家の購入を検討し始めた時には、『新築一戸建て』と『中古住宅』という選択肢で悩む方は少なくありません。一般的には、初めて購入するマイホームなのだし、誰も住んだことがない新築住宅が良いと誰もが思うのでは…と考えてしまいますよね。しかし、マンションなどの大規模物件がどんどん建築されている昨今では、駅近などの好立地の土地を手に入れることが難しく、「新築住宅を探していても、なかなか条件の合う物件が見つからない…」と時間だけが経過してしまうケースが増えているのです。

このような中、近年注目されているのが、中古の一軒家を購入して、自分たちが家に求める希望に近づけるようにリノベーションするという選択です。中古住宅の場合、新築一戸建てよりも安価で販売されていますし、新築のようにリフォームするためにコストをかけることができることから、住環境はもちろん立地条件も理想に近い環境を整えることができる場合もあるのです。もちろん、中古住宅には、新築住宅を購入する場合にはないデメリットもたくさん存在しますので、そういった面はきちんと対策を施す必要があります。

そこでこの記事では、家の購入を決めた時、新築ではなく中古住宅を購入した時のメリット・デメリットや、中古住宅購入時の注意点などを解説します。

中古住宅のメリットとは?

それではまず、マイホームの購入について、中古住宅を選ぶ場合のメリットから解説していきます。新築ではなく中古住宅を選ぶ場合のメリットと言われると、ほとんどの方が「安く購入できる」以外にメリットはないのでは…と考えてしまっています。しかし実は、中古住宅には価格以外にもさまざまなメリットが存在します。

ここでは、中古住宅の代表的なメリットをいくつかご紹介します。

メリット1 安く購入できる

中古住宅のメリットとしては、やはりこれは外せません。マイホームの購入を検討した時、新築一戸建てではなく中古住宅を選択する方の多くは、「家の価格が安い」という点を最大のメリットとみなしているはずです。

中古住宅の販売価格が安いのは、戸建て住宅は、築年数が経過することで資産価値が減少することが大きな要因です。特に、木造が主流の日本の戸建て住宅の資産価値は、新築時を100%とすると、築10年で45%まで建物の価値が減少し、築20年を迎えるとほぼゼロまで下落するとされています。


画像引用:国土交通省資料より

上のグラフから分かるように、戸建て住宅の価値はマンションなどと比較しても、下落するのが早い為、同じような立地、大きさの新築戸建て住宅よりも中古住宅の方が安くなるケースが多いのです。したがって、予算が限られている中でより自分たちの理想に近い家を探しているという場合には、中古住宅の方が良い条件の住宅が見つかる可能性が高いです。

メリット2 完成した建物を確認できるため、購入後のイメージがしやすい

中古住宅を購入する二つ目のメリットは、既に完成した住宅を細部まで確認したうえで購入することができるため、購入後の自分たちの生活を具体的にイメージすることができ、より理想に近い物件を選ぶことができる点です。新築住宅の場合でも、建売住宅なら完成した家を確認することはできますが、注文住宅の場合は住宅が完成する前に購入を決断する必要があります。また、建売でも、立地が良い物件の場合は、家を建てる前に契約するケースも珍しくありません。

中古住宅の場合、自分たちが住むかもしれない建物が完成しているわけですので、外観や内装、設置されている設備などをあらかじめ確認したうえで購入できます。そのため、実際に住んでみて「想像とは違う…」といった事態が発生するリスクが少なくなります。

メリット3 住みたいエリアを選びやすい

3つ目のメリットは、中古住宅を選択肢に入れることで、住みたい場所を選びやすくなるという点です。物件選びの際に、新築戸建て住宅だけに絞ると、候補となる物件数はかなり減少します。更に、昨今では大型マンション建築がそこら中で推し進められていて、一般的に好立地と言われるような場所は、戸建て用地としては手に入らない場合がほとんどです。

これが中古住宅も選択肢に入れることができれば、選べる物件数をかなり増やすことができるのです。新築戸建て住宅の場合、エリアが限定されることが多い為、希望の学区や立地を選ぶことができないことも珍しくありません。しかし、中古住宅を候補に入れることで、理想の立地条件をかなえる物件に出会える可能性が高まります。これは意外に大きなメリットになるはずです。

メリット4 リフォームにより理想の住宅に近づけることができる

中古住宅は、「他人の希望で建てた家なのだから、自分たちは住みにくく感じるのでは?」と考える方もいます。しかし、先ほどご紹介したように、中古住宅は新築戸建てよりも販売価格がかなり安く抑えられるため、余った予算をリフォーム費用に回し、自分たちの理想に近づけることが可能なのです。実は、このポイントをメリットと考える方は多いです。

現在では、建築技術も大幅に進化していますし、中古住宅購入後に、家の外観を自分好みのデザインにしたり、最新の設備に入れ替えることで、新築住宅のような空間を作ることが可能になっています。更に、中古住宅は、リフォームを前提として購入するわけですので、家に手を加えることに迷いが生じません。新築の場合、「理想に近づけたいけど、購入したばかりでリフォームするのはな…」と躊躇してしまう方が多いです。つまり、中古住宅は、理想に近い立地にある家を購入でき、さらに自分たちのライフスタイルに最適な住環境を目指すのにもってこいの条件になる場合が多いのです。

メリット5 水道負担金が不要になる

「水道負担金」は、あまり聞き馴染みがないという方も多いかもしれませんが、新築住宅を購入した場合、家の購入費用とは別にかかってくる費用です。実は、中古住宅を購入するという選択をしたときには、この水道負担金を支払わなくて済むというメリットが得られるのです。水道負担金は、自宅に新しく水道を引くために納付しなければならない費用です。

新築の場合、家を購入した人が水道を使えるようにするため、上水道などの加入金を負担しなければいけません。しかし中古住宅の場合は、以前住んでいた人が既に水道を引いていますので、新たに水道負担金を支払う必要がないのです。水道負担金は地域によって異なりますが、15~30万円程度と、それなりの費用になりますので、住宅購入にかかる費用負担を軽減できるのはメリットになるでしょう。

メリット6 新築よりも広い家が見つかる可能性が高い

これは、現在の新築業界が狭小地に3階建て住宅を建築する傾向が強くなっていることから、注目されるようになったメリットです。中古住宅を選択する場合、現在の新築戸建て住宅よりも面積が広いケースが珍しくありません。というのも、新築住宅を分譲販売する企業は、多くの住宅を建てて販売する方が利益が上げられます。したがって、最低限の広さの住宅を建てて販売するケースが多くなっているのです。

しかし中古住宅の場合は、既に存在する住宅を販売するのが基本で、売主は個人であることから、土地を分譲して売却することなどほとんどありません。したがって、時間をかけて物件を探せば、広い土地に住宅が建っていたり、十分な駐車スペースが確保されているような物件を予算を抑えて購入することも可能なのです。

中古住宅のデメリットとは?

マイホームの購入を、新築ではなく中古住宅にするという選択には、上記のようにさまざまなメリットがあります。日本では、新築信仰があると言われるように、中古住宅という選択肢を最初から省いている人も多いのですが、諸外国では中古住宅を購入するのは当たり前という社会が出来上がっています。コストを抑えて、理想に近い家を探せるor作り替えることができると考えると、決して敬遠するような選択とは言えないですよね。

ただ、中古住宅という選択には、いくつか注意しなければならないデメリットも存在します。ここでは、中古住宅の購入を検討している方がおさえておきたいデメリット面をご紹介します。

デメリット1 修繕、リフォームが前提となっている

中古住宅の最大のデメリットが、購入した住宅はそのまま住めるわけではなく、修繕やリフォームが前提となる事です。例えば中古の自動車の場合、次の持ち主が何の問題もなく使える状態にしたうえで販売されるのが一般的ですが、住宅の場合は、次の購入者が自分たちの要望に合わせて修繕やリフォームをしなければならないのです。したがって、住宅の購入費用とは別に、「住める状態にする」「自分たちが住まいに求める機能を搭載する」ためのコストがそれなりにかかってしまいます。

もちろん、新築住宅を購入するのと比較すると、多くの場合、住宅の修繕リフォームにかかる費用を加算しても、中古住宅の方が安くつくと思います。しかし、購入した家の状態や、導入を考えていた設備との兼ね合いなどでコストが嵩み、「これなら新築を購入すれば良かった…」と後悔するケースもないとは言えません。

デメリット2 新築よりも手間がかかる

二つ目のデメリットは、新築住宅を購入するのと比較すると、購入後の修繕やリフォーム、住宅設備の交換などが必要になるため、実際に住み始めるまでの手間が増えるという点です。新築戸建ての購入の場合、細かな手直しが発生する場合はあるものの、基本的にハウスメーカーさんとだけ交渉すれば良いです。要は、相談窓口は一箇所になるので、やらなければならないことが増えても、そこまで負担には感じないと思います。

しかし。中古住宅の購入の場合、家の購入は仲介業者(不動産会社など)と交渉を行い、その後の修繕・リフォームは別の工務店と交渉、さらに新たな住宅設備を導入する場合は、設備会社と交渉が必要です。つまり、さまざまな業者との打ち合わせや現地調査などを行わなければならないのです。日常生活をすすめながら、いろいろな業者とのやり取りを行うのは、皆さんが考えている以上に負担になります。

デメリット3 耐震性に問題がある物件が存在する

地震の発生が多い日本で住宅を購入する場合、耐震性能が非常に重要です。特に、中古住宅を購入する場合、住宅が建てられた年代(正確には建築確認の申請時点)によって、適用されている耐震基準が異なるため、中には現行法の耐震基準を満たしていない物件も存在するのです。

建物の耐震基準については、基本的に1981年(昭和56年)5月31日が境目となっています。これよりも前に建てられた建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、これ以後は「新耐震基準」と呼ばれています。それぞれの耐震基準は以下のような感じです。

  • 旧耐震基準(1981年5月31日まで)
    震度5程度の地震で倒壊せず補修して住み続けられる構造
  • 新耐震基準(1981年6月1日以降)
    震度6強~7の地震でも倒壊しない、かつ震度5強程度の地震で損傷しない

このように、1981年(昭和56年)6月1日以降は、木造住宅の耐力壁の量や倍率を増やし、耐震力を向上した住宅を建てなければならなくなっているのですが、それ以前に建築された住宅の場合、耐震性に不安が残るのです。ちなみに、日本では、これ以後も多くの大規模地震が発生しており、その都度、住宅に求められる耐震性能が強化されています。2000年(平成12年)6月1日には、1995年の阪神・淡路大震災の被害を受けたこともあり、耐力壁の配置や接合部(柱や筋交いなど)、地盤に応じた基礎構造が、具体的に規定されています。
こういったことから、中古住宅を購入する場合、家が建てられた年代をきちんと確認する、もしくは耐震補強などがきちんとなされているのかを確認しなければいけません。新築戸建て住宅の場合、当然、新耐震基準に則って建てられていますので、高い耐震性を誇ります。

参照:国土交通省資料より

デメリット4 住宅ローン審査が厳しくなるケースが多い

家の購入時は、ほとんどの方が住宅ローンの使用を想定しているはずです。しかし、中古住宅の購入は、新築戸建て住宅の購入と比較すると、住宅ローンの審査が厳しいことが多いです。「物件価格が安いのになぜ?」と思うかもしれませんが、中古住宅は、建物の資産価値が下落しているため、金融機関からすると「担保価値が低い」と看做さざるを得ず、住宅ローンの審査に落ちてしまう訳です。

中古住宅の購入は、建物の状態や築年数、住宅ローンの種類によって、審査に通過できないことが考えられるのは大きなデメリットです。したがって、中古住宅の購入を検討している場合、事前に住宅ローンの仮審査を受けるなどの対策を行いましょう。

デメリット5 老朽化の懸念がある

中古住宅は、築年数が経過していることが理由で販売価格が安く設定されます。これは、木造住宅は鉄筋コンクリート造などと比較すると、経年劣化が早いことも大きな要因です。したがって、中古住宅を購入する際には、家の細部まで老朽化が進んでいないか慎重にチェックする必要があると考えてください。特に、浴室やキッチンなどの水回りは傷みやすい場所となるので、目に見えない場所で老朽化が進んでいる可能性もあります。

中古住宅を購入する際には、過去にその住宅で行ったメンテナンス実績などを確認することで、適切なメンテナンスが行われていたのかを確認すると良いでしょう。例えば、屋根や外壁のメンテナンスが適切に行われていなかった場合、目に見えない位置で雨漏りなどが発生していて、木材の腐食などが発生している恐れがあります。

中古住宅購入時の注意点について

それでは最後に、マイホームの入手手段として「中古住宅の購入」を選択した人について、実際に中古住宅を購入する際に注意してほしいいくつかのポイントをご紹介します。

目に見えない箇所もチェックさせてもらう

中古住宅は、「目に見えない場所で老朽化が進んでいる」「耐震性に問題が生じている」などと言ったリスクがあります。こういった部分に関しては、素人の方が目視で確認してみても、家が良好な状態なのかを判断することはできないでしょう。

したがって、築年数がある程度経過した中古住宅の購入を検討している場合、ホームインスペクション(住宅診断)を利用して、プロの目で住宅の状態を診断してもらうのが良いです。過去に行われた調査では、築30年を経過した中古住宅の場合、約半数の家に傾きが発生しているといったデータもあるなど、専門家にきちんと診断してもらわなければ、住み始めてから致命的な問題が見つかるといった最悪の結果が待っているかもしれません。

木造住宅は、築年数が経過するとともに、欠陥や不具合が各所で生じますので、それらの問題をきちんと解消するためのメンテナンスが行われた形跡があるのか、またすぐに致命的な欠陥が表面化するリスクはないのかなどを、プロに診断してもらい、事前に物件の状態を知った上で購入するようにしましょう。

契約不適合責任(瑕疵(かし)担保責任)について確認する

2020年4月の民法改正によって、瑕疵担保責任か契約不適合責任に名称が変更されています。内容に関しても、いくつかの変更が行われているのですが、大まかにいうと、住宅を購入した後「購入した住宅が契約内容に適合しない場合、その責任を売主が負う」という決まりのことを指しています。

例えば、「シロアリ被害が発生している」「雨漏りが発生している」などが瑕疵に該当します。契約不適合責任は、目に見える不具合だけでなく、住み始めて発覚した問題も当てはまります。中古住宅の売買における契約不適合責任については、、売主が不動産会社(宅建業者)か個人かによって大きく異なりますので注意しましょう。不動産会社の場合は、瑕疵担保責任期間が2年間なのですが、個人間の取引の場合は0~3ヶ月と非常に短いです。

中古住宅の売買においては、売主が瑕疵担保責任を負わないケースもあるため、しっかりと契約内容を確認しなければいけません。

まとめ

今回は、マイホームを手に入れる手段の中でも、「中古住宅を購入する」という選択について、新築戸建ての購入と比較した場合のメリット・デメリットを解説しました。

記事内でご紹介したように、中古住宅は、購入後に修繕・リフォームが前提になるものの、新築を手に入れるよりも費用を抑えられることが最大のメリットになります。また、新築住宅では考えられないような好立地な物件や広い物件などを購入できる可能性もあるなど、意外にメリットが多い選択肢でもあるのです。

ただ、木造住宅が主流の日本の住宅事情を考えてみると、「安かろう悪かろう」という選択肢になってしまうリスクが高い点は注意すべきです。木造住宅は、法定耐用年数が22年に設定されるなど、そこまで長い寿命を持っているわけではありません。したがって、住宅を安く購入できても、住み始めてみると、頻繁に修繕を入れなければならなくなり、中長期的に見るとコスト高になってしまう…なんてことも珍しくないのです。

日本の新築信仰は、単に「新しいものが好き」という心理的な問題で新築が選ばれているわけではなく、きちんと計算してみると新築の方が賢いと考える人が多いのだと思います。現在、住宅の購入を検討していて、新築と中古住宅の間で迷っているという方がいれば、お気軽に悠建設までお問い合わせください。

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