮祭にかかる一般的な費用相場と、地鎮祭を執り行ってくれる神主さんにお渡しする初穂料(玉串料)について、初穂料(玉串料)を収めるのし袋の書き方なども併せてご紹介します。

地鎮祭の費用

地鎮祭にかかる費用について、略式で行うか、本格的に行うのかで変わりますが、一般的に6~12万円程度が相場と言われています。地鎮祭の費用内訳については、以下のような感じになります。

  • 初穂料(神主さんへのお礼):3万~5万円
  • 神主さんのお車代:5,000~10,000円
  • 資材のレンタル料や設営代:3~5万円
  • お供え物:5,000~10,000円
  • ご近隣への粗品:1軒あたり500~1000円程度

地鎮祭の費用内訳は上記のようになっています。地鎮祭は、地域の神主さんに依頼して行うものなので、儀式を執り行ってもらうお礼として初穂料(玉串料)を渡します。初穂料の相場は、2~5万円程度とされていますが、地域によって差があるため、念のためハウスメーカーの担当者さんに確認しておきましょう。なお、神主さんが自身の車で現地にくる場合は、お礼とは別にお車代を渡すのが一般的です。なお、初穂料に関しては、奇数のきりのよい数字にすることが多いです。

地鎮祭を行う場合、祭壇やテント、幕などを用意して設営しなければいけません。そのため、設営にかかる費用や資材のレンタル代としてそれなりの費用がかかります。地鎮祭に必要になる資材については、依頼する神社によって用意しなければならないものが変わるため、こちらもハウスメーカーの担当者さんと事前に打ち合わせしておきましょう。
また、地鎮祭では、お供え物が必要になるのですが、ご自身で用意しなければならない場合は、1万円程度の費用がかかると考えてください。お供え物は、米や奉献酒、塩、海の幸3種類、野菜3種類以上、果物3種類などが一般的ですが、依頼する神社によってはその神社ならではのお供え物が必要になる場合があります。ただ、近年の地鎮祭では、お供え物に関しては、神社やハウスメーカーが用意してくれるケースが多く、施主が準備するのは初穂料のみとなる場合が多いようです。お供え物をハウスメーカーが用意する場合、建築費用に含まれているケースが多いので、お供え物の取り扱いも事前に確認しましょう。神社側が用意する場合は、初穂料に5,000円ほど追加して渡すと良いです。

なお、地鎮祭に合わせて近隣への挨拶回りをするケースが多いのですが、その時に渡す粗品として、1軒あたり500~1,000円程のものを用意しましょう。ハウスメーカーに相談すれば、粗品も用意してくれますが、一般的にはタオル、ふきん、洗剤、ラップなどを用意します。
この他、儀式の最後に「直会(なおらい)」までする場合は、その時のお食事代金が必要になります。ただ、近年の地鎮祭では、省略することが多いです。

※上棟式まで行う場合、別途10万~30万円程度の費用が上棟式にかかります。

のし袋の書き方

初穂料(玉串料)を収めるための「のし袋(祝儀袋とも呼ばれます)」については、水引の種類や書き方が分からない…という方も多いと思います。今時は、ネットで検索すれば参考となる画像が表示されますが、ここでも簡単にご紹介します。

初穂料を納めるのし袋は、水引が「蝶結び」になっている物を使用するのが基本です。また、水引の取り外しができるタイプで、中袋が用意されているものを使用するのが一般的です。このタイプは、3~5万円を包む場合に適しているとされるからですね。袋の表面に水引が印刷された簡易的なタイプの方が安いのですが、このタイプは包む金額が1万円以下の場合に使用するのが一般的です。

のし袋は、毛筆や筆ペンを使用して、名目と氏名を記入します。水引より上段の中央に、「初穂料」または「御初穂料」と書きます。そして、水引よりも下段に、施主の姓を書いてください。なお、姓の文字は、「初穂料」の文字よりも少し小さめにしましょう。また、施主の姓についてはフルネームや連名でも構いません。連名で記入する場合には、中央に代表者の名前を書き、その左側に連名者の名前を書いていきましょう。
最後に中袋ですが、中袋は表面中央に金額、裏面に住所と氏名を記載します。のし袋の書き方については、以下のサイトで画像付きで紹介されているので、確認してみてください。

> 地鎮祭用のし袋の書き方

地鎮祭当日の流れと参加者の服装について

それでは、実際に地鎮祭を行う当時の流れについて解説します。地鎮祭当日は、家を建てる土地に資材の設営業者や神主さんにより祭壇の設置などが行われます。そして、お供え物を並べるなど、準備が整い次第、儀式が始まります。神式の地鎮祭は、以下の流れで進むのが一般的です。

1.修祓(しゅばつ)
神職が祓詞を奏上した後、祭場、神饌、玉串、斎主、祭員、建主、工事関係者、その他参列者を祓い清める。
2.降神(こうしん)の儀
神職が降神詞を唱えてから「オ…」と声を発して警蹕(けいひつ)を行い、低頭した参列者に降臨を告げる。
3.献饌(けんせん)の儀
神職が神饌(米、酒、餅、海魚、川魚、海菜、野菜、果物、菓子、塩、水など)を供える[3]。神前に神酒を供えておき、その瓶子の蓋を取って献饌の儀とすることもある。
4.祝詞奏上(のりとそうじょう)
神職が土地や建物の長久、工事の安全、建主の発展などを祈る祝詞を奏上する。
5.散供(さんく)の儀
東北、東南、南西、西北の順に土地の四隅を祓い清め、米、塩、切幣そして清酒を大地に直接供える。
6.草刈初(くさかりそめ)の儀
忌鎌(いみかま)を使って草を刈る儀式で主に建主が行う。
7.穿初(うがちぞめ)の儀
忌鍬(いみくわ)を使って鍬を入れる儀式で主に工事関係者が行う。
8.鎮物(しずめもの)埋納
敷地中央に鎮物を行うが、通常は地鎮祭では所作のみで工事のときに埋納する。
9.玉串拝礼(たまぐしはいれい)
斎主、祭員に建主、工事関係者、参列員等の順に玉串を奉り拝礼する。
10.撤饌(てっせん)の儀
神職が神饌を下げる(瓶子に蓋をして撤饌の儀とすることもある)。
11.昇神(しょうしん)の儀
斎主が昇神詞を唱えるとともに、警蹕(けいひつ)を行い神を送る。
12.直会(なおらい)
席を改めて直会を行う
参照:wikipedia

神式の地鎮祭は、「修祓の儀(しゅばつのぎ)」から「直会(なおらい)」まで10~12の次第で構成されているのが一般的です。一昔前までは、「閉式の辞(へいしきのじ)」の後に神主が現場を去り、その後に簡単な食事会である「直会(なおらい)」をしていたのですが、近年では、直会を式の最後に組み込み、参加者全員でおさげしたお神酒を頂いて終わるという流れが一般的となっています。

なお、地鎮祭の中で施主が行わなければならない役割は、主に以下の二つです。

  • 「地鎮の儀」の中で、神主さんから鍬を受け取り、“鍬入れ”と呼ばれる盛り砂を掘り起こす動作を行う。なお、鍬入れでは、「えい、えい、えい」と声を出して、鍬を入れる動作を3回行います。
  • 「玉串拝礼(玉串奉奠)」では、玉串を祭壇に置き、二礼二拍手一礼を施主が行います。

この他にも、現場によっては、地鎮祭の最後に式の締めくくりとして挨拶を促される場合があります。この際には、「地鎮祭に出席してくれた感謝の言葉」と作業者の方へ「安全な工事のお願い」を述べるのが一般的です。

地鎮祭の参加者と服装について

地鎮祭は、「誰が出席するべきなの?」「どんな服装にすべき?」と言った点も気になるという方が多いです。

まず、地鎮祭の参加者に関してですが、一般的に施主とその家族、ハウスメーカーの関係者で行われるケースが多いです。ちなみに、注文住宅の建築は、一生に一度の記念でもありますので、同居しない場合でも、ご両親などを呼ぶという方も多いです。

地鎮祭に出席する際の服装については、特に決まりごとはありません。施主の方の場合、スーツなどフォーマルな服装が選ばれることが多いのですが、戸建ての地鎮祭では普段着で参加しているという方の方が多くなっていると思います。特に、地鎮祭は屋外で行われますので、真夏の炎天下に行うなどと言った時には、無理にフォーマルな格好を維持するよりも、天候に合わせた服装を選ぶ方が良いでしょう。

ちなみに、地鎮祭に参加する業者側のスタッフについては、ハウスメーカーの担当者さんであればスーツ、現場の責任者の方は作業着という格好が多いです。

※最近の地鎮祭は、普段着が多いのですが、極端に派手なものや露出の多い服装は控えましょう。挨拶回りなどのことも考えると、清潔感のある服装を選ぶのがおすすめです。

地鎮祭に関するよくある質問

それでは最後に、地鎮祭に関するよくある質問について、答えと一緒にご紹介していきます。

①地鎮祭はやらないといけないの?

地鎮祭と聞いて真っ先に思い浮かぶ疑問は「必ず行わないといけないの?」と言ったことではないでしょうか?街中を歩いている際も、地鎮祭を見かけることも多いですし、自分が家を建てる時も実施したほうが良いのかなと考えてしまう人が多いと思います。

ただ、上述したように、地鎮祭を行う場合、10万円近い費用がかかりますし、可能であれば省きたいと考えてしまう人もいるようです。これについては、冒頭でもご紹介したように、義務ではない儀式なのでやりたくないと考えるのであれば、別にやる必要はありません。

一昔前であれば、ほとんどの現場で地鎮祭は行われていましたが、現在では地鎮祭を省く施主様も増えています。きちんと統計を取ったわけではありませんが、体感的には60%前後の方が行っている程度で、やらないという選択をする人も増えているように思えます。

②地鎮祭はやらない場合、何かデメリットはある?

地鎮祭については、「やらない場合に何かデメリットはあるのだろうか?」「地鎮祭を行わなかった場合、手抜き工事をされないか心配…」と言った疑問を感じる人もいるようです。

これについては、そもそも地鎮祭とは「安全祈願」のために行われるもので、施工業者さんに感謝を示すといった儀式ではないため、工事関係者の心象に影響を与えるような事はありません。つまり、地鎮祭を行わなかったとしても、工事で手抜きをされる心配はありません。ちなみに、上棟式については「感謝のための儀式」という側面があるため、「それなら上棟式はやったほうが良いの?」と気になってしまう人もいます。しかし、上棟式は、多くの現場で省略されるようになっていますし、これについても儀式の有無で施工業者の心象に影響を与える心配はありません。

昔は、家を建てる際の職人については、一つの家に対して一人の大工さんとその関係者が担当するというのが一般的だったため、上棟式のような儀式が重要視されていたのは確かです。しかし、現在の住宅業界を考えると、ほとんどの工程が分業制になっていて、一つの家にたくさんの職人が関わるようになっているのです。したがって、地鎮祭や上棟式のような儀式は、伝統として残ってはいるものの、必ずしも行わなくてはならないものではなくなっています。

③神主さんはどうやって探せば良いのですか?

普段、神主さんと付き合いのある方は少ないと思いますし、地鎮祭をお願いする神社、神主さんをどうやって探せば良いのかで迷ってしまう方は多いと思います。

なお、地鎮祭をお願いする神社に関しては、その土地の氏神様を祀っている神社へ依頼する物とされていましたが、現在ではそうするケースも少なくなっています。地鎮祭を執り行ってもらう神社については、施主が自ら探すのではなく、ハウスメーカーに依頼すれば、下準備を滞りなく行ってくれます。

④地鎮祭の日取りはどうやって決めるの?

地鎮祭の日取りに関しても、基本的にはハウスメーカーさんが調整してくれますので、施主側は都合のつけられる日程をいくつか提出する形で良いかと思います。

ただ、地鎮祭は「好ましい日程条件」というものがありますので、あらかじめ知っておけば予定を組みやすくなると思います。地鎮祭は、大安・友引・先勝の午前中もしくは、大安・友引・先負の午後も良いとされています。

まとめ

今回は、新築注文住宅を購入した場合、初めて経験する方が多い儀式の地鎮祭について解説しました。地鎮祭は、家を建てるための建築工事が、安全に行われるように祈願するためのものとされています。日本には「八百万の神」という言葉があるように、万物に神様が宿るという考えが根強く、地鎮祭もこういった神道特有の儀式として残っているのです。

ただ、何度も言っているように、地鎮祭に関しては注文住宅を建てる際の「義務」というわけではないので、やりたくないのであれば省略することも可能です。実際に、近年の若者世代の間で葉、地鎮祭の存在そのものを知らない人も多く、半数近くの方が省略するようになっています。

地鎮祭を行わなくても、工事を手抜きされるといったデメリットも特にありませんし、ハウスメーカーの方と良く打ち合わせしたうえで、やるかどうかを決めると良いですよ。

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